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「TheyDo」を活用した、カスタマージャーニーマネジメントとは
株式会社NTTデータ
テクノロジーコンサルティング事業本部デジタルサクセスコンサルティング事業部
辻野 絢氏
NTTデータからは、事業会社でのUX/UIデザイナーを経て、2024年にNTTデータのデザイナー集団「Tangity」にジョインしたサービスデザイナーの辻野絢氏が登壇。Tangityが実践するCXの管理や分析を円滑化するツール「TheyDo」を活用した、カスタマージャーニーマネジメントについて紹介した。
Tangityは、NTTデータのサービスデザイン領域におけるグローバルなデザイナー集団であり、主に企業に対して各種支援を提供するコンサルティングチームでもある。
現在、ヨーロッパ各国や、中国、アメリカなど世界各地に15拠点を構え、1,000名ほどのデザイナーが在籍。日本チームのメンバーは80名ほどで、ナレッジや事例をグローバルで共有する。
まさに辻野氏の業務内容と重なるが、戦略や体験コンセプトのデザインから、プロトタイプの作成、トレーニングなどを行っている。企業の課題をデザイン視点から解決に導く、幅広い領域や業務に精通する。
大手コンサルティングファームの情報によれば、ビジネスリーダーの80%がサービスの中心は顧客であると回答しているという。
一方で、同意している顧客は8%。最新の情報ではないと前置きしながらも「少しは改善されているとは思いますが、それでも企業は、顧客が求める体験を提供できていない現状があると捉えています」と、辻野氏は現状を述べた。
ではなぜ、このようなCXギャップが生じるのか。「CXをデザインする際に多くの企業が作成している、カスタマージャーニーマップがうまく活用できていないことだ」と、辻野氏は続けた。4つの具体的な課題も示した。
Tangityでもカスタマージャーニーマップは作成しているが、このような課題が生じないよう、カスタマージャーニーの管理・運用する仕組みを構築している。それこそが「カスタマージャーニーマネジメント」であると、辻野氏は述べた。
具体的には、以下スライド左側のように、カスタマージャーニーを作成し施策を実行したら終わっていた従来の手法から脱却。顧客とのタッチポイントから得られる各種データを活用し、実行した施策の効果を検証していく。
その上で、カスタマージャーニーマップを改めて見つめ直し、不備があれば修正したり、実際に新たな施策を追加したりして、実行していく。このようなサイクルをまわしていくことが重要であり、それがカスタマージャーニーマネジメントだと、辻野氏は改めて述べた。
一方で、このようなCX変革サイクルを、自力で構築することは難しいと辻野氏は指摘する。そこでTangityでは、オランダのスタートアップが開発した、カスタマージャーニーマネジメントを円滑に進めることのできるWebツール「TheyDo」を活用している。
TheyDoでは、まさに先述した課題のひとつであった、組織ごとに作成しているカスタマージャーニーマップを統合したり、定性・定量データを閲覧したりなどの活用ができる。上記のスライドはTheyDoのプラットフォームであるが、CX指標やビジネスKPIなどが表示されているのも特徴だ。
辻野氏はTheyDoのシステム概要も示した。スライドにはSnowflakeやBigQuery、Miroといったデータの源泉が並んでおり、そこから得たデータがTheyDoに入り続けることで、継続的にカスタマージャーニーをブラッシュアップしていく。
また、JiraやFigmaといったプロジェクト管理やデザインツールなどとも連携可能なため、実際にソリューションを開発している状況や進捗もTheyDoで把握できる。
カスタマージャーニーマップを自動で生成する「Journey AI」という機能を搭載しており、同機能を使うことで、カスタマージャーニーマップの作成が29時間からわずか4分に短縮された例もある。辻野氏は「とても便利な機能です」と、説得力を持って紹介した。
TheyDoの具体的な活用事例も紹介された。こちらもまさに、組織横断でCXを向上させるための基盤構築や、新規ソリューションの創出を目指したプロジェクトであり、赤枠で囲まれた領域の土台は、Journey AI機能によって作成可能にするのだという。
オランダ企業における導入事例も紹介された。金融機関のコールセンターにおける受電数の削減を目指したプロジェクトであり、TheyDoを用いCXを改善するソリューションを実行することで、大きなコスト削減を実現したという。
デザインの効果は見えづらく悩むことも多かったが、TheyDoを活用することで、自分たちが手がけた施策がCXにどのように影響を与えているのかが可視化されるようになったと、辻野氏は取り組みを振り返ると共に、次のように述べ、セッションをまとめた。
「ユーザーリサーチに関するデータの整理時間が劇的に短縮されたことで、デザイナーとしての本質的な、クリエイティブな業務に時間を使えるようになりました。またTheyDoはデザイナー以外も使いやすいツールのため、顧客への共感もより深まるようになったと思います」(辻野氏)
【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答
登壇セッションが終わった後は、イベント参加者からの質問に登壇者が回答する、QAセッションも行われた。抜粋して紹介する。
Q.サービス内容や分岐の発生などにより、ジャーニーを1つに限定できない場合の対応は?
辻野:最適な管理・運用方法については、私たちもまだベストな答えに至っておらず、日々検討を重ねています。その上での回答となりますが、まずは多数のジャーニーを階層化する「ジャーニーフレームワーク」という機能を活用し、ジャーニーコンテンツの全体像を一元管理することができます。さらに、分岐先を新たなミクロジャーニーとしてネストし、管理することも可能です。
Q.TheyDoのジャーニー生成機能の精度は?
辻野:あくまで使ってみての感覚ですが、ユーザーインタビューの結果をインサイトとしてまとめる、各ステップにプロットするなど、単純作業においては有効だと捉えています。一方で、ユーザーの言葉だけでは汲み取れないインサイトなどについては、私たちがユーザーに寄り添い、思考を巡らす必要があると考えています。
Q.ジャーニーマップをデザイナーが作ることのメリットとは?
辻野:デザイナーはユーザー体験に精通していますから、ビジネス視点ではない、ユーザー視点やユーザーの行動により焦点を当てた戦略が立てられたり、強化される点がメリットだと思います。マップの作成は、デザイナーの腕の見せ所でもあると考えています。