【開催レポート】仙台から変革を起こすテクノロジーと人に出会う現地視察ツアー&交流会 ~アグリテックと商店街DXで感じる、地域を動かす情熱~
「仙台でテクノロジーを活用し、社会や産業の課題解決に取り組む」テクノロジー人材を増やすことを目指すプロジェクト「Tech Drive Sendai」。その一環として2025年10月18日(土)、「仙台から変革を起こすテクノロジーと人に出会う現地視察ツアー&交流会 ~アグリテックと商店街DXで感じる、地域を動かす情熱~」が開催されました。 関東圏を中心とした各地から、エンジニアやWebデザイナーなどIT人材をはじめさまざまな職種の参加者19名が集まり、仙台のDXの「今」に触れた一日。その様子をレポートします!「仙台でテクノロジーを活用し、社会や産業の課題解決に取り組む」テクノロジー人材を増やすことを目指すプロジェクト「Tech Drive Sendai」。その一環として2025年10月18日(土)、「仙台から変革を起こすテクノロジーと人に出会う現地視察ツアー&交流会 ~アグリテックと商店街DXで感じる、地域を動かす情熱~」が開催されました。
関東圏を中心とした各地から、エンジニアやWebデザイナーなどIT人材をはじめさまざまな職種の参加者19名が集まり、仙台のDXの「今」に触れた一日。その様子をレポートします!
こんなにある!?仙台市内のDXの取り組み事情を知る

当日のスケジュール
午前中の会場は、仙台駅東口からほど近いコワーキングスペース「enspace」へ。ここでは、仙台市内でDXを軸に事業を展開する企業と参加者が一堂に会し、企業によるパネルディスカッションが行われました。
登壇したのは、AI・DXを軸に事業を展開する株式会社GROWTH JAPAN TECHNOLOGIESの我妻 裕太氏、東北発のものづくり×D2Cブランドを展開する株式会社ワイヤードビーンズの槇田 健三郎氏、イチゴブランド「MIGAKI-ICHIGO」をはじめアグリテック事業を展開する株式会社GRAの山根 弘陽氏、企業のIT資産管理とセキュリティを支えるクオリティソフト株式会社の庄子 信行氏、仙台発ベンチャーとして組込み開発やAIソリューションを手がける匠ソリューションズ株式会社の日野 拓也氏、そして東北地域の公共・法人向けシステム開発を担う株式会社NTTデータ東北 法人事業部の菅原 映氏の6名です。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションでは以下6つのテーマを軸に、登壇者それぞれが自社のプロジェクト事例や自身の移住経験を交え、仙台市でDX・ITの仕事に携わるおもしろさや、暮らし・キャリアのリアルを語りました。

左から庄子 信行氏(クオリティソフト株式会社)、日野 拓也氏(匠ソリューションズ株式会社)、我妻 裕太氏(株式会社GROWTH JAPAN TECHNOLOGIES)
1. 仙台市のおすすめ
最初のテーマは、暮らしていて感じる「仙台市のおすすめ」。登壇者それぞれがコンパクトシティならではの魅力やお気に入りの飲食店などを共有しました。
「仙台市は、良い意味でギュッと縮まっていて狭く、暮らしやすいです。仙台駅周辺に季節のイベントやお祭りが集約されていて、駅前をふらっと歩けば、だいたい何かおもしろいことに出会えます」(匠ソリューションズ・日野氏)
2. UIJした人の移住決断エピソード
2つ目のテーマは、「移住決断の時のエピソード」。それぞれがどのようなきっかけで仙台市を選び、どんなことに悩みながら決断したかが語られました。
「子どもが生まれたときに親にあと何回、孫の顔を見せられるかを真面目に数えたんです。年に数回しか会えないままだと回数が限られてしまう。妻に相談して、35歳のときに仙台へ戻ることを決めました。両親もすごく喜んでくれて、『帰ってきてよかったな』と日々感じています」(NTTデータ東北 法人事業部・菅原氏)
3. 仙台市の子育て環境
3つ目のテーマは、「仙台市の子育て環境」。自然と都市機能のバランスや、子どもたちの居場所の選択肢について、リアルな声が上がりました。
「塩竈(しおがま)市に住んでいるのですが、近くに森があって、最近そこにジップラインができたんですよ。未開拓だった場所に新しいものがどんどんできていて、これからもっと色々なことができる可能性を含めて、子育てにはすごく良い環境だと思います」(クオリティソフト・庄子氏)

左から菅原 映氏(株式会社NTTデータ東北)、槇田 健三郎氏(株式会社ワイヤードビーンズ)、山根 弘陽氏(株式会社GRA)
4. UIJターンにおけるスキルやキャリアへの影響
4つ目のテーマは、「UIJターンにおけるスキルやキャリアへの影響」。移住をきっかけにキャリアチェンジやスキルの掛け算に挑戦したエピソードが共有されました。
「システムエンジニアを10年やってから、今はイチゴの農業法人で働いています。ITと農業の両方を経験している人間はあまりいないので、“アグリテック×イチゴ”のような形で、講演や新規就農支援など自分にしかできない役割を任せてもらえるようになりました。思いきってキャリアチェンジしたのは、本当に良かったと思っています」(GRA・山根氏)
5. 最近やった良い仕事・やりがいのあった仕事
5つ目のテーマは、「最近やった良い仕事・やりがいのあった仕事」。首都圏と変わらない規模の案件や、地元の暮らしと直結する仕事ならではの手応えが語られました。
「移住を考えたとき、一番悩んだのは『東京の最新ビジネスから離れてしまうのでは』という点でした。結論、仙台でもやりがいは変わっていません。新幹線で東京まで1時間半くらいなので、日帰り出張ができる距離感です。仙台に暮らしながら、東京の仕事や最新の動きにも関われる実感があります」(ワイヤードビーンズ・槇田氏)
6. 地方だからこそできた仕事
最後のテーマは、「地方だからこそできた仕事」。行政や大学、地元企業と近い距離で協働できる仙台ならではのプロジェクトが紹介されました。
「仙台は課題だらけですが、それが逆にチャンスでもあります。地元の会社さんのお話を聞くと、『まだそんなやり方でやっているんですか?』というところが本当に多い。それを技術で解決すると、ものすごく喜んでいただけます。 鉄塔のサビを診断するAIを開発したときは、仙台市への貢献でありながら、経済産業大臣からも評価していただきました」(GROWTH JAPAN TECHNOLOGIES・我妻氏)

東北の海の幸が味わえる「仙令平庄」のお寿司と、仙台市の人気イタリアン「チロル」のオードブルに舌鼓

ツアー参加者と仙台市のプレイヤーが交流を楽しむ様子
パネルディスカッション後は、ランチを食べながら仙台市のプレイヤーと参加者が交流する時間が設けられました。
「地方でフルリモートを続けるか、現地の企業に転職するかで迷っている」
「仙台市へのUIJターン後の具体的なキャリアパスがイメージできない」
参加者の悩みに対し、自身のUIJターン経験や転職・独立のリアルを率直に共有するなど、真剣なキャリア相談から、仙台市の暮らしやすさ、休日の過ごし方、子育て環境といったカジュアルな話題まで、地元グルメを囲みながらコミュニケーションの輪が広がりました。
9割自動化の植物工場「美里グリーンベース」を視察!─ 「スマート農業」の現場を体感
仙台市から1時間ほどバスに揺られ、続いて一行が向かったのは株式会社舞台ファームが運営する”9割自動化の植物工場”「美里グリーンベース」。レタスを中心に、AIやロボティクスを駆使し、収穫フェーズ以外のほとんどを自動化したスマート農業の最先端施設です。

伊藤 啓一氏(株式会社舞台ファーム 専務取締役)
まずは株式会社舞台ファーム 伊藤 啓一氏、吉永 圭吾氏から、同社が取り組む農業DXの全体像についてレクチャーがありました。
「美里グリーンベース」では、日々の気温や湿度、二酸化炭素濃度、培地の水分量などをセンサーで取得し、そのデータをもとに環境を自動制御。全プロセスの約9割を機械化することで、品質の安定と生産性向上、そして安定的な供給を実現しているそうです。
「現場でセンシングしたデータを貯めて分析しながら、遠隔で複数拠点の環境を一元管理しています。人材不足や世代交代といった課題に対しても、誰が入っても同じ品質を再現できる仕組みとしてDXに取り組んでいるところです」(伊藤氏)
同施設は敷地面積が7.6ヘクタール、建物面積が5.1ヘクタールもある巨大な工場です。「分かりやすく播種(=幼稚園)、育苗1(=小学校)、育苗2(=中学校)、定植(=高校)と生育フェーズを学校に例えています」と、初来訪の参加者に内部構造が理解しやすいよう吉永氏は説明します。

自動でレタスの種をまく播種マシンを間近で見学
いよいよ一行は「美里グリーンベース」のレタス工場内に潜入!
最初に案内されたのは、土づくり・播種(種まき)エリアです。海外産の培地を使いながら、「いずれは自社で国産化して循環させていきたい土です」と吉永氏。参加者は、土をこねて成形する機械や、自動でレタスの種をまき「3種ミックス」のリーフレタスもつくれる播種マシンを間近で見学しました。
播種を終えた培地は、まず48時間ほど真っ暗な「発芽室」で眠らせ、その後育苗エリアを段階的に移動します。

参加者から「ピンク!」と声が上がったが、これは天気が悪く自然光が不足していて光を当てているため
完全人工光型の工場に入ると、整然と並ぶレタスの列、動く黄色のロボットアーム、淡々と稼働する搬送ラインが、静かにひたすら作業を続けています。バー状のフレームが奥に進むにつれて少しずつ間隔を広げ、葉がぶつからないよう自動でスペースを調整する仕組みも印象的です。
ここでは常時およそ100万株規模のレタスが育っており、種まきから収穫まで約40日で仕上がるとのこと。中にほとんど人の姿がなく、「基本的に人がいるのは収穫エリアだけ」という説明に、参加者からは驚きの声が上がりました。

ロボットアームは、苗を次のステージへ受け渡していく仕組み

唯一「人の手作業」が入る収穫フェーズの様子
参加者からは、
「こんなアグリテックの現場を見るのは初めてでした。仙台にもこんなところがあったのだなあ」
「9割自動化で人がいない感じが、めちゃくちゃおもしろかった」
「土を再利用して、全体を立体的に設計している持続可能なビジネスモデルだと感じた」
といった声が上がり、技術面・ビジネス面の両方から活発に質問が飛び交いました。

株式会社舞台ファーム 未来戦略部の吉永氏(最前段右)と参加者で記念撮影

「ロメイン」「サニー」「グリーンリーフ」「フリル」の4種の試食を楽しむ参加者。味や食感はさまざま
見学の後半には、同施設で収穫された4種類のレタスを試食する時間が設けられました。
参加者にとってデータとテクノロジーが、食卓にあがるレタスにつながっていることを味覚を通じて実感するひとときとなりました。
クリスロード商店街ウォーク─DXと「歩きたくなるまち」づくりとは?
本ツアー最後のプログラムは、仙台駅前から続くアーケードの一角「クリスロード商店街」の視察。アパレルや飲食店、老舗の専門店などが軒を連ね、学生からシニアまで幅広い世代が行き交う仙台市のメインストリートの1つです。

岩本 富貴氏(クリスロード商店街振興組合 専務理事)の案内によりクリスロード商店街のDX事例を見学

商店街の道幅は広く、土曜日の夕方の人通りは多く賑やか
まずはクリスロード商店街振興組合の岩本氏のガイドで商店街を歩きながらのミニフィールドワークへ。「どんな年代の人が多いか」「どのあたりが立ち止まりポイントになっているか」といった視点で通行人や店構えを観察し、まちの現在地を肌で感じます。
その後は「クリスロード商店街振興組合事務所」へ移動し、商店街でデジタル活用に取り組む企業のプレイヤーを交えて「商店街DXと歩きたくなるまちづくり」をテーマにしたパネルディスカッションが行われました。
登壇したのは、岩本氏のほか、地元サイクルショップ「ハヤサカサイクル」を経営する株式会社ハヤサカサイクル商会の早坂 武氏、イタリアンレストランや和食居酒屋を展開し東北の魅力を発信する株式会社ハミングバード・インターナショナルの小野 雅人氏、そしてAI・デジタル分野を中心とした教育プログラムを開発、提供する株式会社zero to oneの竹川 隆司氏の4名です。

左から岩本氏、早坂 武氏 (株式会社 ハヤサカサイクル商会)
まず岩本氏は、同商店街の現状と課題を共有しました。同商店街は、現在も東北随一の人通りがあり、スポーツチームとの連携や駐車場収益、隣接商店街とのネットワークなどの強みがあります。
一方で、個店の減少や後継者不足、大型店撤退による人流減少、アーケード維持費による財政負担など、構造的課題も少なくありません。
「人通りは多い。この強みを活かして、商店街としての体力をさらにアップさせたい」(クリスロード商店街振興組合・岩本氏)
クロストークでは、モデレーターを務めた竹川氏が同商店街での売上向上には「仙台市への来訪」→「商店街への来訪」→「店舗前の通行」→「来店」→「購買」のステップがあり、それぞれで人流・購買データを計測し、施策につなげることが重要だと整理しました。
「『来る・歩く・入る』のどこで下がっているかを、数字・データで見える化するのがスタートです。データは集めること自体が目的ではなく、『どうまちを歩いてもらうか』を設計するための材料が必要」(zero to one・竹川氏)
その考え方を体現する取り組みの一つとして、仙台市・一番町で実施された、回遊に応じてスタンプのトークン価値が変動するWEB3型スタンプラリー「番ぶら3.0 デジタルスタンプラリー」が紹介されました。
「歩けば歩くほどスタンプの価値が上がる──そんな設計で回遊をデザインしています」(竹川氏)

左から小野 雅人氏(株式会社ハミングバード・インターナショナル)、竹川 隆司氏 (株式会社 zero to one )
同商店街に店舗を構える個店の取り組みとして紹介されたのが、「ハヤサカサイクル」によるGoogleビジネスプロフィールの活用です。商店街として勉強会を開き、営業時間や写真、投稿を整備した結果、年間閲覧数は15万件から約28.9万件へ増加し、電話問い合わせは大幅に減少しました。
「ネット上で探してくれる人に向けた入り口を整えるだけで、こんなに反応が変わるとは思わなかった」(ハヤサカサイクル商会・早坂氏)
さらに株式会社ハミングバード・インターナショナルでは、路面店前に人流カメラを設置し、通行人数や性別・年代を可視化。通行量に対する来店客数の「シェア率」を見ながら、シフトや仕入れを調整しています。一方で、天候やイベントなど外部要因による数値のブレも大きく、「数字の見方」を磨く必要性も明かされました。
「勘でやっていたことを、数字で確かめられるようになったのが一番の変化です」(ハミングバード・インターナショナル・小野氏)
商店街としては、通行人数の総計を毎月組合員に共有し、より細かな属性データは希望店舗が追加費用で利用できる仕組みを整備中とのこと。
しかし、「データを見てもどう活用すればいいかわからない」といった声も多く、まずはここで紹介されたような成功事例をさらに増やし、周囲へ波及させていくことが重要です。
「仙台の商店街には、まだまだ伸びしろがあります。地域に貢献したい外部の力も借りながら、一緒にまちを良くしていきたい」(クリスロード商店街振興組合・岩本氏)
ツアー参加者インタビュー
最後に、ツアーに参加された3名に感想を聞いてみました!

「両親がもう70代で、孫の顔をあと何回見せられるんだろう……と考えたのが仙台市へのUターンを意識し始めたきっかけです。実家は米農家なので、今日の舞台ファームさんのAI×農業の取り組みにはかなり衝撃を受けました。フリーランスとしての次のキャリアを、仙台での暮らしと“AI×農業”の方向で考える良い足がかりになりましたね」(フリーランス/首都圏)

「私は仙台市への移住が決まっていて、現在はフルリモートで今の仕事を続けるか、仙台市にある企業に転職するかで迷っていたところ、このツアーを知り、参加しました。今日見学した『美里グリーンベース』は、9割が自動化されたラインと、土を再利用しながら循環型で運営されている点がとても印象的で、全体的に持続可能に設計されているのがおもしろかったです。ロボティクスの現場に触れて、キャリアをもう少し構造から考え直したくなりました」(広告・エンタメ業界/東京都)

「就職を機に上京して1年ほど経ちますが、『そろそろ仙台に戻りたい』と考えていたタイミングで、SNSで今回のイベントを見つけて応募しました。仙台には商店街や中小企業を支えるテック企業がいくつもあること、そして「地域にコミットしながら働く」ロールモデルが実際に存在していることを知れたのが大きな収穫です。特に商店街DXの話がすごく印象的で、課題をちゃんと自覚しながらも、人流データを取ったりスタンプラリーを工夫したり、試行錯誤しながらまちを良くしようとしている姿が見えたのがおもしろかったです」(会社員/東京都)
仙台市で働き、暮らす魅力
今回のツアーでは、仙台市エリアにおけるスマート農業や商店街DXなど地域ならではの課題にテクノロジーで挑む「仕事のおもしろさ」とともに、都市と自然が近く“ちょうどいい”まちの「暮らしやすさ」を身をもって体感できました。
仙台市というフィールドでDXに関わることは、地方創生や産業変革を足元から支えることでもある──その手応えを、具体的なプロジェクトとプレイヤーの言葉を通じて確かめられる機会になったのではないでしょうか。
仙台市IT人材UIJターン推進事業
https://bd.techplay.jp/techdrive-sendai
取材・文=宮口 佑香(パーソルイノベーション)
撮影=刑部 友康
※所属組織および取材内容は2025年10月時点の情報です。
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