デジタルマーケティングからIoTまで──ビジネスを支えるサポートエンジニアの組織改革に取り組むトレジャーデータ

インタビュー
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デジタルマーケティングからIoTまで──ビジネスを支えるサポートエンジニアの組織改革に取り組むトレジャーデータ

2011年の創業と若い会社でありながら、クラウド型ビッグデータ分析の基盤構築に最適のプロダクトを持ち、データドリブンによるビジネス革新を目指すためのプラットフォームのノウハウを蓄積してきたトレジャーデータ。2018年夏にArm社の一員になったことで、新たなプラットフォームの可能性が見えてきた。それを支えるサポートエンジニアの仕事に迫った。

IoTデータを取り込んでさらに発展するデータ分析プラットフォーム

2011年創業のトレジャーデータは、2018年夏、組織として新たな変革期を迎えた。ソフトバンクグループ傘下にある英国の半導体設計企業Arm社が同社を買収したのだ。Armはほぼ同じ時期にIoTコネクティビティ管理テクノロジーを提供するStream Technologies社を買収しており、Armからするとデバイスからデータまでを一貫して管理できるIoTプラットフォーム実現のベースを築いたことになる。

トレジャーデータ視点で見れば、Armの一員に加わったことで、IoTデータを自らのプラットフォームに取り込むチャンスが訪れたことになる。すでに世界的な実績をもつ同社の「カスタマーデータプラットフォーム(CDP)」の技術をより拡張し、「デバイスデータプラットフォーム(DDP)」を志向する構図が見えてきたのだ。

Armとその親会社であるソフトバンクグループの予測によれば、2035年までに世界中で1兆台にも及ぶデバイスがネットワークに接続されることで、全ての産業が再定義される新たな情報革命が起こるという。

しかし、情報の大海原に乗り出すにあたって、顧客企業は自社のビジネスに合致した的確なデータ分析基盤やその活用方法を求めている。とりわけ、クラウド型ビッグデータ基盤サービスのノウハウは喉から手が出るほど欲しいものに違いない。

「デバイスデータと顧客データを、スケーラビリティを担保しながら処理することができる稀有なデータ基盤を提供し、かつそれらのデータを統合する方法を熟知している私たちこそが、その要望に応えなければなりません。顧客データとIoTシステムを同一基盤上で統合するDDPを構築すること。トレジャーデータが進むべき次の段階がそこにあります」 と、トレジャーデータの創業者 芳川裕誠氏は、Armの一員になったことを機に新たな決意を自社サイトで述べている。

プロダクトの要求するスキルと、顧客とのギャップを埋める

こうしたプラットフォームの新たな展開を支えるのは、もちろん同社のテクノロジーではあるが、同時に必要なのは、顧客を成功に導くためにその支援をするサポートエンジニアの役割だ。

エンジニアリングマネージャーの髙橋達氏は同社でサポートエンジニアチームを率いるリーダー。2013年10月に同社初めてのサポートエンジニアとして入社し、しばらくは“ひとりサポートエンジニア”として苦闘しながらも、チームを現在の8名体制にまで成長させてきた。


▲トレジャーデータ株式会社 サポートエンジニアリングマネージャー髙橋 達氏

企業の枠を超えてサポートエンジニアという職種のステータス向上にはことのほか熱心で、TECH PLAY でもたびたび「サポートエンジニアNight」を主催。普段は表舞台に出ないテクニカルサポートエンジニアというポジションにフォーカスを当て、その仕事内容を紹介し、スキル向上のための手立てを教示してきた。

「自社内にデータは豊富に蓄積されているけれど、それがサイロ化していて統合できていなかったり、データ活用のノウハウがなくて使いこなせていない企業はたくさんあります。それは実にもったいない。当社のArm Treasure Data eCDPはそれに応えるものだと思います。

ただ、デジタルビジネスが進展するにつれて、顧客のプロフィールも変わってきました。最初の頃は、エンジニアがアクセスログの分析に使うためにトレジャーデータサービス を使うということが多かったのですが、近年はデジタルマーケティングに活用するために、マーケターが直接、プロダクトに触ることが多くなってきました。

それに伴い、プロダクトの機能とお客様の要求にギャップがあるということも増えてきました。だからこそ、私たちサポートエンジニアの役割はますます重要になっているのです」

顧客企業への直接のサポートの他に、同社の製品を担いでSIサービスを提供するサービスベンダーのエンジニアも、サポート対象だ。また同社はこれまで2種類のBIツールをOEM製品として提供しており、そのベンダーとの関係も重要になっている。

「ベンダーコントロールという言葉はなんか偉そうで好きではないのですが、ベンダーと共に、顧客のバックグラウンドや今後の戦略を共有することも、私たちサポートエンジニアのミッションになっています」

サポートエンジニアこそがトレジャーデータの一番のプロダクト

同社の顧客はグローバルに広がり、現在は400社以上。国内外比率は半々で、海外に対しては英語でサポートすることになる。サポート組織もアメリカ、日本、ウガンダにそれぞれ拠点を置き、時差を利用して各拠点が一つの顧客のサポートを受け渡しながら継続するということもよくある。文字通り地球をまたいだサポート体制が構築されている。

具体的なサポート・チャネルは、メール、オンラインチャット、Slackを介したサポートなど複数ある。サポートチケットシステムにはZendeskを使っている。

カスタマーサポート一般に言えることだが、顧客からの問い合わせへの対応では、問合わせの内容の背景を探ることが重要だ。問題を切り分け、目の前の課題解決ではなく、“真の課題”解決に向けて努力する。

そのためにはサポートエンジニア自身が顧客のビジネスをよく知っていることが必要だが、社内の営業チームとの連携も欠かせない。さらに、サポートの現場で得られた製品の不具合や改善要求をすぐに開発チームにエスカレーションすることも重要なミッション。営業+サポートエンジニア+開発エンジニアの三輪がうまく嚙み合うことが不可欠だ。

「サポートエンジニアはたしかにサポートの最前線にいる職種ですが、会社全体として顧客をサポートするという姿勢が重要」と、髙橋氏は言う。

この点は同社のトップも熟知している。

「当社のマネジメントメンバ自らが、サポートエンジニアこそがトレジャーデータの一番のプロダクトと言ってくれています。エンジニアの下にサポートがあるのではなく、 サポートもサービスとして重要であるという位置付けは明確です」

それにしても、わずか8人のサポートメンバーで400社の顧客のリクエストに応えるというのはなかなかしんどい仕事ではある。

「クラウドサービスの場合、単にマニュアルにしたがって答えるというサポートとは違います。サポートエンジニア自身がエンジニアリング・スキルを持ち、サービスのコア技術や機能のキャッチアップが必要です。プログラミング言語もそれを使ってバリバリ開発することはないが、それがどういうものかは知っておく必要があります。

開発エンジニアとのコミュニケーションも求められる。そういうスキルをもつサポートエンジニアはそもそも市場に少なく、今はそれらのスキルのある人がそれぞれ頑張って乗り切っているというのが現状です。ただ、エンタープライズでの需要が増えているなか、このままでは追いつかない。2021年には30人規模の体制でサポートができるように、社内ツールの整備や人材採用を強めているところです」

英語でのサポートが求められるということも、新規採用が難しかった理由の一つだろう。 「私自身は短期の交換留学の経験はありますが、トレジャーデータ に入社した頃のTOEICは600点程度。英語のエキスパートというわけじゃない。実際の仕事ではGoogle翻訳の助けを借りることもよくあります。この仕事では英語の読み書きはたしかに重要ですが、話せることはマストではない。英語に苦手意識がなければ誰でもなれるものです」

それ以上に、サポートの仕事には日本ではまだ受動的なイメージが強く、特にクラウドサービス上で動くプロダクトを自社で開発する企業がかつては多くはなかったため、「エンジニアの方もなかなかイメージが湧かず、需給のミスマッチが起きていた」という理由の方が重要だ。

髙橋氏が「サポートエンジニアNight」などを通して、自分の仕事の醍醐味を伝えようとしているのも、サポートエンジニアに対するイメージの改善をしたいという強い思いがあるからだ。

一人一人のサポートエンジニアが+αのミッションを持つ

もともと、前職のSIerでSEをしていた髙橋氏は、サポートエンジニアに興味があったわけではなかった。ただ、トレジャーデータ入社後にその仕事をするようになって、「自分と相性がいいことに気づいた」という。

「新規で開発するよりも、優れたプロダクトを組み合わせてサービスを提供することが面白いと思うようになりました。トレジャーデータのサービスに私自身が惚れ込んだということもあります。その豊富な機能を十分活用できていないお客様がいるのが残念でならない。製品の良さをもっと伝えたい。そのことによってお客様のビジネスが成功し、我々のビジネスも共に成功していくことができれば、サポートエンジニアとしては本望です」

サポートチケットを発行し、顧客とのコミュニケーションを通して課題解決を図るのが、サポートエンジニアのルーティンワークだが、それだけだとモチベーションが続かない。

そのため、髙橋氏はマネージャーとして、「一人一人のサポートエンジニアが+αのミッションを持ち、常に挑戦できるようにすること」を次なる課題に挙げている。「+α」の取り組みにはさまざまなものがあるが、例えば製品のローカリゼーション、 KPIダッシュボードの作成、ドキュメント、プラグイン開発、セミナー開催などだ。

さらに、グローバル規模に広がるサポートチームの交流や意思統一のための会議も重要だと考えている。現在は、月に一度、3地点の時差がうまく嚙み合う時間帯を狙って、ビデオ会議でコミュニケーションを図っている。

「私自身がこれまでのプレイングマネージャーという立場から早く脱却しないといけないと思っています。マネージャーとしてサポートチームのビジョンを策定したり、大規模顧客のための戦略的支援体制や、社内のセールスオペレーションの自動化を進めることが必要です。サポートだからといって、顧客の無茶な要求を全部飲み込むことは、無責任でもあるし、疲弊にもつながる。責任分界点を明確にすることは、よいサポートのためにもよい仕事のためにも大切。そうしたサポートの質的改善も私の役目だと考えています」

目立たなくても、最も顧客に信頼されるエンジニアを育てたい

3年後の30人体制を作るために、髙橋氏はいま必死でサポートエンジニアの採用に取り組んでいる。

「私たちサポートエンジニアこそが、トレジャーデータが提供するサービスを最もよく知っていなければならないと考えています。SaaSベースの製品のテクニカルサポートまたはソリューションアーキテクトの経験や、SQLやRDBに対する知見、Java、JavaScript、Ruby、Shellなどのプログラミング言語の利用経験を、オフィシャルには条件に挙げています。

しかし、それだけにこだわっているわけではありません。ベースとして必要な条件は、何よりも技術が大好きで、最近のITトレンドを押さえていて、さらにその知識を深めたいという意欲です」

むろん、BtoB製品のテクニカルサポートを経験していればベストだ。BtoC製品の場合なら、カスタマーサポートの背後にいて、サポートをバックアップしていたエンジニアとしての経験は十分トレジャーデータでも活かせるという。

「トレジャーデータのユーザーは、EC、ゲーム、IoT、メーカー系など幅広く、しかも世界中に広がっています。サポート対象が一つの業種に限らないというのも魅力の一つだと思います。優れた製品を使っていただくことで、顧客のビジネスが発展する、さらにIoTなどのデータ分析を通して世の中が面白くなっていくことに、喜びを感じる人。そういう志向を持つ人は実はたくさんいるはず。その中からサポートエンジニアとして新たなキャリアを築いて活躍していってほしいと思うんです。」


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