【日本総研】「次の一歩」で視座は変わる ~エンジニアが会社の未来を考える立場に至るまで~
キャリアの先が見えない。今のままでいいのか分からない。そんな悩みを抱えるエンジニアもいるだろう。株式会社日本総合研究所の廣瀬 明子氏は、システムエンジニア、プロジェクトマネージャーなどの経験を経て、入社20年目を迎えようとするタイミングでシステム部門の中期経営計画策定リーダーを務めた。その道のりは決して計画通りではなく、与えられた仕事を一歩ずつ着実に積み重ねた結果だという。 本記事では、廣瀬氏が語る「視座の拡張」という考え方と、キャリアをアップデートする3つの法則を紹介する。キャリアの先が見えない。今のままでいいのか分からない。そんな悩みを抱えるエンジニアもいるだろう。株式会社日本総合研究所の廣瀬 明子氏は、システムエンジニア、プロジェクトマネージャーなどの経験を経て、入社20年目を迎えようとするタイミングでシステム部門の中期経営計画策定リーダーを務めた。その道のりは決して計画通りではなく、与えられた仕事を一歩ずつ着実に積み重ねた結果だという。
本記事では、廣瀬氏が語る「視座の拡張」という考え方と、キャリアをアップデートする3つの法則を紹介する。
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「今の役割の延長線上にキャリアは見えない」
株式会社日本総合研究所
データ・情報システム本部
次長
廣瀬 明子(ひろせ・さやこ)氏
株式会社日本総合研究所(以降「日本総研」)は、SMBCグループのシステム中核会社として、ITソリューション、シンクタンク、コンサルティングの3つの機能を展開している。ITソリューション部門は、SMBCグループ各社のシステム企画から運用までを一貫して担い、高品質なITインフラを提供することでグループ全体の成長を支えている。
廣瀬氏は大学・大学院で分子生物学を専攻しており、システム関連の知識はゼロだった。2006年、日本総研に新卒で入社し、エンジニアとしてのキャリアがスタートした。

冒頭で廣瀬氏が投げかけた問いは「今の役割の延長線上に自分のキャリアは見えますか?」というものだ。廣瀬氏自身の答えは「ノー」。なぜなら、視座は今の仕事から自動的に与えられるものではなく、新しい仕事に踏み出すことで初めて獲得できるものだからだという。

「役割が変わるたびに視座が広がり、世界の見え方が根本から変わるプロセスを何度も経験してきた」と廣瀬氏は振り返る。システムから始まり、ビジネス、組織、経営へと視座が広がってきた。最初から経営や未来を目指してもイメージできない。一つ外側の枠に一歩踏み出す行動から、だんだんと広げていくものだと語る。
5つのキャリアの転機で何が変わったか


廣瀬氏のキャリアには大きく5つの転機があった。
2006年の入社時、プログラミング未経験からSMBCの勘定系アプリケーション開発に従事した。ここで得た視座は「いかに正確に作るか」「保守性の高さの大切さ」だった。

廣瀬氏はビルの構造に例えて説明する。オフィスビルで真に必要なのは執務室だが、エレベーターやトイレ、非常階段など執務室以外のスペースも約30%を占める。これがなければビルは成り立たない。


システム開発も同様で、ユーザーの目に映る機能だけでなく、耐障害性や保守性といった非機能要件(ユーザーには見えないがシステムを支える基盤部分)を意識的に守ることこそが、システムを安全に長く使い続けるための土台である。実務を通じて、当たり前にシステムを使い続けられる「盤石な日常」を支えることこそが、エンジニアとしての誇りであり、獲得した視座であった。

その後、2012年に三井住友銀行へ出向し、数百億円規模のシステム企画を担当した。コードの世界から巨大な金融ビジネスの最前線へステージが移り、「なぜ作るのか」「ビジネスにどう貢献するのか」という視座を獲得した。

5年の出向を経て2016年に帰任し、大型プロジェクトのプロジェクトマネージャーを務めた。ここで「限られた時間でどうチームとして成し遂げるのか」というチーム目線が加わった。

2022年に異動し、当時存在しなかったデータサイエンス組織の立ち上げを任された。組織を新しく作る経験もデータサイエンスの知識もなかったが、ゼロから成功に導いた。「与えられたものをこなす段階から、組織に何が欠けているのか、どう作り出すのかを考える立場」としての視座を得た。

そして2025年度、システム部門の次期中期経営計画策定リーダーに任命された。エンジニアとして始まったキャリアに、会社全体を未来へ導く経営目線の視座が加わった。
新しい挑戦への不安をどう乗り越えたか

常に新しい視座へ踏み出すとき、そこには壁があった。プログラミング、数百億円のプロジェクト、データサイエンス組織の立ち上げ、経営計画の策定といったこれらの全てが未経験、未知のものであった。毎回「はたして自分にできるのか」という不安が付きまとったという。
ただ、「不安だからといってそこに立ち止まっていたら何もならない。思い切って飛び込んで、役割を引き受けてから何をするか考えようというマインドになった」と廣瀬氏は語る。完璧な準備は幻想であり、飛び込んで役割を引き受けてこそ視座が後から追いついてくる、と現在は考えているそうだ。

一方で、どれだけ視座が変わっても変わらない「根っこ」がある。エンジニア時代に培った「システムがどう動くか、どうすれば実装できるか、どうすれば維持できるか」といった肌感覚と基礎があるからこそ、机上の空論に終わらない経営戦略を描くことができた。このエンジニアとしての原点を、廣瀬氏は自身のキャリアを支える「最強のアンカー」と表現する。
キャリアをアップデートするの3つの法則
廣瀬氏はキャリアをアップデートするために心がけていることを3つ挙げた。

1つ目は「居心地の悪い場所へ飛び込む」こと。成長はコンフォートゾーン(居心地の良い場所)の外にしかない。変化の激しい世の中において、現状維持は「退化」である。
2つ目は「技術の根っこを信じる」こと。エンジニア経験に裏打ちされた知識があるからこそ、ユーザーと自信を持って話ができる。開発経験はすべてのビジネス領域で通用するパスポートだという。
3つ目は「ロールモデルを持たない」こと。廣瀬氏は就職氷河期世代で、社会人の先輩が少なく、女性の先輩社員はなおさら少なかった。「いなければ自分が次の世代のロールモデルになればいい」という気持ちで日々仕事に取り組んでいるという。
小さな一歩でも踏み出せば景色は変わる
廣瀬氏は「小さな一歩でも踏み出せば、必ず景色は変わる。視座が変わると世界も変わる」と締めくくった。
キャリアの正解を探すのではなく、目の前の一歩を踏み出すことで視座を獲得し、そこから次のステップが見えてくる。完璧な準備を待つのではなく、まず飛び込んでみること。これまでのキャリアを通じて廣瀬氏が得た答えだった。
【Q&Aセッション】
Q&Aセッションでは、廣瀬氏がイベント参加者から投げかけられた質問に回答した。
Q. エンジニアとしての基礎が役に立ったエピソードと、その基礎をどう身につけたか教えてください。
廣瀬氏:保守の観点を身につけられたことが私の強みです。システム開発の内製化が進む中、事業会社の方が作ったプログラムは保守性が考えられておらず、放置されて陳腐化することが多いです。私たちのチームはそうしたプログラムを読み解いてドキュメントを作成し、サステナブルに機能できる形に持っていく力があります。この基礎は新卒時のコーディングやサーバー管理の経験を通じて、身につきました。
Q. 現在QAエンジニアですが、ライフイベントを考えると、関わりたいプロダクトがあるスタートアップに転職して良いものか悩んでいます。何かを妥協するしかないでしょうか?
廣瀬氏:人生は楽しくなければ嫌なので、楽しくない仕事に人生の大半を費やすことは、私なら選ばないと思います。
Q. いま学生ですが、IT業界に挑戦するか悩んでいます。皆さんはもう一度就活するとしてもITに挑戦しますか?
廣瀬氏:もう一度IT業界に挑戦します。私が就活していたころIT業界はブラックなイメージでしたが、この20年で大きく変わり、むしろ人気職種になっています。IT自体が事業会社の戦略立案の武器である時代において、ITを生業にするのはすごくおもしろい時代です。いまだからこそ間違いなく挑戦します。20年前にここまで見通していたわけではありませんが、この業界に飛び込んだ自分を褒めたいと思います。
文=宮口 佑香(パーソルイノベーション)
※所属組織および取材内容は2026年3月時点の情報です。
株式会社日本総合研究所
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