IoT家電でのAI機能開発:個別最適化とモデルライフサイクルの実現

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IoT家電でのAI機能開発:個別最適化とモデルライフサイクルの実現
パナソニック インフォメーションシステムズからは、パナソニックグループにおけるデータ活用の取り組み、パーソナライズを実現するAI機能の開発について解説。世帯ごとの個別最適化に向けた考え方や、モデルライフサイクルを実現するための仕組みについて、冷蔵庫での事例をもとに解説を行った。

パナソニックグループでのデータ活用やIoT家電の取り組み

パナソニックグループにおけるデータ活用について解説してくれたのは、パナソニック インフォメーションシステムズ(以下、パナソニックIS)の南谷祥之氏と、パナソニックの帆足正和氏の2名だ。

南谷氏は入社以降、データの分析や活用業務に携わり、現在は主に家電領域やAI開発を担当している。帆足氏はパナソニックの無線ハード開発から家電制御ソフト・スマホアプリ開発など幅広い業務に携わり、現在は主に冷蔵庫のIoT関連開発業務に携わっている。

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 南谷 祥之氏
パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
データ&アナリティクスソリューション本部 アナリティクスソリューション事業部
マーケティング・ECMデータ分析部 新サービス共創・ECMチーム 主務 南谷 祥之氏

パナソニック株式会社 帆足 正和氏
パナソニック株式会社
くらしアプライアンス社
キッチン空間事業部 冷蔵庫技術部 IoT推進係 係長 帆足 正和氏

パナソニックISは、グループ全体のIoT機器やAIをはじめとしたデータ分析・利活用など、パナソニックグループを横断的に、さまざまなITソリューションの推進を担う。

近年、IoT家電が身近になり、パナソニックグループでも電子レンジ、炊飯器、エアコン、洗濯機など多様な製品を開発している。今回は特に、AI機能を搭載したAI冷蔵庫の開発について語られた。

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家電の中で電気の使用量が最も多いのがエアコンであり、次が冷蔵庫だという。そして、冷蔵庫が電力を最も消費するのが「霜取り」の運転であり、この運転を効率化することができれば電気の使用量を抑えることができる。帆足氏は、その開発に至った経緯を語った。

「冷蔵庫は、冷却部の霜取り運転を行う際にヒーターで熱を発生させて霜を除去していますが、これまではどの冷蔵庫も一定の制御式を用いて霜を除去していました。今回、この霜取りに着目し検討を進めていましたところ、各冷蔵庫の使用状況のデータを集積・把握し、AIが学習することで、家庭毎に最適な制御式を導き、それが消費電力を抑えることに繋がるだろう、という発想に至りました」(帆足氏)

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「実現するには、大きく3つの課題がありました」と、南谷氏は語る。例えば、「世帯人数などにより家庭内での冷蔵庫の使い方が異なり、夏と冬の季節によっても周囲の状況が変わるため、機器個別に学習を行う仕組みが必要になること」、「何万台もの機器に対して個別学習を実現するためには自動化が必須となること」、「AIを実装することで逆に不具合が発生する可能性への対策が必要になること」である。AIをサービスに導入するにあたり、機器個別のモデル学習、モデルの自動アップデート、モデルの精度が異常な場合は適用しない仕組みにより、これらの課題の解決を進めていった。

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アーキテクチャ面においても、アプリケーションにAIを追加する際に役割分担が必要であった。

開発はチームで行うが、アプリ開発とAI開発ではスキルセットが異なるため、役割分担が必要になる。そのため、アプリ開発とAI開発のロールでインタフェースを切ることで分担を明確にした。

また、学習と推論をクラウドと、エッジ(冷蔵庫)のどちらで行うかなどの課題もあった。ネットワークは切断されることもあるため、安全面を考慮し、学習はクラウド側、推論はエッジ側と構成を決め、開発を進めていった。

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データウェアハウスに蓄積されている冷蔵庫のデータをクラウド側のAI機能で処理し、個別機器の学習モデルがアプリ向けサーバ群を通して、冷蔵庫に返却される。AIクーリングでは、AI機能として、アプリ向けサーバに追加する形で、別サーバで開発を行うことで、システム構成の柔軟性を確保している。

生成された個別モデルは、クラウドでのAI機能の別領域に設けられたAPIインターフェースをモデル受け渡しの界面とした。南谷氏はこのような構成とした意図を、次のように述べた。

「今回のようなサービス開発を行う場合に、AI開発のチームだけで開発するわけにはいかないので、いろいろなSaaSのサービスを使ってAPIで連携をすることで実現しています。複数のチームで開発を行う場合は、それぞれのチームが開発に集中できるよう、各サービスを分けたマイクロサービスとしました。そして、マイクロサービス間をAPIで連携することで、開発の柔軟性を高めることができました」(南谷氏)

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AIを機器に実装する際の考え方は大きく3つあり、その中から今回は障害対策ならびにコスト面から、このような構成としたことも示した。

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さらに先に示した3つの課題の1つ、精度の悪いAIによる誤動作を防ぐための取り組みも解説された。

具体的には、意図しない動作を避けるため、事前に設定した条件でモデルの精度検証を行い対応することだという。例えば、学習したモデルを検証していると、冷蔵庫のドアを長時間開けっ放しで放置されたケースなどがあった。このような正常な利用状況で無い場合には、導出結果が正しいとは限らない。そこで、AIクーリングでは、事前に設定した条件で、自動作成されたモデルの精度検証を行い、その条件をクリアしたモデルを採用している。

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このような各種課題解決や工夫により、冷蔵庫ごとに最適に冷却部の霜取り運転を行うAIモデルが実装された。だが、実装後もより良い精度を保ち誤作動を防ぐために、モニタリングダッシュボードを作成し、経過確認を継続。対象項目は40以上におよび、さらなる精度向上などに努めている。

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AIを実装したパナソニックの冷蔵庫は、2023年度の省エネ大賞で、最高位である経済産業大臣賞を受賞した。

「今後もAIや機械学習などの先端技術を積極的に取り入れつつ、CO2排出量削減やフードロス削減といった社会課題の解決と、お客様ニーズを両立する製品を開発していきたいと考えています」(帆足氏)

南谷氏と、帆足氏はこのようにセッションをまとめた。

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
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