データ分析環境とデータ活用伴走で事業現場に寄り添い、パナソニックグループを支える組織とは

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データ分析環境とデータ活用伴走で事業現場に寄り添い、パナソニックグループを支える組織とは
パナソニックグループが持つ様々なデータを収集・分析し、価値に変えるパナソニック インフォメーションシステムズ データ&アナリティクスソリューション本部。パナソニックグループ全体の情報システムを担う会社として、ITシステムの構築・運用といった大きな役割に加えて、データ活用でも新たな貢献を進めている。様々なデータの可視化に加え、日々の業務プロセスをデータから解析・課題抽出から解決までつなげるために、全社視点で新サービスや製品開発におけるデータ活用を支援する。

パナソニックグループのあらゆるビジネス現場において、データ分析・活用がなされる姿が当たり前になるために。

パナソニックグループが持つ大規模、かつ多様なデータを収集・分析し、価値に変える役割を担うのが、パナソニック インフォメーションシステムズ(以下:パナソニックIS)のデータサイエンティストやアナリストたちだ。グループ内のデータ活用促進チームとして、これまで10年以上活動してきた。各事業会社・事業部門との連携実績は、米・欧・アジア、中国・インドなどの海外部門を含め累計で100部門を超え、分析事例は年間50テーマ以上に及ぶ。

さらにデータ活用ソリューションの体制強化を図るべく、パナソニックISでは2022年秋の組織再編成で、データ&アナリティクスソリューション本部(以下、D&A本部)を新たに発足した。事業現場に寄り添ったビジネスアナリシスやデータ活用を中心に活動する「アナリティクスソリューション事業部」と、現場データ活用を促進させるための環境を提供する「アナリティクスプラットフォーム部」を統合させた。

例えば、ある事業部門から「このようなデータを使いたい」と言われた場合、関連する部署との調整・許諾を取得してからデータのやり取りをしていると、かなりの時間を要してしまう。

「パナソニックグループの各事業会社でのデータ活用を支援していくためには、各事業会社が持つデータを常に活用できる状態で保持しておく環境と、データ基盤とデータ分析をワンストップで提供できる体制を整える必要がありました」と、新本部発足の背景を語るのは、D&A本部で主にIoTデータの分析を担当し、ユニットリーダーを務める欅田雄輝氏だ。

そもそもD&A本部が目指すのは、パナソニックグループのあらゆるビジネス現場において、データ分析・活用がなされる姿を当たり前に実現すること。「データを価値に変えること」に挑戦し続ける現場に寄り添いながら、共に成果を追求することがミッションだ。

「私たちが幸せにしたいのはパナソニック製品のユーザーはもちろんのこと、データ分析を通してさらに新製品、新サービスの開発やアップデートを続けるグループ内の社員たちなのです」(欅田氏)

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 欅田(くぬぎだ) 雄輝氏
パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
データ&アナリティクスソリューション本部 アナリティクスソリューション事業部
IoT・SCMデータ分析部 IoTデータ分析チーム データ活用プロセス共創ユニット
ユニットリーダー 欅田(くぬぎだ) 雄輝氏

2009年入社で、最初は半導体の情報システム部門に配属され、2012年よりデータ分析の世界に参戦。IoT機器データの分析や故障診断を推進。現在は、睡眠や生体を軸にした生活空間テーマに関する分析に従事しつつ、グループ内に提供しているセルフ型データ分析プラットフォーム「DIYA」を企画・運営する。

プラットフォーム構築・データ分析・ビジネスアナリシスの提供

では、データ活用に関して、事業現場からはどのような課題が上がってくるのか。

「ユーザーの声を分析し、マーケティング施策に反映させたい」「機器ログを分析し、利用実態や機器異常の傾向を把握したい」「Webアクセス解析に基づき、コンバージョンを増やしたい」「KPIマネジメントによる経営管理体制を強化したい」など、案件はマーケティング、販売、IoT、SCM、製造工程、さらには将来の事業環境の予測、経営管理の効率化ときわめて多岐に渡る。

それに対して、D&A本部は、分析結果の提供だけでなく、現場で自律的にデータ活用を推進できるデータ分析プラットフォームの提供や、自律的推進のためにデータ分析の伴走やトレーニング研修などを提供することで、それらの課題を解決に導いている。SCMデータ分析チームの竹原孝祐氏は、D&A本部として各セクションの機能が融合された影響をこう語っている。

「SCMに関しては、販売・在庫のデータを使って製品の短期的な需要予測をしてほしいという依頼が多く寄せられます。この需要予測のアルゴリズムは、製品の種類を超えてある程度汎用的に使えるものなので、一つの製品に関するソリューションを他にも提供できます。さらに、予測に用いるデータも予め整備して提供することでこうした横展開がスムーズにできるようになりました」(竹原氏)

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 竹原 孝祐氏
パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
データ&アナリティクスソリューション本部
アナリティクスソリューション事業部 
IoT・SCMデータ分析部 SCMデータ分析チーム 竹原 孝祐氏

大学・大学院では材料工学を専攻。半導体(LED)の研究を行う。2012年からパナソニックES社ライティング事業部にて、照明用半導体デバイスの商品開発に従事。2017年、社内の「eチャレンジ」制度で、パナソニックISに異動。Kaggle Competitions Master。

現場で手軽にデータ分析ができる環境づくり──「DIYA」の意義

データ活用は、業務を最も理解している現場が自らデータを分析し、分析と意思決定を一体化させることが重要だ。そのための現場が使える分析環境の提供はD&A本部内でも焦眉の課題になっていた。

技術系ではない社員でも、自分のビジネスの分析のために様々な業務アプリケーションから使いたいデータをすぐに取り出し、分析することができるセルフ分析プラットフォームとして、2020年10月に整備されたのが、「DIYA(Do It Yourself Analytics)」である。

「DIYAはパナソニックグループ内にサブスクリプションサービスとして提供するセルフサービス型のデータ分析プラットフォームです。データウェアハウス(DWH)で分析用のデータを加工・蓄積し、ベーシックとアドバンスドという二つのサービスでデータを分析します」と説明するのは、DIYAの運営・運用を推進する栗岡舞氏だ。

DIYAは現状を可視化するリアクティブな分析がベーシックであり、将来予測をするプロアクティブな分析がアドバンスドという位置付けだ。それまでも、Tableauサーバーを立てたり、PowerBI の環境でサービスを提供したり、SASで分析した結果を出すなど、個々の環境でソリューションを提供していたのだが、それでは使う方も提供する側もコストがかかってしまう。

「そのような課題を解決するために共用プラットフォームとして構築したのがDIYAです。環境提供だけではなく、トレーニングサービスやテクニカルサポート、分析テンプレートやコンサルティング支援なども実施するオールインワンのサービスを提供しています」(栗岡氏)

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 栗岡 舞氏
パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
データ&アナリティクスソリューション本部
アナリティクスソリューション事業部 マーケティング・経営データ分析部
ビジネスアナリシスチーム 栗岡 舞氏

大学で統計・管理工学を専攻するほか、UI/UXの研究を行う。2012年からeコマース大手企業でWeb解析に関わる。2017年、パナソニックISにキャリア入社。BI関連の課題解決を中心に、「DIYA」の運営・運用を推進。Data Saber。

栗岡氏はDIYAの中でも、Tableau、Power BI Premiumなどのツールを使った分析ができるベーシックサービスを担当する。より高度な分析ができるアドバンスサービスは、竹原氏の担当だ。

ベーシックが提供するツールでも簡単な分析は行えるが、それをさらに未来の予測や意思決定へと繋いでいくためには、アドバンスドの領域である機械学習や統計の手法を駆使して、より高度な分析をしなければならない。

「各事業会社からの案件をアドバンスドの機能を使って検証すると同時に、ユーザーが各自で検証できるようにノウハウを伝授しています。また、プロモーションして獲得したユーザーやグループ内の各事業社・各事業部をアドバンスドのメンバーとしてステップアップを促す役割も私たちにはあります」(竹原氏)

現場のトレーニング展開を通して、データ活用の民主化を推進

グループ内の社員に対するデータ活用のトレーニングも、D&A本部の重要なミッションだ。

「DIYAがプラットフォームとして整備される以前から、現場の技術者からはデータ分析・活用について体系的に学びたい、Pythonを基礎から勉強したいといった要望がありました。そこで数年前から、パナソニックグループ内の技術部門や人材開発センターと連携して、毎年データアナリティクス基礎講座を開講しています」(欅田氏)

基礎講座は4カ月間で全5~6回というスケジュール感で開催されており、毎回約20名が参加している。他にも、栗岡氏が担当するTableauの講習会やPower BIを使ったデータ活用研修なども開催されている。こうした積み重ねが、徐々にグループ内に「データ活用民主化」の基盤を醸成しつつあるようだ。

「Tableauに関しては、Panasonic Tableau Academyというパナソニックグループ内のユーザー会で定期的なイベントを開催しています。このイベント参加者数も累計1,500名を超え、グループ内にデータドリブンの文化が浸透しつつあると感じています。私自身もTableauユーザー会など、社外コミュニティとの活動・交流を通して、データ活用の知識をより深めることを心掛けています」(栗岡氏)

クラウド上のデータドリブン基盤構築にチャレンジ

D&A本部のデータ分析プラットフォームの内、DIYAがフロントエンドだとすれば、バックエンドにはデータドリブン基盤がある。2022年7月に本格稼働したばかりだが、このクラウド基盤の利用推進・構築・運用を担当するのが、中務嘉己氏だ。

「グループ内に散在する様々なシステムから、事業会社の枠を越えて共通に使えるデータや、需要があれば社外に存在するデータを収集します。収集したデータを本部内のデータアナリストやデータ利活用を希望する方々に提供します」(中務氏)

実は、中務氏はもともとバックエンドエンジニアだったわけではない。

「現部署に異動する前は、システム間のデータ連携案件に参画して、設計・開発・テスト工程を担当していました。これまで経験してきたデータ連携開発とデータ基盤開発は、同じエンジニアリングでも少し異なります。それまではオンプレミスでの開発経験しかなく、クラウド上での開発は初めてのチャレンジであり、最初は戸惑うこともありました」(中務氏)

中務氏は、「D&A本部が設立される前は、データドリブン基盤をどのような人がどんな目的で使うのか、正直ピンと来ていませんでした」と、振り返る。

「データ組織が融合されたことで、データアナリストやデータを利用する社員との距離が近くなり、ようやくきちんと理解できるようになりました。分析する人の気持ち、やりたいことをしっかり理解した上で、いかにデータドリブン基盤を進化させていくのか。その道筋が見えるようになりました」(中務氏)

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 中務(なかつかさ)嘉己 氏
パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
データ&アナリティクスソリューション本部
アナリティクスプラットフォーム部
コーポレートアナリティクスプラットフォームチーム 中務(なかつかさ)嘉己 氏

大学では経営学を専攻。IT未経験で入社。パナソニックIS開発センターに配属。社内の各事業部より請け負ったデータ連携開発案件の設計・開発・テストに従事。2021年よりデータドリブン基盤の立ち上げから、設計・開発・運用に関わる。2023年4月から現在の部署に異動。

「現場に寄り添う」仕事は自由度高く、かつ面白い

「データを価値に変えること」に挑戦し続ける現場の人々に寄り添うことが、D&A本部のミッションと先に記したが、「現場に寄り添う」ことの面白さを最も感じるのはどんな時だろうか。

「現場へのデータ活用推進や研修を実施するようになり、あらためて“人”の重要性を感じるようになりました。研修を受けた人が、自分たちの業務をよりデータドリブンの方向に変えなくてはいけないという意識を持つことで、現場の業務プロセスが少しずつ変わっていくからです。それは、各事業会社の経営を変えることにもつながっていきます。自分たちがやってきたことが少しずつ広がり、人を介して組織が変わるということを強く感じるようになりました」(欅田氏)

データ分析環境とデータ活用伴走で事業現場に寄り添い、パナソニックグループを支える組織とは 画像1

竹原氏は面白さを「自由度」という言葉で表現する。

「私はもともとLEDの商品を開発していて、5年前にパナソニックISに異動してきました。商品開発はある程度レールが定まっている中で役割を果たす感覚があったのですが、今の仕事は課題設定から入って、最終的にはデータ活用まで伴走して、一緒に作り上げていく。その自由度が大きいところにやりがいを感じますね」(竹原氏)

「データ&アナリスティクスCoE」として価値を高める

現場に寄り添いながら、データ分析の知見を駆使して、ビジネス課題の解決を一緒に目指す。これこそが、D&A本部が組織として目指す目標の中核にあるものだ。同本部は、2023年4月、グループ内における本部の役割を「データ&アナリスティクスCoE」と定義した。

CoE(Center of Excellence)は、優秀な人材やノウハウを集約した組織を指す。とりわけDXなど、全社的なプロジェクトの推進にはこうした全社横断型の組織が不可欠ともいわれる。

例えば、DXの要となるビッグデータの収集や分析を実現するためには、組織全体での情報資産活用が重要となる。しかし、従来のサイロ化した縦割り組織では、カンパニー間、事業部間の連携が取れず、結果的に全社的なデータ活用が進まず、部分最適なIT導入にとどまってしまうことも少なくない。

CoEの一員としての成果を挙げるためには、メンバー一人ひとりが社内外における市場価値を高めること、言い換えれば「セルフブランディングに挑戦すること」が欠かせない。

「ビジネス現場に寄り添うためには、相手の業務プロセスを理解して、担当者になりきったつもりで自分の業務に落とし込んでいくことが必要です。これまでは特定の事業会社と仕事をすることが多かったのですが、今はDIYAのフロントで関わるビジネス現場がぐんと増えました。グループ内の様々な事業に触れることができるのは、端的に面白いです。

しかもDIYAというプラットフォームを通じて、ずっと繫がり続けることができ、スポット対応だけでは終わらない。“DIYAのTableauなら栗岡さん”というセルフブランディングもでき (笑)、問合わせも指名でいただくこともあります。それはとても嬉しいですね」(栗岡氏)

データ分析環境とデータ活用伴走で事業現場に寄り添い、パナソニックグループを支える組織とは 画像2

個人のキャリア形成やライフプランにも寄り添うパナソニックIS

D&A本部が「データ&アナリスティクスCoE」としての役割をさらに強力にするためには、彼ら中核にいるエンジニア、アナリストの能力が全開され、その活動の自由度がさらに高まる必要がある。

最後に、パナソニックISがエンジニアたちの自立的な能力発揮のために提供できるものに触れておこう。一つはエンジニアの自己学習をサポートする環境だ。

「私は本部内横断の勉強会やライトニングトーク(LT)のイベントを毎月1回開催しています。テックブログも運営しているのですが、登壇したい人や書きたい人が多く、嬉しい悲鳴を上げています(笑)。個人的にはKaggleマスターとして、社内のコミュニティ作りにも勤しんでいます。良い結果が出た時は部署内で発信してもらったり、勉強のために社内の分析環境のリソースを使わせてもらったりなど、会社からも応援してもらっています」(竹原氏)

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技術面に限らず、個人のキャリアプラン全体をサポートする制度も充実している。

「キャリアライフデザインセミナーでは、個人のキャリアプランやライフプラン、生活のシミュレーションなどの相談に乗ってもらえる場の提供や、そのために使える制度を紹介してもらえます」(欅田氏)

「社員のキャリアやライフスタイルに寄り添う姿勢や、人を大事にしてくれるところがパナソニックISのいいところ。なにより人を大切にすることが経営理念にも現れていて、それが社内全体に浸透していると思います」(栗岡氏)

クラウド上のデータドリブン基盤構築を担当する中務氏は、大学時代は文系学部を専攻していた。まさに、現在までのキャリア形成サポートを基礎から受けた一人である。

「プログラミングは全くの未経験でした。業務以外にも自宅で基礎から勉強し、人一倍努力はしましたが、自分の目標を持つために資格試験受験のための補助金など、会社にもサポートしてもらいました」(中務氏)

データ分析環境とデータ活用伴走で事業現場に寄り添い、パナソニックグループを支える組織とは 画像4

もともと人材を育てることに熱心な組織が、さらにグループ内のCoEとして、データドリブン経営のために技術を提供し、データ人材を育成する。その交流は刺激に富んだものであるに違いない。

その刺激は自身のモチベーション向上に繫がるだけでなく、そこで得た経験・知見をさらに社内に環流することで、全社員のデータ活用がより一層進む。そうしたダイナミックな好循環が今、生まれようとしている。

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
https://is-c.panasonic.co.jp/
採用情報
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パナソニックグループのデータ活用を横断的に支える、パナソニック インフォメーションシステムズ(株) データ&アナリティクスソリューション本部のグループサイトです。

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