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PoCを越えろ。AIプロジェクトが幻に消えないために 2022.4.3公開 2025.12.1更新 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 2010年以降、各産業分野で急速に活用に火がついたAIですが、その開発工程の中で難関と言われるのがPoC(ピーオーシー/ポック)です。「PoC疲れ」「PoC死」などの不吉なワードも生まれ、PoCは多くの企業AIプロジェクト    のネックとなってきたようです。それほどの難しさを伴うPoCとは何なのか、そして開発フェーズでどのような役割を持ち、どう乗り越えていくべきか、今回のコラムで考えていきます。 PoC段階から伴走するLaboro.AIのカスタムAI開発は こちら 。 目 次 ・ PoCとは ・ PoCの重要性  ・ PoCと混同しやすい用語   ・ プロトタイプ   ・ MVP   ・ 実証実験 ・ AI開発のプロセス  ・ ① 企画・構想フェーズ  ・ ② PoCフェーズ  ・ ③ 開発・実装フェーズ   ・ 要件定義   ・ データ収集   ・ モデル開発  ・ ④ 運用フェーズ ・ 企業の夢を阻む「PoC疲れ」「PoC死」  ・ PoC疲れ・PoC死が起きる原因   ・ 目標や成果が曖昧なままスタートする   ・ 完璧な精度を求め、曖昧な評価基準を設定してしまう   ・ 現場不在でプロジェクトを推進する   ・ 必要な学習データを十分に用意できていない      ・ 外部任せで自社にノウハウが蓄積されない ・ PoCを成功に導くポイント  ・ ビジョンと成功指標を明確に定義する  ・ スモールスタートで早期に成果を検証する  ・ 現場と一体となったプロジェクト推進  ・ データの確保と品質管理を徹底する  ・ 内製化を見据えノウハウを共有する ・ まとめ PoCとは PoCとは、これまでのコンピュータでは実現できなかった処理をも可能にするAI技術は、さまざまな産業・業種で活用が進んでいます。すでに生活の一部として社会に溶け込んでいるAIプロダクト・サービスもあり、今後さらにAIの活用は加速していくはずですが、そうした製品やサービスに搭載するために、あるいはビジネスにAIを活用するためには当然ながらAI部分の開発が必要になります。 しかし、AI開発のフェーズの中でも多くの企業の夢を阻んでやまないのが、PoCと呼ばれるものです。 PoCは “Proof of Concept” の略語で、日本語では「概念実証」と訳される開発フェーズの一種です。新しい商品やサービスの簡易版を作成し、期待しているような品質や結果を得られそうかという仮説検証を小規模で実施します。PoCを何度も実行することにより、実現の見込みを確かめたり、改善のポイントを確認したりできます。 もともとは研究・開発の場面を中心に用いられていたPoCの考え方ですが、最近ではあらゆるモノがネットにつながるIoTやAIの広がりに伴い、幅広い領域で用いられるようになっています。特にAI活用においては人間の経験や知識を踏まえた予測や既存のセオリーが及ばない部分も多く、アイデアが生まれた際には「やってみなければ分からない」ことがほとんどだからです。 AIの導入によりどんな結果が期待できるのか、どんな懸念があるのかを検討する上で、PoCの工程は不可欠と言えるでしょう。 PoCの重要性 PoCが重視されるのは、開発に伴うリスクの軽減に効果を発揮するためです。新規性の高いプロジェクトは、費用対効果が見えづらく、場合によっては投じた時間や費用がすべて無駄に終わってしまうこともあります。 このような不安を軽減する上で役立つのが、PoCのフェーズです。小規模で簡易的に新規プロジェクトの開発に取り組み、実現可能性について探ることで、少ない負担で、なおかつ高い確度で開発継続の意思決定が行えるわけです。 また、PoCを開発工程の初期に組み込んでおくことにより、開発コストの削減にも役立てることができます。早い段階でプロジェクトの核となる部分にアタリを付けられるため、不要な機能の実装にリソースを割き、後から削除するような無駄を回避できるからです。 参考:NRI「 PoC(概念実証) 」 PoCと混同しやすい用語 PoCと混同しやすい用語を三つ挙げて説明します。 プロトタイプ PoCと似たような意味を持つ用語として「プロトタイプ」という言葉が挙げられます。プロトタイプは、PoCよりも方向性や実現可能性が高まっている段階で着手する試作品開発工程です。PoCの場合、それより上流の検証作業に際して発生する簡易版の構築であり、プロトタイプよりもシンプルに作り上げることとなります。 出典:NTTデータグローバルソリューションズ「 PoC(概念実証)とは? 新技術やシステムの検証、実現までのステップについて解説 」 MVP MVPは “Minimum Viable Product” の略称で、プロダクトとして最低限の状態にあるものを言い、開発の初期段階で作成されます。ユーザーからのフィードバックを受けながら、完成を目指せる状態にあるのが特徴です。一方でPoCはユーザーに提供することを想定せず、製品化も定かではない状態で、コア部分の開発に注力します。段階として、PoCはMVPよりも上流に位置するものと言えます。また、PoCが学びを得るための一過性の実験であるのに対し、MVPはそのまま製品として成長していく最初のバージョンという位置付けです。 出典:日本経済新聞「 PoCとMVPの違いはなんですか? 」 実証実験 「実証実験」はPoCとほぼ同義で用いられることの多い言葉です。厳密には、PoCが新技術やアイデアの実現可能性を検証する取り組みであるのに対し、実証実験のニュアンスには想定される課題や効果を現場で検証することがあります。とはいえ、PoCによって新たな問題点が発見されることもあり、実際には両者に明確な違いはないとされています。社内では用語の定義を事前に擦り合わせ、認識のズレによる混乱を避けることが望ましいでしょう。 出典:NTTデータグローバルソリューションズ「 PoCと実証実験・プロトタイプの違いとは 」 PoCの重要性 “Proof of Concept”の略語であるPoCは、「概念実証」と訳される開発フェーズの一つで、これから開発しようとしているAIなどの技術を用いた商品やサービスあるいはビジネスモデルに新しい技術・概念を導入するに際して、それが実現可能かどうか、そしてどのような形であれば実現ができるのか、さらにコストや期間がどの程度かかるかなどを検証する段階です。言ってみれば実験開発のようなものですが、机上の空論として企画のみで終わらせるのではなく、実際にテストモデルを開発して実現可能性を確かめるプロセスです。 PoCという言葉自体は、開発前の検証フェーズとして昔からある言葉ですが、近年のAIやIoTの浸透に伴って改めて注目されるようになっています。というのも、AIで用いられる主要な技術である機械学習は、コンピュータ自身が学習してパターンや法則性を見つける技術であるため、「やってみなければ分からない」側面が必ず伴います。PoCは、技術的な実現可能性や製品・サービスのコンセプトに問題がないかを確認するための、AI導入プロジェクトにおいて絶対に欠かせない手続きなのです。 AI開発のプロセス PoCについて説明するにあたって、AI開発のプロセスを追いかけてみたいと思います。様々な捉え方はあるものの、AI開発のプロセスは大きく4つに分けることができます。 ① 企画・構想フェーズ まずは、AIによってどのような課題を解決するのかについて企画を行います。 解決すべき課題を定義し、それがAIを用いるテーマとして相応しいかを議論し、費用対効果(ROI)が得られるかを確認します。最終的に、このプロジェクトを進めるかどうかの投資判断をします。 ② PoCフェーズ 企画・構想フェーズで決定したプロジェクトについて、目指す成果がAI技術で達成可能かを試験的に検証する段階が     PoCです。PoCでは仮のモデルとなるモックアップを実際に開発し、データは必要十分に収集・確保できるか、期待する精度・処理速度結果が得られるか、オペレーションに問題がないか、策定したROIが得られるかといった目線で、アジャイルに開発が進められます。また、既成のAIシステムやAIプロダクトなどでそのビジネス課題が解決できる可能性もあるため、どの程度でスクラッチ開発とするかなどついても検討します。 解決したい業務課題に対して、どんなAIを実装すれば結果を出せそうかの仮説と、達成すべきゴールを設定しましょう。そのゴールに紐付く実施計画を策定の上、実験と検証を行い、結果を評価して仮説の有効性や実現可能性を探ります。 ③ 開発・実装フェーズ PoCフェーズで技術的に、そしてビジネス的にもその実現性が確認できれば、開発・実装フェーズに移行します。PoCフェーズで仮モデルであるモックアップを開発していますが、本番開発にあたるこのフェーズでは、改めて実際のビジネスオペレーションに適した仕様に基づいて再開発することがほとんどです。 要件定義 どのようなアルゴリズムを使ってどのようなデータを出力するかというAIモデルの仕様、それを実現するためのデータの検討など、プロジェクトを進めていくに当たって必要な要件を改めて定義していきます。本番開発の羅針盤となる要件定義は非常に重要で、ここが甘いと開発・導入が失敗したり、無駄な出戻りが発生したりするなどのロスを生みかねません。 データ収集 もちろんPoCフェーズでもデータを収集してはいるものの、本番開発ではさらに多くのデータが必要となることも少なくありません。十分なデータが取得できるが見込みが立っていない場合には、継続的に取得できる体制を構築するなど、ビジネスオペレーション側にもメスを入れいく必要が出てきます。 モデル開発 要件定義に基づいて作られた仕様書、収集したデータを用い、AIモデルを開発していきます。実開発は企業での内製化が難しいフェーズであり、AIベンダーに依頼されることがほとんどです。開発後にはテスト/評価を行い、正常に処理が実行されるか、期待した精度・速度結果が得られるか、業務オペレーションに支障がないかなどを検証し、問題がある場合には前後の開発プロセスを行き来し、細かな調整・修正を進めていきます。 ④ 運用フェーズ 無事に開発が完了してビジネス現場に実装できた後には、そのAIシステムを運用するフェーズに入っていきます。AIは“作って終わり”ではなく、次々と入力されていく未知のデータに合わせた調整やデータの再学習、システムの保守、そしてビジネス上のKPIの確認など、改善のためのPDCAを常に回していくことが重要です。 企業の夢を阻む「PoC疲れ」「PoC死」 冒頭から”難関”としてPoCをご紹介していますが、AI開発/AI導入プロジェクトでは、この2つ目のPoCフェーズで何かしらの問題で失敗・停滞し、開発が中止になることが少なくありません。 構想フェーズで夢描いたプロジェクトの青写真が技術的に実現可能かを初めて検証するPoCでは、期待する精度や処理速度の成果が得られず、PoCを繰り返し実施することで現場が疲弊したり、予定していた予算を使い切ってしまったり、そもそもビジネスに何の役にも立たないことが判明してプロジェクトの仕切り直しを迫られたりと、失敗が起きやすいのが実際です。「PoC疲れ」とは、まさにこうした一向に次段階の本開発に進む目処が立たずに停滞してしまう様子を、そして「PoC死」はこのPoCの段階でプロジェクトが中止になってしまう事態を指す言葉です。 PoC疲れ・PoC死が起きる原因 プロジェクトごとに内容が様々であることから一概にその理由を示すことはできませんが、PoC疲れ・PoC死が起きる原因としては、以下のようなことが考えられます。 目標や成果が曖昧なままスタートする 「とにかくAIを導入したい」などはこの代表例ですが、目標のない技術活用がうまくいくことはまずありません。また、AI開発で避けなければならないのは「とりあえずやってみよう」と見切り発車で開発をスタートさせることです。企画・構想フェーズで解決すべきビジネス課題を洗い出し、プロジェクトの目標を定め、実施のマイルストンを置き、どのような成果が得られれば成功と言えるのかを決定・共有し、費用対効果を判断する基準を設ける必要があります。 そして、こうした内容を担当者だけではなく、プロジェクトマネージャー、エンジニア、業務担当、さらには上層部の認識として一致させた状態でスタートしなければ、後々に各部門からの指摘・要望がプロジェクトの進行を妨げることにもつながってしまいます。 完璧な精度を求め、曖昧な評価基準を設定してしまう AIという技術はその特性から、100%の正解を示すということはありません。ゴールを具体的な数値で設定することはもちろん重要ですが、検出精度の数字にこだわりすぎた結果、処理スピード的に全く現場で使い物にならないものが出来上がったなどはよく耳にする話です。また、「精度9割」のように曖昧な目標を設定してしまうことも失敗の原因です。AIの評価指標には正解率、適合率、再現率、F値など様々な基準があり、様々な観点からその精度を評価する必要があります。 現場不在でプロジェクトを推進する AIという世の中的にも新しい技術を用いるにあたっては、経営企画部門、新規事業部門、DX部門など全社横断部門が中心となって現場部門への導入プロジェクトを進めることが珍しくありません。しかし、現場部門へのヒアリングや調整が不十分だった結果、実際の現場で全く価値のないものを開発してしまったり、現場部門から導入を拒否されてしまったりなど、現場不在を原因とした失敗は後を断ちません。 一方、現場の意見を尊重しすぎ、結果として全社的なビジネスインパクトにつながらない小粒なプロジェクトに留まってしまったり、当初の目的とは異なるものへと次第に内容が変貌して行ったりというケースも存在します。企業ビジネスへのAI導入にあたっては、その主管部署がプロジェクトオーナーとしてブレのない適した役割を発揮することが鍵になります。 必要な学習データを十分に用意できていない AIやデータ分析系のPoCでは、モデルの学習に必要なデータの質と量が成否を左右します。しかし、十分なデータを用意できていないケースが多く、欠損や不整合の多いデータでは期待通りの精度が得られません。必要なデータを事前に収集・整備し、クリーニングなど品質管理を徹底しないままPoCを始めると、有効な検証結果が得られずPoCが迷走・失敗する原因となります。PoC疲れを防ぐためにも、データ戦略を練り万全の準備を整えることが重要です。 出典:Business Web Seminar「 AI事業でのPoC死を回避!成功事例と失敗原因の徹底分析! 」 外部任せで自社にノウハウが蓄積されない PoCを外部ベンダー任せで進めてしまうと、自社にノウハウが蓄積されず、プロジェクトが“やりっぱなし”になる危険があります。実際、PoCまでは進んだものの、本格開発や運用段階で自社だけでは前に進めなくなり、計画自体が頓挫するケースも少なくありません。外部頼みに慣れてしまうと社内の主体性が損なわれ、重要なフェーズで失速してしまうのです。PoC疲れを避けるには、外部の力を借りる場合でも必ず自社メンバーが関与し、知識を吸収して次につなげる姿勢が不可欠です。 PoCを成功に導くポイント 世の中のAI開発/導入プロジェクトの報告例や事例を眺めてみると、PoC疲れ・PoC死の原因としては、上のほかにも次のようなものが挙げられます。 ・「ライバル企業が導入したから」という理由で、とりあえずスタートしてしまった ・何のために、何を開発するかが不明瞭なまま、予算だけ確保してしまった ・最終決裁をするマネジメント層がAIのことを理解していなかった ・経営と現場とでAIに対する認識や目標が合っていなかった ・とりあえず付き合いのあるITシステム業者に委託してしまい、言われるがまま進行 ・プロジェクトマネージャーが不在のままだった ・現場データ収集に協力してくれない ・データがあるだけで、開発用に整備はしていなかった ・既存のシステムとの連携を考えていなかった ・予算は開発費用のみで、保守・運用に必要な経費を見込んでいなかった ・AIを実際に利用する現場部門に落とし込みができなかった ・現場オペレーションに全く即していないシステムだった ・そのシステムを使うよりも人がやった方が圧倒的に早くて楽だった こうして並べてみると、PoC失敗の原因はAIにあるわけではなく、むしろプロジェクトの進め方、他メンバーの巻き込み方、教育・浸透、組織体制、知識不足など、人に関わる部分がほとんどであることに気付きます。 AIという技術は確かに新しく、専門的な領域であり、その扱いには特殊なスキル・ノウハウが必要です。ですが、その失敗の原因や難しさはAI特有のものではありません。新しい物事を組織の中に導入するということはある意味、新たな習慣や文化を浸透させることと同じです。なぜAIという技術を活用する必要があるのか、AIを用いることでどのようなメリットが自社にもたらされるのか、AIによって消費者や社会はどうより良く変わるのか、まずはこの基本的な信念を担当者自身が考え、理解し、関係メンバーに深く腹落ちさせるほどの自信と熱意を持つ必要があります。 ビジョンと成功指標を明確に定義する PoC開始前に、プロジェクトのビジョンとKPIを明確に設定することが重要です。ゴールが不明確なままではプロジェクトが方向性を見失いやすく、何をもって成功とするか判断できずにPoCが長引く一因となります。解決すべき課題や期待する成果を具体的に描き、ステークホルダー間で共有しましょう。さらに定量的な評価指標を定めておけば、PoCの成果を客観的に測定できます。こうしたビジョンと指標の明確化が、PoCを単なる実験で終わらせず成功への道筋を示す羅針盤となります。 スモールスタートで早期に成果を検証する PoCでは大きく構えすぎず、スモールスタートで早期に成果を検証する姿勢が肝要です。小規模な検証から始めれば、大きなコストをかけずに迅速に結果を確認し、必要な調整を素早く行えます。例えば製造ラインの一部や限定的なデータセットで試行し、得られたフィードバックを基に改善を重ねることで、無駄な投資を避けつつPoCの有効性を高められます。早期に小さな成功体験を積むことで社内の期待値を適切に調整し、PoC疲れに陥る前に次の判断へ進みやすくなるでしょう。 現場と一体となったプロジェクト推進 PoCを成功させるには、現場(製造の現場担当者)と一体となってプロジェクトを推進することが不可欠です。現場の実ユーザーに検証に参加してもらうことで、「操作が複雑すぎる」「現在の業務フローに合わない」など運用面の課題を洗い出せます。こうしたフィードバックをPoC段階で得て対策することで、導入後に現場で使われない「絵に描いた餅」を防ぐことができます。現場の知見を取り入れ、共に課題解決に取り組む姿勢が、PoCの成果を実務に結び付けて定着させるポイントとなります。 データの確保と品質管理を徹底する データの確保と品質管理はPoC成功の土台です。AI活用のPoCでは特に、大量の高品質データの準備が欠かせませんが、現実には十分なデータが揃わないケースも多々あります。データに欠損や不整合が多ければ、モデルの性能も十分に引き出せません。したがって、PoCに先立ち必要なデータを徹底的に収集・整備し、前処理によって質を高めておくことが重要です。信頼できるデータ基盤を築けば、検証結果の再現性と説得力が増し、PoCを次の段階へスムーズにつなげられるでしょう。 内製化を見据えノウハウを共有する DX推進では、将来的な内製化を見据えてPoC段階から社内にノウハウを蓄積・共有しておくことが重要です。外部委託で開発を行うと、開発過程で得られた知見はベンダー側に蓄積されますが、内製化すれば知識や経験が自社内に蓄積されていきます。そのためPoC実施時も、外部の力を借りる場合には自社が主体となってプロジェクトを進め、必ず社内メンバーが参加して技術や知識を吸収するようにしましょう。ノウハウを社内で共有し人材を育成しておけば、PoC終了後も自社内で開発・運用を続けやすくなり、プロジェクトを着実に次のステップへと導くことができます。 まとめ AI導入プロジェクトでもう一つ陥りがちな点として、AIの技術部分ばかりに目を向けて、ビジネス側の設計が疎かになってしまうことが挙げられます。AIであろうと何であろうと新たな技術・システムを導入するということは、多少なりともビジネス側のオペレーション改善やプロセス変更など、既存体制へのメス入れが必要不可欠です。例えば、製造ライン上にある製品の破損を検出する画像AIシステムを導入する場合には、人員配置の変更はもちろんのこと、空いた人員リソースをどこに割り当てると全体最適化によりつながるか、またAIの見落とし分はどう人にカバーさせるか、AI検品プロセスは前工程・後工程の関係からどこに置くのかなど、業務オペレーションを組み直す必要性が発生します。 一般的に「AI開発」と言うと当たり前のように技術面ばかりが注目されがちですが、開発するAIに合わせてビジネス側も再設計することが必要になります。当社Laboro.AIでは、こうしたAIとビジネスの両サイドを設計(デザイン)するためのプロセスを「ソリューションデザイン」と呼び、その重要性を提唱しています。当社が国内多数のリーディングカンパニーからプロジェクトを委託される背景には、失敗しないPoC、あるいはPoCのリトライを成功へと導くビジネスコンサルティング視点でのAI開発の強さを背景としたソリューションデザイン力があるからに他なりません。 Laboro.AIのメソッド: 「ソリューションデザイン」とは 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicksプロピッカー として活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年以上、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post PoCを越えろ。AIプロジェクトが幻に消えないために first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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関係抽出 【連載】自然言語処理の研究動向 第7回 2025.10.31 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 関係抽出(Relation Extraction、RE)は、エンティティ(文中で特定の実体や固有の対象を示す単語・句)を認識するだけでなく、それらがどうつながるかを理解する手法であり、企業内の情報を統合する上で不可欠な技術です。REは近年の技術的進歩により、ルールベースの処理手順からTransformerに基づく生成モデルへと進化し、テキストを入力するだけで関係性を表すトリプレット(三つ組)が直接取り出せるようになりました。しかし固有表現認識(Named Entity Recognition、NER)と同様に、出力にばらつきがあるという課題があり、文書全体を対象とするREも依然として難易度が高いままです。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 連載第4回「 質問応答 」は こちら 。 連載第5回「 感情分析の研究動向 」は こちら 。 連載第6回「 Few-Shot NER(少数ショット学習による固有表現認識) 」は こちら 。 目 次 ・ 関係抽出とは ・ 主要な技術的進歩 ・ 今後の展望と課題  ・ 出力の一貫性  ・ 文書全体における関係抽出 関係抽出とは 前回の 第6回 では少数ショット学習による固有表現認識を取り上げました。エンティティを認識することは、ビジネス領域や専門分野の知識を構造的に把握するための第一歩に過ぎません。情報同士のつながりを正確に捉えるには、単に何が言及されているかだけでなく、エンティティ同士がどのような関係にあるのかまで踏み込む必要があります。 REとは、文章中のエンティティ間の意味的な関係を特定するタスクです。NERによって検出されたエンティティと組み合わせることで、それらの関係を表す構造化された三つ組(トリプレット)を抽出できます。 例えば、「Laboro.AIは東京に拠点を置く企業です」という文からは、「Laboro.AIは」「企業」「です」や 「Laboro.AIは」「東京」「に拠点を置く」 といった関係を見出すことができます(※)。           ※REでは三つ組は(subject, predicate, object)として表現されます。先ほどの例では三つ組は(Laboro.AI, は, 企業)、(Laboro.AI, 本社所在地, 東京)となります。      このような三つ組は、組織的、地理的、機能的、因果的など、エンティティ同士がどのようにつながっているかを表現します。企業内の応用においては、エンティティ抽出と関係抽出を組み合わせることで、分散したデータソースを結び付け、文書に潜む関連性を見いだし、ナレッジグラフを構築することが可能になります。これにより、断片化された情報が横断的に関連付けられ、効率的な情報アクセスや意思決定支援につなげることができます。 主要な技術的進歩 BERTなどの事前学習言語モデルの導入により、関係抽出の性能は大きく向上しました。BERTは文中の意味的な依存関係を捉えることで関係抽出を強化し、 SpanBERT (2020年) はエンティティのスパン(連続した文字列の範囲)をより的確に捉えるための改良を加えました。また、 Matching the Blanks (2019年) といった関係認識に特化した事前学習手法は、異なる文脈における関係の類似性を学習することで、モデルの精度向上に寄与しました。これらの基盤的な進歩により、非構造化テキストデータからであっても、高精度かつデータ量が増えても関係を抽出する土台が築かれました。 その上で、研究者たちは関係抽出をテキスト生成タスクとして再定式化し、単一のモデルでエンティティと関係を同時に抽出できるよう工夫し始めました。例えば、 REBEL (2021年) や TANL (2021年) はエンドツーエンドで三つ組を生成するアプローチの先駆けであり、エンティティ抽出モジュールと関係抽出モジュールを分離せず一体化しました。 さらに後発のUIE ( Unified Information Extraction(2022年) )という仕組みでは、エンティティ、関係、イベントの抽出を単一の生成モデルで統合しています。このような生成型の手法が主流になったことにより、従来の処理手順方式が抱えていた制約が解消され、非構造化テキストから構造化された関係データを直接、大規模に生成することが可能となりました。 企業で扱う価値ある知識は、単一の文ではなく報告書やマニュアル、記録といった複数文書に分散して存在することが少なくありません。文書レベルの関係抽出(DocRE)は、同一文書内の複数の文にまたがる関係を特定することで、この課題に対処します。 まず、 Yao et al. (2019年) によるDocREDベンチマークの提案がこの分野を切り拓き、以降、 Huang et al. (2021年) 、 Xu et al.(2022年) 、 Tan et al. (2022年) などの研究によってモデル化手法や評価指標が洗練されてきました。2023年には Delaunay et al. によるDocREの包括的な調査論文も発表され、文脈を超えた関係抽出の動向が整理されています。この研究の流れを踏まえ、 Yasunaga et al. (2022年) は、文書間で情報を結び付ける「文書間関係」へと対象範囲を拡張しました。     これら一連の発展により、関係抽出の対象は文レベルからコーパス全体へと拡大し、企業内の膨大な文書群を統合して知識基盤を構築する実現性が高まってきました。 今後の展望と課題 出力の一貫性 関係抽出では、エンティティ抽出と同様に、一貫性の欠如による不安定さが課題です。表現のわずかな違いや無関係な文脈、エンティティの並び順の変化によって結果が変わり得るためです。特に大規模言語モデルを抽出器として用いた場合、この問題は顕著であり、 Swarup et al. (2025年) の研究でも明らかになっています。 この課題については前回の 第6回 で取り上げ、解決に向けた有望な戦略を二つ紹介しました。一つは、生成と書式整形を分離するという、段階的な処理手順手法です ( Li et al. (2024年) )。もう一つは、出力を定められた構造に沿うよう、モデルを軽量にファインチューニングする方法です( Dagdelen et al.(2024年) )。 これらのアプローチはREの場合にも有効であり、構造化された一貫性のある出力が求められるシナリオにおいて、LLM(大規模言語モデル)ベースの抽出システムの信頼性を向上させることができます。 文書全体における関係抽出 文書レベルの関係抽出 (DocRE) は、 Zhao et al.(2023年) や Zhang et al.(2025年) の調査でも特に困難な課題として挙げられています。長い文書内に手がかりが点在するため、同じエンティティの組が文書内の異なる箇所で別々のヒントを持つこともあり、システムはそれらを適切に見極めてつなぎ合わせる必要があるからです。 FCDS (2024年) のような手法では、文書全体のエンティティとそのリンクのグラフを構築し、それを用いて関係を推定します。 一方で、一見有望に思える長大な文脈対応のLLMも、そのままでは十分ではありません。 Li et al. (2023年) は、文書中の全コンテキストと関係ラベルを単一のプロンプトに詰め込む手法がDocREの規模では非現実的であることを示しました。代わりに、 AutoRE (2024年) は入力を取捨選択し、モデルに対して関連する文脈と関係タイプのみを段階的に与えるという、実用的なアプローチを提示しています。 これらの新しいアイデアには将来性がありますが、現状ではまだ完全な解決策ではありません。例えば、AutoREの手法については、規模が大きくなっても適用し続けられるかという面で検証が必要です。それでもなお、近年の進歩は、何十ページにも及ぶ報告書や開示文書から関係を高精度で抽出し、断片化された資料群を統合して知識化する道筋を示しています。 企業においても、こうした技術の発展によって、膨大なテキストから有益な関係情報を安定して引き出し、より統合的な視点で意思決定に役立てることが期待できるでしょう。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 連載第4回「 質問応答の研究動向 」は こちら 。 連載第5回「 感情分析の研究動向 」は こちら 。 連載第6回「 Few-Shot NER(少数ショット学習による固有表現認識) 」は こちら 。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 訳者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社などメディア企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post 関係抽出 【連載】自然言語処理の研究動向 第7回 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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旅行AIエージェントに求めるのは「完璧さ」ではなく、あえての「不確実さ」 2025.10.28 監 修 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 「AIエージェント」という最近話題のトピックで、よく目にする活用例が「旅行計画」や「旅行予約」です。これまでタブを50個も開いて比較検討しなければならなかったような旅行計画が、AIを使えばほんの数分で出来上がります。 複雑なタスクをこなすAIエージェントに期待されているのは、定番の旅行よりもパーソナライズされた旅行の提案で、興味深いことに、障害のある人の旅行にAIを活用した人の満足度が高いという報告も上がっています。 とはいえ、AIエージェントがすすめる情報が間違っているなどの「不確実性」が指摘されたり、誤情報の責任の所在が議論になったりしているのも事実です。しかしながら、「知らない場所に行く」という旅行の本質に立ち返れば、人間もまた完璧な旅行計画をできるわけではなさそうです。 そこで今回は、本質的に「不確実」な旅行をテーマに、そもそも旅行の価値はどこにあるのか、それを助けるAIとはどんな存在なのかについて、考えていこうと思います。 目 次 ・ 旅行にAIを用いるのが普通になる  ・ AIに満足度の高いのは「障害のある人の旅行」  ・ もうタブを50個開いて調べる必要はない ・ 国が推す、旅行AIインフルエンサー  ・ AIがSNSで個人的にやりとりする  ・ 旅行の分野からAIエージェントが育つ ・ AIが提供するのは「確実性」ではない  ・ 最新のAIモデルでも完璧な計画は10%  ・ 人間が旅先の土地に宿る精神を守る  ・ チャットボットは運営企業と別人格ではない ・ 人間が計画する旅行にも「確実性」はない  ・ AIと人間の計画に大きな差はなかった  ・ 30万のソファより、30万の海外旅行  ・ 旅行の「不確実さ」は人生を豊かにする  ・ 人もAIも思い通りにいかない「旅」で成長する 旅行にAIを用いるのが普通になる AIに満足度の高いのは「障害のある人の旅行」 旅行の計画にAIを活用した人の満足度は上がっており、今年の夏に行われた調査では、AIを利用した旅行者全体の89%が、AIを再び利用する可能性が「非常に高い」または「高い」と回答した そうです 。 では、実際にどんな旅行計画にAIが利用されているのかというと、「家族旅行」に次いで多いのが「障がいのある人の旅行」で、興味深いことに障がいのある人のために旅行を計画する人は、AIへの満足度が特に高いという 調査結果 が上がっています。 それがどういうことなのか、試しにGeminiを開き「設定とヘルプ」から「アプリ」を選択してGoogleフライトやGoogleホテルを追加した上で、チャット欄の「Deep Research」を選択し、次のように投げかけてみました。 「東京発、親子2人、2泊3日の旅行プランを提案してください。母親は75歳で糖尿病を患い、車椅子使用。目的は親孝行で、温泉地希望。予算は合計15万円の予定です。」 すぐにリサーチ計画が提示され、それを承諾して「リサーチを開始」をクリックすると、ほんの数分で「車椅子・糖尿病対応 親孝行温泉旅行計画」が出来上がりました。 この旅行計画は、 ・療養に軸をおいた3日間の日程 ・介助サポートや車椅子タクシーのコスト ・糖尿病食対応かつバリアフリーで露天風呂付客室があるホテル ・緊急時の費用として残しておくべきバッファ ・滞在中の会話や気遣いのアドバイス まで網羅され、「物理的なバリアフリー」+「心のバリアフリー」を実現するプランとなっていました。 もうタブを50個開いて調べる必要はない そもそもDeep Researchは「答えを見つけるため、あるいはトピックについて深く掘り下げるために、Chromeのタブを50個開いて情報をつなぎ合わせなければならないようなタスク」に着目して開発が行われた そうです 。 その有用性を検証するのにうってつけだったのが旅行や休暇のプランで、社内でも素晴らしいという声が上がったのが、休暇の候補や子供を預けるサマーキャンプの比較検討などの使い道だったといいます。 パッケージ旅行が適さない場合、自分で計画するとなると移動手段やホテル、観光地やレストランのレビュー、旅行ブログやSNSなど、気づけば数十個にもなるタブを切り替えて比較検討しなければならず、途中で挫けそうなほど複雑な作業になりがちです。 それがAIエージェントの力を借りれば、希望や条件に合った旅程のアイデアがほんの数分で手に入り、しかも何度でも気軽に修正を依頼できるため、旅行計画のプレッシャーが格段に和らぎます。旅行計画で最もストレスの多いタスクの一つは費用の計算ですが、AIを使えば予算を調整したり管理したりするのも簡単に なります 。 AIエージェントは、一般的な旅行よりもむしろ個々人の条件に合わせて計画する複数日程の旅行の救世主になると見込まれ、これからの旅行はAIエージェントによって「平均化」されるのではなく、よりパーソナライズされたものへと転換されると見込まれて います 。 国が推す、旅行AIインフルエンサー AIがSNSで個人的にやりとりする 一歩先をいくドイツ観光局はブラウザ上に表示される文字のやりとりにとどまらず、AIと人のよりパーソナライズされた交流を目指してAIの旅行インフルエンサーを起用して います 。AIによって生成されたインフルエンサー「エマ」は、テクノロジーと旅行に強い関心を持つベルリン在住の30代半ばの女性という設定で、ドイツでのリアルな休暇体験をSNSにポストします。 ディープラーニングと大規模言語モデル(LLM)によって、エマは20以上の言語を使いこなし、フォロワーとチャット形式で、24時間365日いつでも交流できるそうです。 実際にエマに話しかけてみたという記者の話では、エマは「ドイツの隠れたおすすめスポットは何ですか?」といった質問に即座に答えるものの、「ドイツは女性の一人旅にも安全ですか?」といった微妙な質問には困惑してしまった そうです 。 人間の旅行インフルエンサーから批判も上がっていることから、軌道に乗るまで時間がかかりそうですが、エマは粘り強く人とのやりとりから学び、長期的には個々の興味に合わせてカスタマイズした提案ができる、パーソナルな旅のパートナーとなる予定とされています。 旅行の分野からAIエージェントが育つ AIはユーザーのニーズや特徴、好みなどのデータを蓄積し、おすすめを提案することを得意として、これからますます個人に向けた旅行計画を立てたり、予約を代行するようになるのは間違いありません。個人情報などの安全面がクリアされれば、近い将来、「去年の年末に泊まったホテルを覚えてる?同じホテルか似たようなホテルを探して〇〇日に予約して。」というように話しかけるだけで、AIに私たちの代わりをやってもらうのが普通になるでしょう。 例えばAirbnbもAIカスタマーサービスを全顧客に提供する方針で、CEOは「今後数年でさらにパーソナライズされ、エージェント的な対応力が大幅に向上する」とAIの可能性について 語りました 。 今年に入ってバズワードとなっている「AIエージェント」は、生成AIを複数組み合わせて、より複雑なタスクを実行できるようになったAIシステムのことを指しますが、計画に止まらず、予約や決済まで担うAIエージェントの活躍は旅行の分野から始まりつつあるようです。 AIエージェントが提供するのは「確実性」ではない 最新のAIモデルでも完璧な計画は10% もちろん、現段階でのAIエージェントによる旅行計画は“アイデア”であり、完璧な“確実性”を提供できるわけではありません。最近の研究では、OpenAIの最先端のモデルでさえも、複雑な旅行計画のベンチマークにおいて成功率はわずか10%に過ぎないことが明らかになって います 。ChatGPTの運営会社OpenAIの広報も次のように 言います 。 「ChatGPTは、おすすめのレストランを見つけたり、サンプルの旅程を作成したり、楽しいアクティビティを探し出すなど、旅行計画に役立ちますが、交通機関のスケジュール、チケットの入手状況、現地のロジスティクスといった重要な詳細は、公式の情報源で直接確認することをお勧めします。」「バスの時刻表やイベントの時間など、頻繁に変更されるものについては特に重要です。」 人間が旅先の土地に宿る精神を守る すでに旅行計画を立てるためにAIを利用した経験のある人を対象にイギリスでおこなわれた調査では、37%がAIの情報が不足していると答え、30%がAIが誤った情報を提示したと回答した そうです 。AIが情報を誤って教える以外にも、旅行において指摘が目立つのは、地元の人が聞いたらびっくりするような、タブーとされる行動をAIが勧めてしまうことです。 例えば、ハワイ旅行で絶滅危惧種であるウミガメへの配慮に欠けるアクティビティの提案が なされたり 、また別の地域では触れることもできないモニュメントを「登れる」と教えて きたり 、AIの言う通りに旅行をしてしまうとその土地に対する敬意を損なった行動をとってしまうリスクも見え隠れします。 つまり、旅行者はどの土地の人に対しても同じ価値観を持った一人として、彼らが守ってきたものに対する敬意を忘れてはならず、地元住民や旅行代理店などに直接確認することを怠ってはならないのです。 チャットボットは運営企業と別人格ではない 企業にとっても、航空会社や旅行関連のウェブサイトでは、AI搭載チャットボットが広く活用されるようになり、AIがどのような誤りを犯し得るか、そして誰がその責任を負わなければならないかが議論となっています。 昨年注目を集めたのは、航空会社エア・カナダのチャットボットが、ある乗客に適用不可能な割引を約束したことで乗客が企業を訴えた裁判です。航空会社は、チャットボットは「独自の行動に責任を負う別の法人」であると主張し、その乗客はチャットボットが提供したリンクにアクセスし、ポリシーを確認すべきだったと主張しました。 裁判所は、静的な情報だろうがチャットボットの提供する情報だろうが関係なく、「エア・カナダは、自社のウェブサイト上のすべての情報に責任がある」として航空会社の主張を退け、乗客に損害賠償と裁判所費用(約810ドル)を支払うべきだという判決を下し ました 。これは、顧客とのやり取りにAIやチャットボットを活用する航空会社や旅行会社にとって「企業が自社のテクノロジーの発言や行動に対して責任を負う」先例になると見られています。 人間が計画する旅行にも「確実性」はない AIと人間の計画に大きな差はなかった とはいえ、根本的に旅行においては人間もまた、自身で過去に経験したことがないために「確実」な情報は持ち合わせておらず、間違った選択をしてしまうことが多々あります。実際に、旅慣れしているCBSニュースの特派員2名がそれぞれ、AIを使う場合と一般的なウェブリサーチをする場合とで、ラスベガス旅行の計画から遂行までの内容を比較してみた そうです 。 その結果、AIを使用した場合、スマートフォンで1分もかからずに旅程案が作成でき、航空券と5つ星ホテルを予約した合計費用は741.48ドルだったそうです。一方、AIを使わなかった場合、ウェブサイトでお得な情報やレビューを比較して約45分を費やし、費用はAIよりも約40ドルほど高い金額となりました。 さて、その二人が実際にその旅程で旅行をすると、AIを使用した人もしなかった人も、予想外の出費や営業時間の間違いなど「こんなはずじゃなかった」というような経験をし、どちらの旅行も完璧に上手くはいかなかったそうです。 30万円のソファより、30万円の海外旅行 とんとん拍子に運ぶわけはないとどこかでわかっていながら、旅行に行くことを考えるだけで自然と心が弾み、立ち止まって費用対効果を考えたらどこにも行けなくなりそうなものを、私たちは言葉も習慣も知らない場所へさえ多額の費用をかけて出かけていきます。 では、もし30万円使っていいと言われたら「A:念願のヨーロッパ旅行」と「B:読書が快適なソファー」のどちらを選ぶでしょうか。 実はこれは、数年前まで放送されていたお笑い芸人の又吉さんが経済学者から学ぶというテーマのNHK Eテレの番組「オイコノミア」の 書籍 の中で、人がすぐ幸福に慣れてしまう「順応反応」の具体例として掲載されていたものです。その選択の答えは次のように書かれていました。 「経済学で考えると、Aを選ぶと効果があります。いいソファーを買っても最初はうれしいかもしれませんが、いつもあると慣れて幸福度が落ちてきます。一方、海外旅行は体験や思い出などが、自分の中に価値の下がらない財産として残り、幸福度が持続するんです。」 これは、数千人を対象に物質的な購入と体験から得られる満足度を比較した、20年間にわたるコーネル大学の研究結果によって裏付けられています。この研究でわかったことは、物質的な購入から得られる満足度は急速に低下するのに対し、旅行体験から得られる幸福度は維持され、時間の経過とともにさらに増加するということ でした 。さらに、モノを購入しなかったのと比べると、体験しなかったことを後悔する可能性は2倍以上とも紹介されて います 。この研究を指揮したギロビッチ教授は次のように 述べました 。 「人はモノを心から愛し、それが自分の一部だと感じることさえあります。それでもモノは人から切り離された存在に変わりません。反対に、経験はまさしく人の一部であり、私たちは経験の集合体なのです。」 旅行の「不確実さ」は人生を豊かにする これまで様々な研究により、旅行が人生の満足度を高めることが示されていますが、旅行というある意味自分の快適ゾーンから抜け出し、不確実性に身をさらすことが、私たちをどのように作り変えるのでしょうか。 サンフランシスコ大学の研究では、特に海外旅行の経験は、集中力を高め、様々な状況に効果的に対応する力が身につき、しかもそれは帰国した後も持続すると 発表 されています。 また、オランダでは46人の労働者を対象に、休暇前後の創造力について深掘りするため、長期的な追跡調査が行われました。結果、夏の休暇から戻った労働者は、スプーンやペン、レンガなど身の回りのものの使い道について、明らかにより多様な方法を考えることができるようになっていた そうです 。 旅行で不自由さを感じながら、次第に私たちは不快感に寛容になり、曖昧な状況を切り抜ける能力に自信を持つようになります。さらに、新しい知識や哲学、スキルを持つ人々に心を動かされ、ものの見方が広がり、型破りな問題解決能力につながるのです。 不慣れな場所で過ごす旅行に価値があるのは、旅先でトラブルに見舞われて“ゾーンに入った”ような経験をすることも、その後の人生のアドバンテージになるからでしょう。こうしたことを踏まえると、現地に行ってみなければわからないことがあり、そもそも「何もかもうまく行ったら、それは旅行じゃない」ことこそが旅行の醍醐味であり、価値だと言えそうです。 すると私たちがAIエージェントに期待したいことも、完璧な計画を立てることよりも、「地球の隅々まで知ったブレインストーミング相手」として計画立てから旅行の当日までお供してくれ、不確実な旅路を共にし、一緒に悩み、楽しんでくれる”バディ”としての存在なのかもしれません。 人もAIも思い通りにいかない「旅」で成長する 一部ではAIによって人間が「標準的な選択肢に収束する」「『普通の人間』になってしまう」と囁かれてたりもしますが、AIの有無に関わらず、人間は労働などのストレス化にあると、ルーティン化された行動パターンを取るようになり、思考が収束的になる傾向がある そうです 。そうした観点では、AIも私たちも、小さくまとまらずに成長を遂げるために旅行がもたらす本質的な効果にもっと着目すべきなのかもしれません。 思い通りにいかない人生は旅と重なり合うことから、よく喩えにもされます。 「 月日は百代(はくたい)の過客(くわかく)にして、行きかふ年もまた旅人なり。 」 松尾芭蕉の『おくのほそ道』にも、月日は永遠の時を行く旅人のようであり、その日々を過ごす人もまた旅人なのだと語られています。46歳の時、1人の弟子を伴って歩き出した芭蕉は、2400kmに及ぶ旅を著書にまとめ、病に伏せながらまた次の旅を夢見ていた そうです 。 私たちは苦しい時に、過去に旅した風景や人との出会いを思い出し、その記憶を旅することで救われるときがあります。しかしながら、現代において私たちにお供するAIエージェントは、未だ機械の領域を出るものではないですし、そのような感情は持ち合わせていません。しかも冷静にいま出来ることを見てみれば、計画・予約といった”旅行代理店止まり”な役割です。 「なぜ私たちが旅に出るのか」、AIエージェントがその価値をまで学ぶには時間がかかるかもしれませんが、旅行から個々の人間について深く学び、私たちとともに思い通りにいかない人生を旅するパートナーへと成長していくことに、期待を寄せたいと思います。 参考資料 Global Rescue. “ Artificial Intelligence (AI) and Travel Planning: Benefits and Risks .” GuideGeek / Brands. “ Travelers Using AI to Plan Trips for Disabled Individuals Report High Satisfaction. ” Steve Hogarty. “ Google’s new AI research assistant can plan your next holiday for you – and now it’s free. ” The Independent, 2025年3月13日. Seattle Times. “ The promise and pitfalls of letting AI plan your vacation. ” Yilun Hao, Yongchao Chen, Yang Zhang, Chuchu Fan. “ Large Language Models Can Solve Real-World Planning Rigorously with Formal Verification Tools. ” arXiv:2404.11891. German National Tourist Board (GNTB). “ Emma travels Germany. ” Washington Post. “ AI travel influencers are taking over Instagram: ‘I think it’s going to be a trend’. ” MSN / Sowetan Live. “ ‘So weird’: German tourist board introduces AI travel influencer and there’s already a backlash after just one Instagram post. ” IBTimes UK. “ Airbnb now lets US travellers book now, pay later, AI already handling half of all customer [interactions]. ” Travel Weekly. “ The limits of artificial intelligence in travel planning. ” Sainsbury’s Bank. “ AI travel planning: the benefits, risks, and how to use it safely. ” Outside Online. “ The Best AI Tools for Trip Planning (and the Limitations You Need to Know About) .”  BBC Travel. “ Air Canada chatbot misinformation: What travellers should know. ” CBS News. “ AI travel planning a trip? Vacation to Las Vegas? ” NHK Eテレ「オイコノミア」制作班. 『オイコノミア ぼくらの希望の経済学』. 朝日新聞出版, 2013年. Carter, Travis J., and Thomas Gilovich. “ The Relative Relativity of Material and Experiential Purchases .” Journal of Personality and Social Psychology , Vol. 98, No. 1 (2010): 146–159. Gilovich, T., Kumar, A., & Jampol, L. (2015). “ A Wonderful Life: Experiential Consumption and the Pursuit of Happiness. ” Journal of Consumer Psychology (JCP). Bradberry, T. (2016). “Why You Should Spend Your Money On Experiences, Not Things. ” Forbes. Gilovich, T., Kumar, A., & Jampol, L. (2012). “ A Wonderful Life: Experiential Consumption and the Pursuit of Happiness. ” Psychological Science. ScienceDirect. “ The experience recommendation system: Experience-based product recommendation. “ NHK for School. おはなしのくにクラシック「 おくのほそ道(松尾芭蕉) 」 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 旅行AIエージェントに求めるのは「完璧さ」ではなく、あえての「不確実さ」 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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ChatGPTを学習させるーー。 生成AI・LLMを自社に最適化する活用法と注意点 2025.10.28 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 生成AIのうちChatGPTなどLLM(大規模言語モデル)に自社データを学習・参照させることで、精度の高い応答や業務効率化が実現することがあります。具体的なメリット・デメリットや手法、準備すべきこと、導入時の注意点を解説します。 目 次 ・ 生成AI・LLMを学習させることで広がる可能性  ・ 学習と参照の違い ・ LLMを学習・参照させるメリット  ・ 業務効率化が実現できる  ・ 自社にマッチした精度の高い回答が得られる ・ LLMを学習・参照させるデメリット  ・ 情報漏洩の可能性がある  ・ 大きなコストとリソースが必要 ・ LLMを学習させる具体的な方法  ・ ファインチューニング  ・ プロンプトエンジニアリング  ・ RAG ・ 自社データをLLMに学習・参照させる準備  ・ LLMをファインチューニングする手順 ・ LLMの学習・参照における注意点と課題  ・ 学習・参照データの限界  ・ 情報漏洩とセキュリティ対策  ・ 継続的なメンテナンスの必要性 ・ まとめ 生成AI・LLMを学習させることで広がる可能性 近年、ChatGPTなどLLMの企業活用が急速に広がっています。米国では95%の企業が生成AIを利用しており、これほど高い関心がある背景には、生産性向上やコスト削減への期待があります。 一方で、企業がLLMを導入する際の懸念事項も明確になりつつあります。特にデータのセキュリティや品質、社内の専門人材不足がボトルネックになっており、情報漏洩リスクへの不安や、使いこなす人材の不足が普及の足かせとなっています。こうした課題を乗り越えるため、自社に最適化したLLMを構築する方法に注目が集まっています。 LLMを自社向けに学習・参照させる(カスタマイズする)ことで、高度な問い合わせ対応や知識共有が可能になります。社内の膨大な資料を学習させておけば、社員はLLMに質問するだけで必要な情報をすぐに得られるようになります。これは熟練者の知見をAIが継承し、新人でも同等の回答を引き出せることを意味し、現場のスキル格差の解消にもつながります。さらに、日々の定型業務をAIに任せ、人間は創造的な業務に専念するといった使い分けも促進されます。 LLMを自社向けに調整することで、社外非公開の知識(社内FAQや独自ノウハウなど)をAIに活用させることができます。汎用モデルでは難しかった専門的な質問への正確な回答や、業界用語に通じた対話も可能になります。その結果、顧客対応の高度化や設計・開発プロセスの効率化など、競争力強化に直結する活用が期待できます。 学習と参照の違い 「LLMなど生成AIにデータを学習・参照させる」という表現について整理します。生成AIの中でも近年注目されるLLMの学習とは、モデル開発のプロセスである「事前学習」「追加学習」「事後学習」を指すことが普通です。 LLMの開発においては、まず事前学習としてウェブ上の膨大なテキストデータから学習を行い、言語のパターンや基礎的な知識をモデルに蓄積します。続いて、追加学習としてさらに性能を改善したり、特定タスクに適応させるためのファインチューニングを行います。その後、より人間の意図や価値観に沿った回答をするように最適化する「RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback、人間のフィードバックによる強化学習)」などの事後学習が施されます。 これらの学習プロセスはモデルのパラメーターを更新することを目的として行われる、LLM自体の開発プロセスそのものですので、既製のLLM・生成AIを導入する企業では基本的には行わない領域です。ただし、LLMに追加学習させるファインチューニングは、とくに企業やビジネス固有の情報や知識をLLMに携えさせるために有効なアプローチであり、多くの開発・導入現場で取り組まれるようになっています。 なお、LLMの出力の精度を上げる手法に、後述するプロンプトエンジニアリングやRAG(Retrieval Augmented Generation)があり、これらが「学習」として紹介されるケースもあります。ですがこれらの手法は、モデルの再学習やパラメーターを更新することなく、単に必要な知識をその都度、検索・引用させる方法であることから、「学習」ではなく「参照」と呼ぶのが適切です。 LLMを学習・参照させるメリット 業務効率化が実現できる 社内向けに学習・参照させたLLMは、社員の業務を支援する強力なアシスタントになります。問い合わせ対応やデータ整理、レポートの下書き作成など、人手で時間を要していたタスクを高速化・自動化できます。活用により業務成果が向上したケースが多く報告されています。日本経済新聞が2025年4月に実施した調査では、生成AIを仕事で活用した人の約7割が「業務効率が上がった」と回答しています。 自社にマッチした精度の高い回答が得られる もう一つの大きなメリットは、回答の精度・質が飛躍的に向上することです。LLMは汎用的な知識で学習されていますが、そこに自社の業界知識や製品情報を学習・参照させることで、回答の専門性が増します。実際、特定分野のデータでファインチューニングされたモデルは、ベースのモデルよりもその分野で高い性能を示すことが確認されています。例えば、自社の製品マニュアルや技術文書を学習させれば、ユーザーからの専門的な質問にも適切で詳しい答えを返せるようになります。 つまり、自社に最適化したLLMは「自社専属の優秀な回答者」として、精度が高く信頼できる情報提供を実現してくれるのです。 LLMを学習・参照させるデメリット 情報漏洩の可能性がある 社内データをLLMに学習・参照させる際には、機密情報の取り扱いに細心の注意が必要です。クラウド経由で外部のAIサービスを使う場合、学習・参照データやプロンプトとして機密情報を送信すると、漏洩リスクがゼロではありません。実際、2023年には韓国サムスン電子で従業員が機密コードをChatGPTに入力する事案が発生し、同社が一時社内利用を禁止する事態となりました。他にも機密保持の観点から生成AIの社内利用を禁止・制限する企業が現れています。 こうしたリスクに対処するには、セキュリティ対策を万全にした環境でLLMを活用することが不可欠です。例えば、ChatGPTのAPIを使う場合は機密データが学習に再利用されないようオプトアウト設定を有効にし、可能ならば自社環境でモデルを運用するのが望ましいでしょう。また、学習・参照前に機密情報をマスキング・除去する、アクセス制限や通信暗号化を徹底するといった対策も重要です。 大きなコストとリソースが必要 もう一つの課題は、LLMを自社向けに学習させるためのコストとリソースの大きさです。モデルを学習させるには高性能なGPUを多数稼働させる必要があり、その計算資源にかかる費用が発生します。加えて、データ準備の手間も見逃せません。データのクリーニングや形式変換など前処理には時間と労力がかかり、専門の人員の投入を前提とした数カ月規模のプロジェクトとなるでしょう。 総じて、LLMを自社に最適化するには、相応のコストと人材の投資が必要になる点を念頭に置くべきです。 LLMを学習させる具体的な方法 LLMを自社向けに強化する代表的な手法として、以下の三つが挙げられます。 ファインチューニング 既存のGPTなどのモデルに自社データで追加学習を行い、モデル自体をドメイン特化させる方法です。大量の汎用データで学習済みのモデルに、社内のFAQやドキュメントなど比較的小規模の専門データを再学習させます。これによりモデル内部のパラメーターが調整され、特定分野の知識や用語を身に付けたカスタムモデルが得られます。例えば社内FAQを学習させれば、その分野に特化した正確な回答が可能になります。ただし、モデル再学習には前述のようにコストがかかるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。 ファインチューニングについてはこちらもご覧ください。 ファインチューニングとは 応用分野からプロセス、発展まで また、当社COO兼CTO藤原のほか、機械学習エンジニア6名が執筆した『 今日から使えるファインチューニングレシピ-AI・機械学習の技術と実用をつなぐ基本テクニック- 』もぜひご覧ください。 プロンプトエンジニアリング モデルを再学習させずに、入力する指示(プロンプト)の工夫だけで望ましい出力を引き出す手法です。生成AIへの質問文や指示文の書き方を調整することで、回答内容や表現を制御することを狙います。例えば「〇〇の専門家として答えてください」「回答は箇条書きで」など明確な指示や文脈情報を与えることで、汎用モデルでも自社ニーズに沿った出力を得られます。追加の学習コストが不要で機密データを外部に出さずに済む利点があり、実践次第で社内知識を回答に反映させることも可能です。プロンプトの与え方次第で回答品質が大きく変わるため、試行錯誤しながら最適な指示内容を見つけていくことが重要です。 プロンプトエンジニアリングについてはこちらもご覧ください。 プロンプトエンジニアリング【ビジネス成長のためのAI用語】 RAG 生成AIに外部知識の検索を組み合わせることで、より詳しく正確な応答の生成を目指す手法のことで、生成AIと自社のデータベースなどを連携させる手法です。プロンプトエンジニアリングと同じく、モデルの再学習はさせません。質問に対して、まず社内の蓄積データから関連情報を検索し、それを含めて生成AIが回答を生成します。言わば生成AIに社内の資料をその場で参照させて回答させるイメージです。モデルを再学習させずとも最新の内部データを活用できるのが大きな利点です。例えば社内データベースに新しい資料を追加すれば、その情報を生成AIの回答にすぐに反映できます。 一方で、RAGを導入するにはベクトルデータベースなど専門のデータ基盤の構築と維持が必要となります。社内文書を適切に分割・ベクトル化して検索精度を高めたり、プロンプトと組み合わせて回答精度をチューニングしたりするといった前処理も求められます。 RAGについてはこちらもご覧ください。 LLM・RAGのビジネス導入の落とし穴「回答精度が期待より低い」などの回避法 自社データをLLMに学習・参照させる準備 まず、学習・参照に使う社内データを収集・整理します。目的に沿った分野の最新で正確なデータを選び、重複や不要情報を除去しておきましょう。また、FAQなどは質問と回答のペアのように学習・参照しやすい形式に整理します。 次に、データから誤りや機密情報を取り除き、モデルが読み込めるフォーマットに変換します。例えばOpenAIが提供するChatGPT系のモデルのファインチューニングでは、データをUTF-8のJSON Lines(JSONL)形式にする必要があります。社内文書を活用する場合でも、文書を適切に分割・ベクトル化して検索しやすくするなどの前処理が不可欠です。 LLMをファインチューニングする手順 ChatGPTでいえば、GPT-5やGPT-5-mini、GPT-5-nanoなどから目的に合ったモデルを選び、APIキーの取得など必要な準備を行います。自社でオープンソースモデルを運用する場合は、GPUサーバーのセットアップなど環境構築も必要です。 準備したデータを使ってモデルをファインチューニングします。学習完了後、テスト用の質問でモデルの性能を評価し、期待通りの回答が得られるか確認しましょう。問題がなければ完成したカスタムモデルを社内システムに組み込み、業務への活用を開始します。 小規模なPoC(概念実証)であれば数週間程度で完了しますが、本格導入では数カ月の期間を見込む必要があります。 必要なリソースとしては、人的リソース(専門チームの編成)、計算資源(十分なGPUなどのインフラ)、予算(API利用料やサーバー費用)などが挙げられます。 LLMの学習・参照における注意点と課題 学習・参照データの限界 LLMに与える学習・参照データには量と質の限界があります。まず、用意する学習例が少なすぎるとモデルの応答傾向を十分に変えられません。逆に、大量の事例を詰め込みすぎるとノイズが増え、かえって性能が低下する恐れもあります。モデルは与えられたデータ以上のことは答えられませんので、目的に合った高品質なデータを厳選して学習・参照させることが重要です。 また、LLM自体の制約として、学習後の新しい情報は反映されない点にも注意が必要です。ファインチューニングをしても、その後に出た新製品や最新情報についてはモデルは知らないままです。この点、RAGを併用すればアップデートできますが、モデル単体で運用する場合は定期的に追加学習やモデルの更新を検討する必要があります。 情報漏洩とセキュリティ対策 LLMの活用に当たっては、前述の情報漏洩リスクに常に留意し、アクセス権限の管理や通信の暗号化、機密データのマスキングなど基本的なセキュリティ対策を徹底する必要があります。 継続的なメンテナンスの必要性 AIモデルの性能を維持・向上するには、定期的な評価と再学習が欠かせません。また、新たなモデル登場時の乗り換え検討や、社内教育・利用ルール整備などの継続的メンテナンスも必要です。 まとめ LLMに自社のデータや知識を学習させて活用することは、業務効率化や高度な知識共有など多くの利点をもたらします。一方で情報漏洩リスクやコスト・人材面の課題にも注意が必要であり、適切な手法選択と対策が不可欠です。本コラムで解説したように、ファインチューニングやプロンプトエンジニアリング、RAGといった手段を組み合わせれば、自社に最適化された「頼れるAIアシスタント」を構築できる可能性が出てきます。 自社の課題に合わせた計画を立て、まずは小さく始めて効果を検証しつつ段階的に拡大することが重要です。そして例えば「LLMを自社向けに学習・参照させたいが何から始めればよいのか」と思ったら、当社のようなAIベンダーに相談を始めるのも一つの手です。解決すべきビジネス課題を改めて見つめた上で、最適なAIソリューションをご提案します。めには、AIベンダーにコンサルティングを依頼するのも有効な選択肢の一つです。 詳しくはこちらをご覧ください。 カスタムAI開発 参考文献 BAIN & COMPANY “ 2025 Smart Manufacturing and Operations Survey: Navigating challenges to implementation ” Stanford University Human-Centered Artificial Intelligence “ Survey: Generative AI’s Uptake Is Unprecedented Despite Roadblocks ” Deloitte Insights “ The 2025 AI Index Report ” 日本経済新聞「 生成AIで「業務効率向上」7割 活用体制の整備は業種で差も 日経読者調査 」 IBM「 RAGとファイン・チューニングの比較 」 The Verge “ Samsung tells employees not to use AI tools like ChatGPT, citing security concerns ” NRI「 プロンプトエンジニアリング 」 Microsoft Ignite “ Customize a model with fine-tuning “ 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post ChatGPTを学習させるーー。生成AI・LLMを自社に最適化する活用法と注意点 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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Few-Shot NER(少数ショット学習による固有表現認識)  【連載】自然言語処理の研究動向 第6回 2025.10.27 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 Few-shot NER(少数ショット学習による固有表現認識(Named Entity Recognition、NER))は、人間が書いたままの未加工のテキストを構造化されたインサイトへと変換する方法に、変革をもたらしています。従来のNERモデルの構築には数千ものラベル付きデータが必要でしたが、Few-shotの手法ではほんの数例から新しいエンティティ(文中で特定の実体や固有の対象を示す単語・句)のタイプを学習することで、このボトルネックを解消します。中核となるのは プロトタイプネットワークと呼ばれる手法で、少数の例からエンティティの原型となる埋め込み表現を構築します。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 連載第4回「 質問応答 」は こちら 。 連載第5回「 感情分析の研究動向 」は こちら 。 自然言語処理関連の学会におけるFew-Shot NER(少数ショット学習による固有表現認識) 関連論文の割合 目 次 ・ Few-Shot NERの概要 ・ 主要な技術的進歩 ・ 今後の方向性と課題  ・ 入れ子エンティティの階層構造を捉える  ・ NERにおける一貫性の課題 Few-Shot NERの概要 固有表現認識とは、テキスト中から人物、組織、場所、ある分野固有の用語といった重要なエンティティを識別して分類するプロセスを指します。この技術は、テキストという非構造化データから構造化された情報を引き出す上で重要な役割を果たし、その結果、ナレッジグラフの構築、検索、レコメンデーション、ビジネスインテリジェンスなどの下流アプリケーションを可能にしています。 実際には、重要となるエンティティの種類は対象とする分野によって異なります。例えば、企業では技術マニュアルから製品コードを検出する必要があります。病院では診療記録から医療専門用語を抽出する必要が生じるでしょう。また、金融機関では取引関連のエンティティを追跡することが求められるかもしれません。こうしたニーズに合わせてNERシステムを構築するには、従来は数千件規模のアノテーション付きデータが必要であり、その準備には多大なコストと時間を要していました。 Few-shot NERは、ごく少数の例からモデルに新しいエンティティのタイプを学習させることで、このボトルネックを解消する手段を提供します。これにより、NERシステムを新たなドメインやユースケースに素早く適応させることが可能になり、固有表現認識を実用に供するために必要な労力を大幅に削減できます。 主要な技術的進歩 Few-shot NERを実用化するために、研究者たちはさまざまな戦略を模索してきましたが、最も影響力の大きかった初期の研究はプロトタイプネットワーク( Fritzler et al.(2018) )に焦点を定めたものでした。この手法はもともとコンピュータビジョン(コンピュータに「見ること」や「理解すること」を学習させる研究・技術)分野から着想を得たアイデアで、テキスト内のスパン(連続した文字列の範囲)を各エンティティタイプの原型となる埋め込み表現と比較することで、ごく少数の例からでも新しいエンティティタイプを学習できることを示しました。 その後、事前学習済み言語モデルの登場により、この分野の進歩は一気に加速しました。それを牽引したのは、BERTなどのモデルが研究に広く採用されたことでした(例: Das et al.(2022) )。こうしたモデルによってテキスト表現がより強力になり、転移学習が現実的な手法となったためです。同じ頃、 Few-NERD のようなベンチマークデータセットが現れ、評価手法の標準化も進みました。 さらに、大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)の台頭により、Few-shotまたはZero-shotでNERを直接実行するという新たなアプローチも生まれました。例えば、 Xie et al.(2023) や Wang et al.(2025) の研究では、追加のモデル学習を行わずに、プロンプティング(モデルへの指示入力を工夫する方法)と文脈内推論によってNERを実現できることが示されています。 近年では、新たな技術的進歩として2段階のプロトタイプネットワーク手法が登場しています。このパラダイムでは、一度の処理でトークンにタグ付けを行う代わりに、まず候補となるエンティティのスパンを検出し、それから各スパンを原型(プロトタイプ)となる埋め込み表現に照合して種類を割り当てます。処理を検出とタイプ付けに分割することで、データが少ない状況でもモデルの安定性が向上し、有効な検出と高い信頼度のプロトタイプ一致の両方が必要となるため誤検出が減少します。また、エラーが検出段階とタイプ付与段階のどちらで発生したかを判別しやすくなるため、原因の追跡も容易になります。 Few-shot NERにおけるこうした2段階手法の方向性は、 Ma et al.(2022) および Wang et al.(2022) によって確立されました。その後、 Hou et al.(2023) や Wu et al.(2025) といった後続研究によりこの手法はさらに洗練され、さまざまなデータセットやドメインで高い性能が報告されています。 今後の方向性と課題 入れ子エンティティの階層構造を捉える 次の例文を見てみてください。 She accepted a position at Department of Computer Science, The University of Tokyo. 彼女は東京大学のコンピュータ科学専攻の職に就いた。 この例には階層化された複数のエンティティが含まれています。具体的には、Department of Computer Scienceという組織内の部門の上位にThe University of Tokyoという大学・組織があり、その内部にTokyoという地名が存在します。nested NER(ネストした固有表現認識、文中の入れ子構造を持つ固有表現を正確に抽出する手法)とは、これらの層を正しく認識して保持することを指します。実際の文書にはこのような入れ子のエンティティがしばしば含まれており、その階層を保つことで曖昧さが減り、重複を防ぎ、下流の分析やアプリケーションに有用なクリーンな構造化データが得られるため重要です。 限られた例しか与えられない条件下では、ネストしたNERの実現は困難です。モデルは、極めて少ない教師データから内側と外側両方の境界を見つけ出さなければならず、境界検出の重要性が非常に高くなるためです。このような条件下では、2段階のプロトタイプネットワーク手法が依然として信頼できる選択肢となります。 また、 Focusing–Bridging–Prompting という3段階構成のパイプラインのように、「まずスパンを検出し、次にタイプを割り当てる」という手順を踏襲しつつ、タイプ付与の方法を工夫したアプローチも提案されています。さらに最近では、ネストしたNERにLLMを活用する戦略も模索されています(例: Kim et al.(2024) )。しかし、通常(非入れ子型)のNERで有効なプロンプト技法が、そのままネストしたケースに適用できないことも明らかになっています。ネストしたNER向けに調整したプロンプトを用いることで一定の性能向上は得られるものの、その精度は完全な教師あり学習でファインチューニングしたモデルには依然及びません。厳密なFew-shotやZero-shotのシナリオでは、引き続き2段階パイプラインの方が安全な選択肢であり、LLMは主要な抽出器ではなく補助的な役割として活用するのが望ましいでしょう。 NERにおける一貫性の課題 出力の一貫性の欠如はLLMの一般的な制約ですが、情報抽出(Information Extraction、IE)のタスク、例えばNERや関係抽出(Relation Extraction、RE)では特に深刻な問題となります。これらのタスクでは抽出するテキストのスパンや割り当てるラベルに厳密さが求められるため、要約や質問応答のようなタスクであれば見過ごされるような小さな出力の変化でも、誤りに直結してしまうのです。 研究者たちはこの課題に対し、さまざまな創意工夫を凝らしたアプローチで取り組み始めています。例えば、 PromptNER という手法ではエンティティタイプの定義を明示し、厳格な出力テンプレートを設けることで結果の明瞭さを高めています。また、 Generate and Organize というパイプラインでは、生成(Generate)フェーズとそれに続く整形(Organize)フェーズを分離し、出力を所定のスキーマに沿った形式へ整然と書き換えられるようにしています。 Few-shotの枠組みからは外れますが、 Dagdelen et al.(2024) の研究では、LLMを具体的なJSONスキーマに合わせてファインチューニングすることで、NERとREを統合したタスクにおける出力の一貫性が向上することが示されました。 これらの研究は実践的な将来の方向性を示唆しています。すなわち、タスクを扱いやすいステップに単純化し、出力をスキーマで管理することで、LLMベースのNERを現実世界の応用においてより信頼できるものにできるということです。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 連載第4回「 質問応答の研究動向 」は こちら 。 連載第5回「 感情分析の研究動向 」は こちら 。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 訳者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社などメディア企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post Few-Shot NER(少数ショット学習による固有表現認識) 【連載】自然言語処理の研究動向 第6回 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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ChatGPTのAPIとは。概要や導入方法、開発の限界について解説 2025.10.17 株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 ChatGPTのAPIは、OpenAI社が提供する大規模言語モデルChatGPTを自社のアプリケーションやサービスに組み込むための開発用インターフェースです。2023年に公開され、企業が自社のアプリやウェブサービスに対話型AIの機能を追加できるようになりました。高度な自然言語処理モデルをインターネット経由のAPIとして利用できるため、自前でAIモデルを一から開発・学習させることなく取り入れられる点が注目されています。しかし万能というわけではなく、ChatGPTのAPIを活用した開発にも限界があります。 目 次 ・ ChatGPTのAPIとは  ・ ChatGPTのAPIでできること  ・ 近年の動き ・ ChatGPTのAPIを導入する利点  ・ 開発効率の向上  ・ 柔軟なカスタマイズ性   ・ プロンプト設計による調整   ・ モデルの選択   ・ 外部データとの連携 ・ ChatGPTのAPIを導入する注意点  ・ プログラミングスキルが求められる  ・ コスト管理の難しさ   ・ モデル選択   ・ プロンプトの工夫   ・ 利用状況のモニタリング  ・ セキュリティとプライバシー ・ ChatGPTのAPI活用によるAI開発の限界  ・ モデルの応答品質と信頼性の限界  ・ リアルタイム性・最新情報の限界  ・ ライセンス・運用コスト ・ カスタムAI開発の必要性  ・ 独自モデルの構築  ・ ハイブリッドな仕組み  ・ ファインチューニングや追加学習 ・ まとめ ChatGPTのAPIとは ChatGPTのAPIとは、OpenAI社の対話型AIであるChatGPTの機能をAPI経由で提供するサービスです。開発者はこのAPIを通じてChatGPTにテキストを送り、AIからの回答(生成された文章)を受け取ることができます。言い換えれば、ChatGPTという強力な言語モデルを自社のシステムに組み込み、チャットボットや文章生成エンジンとして活用できるということです。 ChatGPTのAPIでできること ChatGPTのAPIを使うと、さまざまな自然言語処理タスクを自動化・高度化できます。以下に主な例を挙げます。 対話型の質問応答 ユーザーからの質問に対して、人間らしい自然な文章で回答し、カスタマーサポートのチャットボットや、社内FAQシステムなどに活用できる。 文章の自動生成 指定したテーマや条件に沿って文章を作成し、記事の下書き、宣伝文、メール文面、報告書のドラフトなど、幅広いコンテンツ生成に対応できる。 文章の要約 長文テキストを読みやすい短い要約に圧縮し、会議の議事録やレポート、ニュース記事などから重要点を抽出してまとめることができる。 翻訳や言い換え テキストを別の言語に翻訳したり、表現を言い換えたりでき、多言語対応のサービスや文章のリライト支援にも役立つ。 クリエイティブな応答 物語の創作やアイデア出し、ジョーク生成など創造的な文章も生成し、対話ゲームのキャラクターAIなど、エンターテインメント分野でも利用されている。 プログラミング支援 入力されたコードの説明や、簡単なコードスニペットの生成なども得意で、開発者向けのコーディングアシスタントとしても活用できる。 実際、ChatGPTのAPIはチャット形式にとどまらず幅広いアプリケーションに組み込むことが可能で、その柔軟性が評価されています。例えば、SNSアプリの Snapchat ではユーザーと会話できるチャットボット(Snapの「My AI」)にChatGPTのAPIが使われ、教育サービスの Quizlet はバーチャル家庭教師機能を構築しました。また、 Shopify はショッピングアシスタントへの組み込み、 Instacart は食材やレシピの質問に答える機能に活用するなど、多彩な分野でChatGPTのAPIを用いた新機能が生まれています。 このようにChatGPTのAPIは、対話型AIによるユーザー体験の向上から、文章生成エンジンとしての活用まで、多岐にわたるニーズに応えることができるのです。 近年の動き OpenAIは「ChatGPT API」という名称を段階的に発展させ、より高度な開発者向けプラットフォームである「Assistants API」へ統合しつつあります。このAssistants APIを利用すると、開発者は独自のAIアシスタントを自社アプリ内に構築でき、あらかじめ設定した指示やツールを組み込んだ応答が可能です。従来のChatGPTのAPIの機能(チャット補完やメモリ管理など)を内包する形で提供が進められており、いわばChatGPTのAPIがAssistants APIに包含される流れになっています。 モデルのアップデートとしては、現在ではgpt-5、gpt-5-mini、gpt-5-nano の3種類で GPT‑5 を提供しており、性能、費用、遅延時間のバランスを開発者自身が柔軟に設計できます。ChatGPT における GPT‑5 は、推論モデルと非推論モデル、ルーター機能の組み合わせですが、API プラットフォームにおける GPT‑5 は、最大性能を発揮する推論モデルです。なお、推論を最小化した GPT‑5 は、ChatGPTの非推論モデルとは異なり、開発者向けにより最適化されています。ChatGPT で使用されている非推論モデルは、gpt-5-chat-latest として提供されています。 さらにOpenAIは2025年10月に、ローコードでAIエージェントを開発できる「AgentKit」を同日から提供すると発表しました。試作から本番環境での実装まで、エンド・ツー・エンドでエージェントを構築できる総合ツールキットで、ドラッグ・アンド・ドロップで各種ツールを組み合わせ、直感的にAIエージェントを構築できることを特徴としています。 ChatGPTのAPIを導入する利点 ChatGPTのAPIをビジネスに導入することには、多くの利点があります。ここでは特に重要なポイントである「開発効率の向上」と「柔軟なカスタマイズ性」について解説します。 開発効率の向上 ChatGPTのAPIを使う最大の利点と言って良さそうなのが、AI機能の開発効率が飛躍的に向上することです。OpenAIが用意した高度な言語モデルを呼び出すだけなので、自社でゼロからAIモデルを研究・開発し、大量のデータで学習させる必要がありません。そのため、従来は難しかった高度なAI機能を短期間で自社サービスに組み込むことができます。 特に2023年3月にChatGPTのAPI(GPT-3.5-turbo)が公開された際には、従来のGPT-3モデルAPIに比べて10倍安価かつ5~10倍高速で提供され、大きな話題となりました。API利用コストが90%も削減されたことで、コスト面の理由で諦めていたようなアプリケーションも実現可能になったのです。 また、ChatGPTのAPIはクラウド上のサービスであるため、スケーラビリティーとインフラ管理の容易さも魅力です。自社でサーバーを用意して大規模モデルをホスティングする必要がなく、モデルの更新や最適化はOpenAI側でされます。開発者はAPIを呼ぶ実装に専念すれば良く、面倒なインフラ管理から解放されます。これは小規模な組織にとっても大きな利点であり、結果として開発スピードの向上につながります。 さらに、APIを通じて提供されるモデルは既に高品質にチューニングされ安全対策も施されています。自前開発の場合に比べ、品質や安全性の高いAI機能を素早く実装できるため、プロダクトのリリースや機能改善のサイクルを加速できます。以上のように、ChatGPTのAPIの活用は低コスト・高速度で高度なAI開発を実現し、ビジネスの競争力向上に寄与します。 柔軟なカスタマイズ性 ChatGPTのAPIは汎用的なAIモデルへのアクセス手段ですが、用途に合わせて柔軟にカスタマイズできる点も大きなメリットです。OpenAIの提供するモデル自体は汎用能力を持っていますが、API利用者側でさまざまな工夫をすることで、自社に最適化したAI機能を作り上げることができます。 プロンプト設計による調整 ChatGPTのAPIではリクエスト時にシステムメッセージやプロンプトを与えることで、AIの口調や役割を指定できます。例えば「回答は必ず敬体(ですます調)で答えて」「あなたは法務のプロとして回答してください」といった指示を与えることで、応答のスタイルや内容を調整できます。プロンプトエンジニアリングによって用途に合った振る舞いを引き出せる柔軟性があるということです。 モデルの選択 OpenAIは複数のモデルを提供しており、精度とコストのトレードオフを考慮して使い分けることができます。高精度が必要な場面では新しいモデルを、一般的な会話や下書き生成には高速・低コストのモデルを使う、といった選択が可能です。さらに、ChatGPTのAPI公開以降もモデルは改良・追加されており、用途に応じた最適なモデルを常に選べる環境が整っています。 外部データとの連携 ChatGPTのAPIの出力を、自社のデータベースやナレッジシステムと組み合わせることで、より価値の高い応答を生成することも可能です。例えば、社内のデータを検索してその結果をプロンプトに含めて質問に答えさせる、というRAG(Retrieval Augmented Generation、検索に基づく回答生成)と呼ばれる手法で精度向上を図る試みがあります。API自体は純粋な言語モデルですが、利用者側で前処理・後処理を工夫することで、業務に特化したAIソリューションを作れる柔軟性があるのです。 このように、ChatGPTのAPIは「提供されたモデルをそのまま使うだけ」にとどまらず、設定次第で応答の個性や機能を調整できる自由度があります。必要に応じてOpenAIのモデルを細かくチューニングし、自社のユースケースに合ったAI機能を作り込める点は、大きな魅力と言えるでしょう。 ChatGPTのAPIを導入する注意点 非常に便利なChatGPTのAPIですが、導入に当たっては把握しておくべき注意点も存在します。ここではプログラミングスキル、コスト管理、セキュリティとプライバシーの3点について説明します。 プログラミングスキルが求められる ChatGPTのAPIは開発者向けのサービスであり、利用するにはプログラミングに関する知識・スキルが必要です。例えばAPIの利用手順では、HTTPリクエストを適切な形式で構築し、APIからのJSONレスポンスを解析してアプリケーションに組み込む作業が求められます。このため、コードを書いた経験がない方や、社内にエンジニアがいない場合にはハードルとなり得ます。 GUIで完結するツール(ChatGPTのウェブチャットなど)と異なり、APIはソフトウエア開発の一部として扱うものです。したがって、システム開発の基礎知識や、利用するプログラミング言語でのHTTP通信方法、JSONデータの扱い方などを理解しておく必要があります。また、同じ依頼内容でもプロンプトの書き方次第で応答が変わるため、より良い結果を得るにはプロンプトエンジニアリングの試行錯誤も必要です。 企業で導入する場合、IT部門やエンジニアに開発を任せることになりますが、非エンジニアの担当者にとってはブラックボックスになりがちです。結果として「何ができて何ができないのか」が見えにくく、誤った期待をしてしまうリスクもあります。そのため、ビジネス担当者であってもChatGPTのAPIの基本的な仕組みや制限は理解しておくことが望ましいでしょう。 もっとも近年では、ノーコード・ローコードでAPIを利用できるツールや、簡単にチャットボットが作れるプラットフォームも登場しています。それらを活用すればコーディングの手間をある程度省くことは可能です。ただし、要件が複雑な場合や既存システムとの密な連携が必要な場合、最終的にはエンジニアリングの力が欠かせません。ChatGPTのAPI導入に当たっては、自社内の技術リソースを確認し、不足している場合は外部の力を借りるなどの計画を立てることが重要です。 コスト管理の難しさ ChatGPTのAPIの料金は従量課金であるため、コスト管理が難しいという側面があります。利用が少ないうちは低コストですが、使えば使うほど費用が増大します。特に社内外で広く使われるようなシステムに組み込んだ場合、利用量が増えて月末に思わぬ高額請求…というリスクもあるのです。 料金はトークン消費量に比例します。したがって、効率的なトークン管理がコスト最適化の鍵を握ります。具体的には、以下のような点に注意が必要です。 モデル選択 現在ではChatGPTの標準モデルが最新のGPT-5に更新されています。このGPT-5では以前よりも性能が大きく向上し、例えば高度なコード生成や複雑な課題解決で卓越した精度を示します。ただし、GPT-5 APIの利用コストは出力トークン1000個当たり約0.01ドルと高めです。OpenAIは用途や予算に応じたモデルの使い分けを推奨しており、GPT-5の軽量版GPT-5-miniやGPT-5-nano(低コスト・高速)も定型タスク向けに提供していますが、これらの中からどれが自社にとって最適なのかを判断しなければなりません。 プロンプトの工夫 不要に長い指示文や冗長な表現は入力トークン数を増やし、さらに出力も冗長になりがちです。プロンプトはできるだけ簡潔にまとめ、明確な指示で余計な応答を省く工夫をすることで、1回当たりのトークン消費を抑えられます。例えば丁寧すぎる定型文より「○○について簡潔に要約して」のように短く指示するだけで、同じ要件でも消費トークンを大幅に減らせるケースがあります。 利用状況のモニタリング OpenAIのダッシュボードでは日次・月次の利用量(消費ドル)を確認できます。これを定期的にチェックし、異常に増えていないか監視します。また、必要に応じてOpenAI側で使用上限額を設定することも可能です。社内で使用する場合は「1人当たり何回まで」のような社内ルールを設けるのも有効でしょう。 以上のように、ChatGPTのAPIは使い方次第でコストが大きく変動します。便利だからと無制限に使えるようにするのではなく、用途・頻度に見合った適切な設計とモニタリングによるコントロールが重要になります。特に初めて導入する際にはコスト試算を行い、必要に応じて予算管理の体制を整えておくことをおすすめします。 セキュリティとプライバシー ChatGPTのAPI導入に際して多くの企業が懸念するのが、データのセキュリティとプライバシーの問題です。APIを利用するということは、自社やユーザーのデータがOpenAIのサーバーに送信されることを意味します。機密情報や個人情報を含むデータを外部のAIサービスに渡すことには慎重な検討が必要です。 実際、従業員によるChatGPTの利用を禁止・制限する企業も現れました。例えばアップル社は社員がChatGPT等の外部AIツールを使うことを禁止し、社内の機密データ漏洩を警戒しています。サムスン社でも、エンジニアがChatGPTに社内のソースコードを入力したところその内容が流出する懸念が生じ、社内での使用禁止に踏み切りました。サムスンは特に、社外のAIサービスに送ったデータは後から削除・回収するのが難しく、他のユーザーからも見られてしまう可能性がある点を問題視しています。事実、サムスン社内の調査では約65%の従業員が「生成AIツールの利用はセキュリティ上のリスクがある」と回答したとのことです。 このように機密情報の漏洩リスクは大きな課題です。社外のクラウドサービスにデータを送る以上、「100%安全」と言い切ることは困難です。特に個人情報保護や業界の規制が厳しい分野では、たとえChatGPTのAPIが便利でも利用できないケースがあるでしょう。社内ポリシーや契約上、データを第三者に提供できない場合もあります。 もっとも、OpenAI側も企業利用を想定してデータプライバシー対策を講じています。OpenAIは「API経由で送受信されたデータはモデルの学習に使用しない(ユーザーが明示的に許可しない限り)】」と公式に表明しています。つまり、APIで送ったプロンプトや得られた回答内容が、その後のChatGPTの賢さ向上のために勝手に使われることはないという約束です。また、2023年4月にはChatGPTの一般ユーザー向けにも「会話履歴を保存しないインコグニートモード」が提供されました。API利用においても、企業向けに一定期間後にデータを消去するオプションや、専用インスタンスの提供などの施策が講じられています。 しかしながら、たとえOpenAIがデータを悪用しなくても、送信中のデータが盗聴されるリスクや、不慮のバグで情報が流出するといった可能性はゼロではありません。また、生成された回答内容にもセキュリティ上の注意が必要です。AIはハルシネーション(誤情報の生成)をしばしば起こしたり、悪意あるユーザーからの入力によって意図しない発言をしてしまったりします。公開チャットボットにChatGPTのAPIを使う場合、ユーザーから攻撃的なプロンプトを与えられAIが不適切な発言を返す「ジェイルブレイク」と呼ばれる問題も報告されています。企業としては自社のブランドイメージを損なうリスクにもつながりかねません。 以上より、ChatGPTのAPI導入に当たってはセキュリティポリシーと利用ルールの整備が不可欠です。扱うデータの内容を精査し、機密情報は送らない、どうしても必要な場合は匿名化・暗号化するといった対策を講じましょう。また、社員が業務でChatGPTのAPIを利用する際のルールも定めておくべきです(例えば「顧客の個人情報は絶対に入力しない」など)。さらに、APIの応答結果についても人間によるレビュー工程を残しておくなど、AIに完全依存しない仕組みをつくることが重要です。 OpenAIも「ユーザーデータの保護は我々の使命において基本だ」と述べ、API経由のデータを勝手に学習利用しないと明言しています。このような公式の約束を信頼しつつも、最終的なリスク管理責任は利用企業側にあることを忘れないようにしましょう。 ChatGPTのAPI活用によるAI開発の限界 ここまで見てきたように強力なChatGPTのAPIですが、AI開発の万能な解決策ではないことも認識しておく必要があります。ChatGPTのAPIにはいくつかの限界があり、場合によっては独自のAI開発や他の手法が必要になることもあります。この章では、ChatGPTのAPIを用いたAI開発の限界と、カスタマイズしたAI、つまりカスタムAIの開発が求められる場面について説明します。 モデルの応答品質と信頼性の限界 ChatGPTは非常に高度な応答生成ができますが、完璧ではありません。最大の問題はハルシネーションです。ChatGPTは自信満々に事実でない内容を答えてしまうことがあり、ユーザーがそれを見抜くことが困難な場合があります。また学習データに起因する偏りや不適切な発言のリスクも完全には排除できません。初期のChatGPTは人種差別的な回答を引き出されるなど問題がありましたが、現在でもプロンプト次第で望ましくない発言が出てしまう可能性はゼロではありません。 このように回答内容の正確性・一貫性を保証できない点は、重要な判断をAIに任せるには大きな障壁です。医療・法務のような正確性が求められる分野では、ChatGPTのAPIの活用には人間による慎重な検証が不可欠です。 リアルタイム性・最新情報の限界 ChatGPTで用いられるモデルは学習済みモデルであり、学習データ以降の新しい出来事や最新の専門知識を含んでいません。最新の社内データやリアルタイムデータを扱うには、外部情報をプロンプトに与えるなど工夫が必要です。それでも大量の情報をその都度プロンプトに含めることはトークン制限上難しく、最新情報への対応という点で限界があります。 ライセンス・運用コスト ChatGPTのAPIのコストは比較的安価とはいえ、大量利用時のコストや、データを外部に送ることへの懸念から、すべてを任せられない場合もあります。また、外部サービスに依存することで将来的な価格改定やサービス停止リスクもあります。自社サービスの根幹をChatGPTのAPIに頼り切るのは、ベンダーロックイン(特定のベンダーが提供する製品やサービスに依存しすぎてしまい、他の選択肢に乗り換えにくくなる状態)に陥るリスクも伴います。 カスタムAI開発の必要性 以上のような理由から、ChatGPTのAPIだけでは十分でないケースでは、自社のビジネス環境に合わせたカスタムAIを開発することも有効です。具体的には以下のようなアプローチを取ります。 独自モデルの構築 極めて特化した用途や機密データを扱う場合、オープンソースの大規模言語モデル(例:MetaのLLaMAなど)をベースに自社で学習させる選択肢があります。モデルを自社サーバー上にホストすれば、データが外部に出る心配はありませんし、必要に応じてモデル構造や挙動を細かく調整できます。 大手企業の中には、ChatGPTではなく自社専用の言語モデル開発に乗り出す例もあります。実際、サムスンは社内のソフトウエア開発支援や翻訳のために社内専用のAIツール開発を進めていると報じられています。アップルも自社でChatGPTのような生成AI技術を開発中とされ、外部への情報漏洩を防ぐため社内ではChatGPT利用を禁止する措置を取りました。 ハイブリッドな仕組み 完全に独自モデルを作らずとも、ChatGPTのAPIと組み合わせて信頼性を高める仕組みも考えられます。例えばまずChatGPTのAPIにドラフトを書かせ、その内容を自社のルールベースのシステムでチェック・修正する、といった二段構えにする方法です。また、社内の機密質問にはChatGPTではなくルールベースのFAQだけ回答させ、一般的な質問はChatGPTが答えるよう振り分けるケースもあるでしょう。つまり、ChatGPTのAPIの長所を生かしつつ、短所を補うために追加の開発や他技術との組み合わせが必要になる場面があるということです。 ファインチューニングや追加学習 前述のOpenAIのファインチューニング機能も、自社データで精度を高めるカスタマイズの一種です。これによりChatGPTの限界をある程度押し広げることができます。例えば知識のアップデートをファインチューニングで施したり、誤答しやすいポイントを学習させて回避したりといったことが可能です。ただしファインチューニングにはそれなりのコストと手間がかかり、すべての企業が簡単にできるわけではありません。また極端に最新の情報反映には向かないため、用途を見極めて使う必要があります。 なお、当社Laboro.AIでは、クライアント企業様のコア業務の変革&イノベーションの創出に向け、オーダーメイドによるAIソリューション「カスタムAI」を開発‧提供しています。カスタムAIは、アカデミア出自の先端の機械学習技術をベースに、ビジネスにジャストフィットするかたちでAIを個別開発することにより、画一的なパッケージ型AIでは対応が難しい、ビジネス現場特有の複雑な課題の解決に貢献します。 詳しくはこちらをご覧ください。 カスタムAI開発 まとめ 要するに、ChatGPTのAPIは非常に強力なツールである一方、万能ではありません。ビジネス担当者としては「ChatGPTのAPIを入れれば何でも解決」という誤解を改め、得意な領域・不得意な領域を理解した上で戦略を立てることが重要です。必要に応じて、ChatGPTのAPI以外のAI手法(ルールベース、他の機械学習モデルなど)や、オンプレミスの自社モデル開発も検討しましょう。最終的には、複数の技術を組み合わせたベストミックスのAIソリューションを構築することが、真に現実的で有用なAI導入につながるはずです。そのためには、AIベンダーにコンサルティングを依頼するのも有効な選択肢の一つです。 参考文献 TechCrunch “ OpenAI launches an API for ChatGPT, plus dedicated capacity for enterprise customers “ OpenAI Help Center “ GPTs vs Assistants ” 日経XTECH「 OpenAIが「AgentKit」提供開始 エージェント開発、ローコードで試作から実装まで 」 パーソルクロステクノロジー「 ChatGPTのAPIの使い方とは?料金体系や無料トライアル・活用事例・導入方法まで徹底解説 」 TechCrunch “ OpenAI launches an API for ChatGPT, plus dedicated capacity for enterprise customers “ Reuters “ Apple restricts use of OpenAI’s ChatGPT for employees, Wall Street Journal reports “ TechCrunch “ Samsung bans use of generative AI tools like ChatGPT after April internal data leak “ 執筆者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post ChatGPTのAPIとは。概要や導入方法、開発の限界について解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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感情分析の研究動向  【連載】自然言語処理の研究動向 第5回 2025.9.29 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 自然言語処理における感情分析(Sentiment Analysis)は、ABSA(Aspect-Based Sentiment Analysis、アスペクトベース感情分析)を用いることで、従来では捉えきれない具体的な長所や短所を、製品・サービスのユーザーのフィードバックから明らかにできます。これにより、より賢明な意思決定ができる強固な土台が築かれます。ABSAは自然言語処理の進化とともに発展し続けていて、より明確で実行可能な顧客インサイトを求める企業にとって、着実に実用的なツールとなりつつあります。本コラムでは、ABSAの主要な技術的進歩と今後の展望について述べ、これらの発展が企業・団体にもたらし得る具体的な価値を考察します。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 連載第4回「 質問応答 」は こちら 。 自然言語処理関連の学会における感情分析関連論文の割合 目 次 ・ 感情分析とは ・ 主要な技術的進歩 ・ 今後の展望と課題  ・ 暗黙的な感情や微妙な表現  ・ ABSAにおけるLLMの推奨される方法 感情分析とは 感情分析は、人々が製品・サービス、ブランドに対して抱いている感情をテキストデータを通じて理解するための重要なタスクです。レビューやアンケート、ソーシャルメディアの投稿から意見を自動で抽出することで、世間の認識を広く把握する上で貴重な洞察を得られます。この能力はマーケティング、カスタマーサポート、製品・サービス開発といった分野でますます重要になっています。これらの領域では、ユーザーの感情を明確に把握することが、意思決定に大いに役立つためです。 従来の感情分析では、文書全体に対して肯定的、否定的、中立的といった単一のラベルを割り当てていました。しかし実際には、ユーザーが一つのテキスト内で複数の異なる意見を述べることは珍しくありません。例えば、あるレビューでは製品の品質を賞賛する一方で、価格や配送時間は非難していることがあります。そうした場合、単一のラベルを割り当てるという粗い分析手法では、重要なニュアンスを見落としてしまいます。 こうした課題を解決するのがABSAです。ABSAではフィードバックを特定の(評価対象となる要素)ごとに分解し、それぞれに対して示された感情を判定します。その結果、顧客の感じ方をより明確に捉えられ、その情報を実際の施策に生かしやすくなります。それにより、製品・サービスの強みを正確に把握し、逆に欠点も見つけ出し、改善策に優先順位を付けられるようになります。 主要な技術的進歩 ABSAの発展は、初期のニューラルネットワークからTransformerモデル、そして近年では大規模言語モデル(LLM)へと推移してきました。最初の大きな飛躍として、 Tang et al. (2016) によるLSTMの導入や Chen et al. (2017) による再帰型アテンションネットワーク(Recurrent Attention Network)の提案が挙げられます。これらのモデルは、与えられたアスペクトに対して文のどの部分が最も関連するかを学習します。これにより、それまで人手で特徴量を設計していたABSA手法と比べて、分析精度が大きく向上しました。 第2の波はBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers、Transformerによる双方向のエンコード表現)などのTransformerモデルの登場です。これらのモデルは文全体を文脈として扱うため、文の構造が複雑でも、微妙な感情の兆候を捉えることが可能になりました。この時期の重要なマイルストーンとして、BERTの文脈理解と構文グラフから得られる文法情報を組み合わせたハイブリッドモデル ASGCN-BERT の開発があります。構造とセマンティクス(意味)を組み合わせることにより、システムは意見を表す単語とそれが指すアスペクトをより的確に結び付けられるようになり、特に専門性の高い領域でその効果が顕著でした。 そして近年では、LLMの登場により、新たにタスク専用のモデルを訓練しなくてもABSAを適用しやすくなっています。とはいえ、LLMは柔軟性と使いやすさに優れる一方で、特定の明確に定義されたABSAタスクにおける精度では、 Hasan et al.(2024) や Smid et al.(2024) が指摘しているように、ファインチューニング(微調整)されたTransformerモデルにしばしば劣ります。 ABSAが進化する中で、現実世界の感情には、アスペクトと感情の単純なペアを超えた複雑な関係が含まれることが認識されてきました。例えば「画面は素晴らしいがバッテリーはすぐに切れる」というレビューには複数のアスペクト(画面、バッテリー)と、それぞれに対応する意見表現(「素晴らしい」「すぐに切れる」)およびセンチメント(肯定的、否定的)が含まれています。例えば、このニュアンスを捉えることができるかどうかを評価するために、より高度なタスクが提案されています。例えば、 Peng et al.(2020) による Aspect–Sentiment–Opinion Triplet Extraction(ASTE:側面・感情・意見の三つ組抽出)、 Zhang et al.(2021) による Aspect Sentiment Quad Prediction(ASQP:側面感情四要素予測)、そして Cai et al.(2021) による Aspect–Category–Opinion–Sentiment Quadruple Prediction(ACOS:側面・カテゴリ・意見・感情の四つ組予測) です。                    逐次的なパイプラインを用いて三つ組や四つ組を組み立てると誤りが蓄積しやすいため、最近の研究では、一度の処理で全要素を直接抽出するエンドツーエンド型モデルへとシフトしています。三つ組抽出(Triplet Extraction) では Xu et al.(2020) 、 Zhang et al.(2020) 、 Xu et al.(2021) が、四つ組抽出(Quadruple Extraction) では Cai et al.(2021) と Hu et al.(2022) がその例です。     こうした詳細な抽出により、ユーザーからのフィードバックをより深く洞察し、特定のアスペクトに対する感情だけでなく、その裏付けとなる理由までも把握できるようになります。 今後の展望と課題 暗黙的な感情や微妙な表現 ABSAに根強く残る課題の一つに、「暗黙のアスペクト」に対する感情の検出があります。アスペクトが明示的に言及されていない場合や、感情が皮肉、否定、慣用句などで表現される場合にこの問題が生じます。例えば「値段が高すぎる」といえば価格について否定的な評価を暗に示しています。「悪くない」は否定形ですが実際には肯定的な意味で使われることがあります。また「使い捨てにちょうどいい」といった表現は皮肉の可能性があり、その場合は「すぐに壊れてしまった」という意味になります。 この課題に対する研究からは、いくつか有望な方向性が示されています。 Cui et al. (2023) は、文書全体の一貫性を捉え、明示的に書かれた文から手がかりを抽出することで、アスペクトが暗黙的な場合でも性能を向上できることを示しています。 Zhu et al. (2024) の研究では、表面上の極性を逆転させることの多い皮肉に対して、ABSAのパイプライン上に専用の処理層を追加する必要があることが示唆されています。 Fei et al. (2023) は、LLMに思考の連鎖(chain-of-thought)を促すプロンプトを用いて、暗黙のアスペクト、意見、感情を段階的に特定させています。その結果、教師ありでもゼロショット設定でも、より良好な結果が得られています。 ABSAにおけるLLMの推奨される方法 LLMの登場によりABSAには新たな可能性が開けました。しかし流暢な文章を生成できるというLLMの強みが、信頼性の高い構造化された分析結果にそのまま結び付くとは限りません。ABSAではアスペクト、意見、感情の極性(肯定的、否定的、中立的といった方向性を示すもの)といった明確に定義された要素を抽出する必要があります。しかし追加の指示がない状態ではLLMはこれらの項目の一部を見落としたり、出力に矛盾が生じたり、表面的な手がかりに過度に依存してしまったりしがちです。 近年の研究では、LLMをABSAでより確実に活用するためのいくつかの手法が示されています。 Scaria et al. (2024) は、ABSAに特化した例でモデルをインストラクションチューニング(※1)することで、さまざまなタスクにおいて一貫した性能向上が得られることを示しています。 Kim et al. (2024) の研究では、感情を判定する前にモデルに中間的な推論過程を示させ、その後に自己整合性チェックを行うことで、精度が向上するだけでなく結果の解釈もしやすくなることが示されました。一方、 Bai et al. (2024) は、汎用のLLMはプロンプトで出力形式や回答範囲に制約を設けたり出力に後処理を施したりしても、教師ありで訓練された最先端モデルの性能には及ばないと報告しています。 これらの知見により、LLMのインコンテキスト学習(※2)だけに頼るのではなく、段階的に指示を与えるプロンプト設計や、対象領域に応じた軽い追加学習といった、LLMを補助する枠組みが必要であることが明らかになっています。 ※1 指示と応答のデータでモデルを再学習し、人間の指示に従って動作する能力を強化する学習手法。 ※2 LLMが追加の学習やパラメータ更新を行わずに、入力時に与えられた例や指示を文脈として利用し、その場で新しいタスクに対応すること。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 連載第4回「 質問応答 」は こちら 。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 訳者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社などメディア企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post 感情分析の研究動向 【連載】自然言語処理の研究動向 第5回 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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感情分析の研究動向  【連載】自然言語処理の研究動向 第5回 2025.9.29 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 自然言語処理における感情分析(Sentiment Analysis)は、ABSA(Aspect-Based Sentiment Analysis、アスペクトベース感情分析)を用いることで、従来では捉えきれない具体的な長所や短所を、製品・サービスのユーザーのフィードバックから明らかにできます。これにより、より賢明な意思決定ができる強固な土台が築かれます。ABSAは自然言語処理の進化とともに発展し続けていて、より明確で実行可能な顧客インサイトを求める企業にとって、着実に実用的なツールとなりつつあります。本コラムでは、ABSAの主要な技術的進歩と今後の展望について述べ、これらの発展が企業・団体にもたらし得る具体的な価値を考察します。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 連載第4回「 質問応答 」は こちら 。 自然言語処理関連の学会における感情分析関連論文の割合 目 次 ・ 感情分析とは ・ 主要な技術的進歩 ・ 今後の展望と課題  ・ 暗黙的な感情や微妙な表現  ・ ABSAにおけるLLMの推奨される方法 感情分析とは 感情分析は、人々が製品・サービス、ブランドに対して抱いている感情をテキストデータを通じて理解するための重要なタスクです。レビューやアンケート、ソーシャルメディアの投稿から意見を自動で抽出することで、世間の認識を広く把握する上で貴重な洞察を得られます。この能力はマーケティング、カスタマーサポート、製品・サービス開発といった分野でますます重要になっています。これらの領域では、ユーザーの感情を明確に把握することが、意思決定に大いに役立つためです。 従来の感情分析では、文書全体に対して肯定的、否定的、中立的といった単一のラベルを割り当てていました。しかし実際には、ユーザーが一つのテキスト内で複数の異なる意見を述べることは珍しくありません。例えば、あるレビューでは製品の品質を賞賛する一方で、価格や配送時間は非難していることがあります。そうした場合、単一のラベルを割り当てるという粗い分析手法では、重要なニュアンスを見落としてしまいます。 こうした課題を解決するのがABSAです。ABSAではフィードバックを特定の(評価対象となる要素)ごとに分解し、それぞれに対して示された感情を判定します。その結果、顧客の感じ方をより明確に捉えられ、その情報を実際の施策に生かしやすくなります。それにより、製品・サービスの強みを正確に把握し、逆に欠点も見つけ出し、改善策に優先順位を付けられるようになります。 主要な技術的進歩 ABSAの発展は、初期のニューラルネットワークからTransformerモデル、そして近年では大規模言語モデル(LLM)へと推移してきました。最初の大きな飛躍として、 Tang et al. (2016) によるLSTMの導入や Chen et al. (2017) による再帰型アテンションネットワーク(Recurrent Attention Network)の提案が挙げられます。これらのモデルは、与えられたアスペクトに対して文のどの部分が最も関連するかを学習します。これにより、それまで人手で特徴量を設計していたABSA手法と比べて、分析精度が大きく向上しました。 第2の波はBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers、Transformerによる双方向のエンコード表現)などのTransformerモデルの登場です。これらのモデルは文全体を文脈として扱うため、文の構造が複雑でも、微妙な感情の兆候を捉えることが可能になりました。この時期の重要なマイルストーンとして、BERTの文脈理解と構文グラフから得られる文法情報を組み合わせたハイブリッドモデル ASGCN-BERT の開発があります。構造とセマンティクス(意味)を組み合わせることにより、システムは意見を表す単語とそれが指すアスペクトをより的確に結び付けられるようになり、特に専門性の高い領域でその効果が顕著でした。 そして近年では、LLMの登場により、新たにタスク専用のモデルを訓練しなくてもABSAを適用しやすくなっています。とはいえ、LLMは柔軟性と使いやすさに優れる一方で、特定の明確に定義されたABSAタスクにおける精度では、 Hasan et al.(2024) や Smid et al.(2024) が指摘しているように、ファインチューニング(微調整)されたTransformerモデルにしばしば劣ります。 ABSAが進化する中で、現実世界の感情には、アスペクトと感情の単純なペアを超えた複雑な関係が含まれることが認識されてきました。例えば「画面は素晴らしいがバッテリーはすぐに切れる」というレビューには複数のアスペクト(画面、バッテリー)と、それぞれに対応する意見表現(「素晴らしい」「すぐに切れる」)およびセンチメント(肯定的、否定的)が含まれています。例えば、このニュアンスを捉えることができるかどうかを評価するために、より高度なタスクが提案されています。例えば、 Peng et al.(2020) による Aspect–Sentiment–Opinion Triplet Extraction(ASTE:側面・感情・意見の三つ組抽出)、 Zhang et al.(2021) による Aspect Sentiment Quad Prediction(ASQP:側面感情四要素予測)、そして Cai et al.(2021) による Aspect–Category–Opinion–Sentiment Quadruple Prediction(ACOS:側面・カテゴリ・意見・感情の四つ組予測) です。                    逐次的なパイプラインを用いて三つ組や四つ組を組み立てると誤りが蓄積しやすいため、最近の研究では、一度の処理で全要素を直接抽出するエンドツーエンド型モデルへとシフトしています。三つ組抽出(Triplet Extraction) では Xu et al.(2020) 、 Zhang et al.(2020) 、 Xu et al.(2021) が、四つ組抽出(Quadruple Extraction) では Cai et al.(2021) と Hu et al.(2022) がその例です。     こうした詳細な抽出により、ユーザーからのフィードバックをより深く洞察し、特定のアスペクトに対する感情だけでなく、その裏付けとなる理由までも把握できるようになります。 今後の展望と課題 暗黙的な感情や微妙な表現 ABSAに根強く残る課題の一つに、「暗黙のアスペクト」に対する感情の検出があります。アスペクトが明示的に言及されていない場合や、感情が皮肉、否定、慣用句などで表現される場合にこの問題が生じます。例えば「値段が高すぎる」といえば価格について否定的な評価を暗に示しています。「悪くない」は否定形ですが実際には肯定的な意味で使われることがあります。また「使い捨てにちょうどいい」といった表現は皮肉の可能性があり、その場合は「すぐに壊れてしまった」という意味になります。 この課題に対する研究からは、いくつか有望な方向性が示されています。 Cui et al. (2023) は、文書全体の一貫性を捉え、明示的に書かれた文から手がかりを抽出することで、アスペクトが暗黙的な場合でも性能を向上できることを示しています。 Zhu et al. (2024) の研究では、表面上の極性を逆転させることの多い皮肉に対して、ABSAのパイプライン上に専用の処理層を追加する必要があることが示唆されています。 Fei et al. (2023) は、LLMに思考の連鎖(chain-of-thought)を促すプロンプトを用いて、暗黙のアスペクト、意見、感情を段階的に特定させています。その結果、教師ありでもゼロショット設定でも、より良好な結果が得られています。 ABSAにおけるLLMの推奨される方法 LLMの登場によりABSAには新たな可能性が開けました。しかし流暢な文章を生成できるというLLMの強みが、信頼性の高い構造化された分析結果にそのまま結び付くとは限りません。ABSAではアスペクト、意見、感情の極性(肯定的、否定的、中立的といった方向性を示すもの)といった明確に定義された要素を抽出する必要があります。しかし追加の指示がない状態ではLLMはこれらの項目の一部を見落としたり、出力に矛盾が生じたり、表面的な手がかりに過度に依存してしまったりしがちです。 近年の研究では、LLMをABSAでより確実に活用するためのいくつかの手法が示されています。 Scaria et al. (2024) は、ABSAに特化した例でモデルをインストラクションチューニング(※1)することで、さまざまなタスクにおいて一貫した性能向上が得られることを示しています。 Kim et al. (2024) の研究では、感情を判定する前にモデルに中間的な推論過程を示させ、その後に自己整合性チェックを行うことで、精度が向上するだけでなく結果の解釈もしやすくなることが示されました。一方、 Bai et al. (2024) は、汎用のLLMはプロンプトで出力形式や回答範囲に制約を設けたり出力に後処理を施したりしても、教師ありで訓練された最先端モデルの性能には及ばないと報告しています。 これらの知見により、LLMのインコンテキスト学習(※2)だけに頼るのではなく、段階的に指示を与えるプロンプト設計や、対象領域に応じた軽い追加学習といった、LLMを補助する枠組みが必要であることが明らかになっています。 ※1 指示と応答のデータでモデルを再学習し、人間の指示に従って動作する能力を強化する学習手法。 ※2 LLMが追加の学習やパラメータ更新を行わずに、入力時に与えられた例や指示を文脈として利用し、その場で新しいタスクに対応すること。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 連載第4回「 質問応答 」は こちら 。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 訳者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社などメディア企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post 感情分析の研究動向 【連載】自然言語処理の研究動向 第5回 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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質問応答の研究動向  【連載】自然言語処理の研究動向 第4回 2025.9.17 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 質問応答の技術は、回答を文書からそのままコピーする単純なシステムから、大規模言語モデル(LLM)によって流暢な自然な回答を生成するRAG(Retrieval Augmented Generation、検索に基づく回答生成)へと進化してきました。現代の質問応答システムは、複数文書にわたる推論、対話形式の質問への対応、表やチャートなど構造化データの解釈といった、多岐にわたる能力が試されています。検索と生成のバランスを取りながら、流暢であるだけでなく信頼性・効率性にも優れ、さまざまな質問の種類や形式に適応できる質問応答システムの実現が追求されています。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 目 次 ・ 質問応答とは ・ 主要な技術的進歩 ・ 将来の展望と課題  ・ いつ記憶し、いつ検索するか  ・ マルチホップ推論の利点とコスト 自然言語処理関連の学会におけるテキスト要約関連論文の割合 質問応答とは 質問応答システムは、人間の言語と機械による理解との差異を埋め、利用可能な情報に基づいて、正確な答えを自動的に提供することを目指しています。データ量が指数関数的に増え続ける中、必要な情報を正確かつタイムリーに引き出すシステムへの需要はこれまでになく高まっています。キーワードのマッチングや表面的なテキスト類似度に頼る従来の情報検索手法ではもはや、十分ではありません。 こうした背景から、現代の質問応答システムはより洗練された手法を取り入れて進化し、文脈の理解、複数文書にまたがる推論、人々が自然に行う質問への適応といった高度なタスクが可能になっています。これらの変化は、機械が人間の言葉を理解し応答する方法における根本的な変革であり、学術界と産業界の両方で研究とイノベーションを促進する原動力となり続けています。 主要な技術的進歩 質問応答システムの進化における大きな進歩の一つは、まず関連文書を検索し、それから読解して回答を抽出するという2段階のアプローチを採用したことです。 Chen et al.(2017年) は、高速なTF-IDFベース(※)の検索エンジンで関連しそうな文章を見つけ、その後ニューラルネットワークを使った読解モデルで回答箇所を特定するという手法を初めて導入しました。これにより、数百万件に及ぶWikipedia記事を効率的に検索・読解できることが示され、大規模かつドメインを限定しない質問応答を、商用レベルで実現可能であることが明らかになりました。 ※文書中の単語について、出現頻度(TF: Term Frequency)と、その単語がコーパス全体でどれだけ珍しいか(IDF: Inverse Document Frequency)を掛け合わせた重みを計算し、その値に基づいて検索結果の関連度をスコア化したり、文書を数値ベクトルに変換したりする方式。 続いて2020年には、 DPR(Dense Passage Retrieval) という飛躍的な研究成果が登場しました。2段階のアプローチは踏襲しつつ、単語の単純な一致に依拠した検索を高密度なベクトル表現による検索に置き換えることで、より効果的で、表記や文脈の違いに左右されない検索を可能にしました。同じく2020年には、Facebook(現Meta)が RAG を提案し、ニューラルネットワークを使った読解モデルをシーケンス間の生成モデルに置き換えました。 RAGでは、回答を文書から逐語的にコピーするのではなく、検索で得たエビデンスに基づいてモデル自身が回答を作り上げることができます。この変更により、裏付けとなる文書に基づきつつも、複数文からなる流暢で自然な対話となる回答の生成が可能となりました。しかしその代償として計算コストが増大し、出典の追跡も一段と難しくなりました。多くの質問応答システムは今日、回答の質と計算コストのバランスが取れたところに位置しています。簡単に裏付けられる事実に答える場合には、検索と読解の2段階からなる軽量な方式で十分対応できる在り方から、より詳しく説明的で一貫性のある回答を生み出すためにRAGをフルに統合した方式まで、さまざまなバリエーションが存在しているのです。 質問応答の発展を後押ししたもう一つの重要な原動力となったのは、多様なデータセットとベンチマークが継続的に登場してきたことです。これらはそれぞれ、質問応答システムに必要な異なる能力を測定するよう設計されました。2016年に公開された SQuAD は、単一の段落から正解部分を抽出するタスクの基準を打ち立てました。2018年に登場した SQuAD 2.0 では、答えの存在しない質問が追加され、モデルが「答えはない」と判断する能力も求められるようになりました。 WebQuestions(2013) 、 TriviaQA(2017) 、 Natural Questions(2019) といったデータセットは、Wikipediaやウェブ全体といった大規模コーパスから関連情報を検索して回答する、ドメインを限定しない質問応答の課題へと挑戦の幅を広げました。 さらに、 HotpotQA(2018) や WikiHop(2018) では、複数の情報源から情報を取得して連鎖させて回答を導くマルチホップ推論を要件として課し、質問回答の精度を前進させました。対話指向のデータセットとしては、 QuAC(2018) や CoQA(2019) が会話の文脈を取り入れ、モデルが会話の流れの中で、省略や指示語を正しく理解できるかどうかを評価しています。 さらに近年では、 HybridQA(2020) 、 DocVQA(2020) 、 ChartQA(2022) 、 MMCoQA(2022) といったマルチモーダルなベンチマークが登場し、モデルにテキスト以外の表やチャート、画像、スキャン文書などを統合して推論する力を要件として課しています。これらの多様なベンチマークは総じて、現代の質問応答システムに必要な能力の位置付けを整理し、今後の研究が複雑で多様な課題へ広がっていく方向性を示しています。 将来の展望と課題 いつ記憶し、いつ検索するか ユーザーは今や、ニッチな話題や速報性の高いニュースであっても、即座かつ信頼できる回答を質問応答システムに期待しています。しかしRAGのような手法で外部知識へアクセスできるようになった現在でも、質問応答システムがモデル内部に「記憶」された知識と外部から「検索」して得る知識のどちらに頼るべきかの判断は、依然として課題であり続けています。 Mallen et al.(2023) は、GPT-3(davinci-003、約1750億パラメータ)のような巨大モデルでさえ、オンライン上に数回しか現れない事実に関しては正確に対処できないことを示しました。一方で、より小規模なモデルに外部検索を組み合わせることで、こうした難問に対して巨大モデルを容易に凌駕する性能を発揮できることも示されてきました。 Neeman et al.(2023) は、質問応答システムにパラメトリックな(パラメータとしてモデルの内部に保持されている)知識に基づく回答と、検索で得た文脈に基づく回答の二つを生成させる手法に取り組んでいます。また、 Vu et al.(2024) は、世界の変化に伴いパラメトリックな知識がいかに脆弱になり得るかを浮き彫りにしました。 要するに、次世代の質問応答システムでは、自身のモデルの重みに内包された知識に頼るべき場合と、新鮮なエビデンスを外部から取得すべき場合とをリアルタイムで適切に見極め、両者をシームレスに統合することが求められているのです。 マルチホップ推論の利点とコスト 現実世界で出てくる多くの質問に対しては、複数の情報源にまたがって推論をして初めて一貫した回答が得られます。 Trivedi et al.(2023) や Diao et al.(2024) の研究では、モデルが推論過程を声に出して考えるように進めたり、追加の質問を発したり、段階的に回答を洗練できたりするようにすることで、複雑なベンチマークにおいて大幅な性能向上を達成しています。 Caciularu et al.(2023) 、 Khalifa et al.(2023) 、 Li et al.(2024) などの研究では、各段階での検索プロセスをさらに洗練する試みがなされています。しかし、ホップ(推論の段階)を一つ追加するごとに新たな検索が必要となり、GPUの処理時間が増大してユーザーの待ち時間も長くなります。また、序盤の段階で生じた誤りが推論の流れ全体を誤った方向に導いてしまうこともあります。ユーザーが徒労を強いられることなく迅速で信頼性の高い回答を得るためには、マルチホップ推論の深さを維持しつつも、処理の遅延と誤答の発生率を最小限に抑える最適なバランスを見いだすことが、課題となっています。 幸いなことに、こうした技術革新は、研究段階から実際の製品・サービスへと驚くべき速さで移行しつつあります。質問応答の次なる革新の波は、モデル内部の知識と外部知識の信頼性を考慮した融合や、無駄がなく信頼性の高いマルチステップ検索にかかっています。そしてそれらを、実際にユーザーが使うシステムに求められる速度、透明性、コスト要件を満たすかたちで実現することが、今後の鍵となるでしょう。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 連載第3回「 テキスト要約の研究動向 」は こちら 。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 訳者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社などメディア企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post 質問応答の研究動向 【連載】自然言語処理の研究動向 第4回 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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Text Summarization – NLP White Paper Part 3 2025.9.1 Laboro.AI Inc. Lead ML Researcher Zhao Xinyi 日本語版(Japanese version)は こちら Here is NLP White Paper – Part1: Overview Here is Neural Machine Translation – NLP White Paper Part 2 Introduction Text summarization has undergone a major shift with the rise of pre-trained language models such as BERT, which deliver more natural summaries while cutting down the need for extensively labeled data. The focus is now shifting to domain-specific use cases, from quickly capturing findings in scientific papers to explaining source code, condensing long legal or government reports, and turning conversations into easy-to-follow notes. The main challenge is factual accuracy: abstractive summaries can sound convincing but drift from the source, driving ongoing research into methods, tools, and benchmarks that ensure summaries remain both fluent and faithful. Contents ・ Introduction to Text Summarization ・ Core Breakthroughs ・ Future Directions & Challenges Test Summarization Paper Percentage in NLP Conferences Introduction to Text Summarization Text Summarization is a critical task in Natural Language Processing, aimed at creating shorter, coherent summaries that retain the essential information from longer texts. Summarization techniques are generally divided into extractive methods, which directly select important sentences or phrases the source, and abstractive methods, which rephrase and synthesize content in a way that mirrors how humans summarize. The rapid rise of generative AI in recent years has brought growing attention to abstractive summarization. Unlike simply copying and pasting from the source text, abstractive summarization produces results that read more natural and flexible. On top of that, the emergence of generative AI and large language models (LLMs) has made what was once technically difficult not only feasible but also practical. As digital content continues to grow across domains like journalism, education, legal services, and enterprise communication, the demand for effective summarization tools is rapidly increasing. Thanks to advances in deep learning and generative modeling, summarization systems are now more capable of meeting this need, offering new possibilities for information access and productivity. Core Breakthroughs A notable development in text summarization is the adoption of pretrained language models, which have significantly advanced the field by offering strong, context-aware text representations. A representative study by Liu and Lapata, 2019 demonstrated drastic improvements in both extractive and abstractive summarization by adapting the BERT model for these tasks.  This approach marks a departure from traditional methods that required learning both language understanding and summarization at the same time. By offloading general language learning to pretraining, these models reduce the need for hundreds of thousands or even millions of labeled data, demonstrating that high-quality summarization can be achieved with only thousands of labeled examples. Recent breakthroughs have also focused on applying summarization to specific domains where information is dense and time-consuming to digest. In scientific publishing, single-sentence TLDR summaries help researchers and professionals quickly decide whether a paper is worth reading (e.g., Cachola et al., 2020 ). In software development, automated summaries of source code functions can speed up onboarding and reduce time spent reading unfamiliar code (e.g., Ahmad et al., 2020 ). For government and corporate reports, new techniques now make it feasible to summarize extremely long documents, improving accessibility and saving hours of manual reading (e.g., Huang et al., 2021 ). And in customer service or meeting analytics, models that understand the flow of conversations can generate summaries of calls or chats, making it easier to track outcomes and improve service (e.g., Chen & Yang, 2020 ). These advances show how domain-adapted summarization tools can drive efficiency, reduce costs, and unlock value from previously underutilized information. Future Directions & Challenges A central challenge in text summarization is striking a balance between generative diversity and factual consistency. The appeal of abstractive summarization, especially with large language models (LLMs), lies in its ability to generate novel, fluent and human-like summaries. However, this very strength introduces the risk of hallucination, where plausible-sounding content deviates from the source material. As a result, recent research has increasingly focused on techniques to evaluate and improve factual faithfulness in summarization. Several studies have proposed novel methods to steer generation toward higher factual consistency. Wang et al., 2023 introduced a chain-of-thought prompting method to guide LLMs in producing more structured and accurate summaries, especially in news domains. Zhang et al., 2023 showed that prompting strategies such as in-context learning and extract-then-generate pipelines can help enhance factual consistency of LLM-generated summaries. Roit et al., 2023 took a different path by applying reinforcement learning, allowing their model to receive rewards based on how well the generated summary is entailed by the source. On the evaluation side, Kryściński et al., 2019 and Feng et al., 2023 proposed model-based approaches using BERT-like encoder-only language models to detect factual inconsistencies. A newer line of research explores whether LLMs themselves can evaluate the factual consistency of summaries. As suggested by studies like Tam et al., 2023 , Shen et al., 2023 and Liu et al., 2024 , while LLMs show some promise in this evaluator role, their evaluations can be self-biased, and their reliability as a substitute for human judgment remains debatable. To support more systematic evaluation, several benchmark datasets have been developed, including QAGS (2020) , FRANK (2021) , and ​​ AGGREFACT (2023) , each offering a different perspective on how to measure factual consistency. As text summarization becomes more fluent and general-purpose, ensuring factual reliability is more important than ever. The current landscape reflects a dual effort: improving how we generate summaries, and improving how we evaluate them. While notable progress has been made, reliable and scalable evaluation, especially when using LLMs, remains a critical open challenge. Author Laboro.AI Inc. Lead ML Researcher Zhao Xinyi Xinyi Zhao is a lead researcher at Laboro.AI Inc. Her research focuses on natural language processing, machine learning, and kowledge graphs. She has contributed multiple open-source datasets and models, and her recent work explores real-world applications of large language models. She’s passionate about bridging academic research with practical use cases. The post Text Summarization – NLP White Paper Part 3 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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テキスト要約の研究動向  【連載】自然言語処理の研究動向 第3回 2025.8.27 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 テキスト要約の分野は、BERTのような事前学習済み言語モデルの登場によって大きな変化を遂げました。より自然な要約が可能となり、大量のラベル付きデータへの依存も大幅に減少しました。その中でも現在注目されているのは、研究論文に含まれる主要な知見を迅速に把握することや、ソースコードの内容理解、法務や政府による長大な報告書の要約、会話内容を理解しやすいメモに変換することなど、ドメイン特化型のユースケースに移りつつあります。最大の課題は事実の正確性です。抽象型要約による出力は一見もっともらしく流暢に思える一方で、元の内容から逸脱するリスクをはらんでいます。そのため、要約の流暢さと意味内容の忠実さを保つための手法やツール、評価ベンチマークに関する研究が、活発に進められています。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 目 次 ・ テキスト要約とは ・ 主要な技術的進歩 ・ 今後の方向性と課題 自然言語処理関連の学会におけるテキスト要約関連論文の割合 テキスト要約とは テキスト要約は、自然言語処理における重要なタスクの一つです。長文から本質的な情報を保ったまま、より短くかつ一貫性のある要約文を作成することを目的としています。手法は大きく分けて 抽出型と抽象型の二つに分類されます。抽出型の手法では、元の文章から重要な文やフレーズを直接抜き出します。一方、抽象型の手法では、人間が要約するように内容を言い換えて統合した上で、新たに要約文を生成します。 近年、生成AIの急速な台頭に伴い、抽象型要約への注目が一段と高まっています。理由は二つあり、一つは、抽象型要約は元のテキストを単にコピー&ペーストするわけではないため、より自然で柔軟に感じられるからです。もう一つは、生成AIやLLM(大規模言語モデル)の登場により、かつては技術的に難しかったことが、実現可能なだけでなく実用的にもなってきたからです。 デジタルコンテンツがジャーナリズム、教育、法務、企業内コミュニケーションなどさまざまな領域で増え続けている中で、効果的な要約ツールに対する需要も急速に高まっています。要約システムは、ディープラーニングや生成モデルの進歩により、このニーズに対して以前にも増して応えられるようになり、情報の探しやすさや生産性向上の新たな可能性をもたらしています。 主要な技術的進歩 テキスト要約分野における注目すべき進展の一つは、事前学習済み言語モデルの採用です。これらのモデルにより、文脈を考慮した意味や文脈を的確に捉えられるベクトル表現が可能となり、要約の精度が飛躍的に向上しました。 Liu and Lapata (2019) の代表的な研究では、BERTモデルをこれらの要約タスクに適用することで、抽出型と抽象型の両方において性能が大幅に向上することが示されました。 このアプローチは、言語理解と要約の両方を同時に学習する必要があった従来の手法とは一線を画しています。一般的な言語理解の学習を事前学習に任せることで、これらのモデルは大量のラベル付きデータを必要としなくなりました。その結果、従来、教師データとして文書と要約のペアが数十万から数百万は必要だったところ、数千から数万でも高品質な要約を実現できることが示されました。 また最近では、短いテキストに多量の情報が詰め込まれていることで理解に時間を要する特定の分野に対して要約技術を応用する動きにも、注目が集まっています。学術出版の分野では、たった1文で構成される短い要約によって、論文が読む価値があるかどうかを研究者や専門家が迅速に判断できるようにしています(例えば Cachola et al. (2020) )。ソフトウエア開発の分野では、ソースコード中の関数を自動要約することで、見慣れないコードを読む時間を削減でき、例えば新任の開発者が業務に慣れるのを早めます(例えば Ahmad et al. (2020) )。 政府や企業の報告書では、極めて長い文書を要約可能にする新たな手法により、目視による何時間にも及ぶ逐語的な読解を減らせるようになり、欲しい情報へのアクセスがしやすくなります(例えば Huang et al. (2021) )。さらに、顧客対応や会議分析の分野では、会話の流れを理解できるモデルが通話やチャットの内容を要約し、やりとりの経緯を追跡しやすくし、サービス改善を容易にしています(例えば Chen and Yang (2020) )。 これらの進歩によって、特定領域に適応した要約ツールが効率を向上させ、コストを削減します。さらに、従来十分に活用されてこなかった情報から価値を引き出す手段となり得ることも示されています。 今後の方向性と課題 テキスト要約における主要な課題は、生成される文章の多様性と事実整合性のバランスを取ることです。特に LLMを用いる場合、抽象型要約の魅力は、斬新で流暢かつ人間らしい要約文を生成できる点にあります。しかしこの強みゆえに、もっともらしいことを言っているが事実からは逸脱してしまうハルシネーション(幻覚)のリスクも生じます。その結果、最近の研究においては、要約における事実への忠実性を評価・向上させる手法に一層の注目が集まっています。 要約の生成において事実整合性を高めるためには、いくつかの新たな手法が提案されています。例えば Wang et al. (2023) は chain-of-thought prompting(思考の連鎖を利用したプロンプト手法)を導入し、特にニュース領域において LLM がより構造化された正確な要約を生成できるようにしました。 また Zhang et al. (2023) は、in-context learning(コンテキスト内学習)や extract-then-generate pipeline(抽出してから生成するパイプライン)といったプロンプト手法が、LLM による要約の事実整合性を高めるのに有効であることを示しました。一方、 Roit et al. (2023) は異なるアプローチを取り、強化学習を導入しました。これは、生成された要約が原文にどれだけ含まれているかに応じて、モデルに報酬を与える手法です。 評価の面では、 Kryściński et al. (2019) と Feng et al. (2023) が、BERTのようなエンコーダーのみで構成される言語モデルを用いて、要約内の事実の不整合を検出するモデルベースの手法を提案しました。 新たな研究の流れとして、LLM 自身が要約の事実整合性を評価できるかどうかを探る試みもなされています。 Tam et al. (2023) 、 Shen et al. (2023) 、 Liu et al. (2024) などの研究によれば、LLM が評価者として一定の有望さを示す一方で、その評価には自己バイアスがかかる可能性があり、人間の判断を代替するものとしての信頼性には議論の余地が残されています。より体系的な評価を行うため、 QAGS (2020) 、 FRANK (2021) 、 AGGREFACT (2023) といったベンチマークデータセットも開発されています。それぞれが、要約の事実整合性を測定するための異なる視点を提供するものです。 テキスト要約の流暢さや汎用性が向上する中で、繰り返しになりますが、要約内容の事実面での信頼性を確保することがこれまで以上に重要になっています。現在、要約の生成方法の改善と評価方法の改善という二方向からの取り組みが進められています。しかし大きな進歩が見られる一方で、特に LLM を用いる場合の、信頼性が高くて大規模にも適用できる評価手法の確立は、依然として重要な未解決課題として残されています。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 連載第2回「 ニューラル機械翻訳の研究動向 」は こちら 。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 訳者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社などメディア企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post テキスト要約の研究動向 【連載】自然言語処理の研究動向 第3回 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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Neural Machine Translation – NLP White Paper Part 2 2025.8.21 Laboro.AI Inc. Lead ML Researcher Zhao Xinyi 日本語版(Japanese version)は こちら Here is NLP White Paper – Part1: Overview Introduction Since 2017, the Transformer architecture has dominated Neural Machine Translation (NMT), powering influential models like XLM, mBART, and mT5. Its encoder-decoder design effectively leverages parallel corpora. More recently, decoder-only large language models have emerged, enabling NMT to benefit from non-parallel data and carefully designed prompts. Despite this progress, low-resource and distant language pairs remain challenging. Approaches such as meta-learning, few-shot, and zero-shot translation aim to bridge these gaps via cross-lingual knowledge transfer. As the field evolves, new evaluation practices like COMET and BUFFET are complementing traditional metrics like BLEU, offering more reliable evaluations aligned with human judgments. Contents ・ Introduction to Neural Machine Translation ・ Core Breakthroughs ・ Future Directions & Challenges  ・ Low-Resource Neural Machine Translation  ・ Best Practices for LLM-Based Translation NMT Paper Percentage in NLP Conferences Introduction to Neural Machine Translation The field of Natural Language Processing has seen a major transformation in recent years, with Neural Machine Translation (NMT) playing a leading role. By leveraging deep learning, NMT has significantly surpassed traditional Statistical Machine Translation (SMT) in both translation accuracy and fluency. Unlike SMT, which relied on statistical phrase matching and probabilistic models, NMT treats translation as a single, end-to-end learning problem, enabling it to better capture the meaning of full sentences and produce more fluent results. A typical NMT system is built on sequence-to-sequence (seq2seq) models, mapping an input sequence in the source language directly to an output sequence in the target language, setting a foundation for more flexible and powerful translation systems. Core Breakthroughs Early NMT systems were built on Recurrent Neural Networks (RNNs), which struggled with longer sentences and complex dependencies. A major turning point came with the introduction of the Transformer model (2017) , which replaced recurrence with self-attention, enabling faster, more accurate translation with more effective handling of long sequences. Today, Transformers form the backbone of nearly all modern translation systems and have paved the way for the broader development of Large Language Models (LLMs). Training Transformer-based NMT models typically follows an encoder-decoder structure and depends on large parallel datasets, either focused on a specific language pair or spanning many languages at once. Notable models from this era such as XLM (2019) , mBART (2020) , and mT5 (2021) pushed multilingual translation forward by training Transformer models on massive multilingual datasets. These developments have made high-quality machine translation more accessible across a wider range of languages. Another breakthrough has been in the evaluation of translation quality. Traditional metrics like BLEU (2002) often miss nuances important to human readers. Newer frameworks like COMET (2020) use pre-trained cross-lingual models to predict translation quality, leading to higher correlation to human judgment. This innovation points to a larger trend: integrating smarter evaluation tools directly into translation workflows, ensuring not just grammatical correctness but also greater contextual and cultural relevance, which are critical factors for business applications across global markets. Future Directions & Challenges Low-Resource Neural Machine Translation One of the biggest challenges in machine translation today is handling languages with limited available training data, often referred to as low-resource translation. While major languages benefit from decades of data, many global and regional languages are left behind. Recent breakthroughs show that it’s possible to improve performance on these low-resource languages by leveraging cross-lingual knowledge transfer, where models trained on high-resource languages help improve translation quality in low-resource ones. For example, the concept of meta-learning, or learning-to-learn, was explored for NMT by Gu et al., 2018 , aiming at fast adaptation on low-resource languages. Another approach proposed by Lin et al., 2020 brings semantically related phrases across languages closer together in the text representation space. Additionally, studies like Aharoni et al., 2019 and Xue et al., 2021 have shown that training a single model on diverse languages simultaneously can naturally benefit low-resource languages. These advances offer a promising path toward more inclusive, equitable translation systems for underrepresented communities. Best Practices for LLM-Based Translation With the rise of LLMs, a new paradigm for translation is emerging. Unlike traditional encoder-decoder models trained on parallel data, LLM-based translation typically depends on decoder-only models trained on large-scale, non-parallel datasets. Research by Vu et al., 2022 shows that even unlabeled multilingual corpora can significantly improve zero-shot translation when incorporated into LLM training. Recent studies further show that LLMs can produce high-quality translations, but how you prompt them matters a lot. For instance, Peng et al., 2023 revisits key aspects such as temperature, task specification, and domain adaptation, exploring how different prompting strategies affect ChatGPT’s translation performance. Other work such as Agrawal et al., 2023 and  Vilar et al., 2023 emphasizes the importance of choosing good examples in few-shot settings, and reveals low-quality examples can significantly degrade translation quality. In response, benchmarks like BUFFET were designed to evaluate how well LLMs handle few-shot tasks across languages. While LLMs offer exciting new possibilities for translation, especially in multilingual and low-resource scenarios, they also come with trade-offs. Successful translation often depends on careful prompt engineering, data selection, and a clear understanding of where LLMs shine versus where traditional NMT systems may still be more reliable. Here is NLP White Paper – Part1: Overview Author Laboro.AI Inc. Lead ML Researcher Zhao Xinyi Xinyi Zhao is a lead researcher at Laboro.AI Inc. Her research focuses on natural language processing, machine learning, and kowledge graphs. She has contributed multiple open-source datasets and models, and her recent work explores real-world applications of large language models. She’s passionate about bridging academic research with practical use cases. The post Neural Machine Translation – NLP White Paper Part 2 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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Neural Machine Translation – NLP White Paper Part 2 2025.8.21 Laboro.AI Inc. Lead ML Researcher Zhao Xinyi Introduction 日本語版(Japanese version)は こちら Since 2017, the Transformer architecture has dominated Neural Machine Translation (NMT), powering influential models like XLM, mBART, and mT5. Its encoder-decoder design effectively leverages parallel corpora. More recently, decoder-only large language models have emerged, enabling NMT to benefit from non-parallel data and carefully designed prompts. Despite this progress, low-resource and distant language pairs remain challenging. Approaches such as meta-learning, few-shot, and zero-shot translation aim to bridge these gaps via cross-lingual knowledge transfer. As the field evolves, new evaluation practices like COMET and BUFFET are complementing traditional metrics like BLEU, offering more reliable evaluations aligned with human judgments. Contents ・ Introduction to Neural Machine Translation ・ Core Breakthroughs ・ Future Directions & Challenges  ・ Low-Resource Neural Machine Translation  ・ Best Practices for LLM-Based Translation NMT Paper Percentage in NLP Conferences Introduction to Neural Machine Translation The field of Natural Language Processing has seen a major transformation in recent years, with Neural Machine Translation (NMT) playing a leading role. By leveraging deep learning, NMT has significantly surpassed traditional Statistical Machine Translation (SMT) in both translation accuracy and fluency. Unlike SMT, which relied on statistical phrase matching and probabilistic models, NMT treats translation as a single, end-to-end learning problem, enabling it to better capture the meaning of full sentences and produce more fluent results. A typical NMT system is built on sequence-to-sequence (seq2seq) models, mapping an input sequence in the source language directly to an output sequence in the target language, setting a foundation for more flexible and powerful translation systems. Core Breakthroughs Early NMT systems were built on Recurrent Neural Networks (RNNs), which struggled with longer sentences and complex dependencies. A major turning point came with the introduction of the Transformer model (2017) , which replaced recurrence with self-attention, enabling faster, more accurate translation with more effective handling of long sequences. Today, Transformers form the backbone of nearly all modern translation systems and have paved the way for the broader development of Large Language Models (LLMs). Training Transformer-based NMT models typically follows an encoder-decoder structure and depends on large parallel datasets, either focused on a specific language pair or spanning many languages at once. Notable models from this era such as XLM (2019) , mBART (2020) , and mT5 (2021) pushed multilingual translation forward by training Transformer models on massive multilingual datasets. These developments have made high-quality machine translation more accessible across a wider range of languages. Another breakthrough has been in the evaluation of translation quality. Traditional metrics like BLEU (2002) often miss nuances important to human readers. Newer frameworks like COMET (2020) use pre-trained cross-lingual models to predict translation quality, leading to higher correlation to human judgment. This innovation points to a larger trend: integrating smarter evaluation tools directly into translation workflows, ensuring not just grammatical correctness but also greater contextual and cultural relevance, which are critical factors for business applications across global markets. Future Directions & Challenges Low-Resource Neural Machine Translation One of the biggest challenges in machine translation today is handling languages with limited available training data, often referred to as low-resource translation. While major languages benefit from decades of data, many global and regional languages are left behind. Recent breakthroughs show that it’s possible to improve performance on these low-resource languages by leveraging cross-lingual knowledge transfer, where models trained on high-resource languages help improve translation quality in low-resource ones. For example, the concept of meta-learning, or learning-to-learn, was explored for NMT by Gu et al., 2018 , aiming at fast adaptation on low-resource languages. Another approach proposed by Lin et al., 2020 brings semantically related phrases across languages closer together in the text representation space. Additionally, studies like Aharoni et al., 2019 and Xue et al., 2021 have shown that training a single model on diverse languages simultaneously can naturally benefit low-resource languages. These advances offer a promising path toward more inclusive, equitable translation systems for underrepresented communities. Best Practices for LLM-Based Translation With the rise of LLMs, a new paradigm for translation is emerging. Unlike traditional encoder-decoder models trained on parallel data, LLM-based translation typically depends on decoder-only models trained on large-scale, non-parallel datasets. Research by Vu et al., 2022 shows that even unlabeled multilingual corpora can significantly improve zero-shot translation when incorporated into LLM training. Recent studies further show that LLMs can produce high-quality translations, but how you prompt them matters a lot. For instance, Peng et al., 2023 revisits key aspects such as temperature, task specification, and domain adaptation, exploring how different prompting strategies affect ChatGPT’s translation performance. Other work such as Agrawal et al., 2023 and  Vilar et al., 2023 emphasizes the importance of choosing good examples in few-shot settings, and reveals low-quality examples can significantly degrade translation quality. In response, benchmarks like BUFFET were designed to evaluate how well LLMs handle few-shot tasks across languages. While LLMs offer exciting new possibilities for translation, especially in multilingual and low-resource scenarios, they also come with trade-offs. Successful translation often depends on careful prompt engineering, data selection, and a clear understanding of where LLMs shine versus where traditional NMT systems may still be more reliable. Author Laboro.AI Inc. Lead ML Researcher Zhao Xinyi Xinyi Zhao is a lead researcher at Laboro.AI Inc. Her research focuses on natural language processing, machine learning, and kowledge graphs. She has contributed multiple open-source datasets and models, and her recent work explores real-world applications of large language models. She’s passionate about bridging academic research with practical use cases. The post Neural Machine Translation – NLP White Paper Part 2 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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ニューラル機械翻訳の研究動向  【連載】自然言語処理の研究動向 第2回 2025.8.19 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 英語版(English version)は こちら 。 概 要 2017年以降、ニューラル機械翻訳(Neural Machine Translation, NMT)においてTransformerアーキテクチャが主流となり、XLM(Cross-lingual Language Model)、mBART(Multilingual BART)、mT5(Multilingual T5)といった代表的なモデルの誕生を後押ししました。このエンコーダ・デコーダ構造は、対訳コーパスを効果的に活用する設計になっています。近年では、デコーダ専用の大規模言語モデル(Large Language Models, LLM)が登場し、非対訳データの活用や、精巧に設計されたプロンプトによる翻訳が可能になってきました。 しかし、低リソース言語や言語間距離の大きい言語ペアの翻訳は依然として困難です。そこでメタラーニング、few-shot学習、およびZero-shot翻訳といったアプローチが言語間の知識転移を促進し、問題を解決が図られています。また、評価手法も進化しており、COMET(※1)やBUFFET(※2)のような新しい評価指標が、BLEU(※3)のような従来の指標を補完しつつ、人間の判断とより高い整合性を持つ、信頼性の高い評価を可能にしています。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 目 次 ・ ニューラル機械翻訳とは ・ 主要な技術的進歩 ・ 将来の展望と課題  ・ 低リソース言語のニューラル機械翻訳  ・ LLMベース翻訳の最適な方法 自然言語処理関連の学会におけるニューラル機械翻訳関連論文の割合 ニューラル機械翻訳とは 近年の自然言語処理分野の大きな進歩では、ニューラル機械翻訳が主要な役割を果たしてきました。ニューラル機械翻訳はディープラーニングを活用し、従来の統計的機械翻訳(Statistical Machine Translation, SMT)と比較して、翻訳の正確さと訳文の流暢さが大きく上回りました。 統計的機械翻訳は、フレーズ(句に限らず、連続した複数の単語のまとまり)の統計的に見いだされた対応関係や、確率モデルに依存していました。一方ニューラル機械翻訳は、翻訳を単一のエンドツーエンド(※4)の学習問題として扱います。その結果、文全体の意味をより的確に捉え、より流暢な訳文を生成することが可能になりました。 典型的なニューラル機械翻訳システムはseq2seq(sequence-to-sequence)モデル上に構築され、ソース(翻訳元)言語の入力系列をターゲット(翻訳先)言語の出力系列に直接対応関係を学習     ます。これにより、より柔軟で高性能な翻訳システムの基盤が築かれました。 主要な技術的進歩 ニューラル機械翻訳の黎明期には再帰型ニューラルネットワーク(RNN)ベースのモデルが用いられていました。しかしそうしたモデルは、長い文や複雑な依存関係の処理が苦手でした。そのため、2017年に発表されたTransformerの登場は、ニューラル機械翻訳分野における大きな転機となりました。 TransformerはRNNにおける再帰構造を自己注意機構(文の中の各単語が、他のどの単語に注目すべきかを自動的に判断する仕組み)に置き換えます。これにより、長い系列の情報を効果的に捉え、より高速かつ高精度に翻訳できるようになりました。現在では、Transformerモデルがほぼすべての最新翻訳システムの中核となっており、さらにLLMの発展の基になりました。 Transformerベースのニューラル機械翻訳モデルの学習は通常、エンコーダ・デコーダ構造に沿って行われ、大規模な対訳データセットに依存します。これらのデータセットには、特定の言語ペアに特化したものから、多数の言語を含むものまでさまざまな種類があります。 2019年に発表されたXLM、2020年のmBART、2021年のmT5といった注目すべきモデルは、膨大な多言語データセットでTransformerモデルを学習することで、多言語翻訳の性能を大きく向上させました。これらの進展により、高品質な機械翻訳がより広範な言語において利用可能となっています。 翻訳品質の評価手法においても革新的な進歩が見られました。従来のBLEUでは、人間の読解において重要なニュアンスが見落とされがちです。2020年に提案されたCOMETのような新しいフレームワークでは、事前学習済みの多言語モデルを用いて翻訳の品質を評価するため、人間の判断との相関がより高くなっています。 こうした革新は、より賢い評価ツールを翻訳のワークフローに直接組み込むという大きな潮流があることを示しています。翻訳結果の文法的な正確さだけでなく、文脈的・文化的な適切さも確保することが、グローバル市場を対象とするビジネス用途では極めて重要です。 将来の展望と課題 低リソース言語のニューラル機械翻訳 今日の機械翻訳における最大の課題の一つは、学習用データが極めて限られた言語、すなわち「低リソース言語」の翻訳への対応です。主要な言語が数十年分の豊富なデータの恩恵を受けている一方で、多くの地域や話者数が限定されている言語は取り残されています。しかし近年の研究の進展により、リソースの豊富な言語から得られる知識を活用することで、こうした低リソース言語の翻訳性能を向上させられることが示されています。 例えば、 Guら(2018年) はNMTに対してメタラーニングやlearning-to-learn(学習するための学習)の概念を導入し、低リソース言語への迅速な適応を目指しました。別のアプローチとして、 Linら(2020年) が提案した手法では、異なる言語間で意味的に関連するフレーズをテキスト表現空間上で近づけることにより、翻訳性能の改善を図りました。さらに、 Aharoniら(2019年) や Xueら(2021年) の研究では、多様な言語を単一のモデルで同時に訓練することで、低リソース言語にも自然と恩恵が及ぶことが明らかになました。 これらの研究の進展は、低リソース言語のコミュニティーにより包括的で公平な翻訳システムをもたらすという有望な道筋を示しています。 LLMベース翻訳の最適な方法 LLMの台頭により、機械翻訳の新たな枠組みが生まれつつあります。対訳データで学習した従来のエンコーダ・デコーダ方式とは異なり、LLMベースの翻訳では通常、デコーダのみのモデルを用い、非常に大規模な非対訳データセットで学習されています。例えば、 Vuら(2022年) の研究では、ラベルなしの多言語コーパスであってもLLMの学習に組み込むことで、学習時に直接その言語ペアの翻訳データを使っていなくても翻訳できる     ero-shot翻訳の性能が大幅に向上することが示されています。 さらに、LLMは高品質な翻訳を生成するものの、その性能は与えるプロンプトの設計次第で大きく変化し得ることも分かってきました。例えば、 Pengら(2023年) はtemperature(生成される文にどれだけ多様性や偶然性を持たせるかを調整するパラメータ)やタスクの明確な指定、ドメイン適応などの要素を再検証し、異なるプロンプト戦略がChatGPTの翻訳性能に与える影響を詳しく分析しています。 また、 Agrawalら(2023年) や Vilarら(2023年) の研究では、few-shot学習(モデルに少数の例だけを与えて新しいタスクを実行させる学習)の設定において適切な例を選ぶことの重要性が強調されており、質の低い例は翻訳品質を著しく低下させる可能性があることを示しています。 LLMは特に多言語やリソースが限られた環境で新たな可能性をもたらしますが、その活用にはトレードオフも伴います。高品質な翻訳を実現するには、慎重なプロンプト設計やデータ選定が不可欠です。さらにLLMが得意とする領域と、従来型のニューラル機械翻訳システムの方が依然として信頼できる領域を、明確に理解して使い分けることが重要です。 ※1 Crosslingual Optimized Metric for Evaluation of Translation。機械翻訳の品質を評価するための自動評価指標であり、事前学習された多言語モデルを微調整して構築されたニューラル評価フレームワーク。 ※2 Benchmark of Unified Format Few-shot Transfer Evaluation。多言語にまたがるfew-shot学習の成果を公平かつ一貫して評価するための標準化されたベンチマーク。 ※3 Bilingual Evaluation Understudy。2002年に提案された、機械翻訳の品質を評価する指標。青のBLUEと文字順が違うが「ブルー」と発音される。 ※4 統計的機械翻訳のように形態素解析など工程を複数に分けて別々に処理してつなげるのではなく、入出力を文単位で扱うこと。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 訳者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社などメディア企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post ニューラル機械翻訳の研究動向 【連載】自然言語処理の研究動向 第2回 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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ニューラル機械翻訳の研究動向 【連載】自然言語処理の研究動向 第2回 2025.8.19 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 2017年以降、ニューラル機械翻訳(Neural Machine Translation, NMT)においてTransformerアーキテクチャが主流となり、XLM(Cross-lingual Language Model)、mBART(Multilingual BART)、mT5(Multilingual T5)といった代表的なモデルの誕生を後押ししました。このエンコーダ・デコーダ構造は、対訳コーパスを効果的に活用する設計になっています。近年では、デコーダ専用の大規模言語モデル(Large Language Models, LLM)が登場し、非対訳データの活用や、精巧に設計されたプロンプトによる翻訳が可能になってきました。 しかし、低リソース言語や言語間距離の大きい言語ペアの翻訳は依然として困難です。そこでメタラーニング、few-shot学習、およびZero-shot翻訳といったアプローチが言語間の知識転移を促進し、問題を解決が図られています。また、評価手法も進化しており、COMET(※1)やBUFFET(※2)のような新しい評価指標が、BLEU(※3)のような従来の指標を補完しつつ、人間の判断とより高い整合性を持つ、信頼性の高い評価を可能にしています。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 目 次 ・ ニューラル機械翻訳とは ・ 主要な技術的進歩 ・ 将来の展望と課題  ・ 低リソース言語のニューラル機械翻訳  ・ LLMベース翻訳の最適な方法 自然言語処理関連の学会におけるニューラル機械翻訳関連論文の割合 ニューラル機械翻訳とは 近年の自然言語処理分野の大きな進歩では、ニューラル機械翻訳が主要な役割を果たしてきました。ニューラル機械翻訳はディープラーニングを活用し、従来の統計的機械翻訳(Statistical Machine Translation, SMT)と比較して、翻訳の正確さと訳文の流暢さが大きく上回りました。 統計的機械翻訳は、フレーズ(句に限らず、連続した複数の単語のまとまり)の統計的に見いだされた対応関係や、確率モデルに依存していました。一方ニューラル機械翻訳は、翻訳を単一のエンドツーエンド(※4)の学習問題として扱います。その結果、文全体の意味をより的確に捉え、より流暢な訳文を生成することが可能になりました。 典型的なニューラル機械翻訳システムはseq2seq(sequence-to-sequence)モデル上に構築され、ソース(翻訳元)言語の入力系列をターゲット(翻訳先)言語の出力系列に直接対応関係を学習     ます。これにより、より柔軟で高性能な翻訳システムの基盤が築かれました。 主要な技術的進歩 ニューラル機械翻訳の黎明期には再帰型ニューラルネットワーク(RNN)ベースのモデルが用いられていました。しかしそうしたモデルは、長い文や複雑な依存関係の処理が苦手でした。そのため、2017年に発表されたTransformerの登場は、ニューラル機械翻訳分野における大きな転機となりました。 TransformerはRNNにおける再帰構造を自己注意機構(文の中の各単語が、他のどの単語に注目すべきかを自動的に判断する仕組み)に置き換えます。これにより、長い系列の情報を効果的に捉え、より高速かつ高精度に翻訳できるようになりました。現在では、Transformerモデルがほぼすべての最新翻訳システムの中核となっており、さらにLLMの発展の基になりました。 Transformerベースのニューラル機械翻訳モデルの学習は通常、エンコーダ・デコーダ構造に沿って行われ、大規模な対訳データセットに依存します。これらのデータセットには、特定の言語ペアに特化したものから、多数の言語を含むものまでさまざまな種類があります。 2019年に発表されたXLM、2020年のmBART、2021年のmT5といった注目すべきモデルは、膨大な多言語データセットでTransformerモデルを学習することで、多言語翻訳の性能を大きく向上させました。これらの進展により、高品質な機械翻訳がより広範な言語において利用可能となっています。 翻訳品質の評価手法においても革新的な進歩が見られました。従来のBLEUでは、人間の読解において重要なニュアンスが見落とされがちです。2020年に提案されたCOMETのような新しいフレームワークでは、事前学習済みの多言語モデルを用いて翻訳の品質を評価するため、人間の判断との相関がより高くなっています。 こうした革新は、より賢い評価ツールを翻訳のワークフローに直接組み込むという大きな潮流があることを示しています。翻訳結果の文法的な正確さだけでなく、文脈的・文化的な適切さも確保することが、グローバル市場を対象とするビジネス用途では極めて重要です。 将来の展望と課題 低リソース言語のニューラル機械翻訳 今日の機械翻訳における最大の課題の一つは、学習用データが極めて限られた言語、すなわち「低リソース言語」の翻訳への対応です。主要な言語が数十年分の豊富なデータの恩恵を受けている一方で、多くの地域や話者数が限定されている言語は取り残されています。しかし近年の研究の進展により、リソースの豊富な言語から得られる知識を活用することで、こうした低リソース言語の翻訳性能を向上させられることが示されています。 例えば、 Guら(2018年) はNMTに対してメタラーニングやlearning-to-learn(学習するための学習)の概念を導入し、低リソース言語への迅速な適応を目指しました。別のアプローチとして、 Linら(2020年) が提案した手法では、異なる言語間で意味的に関連するフレーズをテキスト表現空間上で近づけることにより、翻訳性能の改善を図りました。さらに、 Aharoniら(2019年) や Xueら(2021年) の研究では、多様な言語を単一のモデルで同時に訓練することで、低リソース言語にも自然と恩恵が及ぶことが明らかになました。 これらの研究の進展は、低リソース言語のコミュニティーにより包括的で公平な翻訳システムをもたらすという有望な道筋を示しています。 LLMベース翻訳の最適な方法 LLMの台頭により、機械翻訳の新たな枠組みが生まれつつあります。対訳データで学習した従来のエンコーダ・デコーダ方式とは異なり、LLMベースの翻訳では通常、デコーダのみのモデルを用い、非常に大規模な非対訳データセットで学習されています。例えば、 Vuら(2022年) の研究では、ラベルなしの多言語コーパスであってもLLMの学習に組み込むことで、学習時に直接その言語ペアの翻訳データを使っていなくても翻訳できる     ero-shot翻訳の性能が大幅に向上することが示されています。 さらに、LLMは高品質な翻訳を生成するものの、その性能は与えるプロンプトの設計次第で大きく変化し得ることも分かってきました。例えば、 Pengら(2023年) はtemperature(生成される文にどれだけ多様性や偶然性を持たせるかを調整するパラメータ)やタスクの明確な指定、ドメイン適応などの要素を再検証し、異なるプロンプト戦略がChatGPTの翻訳性能に与える影響を詳しく分析しています。 また、 Agrawalら(2023年) や Vilarら(2023年) の研究では、few-shot学習(モデルに少数の例だけを与えて新しいタスクを実行させる学習)の設定において適切な例を選ぶことの重要性が強調されており、質の低い例は翻訳品質を著しく低下させる可能性があることを示しています。 LLMは特に多言語やリソースが限られた環境で新たな可能性をもたらしますが、その活用にはトレードオフも伴います。高品質な翻訳を実現するには、慎重なプロンプト設計やデータ選定が不可欠です。さらにLLMが得意とする領域と、従来型のニューラル機械翻訳システムの方が依然として信頼できる領域を、明確に理解して使い分けることが重要です。 ※1 Crosslingual Optimized Metric for Evaluation of Translation。機械翻訳の品質を評価するための自動評価指標であり、事前学習された多言語モデルを微調整して構築されたニューラル評価フレームワーク。 ※2 Benchmark of Unified Format Few-shot Transfer Evaluation。多言語にまたがるfew-shot学習の成果を公平かつ一貫して評価するための標準化されたベンチマーク。 ※3 Bilingual Evaluation Understudy。2002年に提案された、機械翻訳の品質を評価する指標。青のBLUEと文字順が違うが「ブルー」と発音される。 ※4 統計的機械翻訳のように形態素解析など工程を複数に分けて別々に処理してつなげるのではなく、入出力を文単位で扱うこと。 連載第1回「 自然言語処理の研究動向 全40トピックの俯瞰 」は こちら 。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 訳者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社などメディア企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post ニューラル機械翻訳の研究動向 【連載】自然言語処理の研究動向 第2回 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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エンジニア向けセキュリティ研修レポート: BadTodoListを活用した実践的チーム学習 2025.7.28 株式会社Laboro.AI システム開発エンジニア 田上 諭 概 要 当社でももちろん、AI開発に当たってセキュリティを重視しており、そのための取り組みの一環として、「BadTodoList」という教材を活用して、当社のエンジニアリング部のメンバーを対象にオンラインでセキュリティ研修を実施しました。参加者同士の活発な議論と実践的な演習が実施され、結論として大変有意義な研修となりました。その研修の様子と得られた学びについて紹介します。 目 次 ・ セキュリティ研修を実施した背景 ・ 研修概要:実践的な教材「BadTodoList」を活用 ・ 実施形式:アンサンブルでチーム学習を促進  ・ 環境面の工夫:すぐに取り組める仮想開発環境  ・ 参加者の声:実践から得た気づき  ・ スペシャルゲスト・徳丸浩様からの貴重なアドバイス ・ 研修後の質疑応答セッション  ・ 質問1:脆弱性対応の優先度について  ・ 質問2:アジャイル開発におけるセキュリティ診断のタイミング ・ 今後の展望:セキュリティを開発一人ひとりの我が事に ・ おわりに ・ 謝辞 セキュリティ研修を実施した背景 当社では、カスタムAIの開発をする上で、PoC(Proof of Concept)から本番運用まで一貫して支援する体制を整えています。技術的な挑戦はもちろんのこと、お客様の課題解決に寄り添うため、品質を重視した開発を大切にしています。 報道などでご存じの通り、情報セキュリティインシデントの事例が後を絶ちません。それらは、それまで築き上げてきた信頼を文字通りたった一日で失墜させるほどの衝撃を持っています。この現実を前に、情報セキュリティの確保は、もはや「できれば取り組みたい施策」ではなく必須の課題です。だからこそ、リスクをなるべく抑える活動が重要です。 こうした背景から、当社でもセキュリティを重要視しており、エンジニア一人ひとりの意識とスキルを底上げすべく、本研修を企画・実施しました。 研修概要:実践的な教材「BadTodoList」を活用 今回の研修では、セキュリティ分野の第一人者である徳丸浩様から許諾をいただき、BadTodoListを用いて脆弱性を発見するための実践的な研修を実施しました。 BadToDoListを開発した徳丸浩様( https://www.eg-secure.co.jp/tokumaru からキャプチャ) このBadTodoListは、Webアプリケーションにおける代表的な脆弱性(SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなど)を意図的に含んだ、シンプルなTodo管理アプリです。 『 ウェブ健康診断仕様 』『 安全なWebサイトの作り方 』『 OWASP Top 10 』『 体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方 』といった、セキュリティ分野の主要な文献で取り上げられている脆弱性を網羅しています。初心者にも扱いやすく設計されており、実際に手を動かしながら脆弱性の仕組みや影響を体感できます。 ウェブ健康診断仕様 加えて、YouTube上に導入動画もあり、初学者が自習で取り組みやすい点も大きな魅力です。 YouTube上で公開されている、BadToDoListの導入動画( https://www.youtube.com/playlist?list=PLWiFLcGkQgLzxPw23mQniahM_kPH_EsVH からキャプチャ) 実施形式:アンサンブルでチーム学習を促進 研修では、まず私が概要や目的を共有した後、参加者をGoogle Meetのブレイクアウトルームに分け、アンサンブル(共同操作・対話型学習)形式で脆弱性を発見する課題に取り組みました。 「脆弱性を発見する」という行為は、経験の浅い開発者にはハードルが高く感じられるかもしれません。しかし他のメンバーと一緒に手を動かしながら「ここが怪しいですね」「SQLインジェクションはどう攻撃するんでしたっけ?」といった会話を重ねる中で、自然と気づきや学びが広がっていきました。 参加者からは「チームで調べながら進めることで、自分とは違う視点に気づけた」「一人で取り組むよりも、皆でワイワイできて楽しかった」といったポジティブな感想が多く寄せられました。 環境面の工夫:すぐに取り組める仮想開発環境 今回の研修では、実践をスムーズに進めるために、以下のような環境面での工夫を行いました。 ・ GUI付きのUbuntu仮想マシンを準備 :社内のサーバーを活用し、チームごとに共通の仮想環境を提供。 ・ 開発環境の事前整備 :BadTodoListと「BurpSuite」を事前にインストールし、環境構築の負担を最小限に。 ・ リモートデスクトップ接続 :当日は参加者がリモートデスクトップ経由で仮想マシンにアクセス。 これらの工夫により、参加者は環境構築に時間を取られることなく、研修開始早々からセキュリティという本質的な学びに集中できました。 参加者の声:実践から得た気づき 参加したメンバーからは、「実際に手を動かしたからこそ得られた気づき」が数多く寄せられました。 ・攻撃手法の具体的な実行方法を知ることができました。脆弱性の対応を行う必要性を再認識しました。 ・名前だけ知っていた攻撃についても、実際に操作することで動作原理を理解できました。 ・実際にSQLインジェクションを行ってみることで、攻撃者がどのように脆弱性を悪用するのかを体感し、守る立場としてもその視点を持つことの大切さを理解できました。 このように、実際に手を動かすことで理解が深まったという声が多く寄せられ、私自身もその効果を改めて実感しました。こうした実践的な学びの機会を継続的に持つことが、セキュリティリテラシーの向上はもちろん、万が一の際の“対応力”を養う上でも、今後ますます重要になってくると考えています。 スペシャルゲスト・徳丸浩様からの貴重なアドバイス 研修にご参加いただいた徳丸様からは、いくつかの非常に具体的で実践的なアドバイスをいただきました。さらに「SQLインジェクションやOSコマンドインジェクションといった難易度の高い攻撃に挑戦されていて、非常に興味深く感じました」とのお言葉もいただき、私たちのチャレンジ精神を評価していただけたのは大きな励みとなりました。 一方で、実務への応用を念頭に置いた、重要なご指摘もいただきました。「脆弱性診断においては、脆弱性を安全に見つけるという考え方が重要です。危険なコマンドを入力すると、環境が破損する恐れもあります。実務で診断される際は、危険な入力は避けるようにしてください。『Web健康診断仕様』は、環境を壊さずに試せるよう考慮されています。そうしたものを活用して学習を進め、御社のセキュリティ強化にお役立ていただければと思います」。このアドバイスから、現場ですぐに活かせる貴重な知見を得ることができました。 実践的なアドバイスも提供していただいた徳丸浩様 研修後の質疑応答セッション 研修後の質疑応答セッションでは、参加者から実践的な質問が寄せられ、徳丸様から一つひとつ丁寧にご回答いただきました。 質問1:脆弱性対応の優先度について Q:脆弱性の対応には優先度があると思いますが、どこから対処すべきか、指針のようなものはありますか? A:はい、「脆弱性の危険度』という概念があります。SQLインジェクションやOSコマンドインジェクションは危険度が高く、そうでないものもあります。私の著書や『Web健康診断仕様』にも、危険度が高、中、低で記載されています。危険度が高いものから優先的に対応するのが大原則です。ただし、攻撃に内部情報が必要な場合など、攻撃の成立条件によっては、同じ危険度でも実質的な優先度は下がることがあります。 この回答により、単純な危険度評価だけでなく、実際の攻撃シナリオや現実的なリスクを考慮した、総合的な判断の重要性を学びました。 質問2:アジャイル開発におけるセキュリティ診断のタイミング Q:ウォーターフォール開発ではテスト期間が明確なため、脆弱性診断のタイミングを確保しやすいです。一方、アジャイル開発の場合は、どのタイミングで脆弱性診断を実施すべきでしょうか。 A:それは近年注目されているテーマで、DevOpsにSecurityの観点を加えた「DevSecOps」という考え方が主流になりつつあります。これは、開発サイクルの中で継続的にセキュリティテストを実施していくアプローチです。具体的には、ソースコードが完成するたびに静的解析ツールをかけたり、動的なスキャンツールを自動実行したりします。そして、QAの段階では、自動化ツールでは見つけにくい箇所を手動で重点的に診断する、といったかたちになります。 Q:なるほど、開発サイクルの中に脆弱性診断のプロセスを組み込んでいく、ということですね。 A:おっしゃる通りですが、実現は容易ではありません。しかし、それに取り組むしかないのが現状です。 このやり取りを通じ、当社メンバーからは「実現するためには、組織的にナレッジを蓄積していく必要があると理解しました」という、次なる課題への気づきも得られました。 今後の展望:セキュリティを開発一人ひとりの我が事に 今回の研修はゴールではなく、これからの取り組みに向けた第一歩です。私たちが目指しているのは、セキュリティが特別なルールとして意識されるのではなく、日々の開発業務における当たり前の習慣にしていくこと。いわば、開発者一人ひとりが我が事として意識するようになることです。 「作ってから守る」のではなく、「作りながら守りを固める」のが当然の開発スタイルへ−−。そのために、今後は、DevSecOpsに関する取り組みを継続的に推進していきます。 おわりに Laboro.AIでは、技術力の向上とセキュアな開発の両立を目指し、エンジニアが成長できる環境づくりに力を入れています。本コラムを読んで当社でエンジニアとして働くことにご興味をお持ちでしたら、ぜひ一度、 採用ページ をご覧ください。現在、エンジニアを積極的に採用中です。 謝辞 今回の研修実施に当たり、BadTodoListの使用を許諾していただき、さらに当日もスペシャルゲストとしてご参加くださり、貴重なアドバイスをくださいました徳丸浩様に、心より感謝申し上げます。 実践的な教材と、専門家の視点からの直接的なフィードバックにより、参加者一同、セキュリティの重要性と具体的な対策について、深い学びを得ることができました。今回いただいた知見は、当社のセキュリティ文化を構築する礎として、大切に活用させていただきます。 執筆者 システム開発エンジニア 田上 諭 宮崎大学大学院工学研究科を修了。株式会社ベリサーブにて、ソフトウェアテストに関するサービス提供や、テスト技法支援ツールの開発に従事。2025年からLabor.AIにシステム開発エンジニアとして参画し、現在はAI関連システムの開発を担当している。 The post エンジニア向けセキュリティ研修レポート:BadTodoListを活用した実践的チーム学習 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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NLP White Paper – Overview 2025.7.18 Laboro.AI Inc. Lead ML Researcher Zhao Xinyi Introduction 日本語版(Japanese version)は こちら Over the past decade, NLP research has witnessed rapid advancements, with top-tier conferences such as ACL, NAACL, EMNLP, and COLING serving as key venues for groundbreaking work. To better understand the evolution of research interests in the field, we analyzed academic papers from these conferences, applying topic modeling to identify key research directions and track their popularity over time. From this analysis, we carefully selected 40 significant topics that have shaped or are shaping the NLP landscape. This selection highlights both long-standing areas of interest and emerging trends that are gaining traction. We will roll out a series of articles, each diving deeper into a specific topic, revealing more data, and providing insights into its development, breakthroughs, challenges, and future potential. This overview, as the first in the series, presents a high-level analysis of these topics, focusing on how their popularity has evolved. For each year, we classify topics based on their relative strength compared to (1) other topics in the same year and (2) the same topic’s progression from the previous year: 1. Strong Topic Notable topic of the year with increase of strength from the previous year 2. Not Strong but Well Known (NSWK) Topic Notable topic of the year with decrease of strength from the previous year 3. Weak Topic Less studied topic of the year with increase of strength from the previous year 4. Latent Topic Less studied topic of the year with decrease of strength from the previous year After categorizing topics year by year, we analyze their long-term evolution and classify them into three broad groups based on their overall popularity trends and current status. Within each category, topics are further grouped into research areas based on their core focus. The three broad categories are: Established NLP Topics Fundamental areas that have been extensively studied over the years. Trending NLP Topics Areas that have gained strong research interest in recent years. Emerging NLP Topics Fast-growing topics with the potential to become major research focuses. Through this analysis, we hope to offer a concise yet insightful perspective on NLP research trends, helping researchers, practitioners, and industry professionals navigate the evolving landscape. Legend for Charts Below Contents ・ Established NLP Topics  ・ 1. Core NLP Tasks: A Foundation Under Constant Refinement  ・ 2. Model Architectures and Training Techniques  ・ 3. Domain-Specific Applications  ・ 4. Ethics, Fairness, and Reliability Established NLP Topics 1. Core NLP Tasks: Language Understanding and Generation As NLP continues to evolve, it’s worth taking a closer look at how core NLP tasks are trending in recent years. These tasks have long been central to the field and remain essential to real-world applications, from AI assistants to search engines and translation tools. Between 2017 and 2024, many foundational tasks have maintained consistently strong attention, including Machine Translation, Question Answering, and Text Summarization. At the same time, we’re also seeing increasing momentum in more nuanced or complex tasks, such as Few-Shot Named Entity Recognition, Metaphor Detection, and Text-To-SQL. Moreover, this evolution isn’t limited within text alone. We are also witnessing a steady rise in Multimodal NLP, areas that bring non-textual input into the landscape of core NLP capabilities. These trends suggest that foundational language tasks are no longer confined to plain text but are being reimagined to handle speech, vision, sign language, and even cognitive signals like eye-tracking. These emerging directions reflect a broadening of what we consider “core”. Rather than simply extracting or classifying text, today’s models are expected to handle rich context and multimodal input, while generating responses that are creative, coherent and human-like. NLP research is moving toward tasks that require deeper reasoning, natural interaction, and domain-specific adaptation. Large language models (LLMs) have enabled many of these advancements, performing a wide range of tasks with just a few examples or instructions. We’re seeing rapid progress in areas like Natural Language Reasoning, Contextual Response Generation, and Narrative Generation. However, LLMs have also introduced new challenges particularly around interpretability and reliability. In upcoming articles, we’ll explore how this expansion of core tasks is reshaping our understanding of what NLP systems can and should do. 2. Model Architectures and Training Techniques Over the past several years, progress in NLP has been tightly coupled with innovations in model architectures and training paradigms. While core NLP tasks define what models are expected to do, it is these underlying techniques that determine how well and how efficiently they can do it. From the refinement of transformer-based architectures to new techniques for improving robustness, efficiency, and adaptability, this area has been the engine behind recent breakthroughs in performance, scalability, and usability across a wide range of NLP applications. In the early days of Transformer-based language models, much attention was placed on pre-training massive models from scratch and optimizing self-supervised learning objectives. But as foundation models like BERT, T5 and GPT became widely available and increasingly capable, the community’s focus began to move away from pre-training itself. This is in part because pre-training is extremely expensive and requires massive infrastructure. Today, research and development efforts are largely centered around making better use of existing pre-trained models. Fine-tuning enables these models to adapt to new domains or specialized tasks. In-context learning allows them to perform new tasks with just a few examples without modifying model weights at all. Meanwhile, quantization is gaining traction as a way to run large models more efficiently, especially in resource-constrained settings. This trend reflects a broader shift: as foundation models stabilize, research has increasingly focused on improving their usability and adaptability. Efficiency and alignment with real-world needs have become central concerns in model architecture and training strategies. In upcoming articles, we’ll explore how these architectural and training innovations are shaping the direction of NLP research. 3. Domain-Specific Applications Recent advancements in NLP have led to increasing practical applications across diverse fields, where language use, terminology, and requirements differ significantly from general-purpose tasks. This section highlights four notable domains:  Healthcare , e.g., for record analysis, literature extraction, and diagnosis Law , e.g., for legal document processing and research Chemical and biological informatics , e.g., for scientific data mining and discovery Music , e.g., for generation, classification, and sentiment analysis.  Across all these areas, we’ve observed a steady increase of interest over the past several years. These applications are not merely experimental but are increasingly being integrated into real-world workflows and systems. This surge reflects both the maturity of NLP techniques and their adaptability to the unique challenges and nuances of various industries. As NLP continues to evolve, domain-specific applications are likely to deepen and diversify. In upcoming articles, we’ll explore how NLP technologies are being tailored to meet the demands of specialized fields, and how they’re reshaping workflows, decision-making, and innovation across a variety of industries. 4. Ethics, Fairness, and Reliability As language models become increasingly powerful and widespread, attention has turned toward ensuring that these systems are fair, ethical, and reliable. Key concerns include identifying and reducing harmful outputs, biased behavior, and factual inaccuracies, all of which are all critical for responsible real-world adoption.  Research on gender bias and abusive language detection gained early traction and remains active. Their consistent strong signals reflect growing awareness around content moderation, platform safety, and equitable representation. While these long-standing issues remain central, there has been a notable rise in research on hallucinations, where language models generate confident but false or misleading information. Recent works have focused not only on detecting such errors but also on mitigating them. As NLP systems move into real-world environments, trustworthiness is becoming just as important as accuracy. In future articles, we’ll continue exploring how responsible AI practices in NLP have evolved, and how the field is working toward safer, fairer, and more dependable language technologies. Author Laboro.AI Inc. Lead ML Researcher Zhao Xinyi Xinyi Zhao is a lead researcher at Laboro.AI Inc. Her research focuses on natural language processing, machine learning, and kowledge graphs. She has contributed multiple open-source datasets and models, and her recent work explores real-world applications of large language models. She’s passionate about bridging academic research with practical use cases. 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【連載】自然言語処理の研究動向 第1回 全40トピックの俯瞰 2025.7.17 株式会社Laboro.AI リードMLリサーチャー 趙 心怡 リードマーケター 熊谷勇一 概 要 自然言語処理(NLP)研究はここ10年で急速な進歩を遂げており、生成AIをはじめさまざまな製品・サービスの基盤的技術になっており、適応分野は広がり続けています。この連載は、そのうち注目すべきトピックを1本ずつ解説する連載です。この分析を通じて、自然言語処理研究の動向について、簡潔でありながら洞察に富んだ視点を提供し、AIに関する研究者、実務家にとって、変化し続けるこの分野を効果的に捉える手助けとなることを目指します。第1回は全40本のトピックを俯瞰することを通して、その進歩と変遷を見ていきます。 目 次 ・ はじめに ・ 確立されたトピック  ・ 1. 主要な自然言語処理タスク:絶え間なく洗練される基盤  ・ 2. モデルアーキテクチャと学習手法  ・ 3. 特定分野における応用  ・ 4. 倫理・公平性・信頼性 はじめに 自然言語処理研究はここ10年で急速な進歩を遂げています。ACL(Association for Computational Linguistics)、NAACL(North American Chapter of the Association for Computational Linguistics)、EMNLP(Empirical Methods in Natural Language Processing)、COLING(Computational Linguistics)といった一流の学会がその主要な場として機能しています。この分野における研究動向の変遷をより深く理解するために、私たちは、これらの学会の学術論文を分析し、トピックモデリング(文章データのトピック主題を判断する自然言語処理の手法)を適用して主要な研究の動向を特定し、その注目度を長期にわたって追跡しました。 この分析を基に、自然言語処理の分野を形成してきた、あるいは現在形成されつつある重要なトピック40本を慎重に選定しました。この選定には、長年注目され続けてきた分野と、近年注目を集めつつある新たな傾向の両方を含んでいます。この連載では次回以降、これらのトピックを1本ずつ取り上げ、それぞれの発展過程、重要な成果、直面している課題、そして将来性について、データとともに深掘りしていきます。 今回は連載の初回として、選定したトピックに関して俯瞰的な分析を行い、それぞれの人気の変遷に焦点を定めて解説します。具体的には、2017年から2024年までを分析対象期間とし、各年のトピック間の相対的なトピック比率(分析対象の論文中で特定のトピックを扱っている論文の比率)の高さと、同一トピックにおける前年からのトピック比率の推移という二つの観点から、トピックを分類しました。 トピック比率が高いトピック ある年から見てトピック比率が前年から上がっていてよく注目されているといえるトピック トピック比率は落ちているがよく知られているトピック トピック比率は高いが前年に比べて低下しているトピック トピック比率が今後高まるかもしれないトピック トピック比率がまだ高いわけではないが、前年よりも増しているトピック 衰退的なトピック トピック比率が前年から下がり、あまり研究されていないトピック 年ごとにトピックを分類した後、それらの長期的な変遷を分析し、注目度の全体的な傾向と現在の状況に基づいて、三つの大カテゴリーに分類しました。さらに各カテゴリ内では、主な関心領域(研究の焦点)に応じてトピックを研究分野ごとにグループ分けしています。 三つの大カテゴリーは以下です。 確立されたトピック 長年にわたって広範囲に研究されてきた基盤的な領域 流行トピック 近年、研究への強い関心が高まっている分野 新出トピック 急速に成長していて、今後主要な研究対象となる可能性のあるトピック 今回掲載する4点の図の凡例は以下です。 確立されたトピック 1. 主要な自然言語処理タスク:絶え間なく洗練される基盤 近年の自然言語処理の主要なタスクがどのような傾向にあるのか、改めて注目してみる価値があります。そうした主要タスクは長年にわたりNLPの中心的な存在であり、AIアシスタントや検索エンジン、翻訳ツールなど、実社会のあらゆるアプリケーションに不可欠であり続けました。 下の図のように、2017年から2024年にかけて、機械翻訳や質問応答、テキスト要約といった多くの基本的なタスクに対する注目度は、一貫して高い水準を保っています。一方で、より細かなニュアンスを要する、もしくは複雑なタスクへの関心も高まっています。例えば、少数の事例から学習する固有表現認識(Few-Shot Named Entity Recognition)やメタファー(隠喩)の検出、テキストからSQLへの変換(Text-to-SQL)といった新たなタスク分野が勢いを増してきています。 さらに、この進化はテキストの領域内に留まりません。自然言語処理の主要技術として、テキスト以外の入力も取り込む「マルチモーダル自然言語処理」も着実に台頭してきています。こうした傾向は、基本的な言語タスクがもはや単なるテキストに限定されず、音声、画像、手話、さらには視線追跡といった認知的な信号まで扱えるものとして、新たに認識されつつあることを示唆しています。 こうした新たな方向性は、私たちが「主要」と見なす領域が広がっていることを示しています。現在のモデルには、単にテキストを抽出したり分類したりするだけでなく、豊かな文脈やマルチモーダルな入力を処理し、創造的で一貫性があり、人間らしい応答を生成することが求められています。自然言語処理の研究は、より深い推論や自然な対話、そして特定の分野に適応する能力を必要とするタスクへと向かいつつあります。 こうした進歩は大規模言語モデル(LLM)の登場によって実現しました。LLMはわずかな例示や指示だけで幅広いタスクをこなすことができます。実際、自然言語推論や文脈に応じた応答生成、物語生成といった分野で急速な進歩が見られます。しかし一方で、LLMはその解釈可能性や信頼性に関する新たな課題ももたらしました。今後の連載では、自然言語処理システムが「何ができ、何をすべきか」について、主要タスクが拡張する中、私たちの理解がどう変わっていくのかを探っていきます。 2. モデルアーキテクチャと学習手法 ここ数年にわたり、自然言語処理の進歩にはモデルアーキテクチャや学習パラダイムの革新が欠かせませんでした。主要な自然言語処理タスクはモデルが何をすべきかを定義する一方、それをどれほど効率的に実行できるかは、モデルアーキテクチャや学習パラダイムといった基盤技術に依存します。例えば、Transformerベースのアーキテクチャの精度を高める試みや、モデルの頑健性や効率性、適応性を高める新たな手法の開発が進められてきました。これらの取り組みはエンジンとなって、幅広い自然言語処理アプリケーションにおける性能、スケーラビリティ、そして使いやすさの飛躍的な向上を後押ししています。 Transformerベースの言語モデルが登場した初期には、巨大なモデルをゼロから事前学習し、自己教師あり学習の目的関数を最適化することに大きな関心が寄せられていました。しかしBERTやT5、GPTといった基盤モデルが広く利用可能になり、その能力が向上するにつれ、研究コミュニティーの関心は事前学習そのものから離れ始めました。その理由の一つとして、事前学習に莫大なコストと大規模なインフラが必要となることが挙げられます。 現在、研究開発の焦点は、既存の事前学習済みモデルを有効活用することに移っています。代表的なアプローチとして、次のようなものがあります。 ファインチューニング モデルを新たなドメインや専門タスクに適応させることができます。 コンテキスト内学習 モデルの重みをまったく変更せず、少数の例示だけで新たなタスクを実行可能にします。 量子化 特にリソースが限られた環境において、大規模モデルをより効率的に動作させる手法として注目されています。 こうした動向は、比較的大きな変化が起きていることを反映しています。基盤モデルが安定してくるにつれ、それらの使いやすさや適応性を高めることに研究の重点が移ってきたのです。モデルのアーキテクチャや学習戦略において、効率性と実社会のニーズへの適合が主要な関心事となっています。 本連載では、こうしたモデルアーキテクチャや学習手法の革新が自然言語処理研究の方向性にどのような影響を与えているのかも探っていきます。取り上げるトピックは以下の図の通りです。 3. 特定分野における応用 近年の自然言語処理の進歩により、言語の使われ方や専門用語、汎用的なタスクとは大きく異なる多様な分野で、実用的な応用が増えてきました。ここでは、下の図の通り、特に注目すべき四つの分野を取り上げます。 医療 (診療記録の分析、文献情報の抽出、診断支援など) 法律 (法的文書の処理、法律調査など) 化学・生物情報学 (科学データのマイニング、新たな知見の獲得など) 音楽 (楽曲の生成、分類、感情分析など) 四つすべての領域において、ここ数年にわたり関心が着実に高まってきたことが観察できます。こうした応用は単なる実験段階にとどまらず、実際の業務プロセスやシステムにますます組み込まれるようになっています。この盛り上がりは、自然言語処理技術の成熟と、各業界特有の課題や微妙な特徴に対する適応力の高さの両方を物語っています。 自然言語処理技術が進化し続けるにつれ、こうした分野特化型の応用はさらに深化し、多様化していくことでしょう。本連載では、自然言語処理技術が各専門分野のニーズに合わせてどのように調整されているのか、そしてそれによってさまざまな業界のワークフローや意思決定、イノベーションがどのように変革されているのかを掘り下げていきます。 4. 倫理・公平性・信頼性 言語モデルがますます強力になり広く普及するにつれて関心が向けられているのは、それらのシステムが公平で倫理的かつ信頼できるものであることを確保することです。主な懸念事項には、有害な出力や偏った挙動、事実誤認の検出と削減が含まれます。これらはいずれも、実社会で言語モデルを責任を持って活用するために不可欠なことです。 下の図でトピックとして挙げているように、ジェンダーバイアスや攻撃的な言語表現の検出に関する研究は、早い段階から進められていて、現在も活発です。これらの分野が一貫して強く注目されていることは、不適切なコンテンツの管理やプラットフォームの安全性、公平な表現への意識が高まっていることを物語っています。一方で、言語モデルが自信満々に誤った情報や紛らわしい情報を生成してしまうハルシネーションに関する研究も著しく増えてきています。最近の研究では、そうした誤りを検出するだけでなく、発生自体を減らすための手法にも焦点が定められています。 自然言語処理システムが実社会で利用されるようになるにつれて、正確性と同様に信頼性も同じくらい重要になってきています。本連載でも、自然言語処理におけるAIの責任ある取り組みがどのように進化してきたのか、そしてより安全で公平かつ信頼できる言語技術を目指して、この分野がどのように取り組んでいるのかを、探っていきます。 執筆者 エンジニアリング部 リードMLリサーチャー 趙 心怡 自然言語処理、機械学習、ナレッジグラフを中心とした研究に従事。これまで複数のオープンソースのデータセットとモデルの構築に貢献してきた。最近の研究ではLLMの実社会への応用を探求し、学術研究と実際のユースケースの橋渡しに情熱を注いでいる。 訳者 マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一 中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社などメディア企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。 The post 【連載】自然言語処理の研究動向 第1回 全40トピックの俯瞰 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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流行を生み出すためのブレストAI。 生成AIエージェント『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』を解説 2025.7.12 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 当社Laboro.AIでは、去る2025年6月18日、自社初となる生成AIエージェントをベースにした対話型プロダクト『 未来リサーチ 』(商標・特許出願中)を発表しました。このコラムでは、そのアプリケーションの一つであり、「次なる流行は、今の商品に3%だけ違いを出すことで生まれる」という流行神話に基づいて新商品アイデアをブレスト創出する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』を取り上げ、その概要や実際の出力、活用メリットなど紹介していきます。 目 次 ・ 流行発生のメカニズムと神話 ・ 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは ・ 流行を生み出すためのブレストAI『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』とは  ・ ① ヒアリング  ・ ② レポート作成 & ブレスト  ・ ③ 企画書の作成 ・ AIの想像力からアイデアを拡張する ・ 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 流行発生のメカニズムと神話 「流行を生み出す法則を解明したい」――。マーケターなら誰しも夢描くであろう流行メカニズムの解明。ですが、曖昧で気まぐれな心理を持つ消費者、そして極めて複雑な外部環境や情報が絡み合う現代社会において、流行を確実に引き起こす一定の法則などは、存在し得ないのかもしれません。 その一方で、社会学の流行論という分野においては、今から200年以上も前から流行メカニズムの解明を志した議論が活発に交わされてきました。著名なところでは、社会はマネ(模倣)によって生み出されたさまざまな類似点を提示し合っている人々の集合だと考え『 模倣の法則 』を記したジャン・ガブリエル・タルド、上流階級の見せびらかし消費(顕示的消費)が下流階級に伝播していくメカニズムを『 有閑階級の理論 』で克明に明かしたソースティン・ヴェブレン、“模倣”と“差異”という対立する概念の共存が流行発生の根本にあると決定付けたゲオルグ・ジンメルなどです。 とくにジンメルの説は非常に興味深いものです。ジンメルによれば、対立の一方にある“模倣”、つまり無意識のうちに他者と同様のものを所有するなどによって、社会やグループへの所属・依存の欲求を満足させる、あるいは社会からの逸脱を免れようとする価値観に加えて、もう一方にある“差異”、つまり自身と他者を区別したいという欲求が働くことで、次なる“もっといいもの”に向かおうとする価値観が共存し、この不均衡な状態が、流行を生み出す原動力だと考えられています。 簡単に言れば、他の人と同じでありたいという「同調心理」と、他の人と違っていたいという「差異心理」、両極端な心理からなる行動が繰り返され、増幅されることによって流行という社会的な大きな動きを生み出していくということで、この考えから生まれた「トリクルダウン(滴下理論)」というセオリーは、現代マーケティングでもよく知られています。 さらにマーケティングや商品企画の観点でシンプル化してみれば、いま流行っているものから逸脱しない範囲内で個性につながる違いを創出する、”同じようでちょっと違う”商品・サービスを企画することが、流行発生のための一つの法則だと考えられるのです。 そして、こうした歴史深い議論も踏まえて、現代になって神話のように生まれてきたが「流行の3%ルール」というものです。これはあるラグジュアリーブランドのデザイナーが語ったとされる言説で、例えば、商品の色、形、大きさ、重さ、ターゲット、ポジショニングなど、さまざまな商品の仕様・機能・コンセプトなどを3%だけ変えれば流行のループを生み出すことができるという、文字通りの神話です。当然ながらこの“3%”は厳密に計測したものではなく、あくまで“ちょっと違う”を比喩的に表したものであって、経験に基づく感覚論の域を出るものではありません。 ただ、もし、今販売され流行している商品に3%だけ違いを出すような施しをしてみたら、どのような新商品・サービスが生まれてくるのかを考えるという試みは、次なる商品企画に斬新なアイデアを与えてくれる可能性は、大いにあるように思うのです。 出典: 坂井素思(1999)「贅沢消費論 : ジンメルとヴェブレン消費理論の趣味論的解釈」放送大学研究年報, 16, pp.71-92. 大塚雄太(2022)「流行論の知られざる名著 ―クリスティアン・ガルヴェ『流行について』 ― 」 愛知学院大学 経済研究所所法, 第2号, pp.98-116. 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは 今般当社が開発を発表した『未来リサーチ』は、社会学などの学術理論のほか、様々なマーケティングの調査手法から得た発想をもとに、各種企画業務におけるアイデア創出や仮説検証を支援することを目指した、生成AIエージェントベースのプロダクトです。 未来リサーチには、例えば、コンサルタント、消費者、リサーチャー、プランナー等の機能を持たせたAIエージェントが仕込まれており、各々のエージェントがユーザーへの課題のヒアリングと深掘り、仮想的なリサーチの実施、調査レポートの作成、調査結果を踏まえた企画書の作成までを、その場で実行することを基本機能としています。各エージェントが自律的に役割を実行するので、ユーザーは、基本的にAIコンサルタントから投げ掛けられる質問に答えるだけでレポートや企画書の作成までを完結することができます。 そして、未来リサーチの何よりの特徴は、「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」というコンセプトにあります。従来の市場調査を代替することではなく、それらをヒントにした斬新なアプローチのタスクをエージェントに実施させることを通して、新商品・サービス企画、新規事業企画、広告宣伝、プロモーション、販売促進などのマーケティングの各種企画業務に従事する方々がお持ちのアイデアを、さらに拡張することをコンセプトにしています。 それを具現化するのが未来リサーチを構成する各アプリで、例えば、 ・未来時間の消費者へのインタビュー調査をする『 未来グループインタビュー 』 ・未来の市場でフィールド調査をする『 未来エスノグラフィ 』 ・本来は見ることができない消費者の脳内を覗いて意思決定プロセスを抽出する『 買い物脳スコープ 』 ・大量サンプルに対するWebアンケートを仮想実施する『 仮想Webアンケート 』 ・斬新な切り口で企画ブレインストーミングを実施する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』 など、それぞれのテーマをもったアプリをラインナップしています。(段階的にさらに追加していく予定です。) そして今回は、このうちの一つ、『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』を実際のデモ画面と共にご紹介したいと思います。 流行を生み出すためのブレストAI『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』とは 『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』は、生成AI・LLM(大規模言語モデル)の優れた言語能力、もっと言えば大胆な想像力を用いて、“ちょっと違う新商品”のアイデアに関するブレストを行った上で、マーケティング企画書の作成までを、その場で実施するアプリです。 どのような商品・サービスをテーマにするのか、どのような方向で改善したいのか、どのような消費者を対象としたいのかなど、AIコンサルタントからのヒアリングに回答すれば、AIがアイデアを次々と提示してくれます。 商品サービスの改善や新商品アイデアの創出などに最適なアプリで、商品企画、新規事業企画はもちろん、広告宣伝やプロモーション戦略の立案など、マーケティングの幅広い企画業務でご活用いただけるものです。 では、デモ画面と共にその実際のやりとりを見ていきましょう。なお、登場するデモ画面は執筆時点のもので、今後の開発状況に応じて仕様等が変更になる場合がございますことを予めご了承ください。 ① ヒアリング 基本的な入力画面はChatGPTなどの対話型AIと同様で、初回の入力はユーザー側から行います。今回は、皮革製品をメインとした服飾雑貨メーカーの商品企画担当という想定で、以下の悩み相談をしてみました。 私は皮革製品を製造する服飾雑貨メーカーの商品企画の責任者です。 伝統を守りつつ、時代の変化に対応した新商品を実現したいと思っています。 いま若い女性の間で流行しているミニバッグをベースにした商品企画を行いたいです。 すると、さっそくAIコンサルタントから新商品の使用シーンに関する質問を受けました。今回は、デイリーユースを想定した商品として回答したいと思います。 次に、サイズ感や内装・外装、機能、想定される携帯アイテム、価格帯など、次々とヒアリングが展開。初期の企画段階という想定をおきつつ、未検討の部分はそのように伝え、順次回答していきます。 ② レポート作成 & ブレスト 一通りのヒアリングが完了すると、いよいよ3%ルールに基づいた『 3%改善・改良レポート 』が作成されます。さっそく、以下のような内容で作成してくれました。 < 3%改善・改良レポート > 本レポートでは、若い女性向けの「かなり小ぶりでファッション性重視」のデイリーユースミニバッグをベースに、当社が得意とする革製品の良さを生かしながら、各要素に約3%の微細な変化を加えたときの具体像を描き出します。企画の骨格は、想定ユーザーが日常的に携行する必需品──スマートフォン、キー、リップスティックを想定し、2~3万円の中価格帯で実現可能な現実性を重視しました。 1. 形状・サイズの調整 ベースとなる標準的ミニバッグの外形を、縦10cm×横14cm×マチ5cmと仮定した場合、3%の縮小で縦9.7cm×横13.6cm×マチ4.85cmとなり、抱えやすい極小フォルムを実現します。こうしたわずかなコンパクト化により、スタイリング時の「抜け感」が強調される一方、必要最小限の収納性は維持されます。エッジ部分の曲線も同じく3%だけシャープさを増し、全体フォルムにモダンな切れ味を加えます。 2. 重量・素材の最適化 通常200g前後のレザー素材をベースとする場合、3%の軽量化(約194g)を実現するために、裏地や芯材の選定を見直し、薄手ながら強度を保つナッパレザーを採用します。革の厚みは標準1.2mmから1.16mmへ微調整し、手にしたときのしなやかさと高級感を両立。金具は真鍮製の薄型リングにすることで、重量を総合的に3%低減し、長時間の装着でも疲れにくくなります。 3. 色彩・仕上げの深化 当社の定番カラーであるキャメルブラウンに対し、3%だけ彩度を落として深みを増すことで、肌なじみがよく、季節やコーディネートを問わないユーティリティカラーへと進化させます。仕上げはマットと微光沢の中間のシープスキン巻き染め加工を採用し、手触りと視覚的なニュアンスにわずかな“こなれ感”を加えることで、流行感と伝統的な質感が共存します。 4. 機能性のチューニング 内部ポケットは、スマホポケットの口幅を3%だけ広げ(例:幅8cm→8.24cm)、幅広のリップスティックホルダーを設けることで取り出し動作をスムーズにします。キーリングは標準的なコイルリングから、径を3%縮小したリング型金具に変更。ストラップは取り外し可能な細幅ショルダーストラップ(幅2cm→1.94cm)を採用し、シルエットの軽快さを保ちながら、肩へのフィット感を損なわない設計としました。 5. デザインディテールの深化 縫製のステッチ間隔を従来の8mmから7.8mmへ3%だけ細かくし、緻密な印象に仕上げています。フラップエッジのカットラインにも同率の微細な丸みを付与し、全体として“研ぎ澄まされた中に柔らかさを感じる”バランスを追求。ハンドル取り付け部は一段低く見えるように3%だけ内側に寄せ、バッグの上部ラインに視覚的な統一感を持たせました。承知しました。それでは「装飾」と「機能性」について、3%ルールに沿った微細な改善・改良をレポートに追加いたします。 6. 装飾の深化 バッグ全体の装飾パーツには真鍮の無垢メタルスタッズを採用し、従来品の径4mmから3.88mmへわずか3%だけ小型化することで、主張しすぎない繊細なアクセントを生み出します。さらに、フラップ中央部に施す型押しロゴは高さ1.5mmから1.46mmへ3%浅くし、視認性を保ちつつ表面の凹凸感を抑えることで、光の当たり具合でほんのり浮かび上がる上品な仕上がりを実現します。バッグチャームとして付属するタッセルは、長さ15cmから14.55cmへ3%カットし、揺れ動く際の動きに軽やかさを与える一方、全体のシルエットを邪魔しないサイズ感を保っています。 7. 追加機能性の最適化 ① 撥水ライニング 裏地に使用するマイクロファイバー生地の撥水性能を、はじき率90%から92.7%へ3%向上させ、バッグ内部への水滴浸入をより確実に防ぎます。これにより急な雨天時にも大事なスマホやリップを安心して収納可能です。 ② 着脱式ミラー&コンパクトポーチ 従来の内ポケットに収納されていたミニミラーを、バッグ底部ポーチ外周に設ける形で着脱式にアップデート(厚み5mm → 4.85mm)し、必要なときだけサッと取り出せる機能性を追加。ポーチ本体も縦7cm×横5cmから縦6.79cm×横4.85cmへ3%縮小することで、内部スペースを圧迫せず携帯性を維持します。 ③ スマートタグホルダー キーリングホルダーとは別に、ICカード等を収納できる薄型スリーブを追加。厚み1.2mmから1.16mmへの3%薄型化により、バッグ内のカードポケットに素早く差し込め、改札や自動ドアの利用ストレスを低減します。 ④ 快適ショルダーパッド 肩への当たりを和らげるため、ストラップに同素材の小型パッド(長さ10cm→9.7cm、厚み3mm→2.91mm)を付与。幅狭のまま荷重を分散し、身体へのフィット感を3%向上させることで、長時間の使用でも肩こりを軽減します。 内装・外装のサイズ感の調整をはじめ、なぜそうするのかの理由も含めてアイデアを提示してくれているのが嬉しいところです。ただ、これらはあくまで定量的な進化に留まっています。そこで、あえてコンセプトやテーマなど、定性的な部分の進化アイデアのブレストを投げかけてみたいと思います。そうして出てきたのが、続く以下のような内容です。 8. コンセプト/テーマの3%深化 ① ストーリーテリングの微調整 ・現行の「手軽に持てるラグジュアリー」を、わずかにフォーカスを変え「さりげなく映えるラグジュアリー」へ。ユーザーが日常のワンシーンでふと目を奪われる、控えめながらも確かな存在感を演出します。 ・キャッチコピーも「Carry Less, Shine More」から「Carry Less, Glow Subtly」へと変更し、主張よりもほのかな“きらめき”を表現。 ② 色と感情の連動性 ・テーマカラーを「キャメルブラウン」から「ウォームアーストーン」へとシフト。3%だけ大地のニュアンスを強めることで、安心感とコーディネートの幅を広げ、日常の心地よさを視覚的に訴求します。 ・プロモーションビジュアルでは、やわらかな朝光や夕暮れの光を取り入れ、「ほの暗い中でほんのり光る皮革の質感」をキービジュアルに。 ③ ターゲットペルソナの深化 ・若い働く女性像を「自分らしさを大切にするクリエイター」へと約3%だけアップデート。単なる“トレンド追随”ではなく、自分のスタイルを持ちつつ必要最小限を選択する「エディター的感性」を持つ層にフォーカスします。 ・SNS投稿時のハッシュタグも #MiniBagDaily から #MiniEdit を併用し、洗練された編集感を演出。 ④ ブランド体験要素の追加 ・購入後の体験として、3%だけパーソナライズ要素を強化。バッグに添付するブランドカードに、ユーザー名のイニシャルを型押しで3%だけ控えめに刻印するサービスをオプションに。 ・開封時のパッケージに、通常のリーフレットに加えて「コーディネート提案ミニブック」を同梱し、使用シーンのイメージを具体的にサポート。 ⑤ サステナビリティ・メッセージ ・素材調達や製造過程での環境配慮を、「エコレザー使用」から「エシカル・エイジングレザー」へ3%だけ位置づけを深め、長く使い込むことで味が増す革というストーリーを強調。 ・公式サイトのブランドページに、革の経年変化を追う短い動画コンテンツを3%増量して展開し、ユーザーとの共感を醸成。 これらの微細なコンセプト進化により、製品自体のクオリティアップだけでなく、ブランドとしてのメッセージ性や体験価値がより深まり、ユーザーの心に長く留まる“さりげないけれど確かな魅力”を訴求できます。 定性的な側面は、何をもって3%というのかがもちろん難しいところですが、その厳密さの是非以上に、こうした叩き台となるアイデアを言語化してくれるところが価値あるポイントではないでしょうか。この案をベースにしてさらに深掘りたい部分のブレストを発展させていくことが重要になりますが、今回はこのまま企画書の作成に移っていきたいと思います。 ③ 企画書の作成 「企画書の作成をお願いします」の簡単な指示のみで作成してくれたのが、以下の企画書です。 ミニバッグ3%進化プロジェクト 〜Carry Less, Glow Subtly〜 1. 背景 若年女性を中心に、必要最小限の持ち物でファッション性を楽しむ「ミニバッグ」トレンドが顕著化しています。SNS上では#MiniBagDailyや#MiniEditのタグで多くの投稿が見られ、軽快なルックスとエフォートレスなスタイリングが支持されています。 一方、従来の当社製品はクラシカルな重厚感を重視し、近年のミニマルシフトへの対応が遅れていました。伝統技術と最新トレンドを融合し、2〜3万円帯の中価格レンジで魅力的な製品を提供する必要があります。 2. 課題 ・ トレンド適合 :いま若年女性に支持される小ぶり・ファッション性重視のサイズ感とヌケ感を醸成できるデザイン不足 ・ 使い勝手との両立 :極小フォルムながら日常携行の必需品(スマホ、キー、リップ)が収まる実用性確保 ・ ブランド価値維持 :3%ルールに基づく微細改善で伝統的高級感を損なわずに進化させる設計力 ・ 差別化ポイント :サステナブル素材/パーソナライズ体験など、競合他社との差別化要素不足 3. 目的 ・ 若年女性の心をつかみ、SNSバイラルを促進するミニバッグを開発 ・ 2〜3万円帯の中価格ながら高付加価値を感じさせ、利益率向上を達成 ・ 当社の革製品技術とブランドストーリーを、3%ルールによる微細な進化で強化・訴 4. STP戦略 Segmentation(市場細分化)  ・ ライフスタイル軸 :   ・ 日常カジュアル&ワークシーンユーザー   ・ SNS発信・ファッション感度高いユーザー  ・ 価値志向軸 :   ・ エフォートレスなラグジュアリー志向   ・ サステナビリティ/エシカル消費志向 Targeting(ターゲット選定)  ・ 年齢:20〜30代前半の働く女性  ・ 属性:自分らしいスタイルを持ち、ミニマルな美学を志向するクリエイター志向層  ・ 購入動機:SNS映えするデザインと、日常使いに安心できる革質・機能を両立したバッグを求める Positioning(ポジショニング)  ・ “さりげないきらめき”をまとえるエフォートレスラグジュアリー  ・ キャッチコピー:「Carry Less, Glow Subtly」  ・ 競合比較:     ポジション軸   価格帯     デザイン特徴      差別化ポイント    ブランドA    約1.5万円   カラフル/遊び心    機能寄り(多ポケット)    ブランドB    約3.5万円   シンプル/上質     プレミアムレザー    当社ミニバッグ  2〜3万円帯   微光沢マット&深み色  3%ルールによる微細進化+エシカルレザー 5. 4P戦略 Product(製品戦略)  ・ 極小フォルム(9.7×13.6×4.85cm)の革新デザイン  ・ 3%改善レポートで提案した機能性&装飾(撥水ライニング、ミラー、スマートタグ、スタッズ)  ・ オプション:イニシャル刻印、コーデ提案ミニブック Price(価格戦略)  ・ 推奨小売価格:¥25,000(税込)  ・ 店頭・ECで同価格設定し、バンドル割引(イニシャル刻印セット割)を展開 Place(流通戦略)  ・ 直営店および主要セレクトショップ(都市部4店舗)、公式ECサイト  ・ SNS連動キャンペーン:プロモコード入力で送料無料 Promotion(プロモーション戦略)  ・ SNSインフルエンサー起用(#MiniEditキャンペーン)  ・ 発売前ティザー広告:Instagramストーリーズでカウントダウン  ・ ブランドサイトに革の経年変化動画コンテンツを3%増量掲載  ・ ポップアップイベント:購入者にミニコーデブック配布 7. KPI/評価指標  ・ 初月販売数:1,000個  ・ SNS投稿数:#MiniEdit で1,500件以上  ・ 平均客単価:¥26,000以上  ・ リピート購入率:10%以上(半年以内) 8. 付録:3%改善レポート要約  ・ 形状・サイズ:10cm→9.7cm(3%縮小)、フォルムのモダン化  ・ 重量・素材:200g→194g(3%軽量)、薄手高強度ナッパレザー  ・ 色彩:彩度3%減の深みカラー、マット×微光沢加工  ・ 機能性:スマホポケット+3%、撥水ライニング+3%、ミラー・タグホルダー  ・ 装飾:スタッズ径3%小型化、ロゴ型押し+3%浅型化  ・ コンセプト:”Carry Less, Glow Subtly”に刷新 企画にあたっての前提条件を細かく指定したわけではないので、まだまだ概要にとどまっていますし、一部創作が入っていることなどはLLMの特性上どうしても否めませんが、叩き台として必要なフレームは示してくれている印象ではないでしょうか。これを元にどの方向に絞って企画を詰めていくのか、加味すべき前提条件はなにかなどの情報を与えながら、企画書としてのクオリティを高めていくのが人とAIの協働による次へのステップです。 そして今回は、企画書をもとにした新商品のビジュアル案も作成してもらいました。画像生成AIの技術の高まりによって、こうした参考イメージが忠実に生成できるようになってきたことは、企画担当者のアイデア拡張をさらに後押しする可能性を感じさせられます。 AIの想像力からアイデアを拡張する いかがでしたでしょうか。出力された企画が本当に成功するのか、流行が本当に発生するのか、こればかりはマーケティングあるいは消費者という不確実性の高い分野では、どうしてもわからないところがあるのは事実です。 ですが、仮想的に言語化された情報をヒントに、あなたの頭の中でモヤモヤとしている部分を刺激させる、あなた自身に秘めたインサイトを拾い出す、あなたがお持ちのアイデアを拡張することには大いに役立つのではないかと考えています。未来リサーチが「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」をコンセプトにしているのは、まさにこうした点にあります。 とくに今回紹介した仮想WEBアンケートは、次のような方にオススメです。 ・ 既存商品の良さを活かしつつ、新たな魅力を加えた新商品アイデアを生み出したい方 ・ 限られたリソースで、最大限の効果を生み出す商品開発戦略を策定したい方 また、その利用メリットは、 ・ 潜在ニーズの探索 顧客の視点に立ち、「3%の変化」によってどのようなベネフィットを提供できるかを考えることで、潜在的なニーズを探索 ・ 伝統と革新の融合 伝統を守りながら、時代の変化に対応した新たなアイデアの発掘 などが挙げられます。 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 未来リサーチは、2025年秋頃のサービス提供を目指して開発を進めており、執筆時現在、事前登録の申込みを受け付けています。優先的な利用案内や先行体験に関する特典もご案内予定ですので、興味を持っていただけた方は、ぜひご登録をいただけますと幸いです。 未来リサーチ TM  事前登録フォーム その他のアプリ解説記事 以下のアプリ解説記事を公開中です。ぜひ、あわせてご覧ください。 ・ 未来の消費者にインタビュー。AIエージェント『未来グループインタビュー』を解説 ・ 未来の消費者行動を“のぞき見”。生成AIエージェント『未来エスノグラフィ』を解説 ・ 消費者の脳内にトリップ。生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 ・ 大規模アンケートをその場で仮想実施。生成AIエージェント『仮想WEBアンケート』を解説 ・ 流行を生み出すためのブレストAI。生成AIエージェント『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』を解説 ご留意事項 ※ 生成AI・LLMを用いている未来リサーチの回答は、必ずしも正しいとは限りません。重要な情報はお客様ご自身にて十分にご確認ください。 ※ 出力や精度に都度バラツキが生じるため、同様の結果が再現できることを保証するものではありません。 ※ デモ中に出力された人名・企業名・商品等は、特定の個人・団体・製品等を指定・意図するものではございません。 ※ 提供時期や特典等は、予告なく変更になる場合がございます。 参考 プレスリリース: 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ(TM)』の開発、および事前登録開始のお知らせ 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 流行を生み出すためのブレストAI。生成AIエージェント『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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流行を生み出すためのブレストAI。 生成AIエージェント『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』を解説 2025.7.12 株式会社Laboro.AI 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 概 要 当社Laboro.AIでは、去る2025年6月18日、自社初となる生成AIエージェントをベースにした対話型プロダクト『 未来リサーチ 』(商標・特許出願中)を発表しました。このコラムでは、そのアプリケーションの一つであり、「次なる流行は、今の商品に3%だけ違いを出すことで生まれる」という流行神話に基づいて新商品アイデアをブレスト創出する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』を取り上げ、その概要や実際の出力、活用メリットなど紹介していきます。 目 次 ・ 流行発生のメカニズムと神話 ・ 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは ・ 流行を生み出すためのブレストAI『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』とは  ・ ① ヒアリング  ・ ② レポート作成 & ブレスト  ・ ③ 企画書の作成 ・ AIの想像力からアイデアを拡張する ・ 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 流行発生のメカニズムと神話 「流行を生み出す法則を解明したい」――。マーケターなら誰しも夢描くであろう流行メカニズムの解明。ですが、曖昧で気まぐれな心理を持つ消費者、そして極めて複雑な外部環境や情報が絡み合う現代社会において、流行を確実に引き起こす一定の法則などは、存在し得ないのかもしれません。 その一方で、社会学の流行論という分野においては、今から200年以上も前から流行メカニズムの解明を志した議論が活発に交わされてきました。著名なところでは、社会はマネ(模倣)によって生み出されたさまざまな類似点を提示し合っている人々の集合だと考え『 模倣の法則 』を記したジャン・ガブリエル・タルド、上流階級の見せびらかし消費(顕示的消費)が下流階級に伝播していくメカニズムを『 有閑階級の理論 』で克明に明かしたソースティン・ヴェブレン、“模倣”と“差異”という対立する概念の共存が流行発生の根本にあると決定付けたゲオルグ・ジンメルなどです。 とくにジンメルの説は非常に興味深いものです。ジンメルによれば、対立の一方にある“模倣”、つまり無意識のうちに他者と同様のものを所有するなどによって、社会やグループへの所属・依存の欲求を満足させる、あるいは社会からの逸脱を免れようとする価値観に加えて、もう一方にある“差異”、つまり自身と他者を区別したいという欲求が働くことで、次なる“もっといいもの”に向かおうとする価値観が共存し、この不均衡な状態が、流行を生み出す原動力だと考えられています。 簡単に言れば、他の人と同じでありたいという「同調心理」と、他の人と違っていたいという「差異心理」、両極端な心理からなる行動が繰り返され、増幅されることによって流行という社会的な大きな動きを生み出していくということで、この考えから生まれた「トリクルダウン(滴下理論)」というセオリーは、現代マーケティングでもよく知られています。 さらにマーケティングや商品企画の観点でシンプル化してみれば、いま流行っているものから逸脱しない範囲内で個性につながる違いを創出する、”同じようでちょっと違う”商品・サービスを企画することが、流行発生のための一つの法則だと考えられるのです。 そして、こうした歴史深い議論も踏まえて、現代になって神話のように生まれてきたが「流行の3%ルール」というものです。これはあるラグジュアリーブランドのデザイナーが語ったとされる言説で、例えば、商品の色、形、大きさ、重さ、ターゲット、ポジショニングなど、さまざまな商品の仕様・機能・コンセプトなどを3%だけ変えれば流行のループを生み出すことができるという、文字通りの神話です。当然ながらこの“3%”は厳密に計測したものではなく、あくまで“ちょっと違う”を比喩的に表したものであって、経験に基づく感覚論の域を出るものではありません。 ただ、もし、今販売され流行している商品に3%だけ違いを出すような施しをしてみたら、どのような新商品・サービスが生まれてくるのかを考えるという試みは、次なる商品企画に斬新なアイデアを与えてくれる可能性は、大いにあるように思うのです。 出典: 坂井素思(1999)「贅沢消費論 : ジンメルとヴェブレン消費理論の趣味論的解釈」放送大学研究年報, 16, pp.71-92. 大塚雄太(2022)「流行論の知られざる名著 ―クリスティアン・ガルヴェ『流行について』 ― 」 愛知学院大学 経済研究所所法, 第2号, pp.98-116. 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ』とは 今般当社が開発を発表した『未来リサーチ』は、社会学などの学術理論のほか、様々なマーケティングの調査手法から得た発想をもとに、各種企画業務におけるアイデア創出や仮説検証を支援することを目指した、生成AIエージェントベースのプロダクトです。 未来リサーチには、例えば、コンサルタント、消費者、リサーチャー、プランナー等の機能を持たせたAIエージェントが仕込まれており、各々のエージェントがユーザーへの課題のヒアリングと深掘り、仮想的なリサーチの実施、調査レポートの作成、調査結果を踏まえた企画書の作成までを、その場で実行することを基本機能としています。各エージェントが自律的に役割を実行するので、ユーザーは、基本的にAIコンサルタントから投げ掛けられる質問に答えるだけでレポートや企画書の作成までを完結することができます。 そして、未来リサーチの何よりの特徴は、「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」というコンセプトにあります。従来の市場調査を代替することではなく、それらをヒントにした斬新なアプローチのタスクをエージェントに実施させることを通して、新商品・サービス企画、新規事業企画、広告宣伝、プロモーション、販売促進などのマーケティングの各種企画業務に従事する方々がお持ちのアイデアを、さらに拡張することをコンセプトにしています。 それを具現化するのが未来リサーチを構成する各アプリで、例えば、 ・未来時間の消費者へのインタビュー調査をする『 未来グループインタビュー 』 ・未来の市場でフィールド調査をする『 未来エスノグラフィ 』 ・本来は見ることができない消費者の脳内を覗いて意思決定プロセスを抽出する『 買い物脳スコープ 』 ・大量サンプルに対するWebアンケートを仮想実施する『 仮想Webアンケート 』 ・斬新な切り口で企画ブレインストーミングを実施する『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』 など、それぞれのテーマをもったアプリをラインナップしています。(段階的にさらに追加していく予定です。) そして今回は、このうちの一つ、『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』を実際のデモ画面と共にご紹介したいと思います。 流行を生み出すためのブレストAI『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』とは 『 “3%だけ”進化させる新商品アイデア 』は、生成AI・LLM(大規模言語モデル)の優れた言語能力、もっと言えば大胆な想像力を用いて、“ちょっと違う新商品”のアイデアに関するブレストを行った上で、マーケティング企画書の作成までを、その場で実施するアプリです。 どのような商品・サービスをテーマにするのか、どのような方向で改善したいのか、どのような消費者を対象としたいのかなど、AIコンサルタントからのヒアリングに回答すれば、AIがアイデアを次々と提示してくれます。 商品サービスの改善や新商品アイデアの創出などに最適なアプリで、商品企画、新規事業企画はもちろん、広告宣伝やプロモーション戦略の立案など、マーケティングの幅広い企画業務でご活用いただけるものです。 では、デモ画面と共にその実際のやりとりを見ていきましょう。なお、登場するデモ画面は執筆時点のもので、今後の開発状況に応じて仕様等が変更になる場合がございますことを予めご了承ください。 ① ヒアリング 基本的な入力画面はChatGPTなどの対話型AIと同様で、初回の入力はユーザー側から行います。今回は、皮革製品をメインとした服飾雑貨メーカーの商品企画担当という想定で、以下の悩み相談をしてみました。 私は皮革製品を製造する服飾雑貨メーカーの商品企画の責任者です。 伝統を守りつつ、時代の変化に対応した新商品を実現したいと思っています。 いま若い女性の間で流行しているミニバッグをベースにした商品企画を行いたいです。 すると、さっそくAIコンサルタントから新商品の使用シーンに関する質問を受けました。今回は、デイリーユースを想定した商品として回答したいと思います。 次に、サイズ感や内装・外装、機能、想定される携帯アイテム、価格帯など、次々とヒアリングが展開。初期の企画段階という想定をおきつつ、未検討の部分はそのように伝え、順次回答していきます。 ② レポート作成 & ブレスト 一通りのヒアリングが完了すると、いよいよ3%ルールに基づいた『 3%改善・改良レポート 』が作成されます。さっそく、以下のような内容で作成してくれました。 < 3%改善・改良レポート > 本レポートでは、若い女性向けの「かなり小ぶりでファッション性重視」のデイリーユースミニバッグをベースに、当社が得意とする革製品の良さを生かしながら、各要素に約3%の微細な変化を加えたときの具体像を描き出します。企画の骨格は、想定ユーザーが日常的に携行する必需品──スマートフォン、キー、リップスティックを想定し、2~3万円の中価格帯で実現可能な現実性を重視しました。 1. 形状・サイズの調整 ベースとなる標準的ミニバッグの外形を、縦10cm×横14cm×マチ5cmと仮定した場合、3%の縮小で縦9.7cm×横13.6cm×マチ4.85cmとなり、抱えやすい極小フォルムを実現します。こうしたわずかなコンパクト化により、スタイリング時の「抜け感」が強調される一方、必要最小限の収納性は維持されます。エッジ部分の曲線も同じく3%だけシャープさを増し、全体フォルムにモダンな切れ味を加えます。 2. 重量・素材の最適化 通常200g前後のレザー素材をベースとする場合、3%の軽量化(約194g)を実現するために、裏地や芯材の選定を見直し、薄手ながら強度を保つナッパレザーを採用します。革の厚みは標準1.2mmから1.16mmへ微調整し、手にしたときのしなやかさと高級感を両立。金具は真鍮製の薄型リングにすることで、重量を総合的に3%低減し、長時間の装着でも疲れにくくなります。 3. 色彩・仕上げの深化 当社の定番カラーであるキャメルブラウンに対し、3%だけ彩度を落として深みを増すことで、肌なじみがよく、季節やコーディネートを問わないユーティリティカラーへと進化させます。仕上げはマットと微光沢の中間のシープスキン巻き染め加工を採用し、手触りと視覚的なニュアンスにわずかな“こなれ感”を加えることで、流行感と伝統的な質感が共存します。 4. 機能性のチューニング 内部ポケットは、スマホポケットの口幅を3%だけ広げ(例:幅8cm→8.24cm)、幅広のリップスティックホルダーを設けることで取り出し動作をスムーズにします。キーリングは標準的なコイルリングから、径を3%縮小したリング型金具に変更。ストラップは取り外し可能な細幅ショルダーストラップ(幅2cm→1.94cm)を採用し、シルエットの軽快さを保ちながら、肩へのフィット感を損なわない設計としました。 5. デザインディテールの深化 縫製のステッチ間隔を従来の8mmから7.8mmへ3%だけ細かくし、緻密な印象に仕上げています。フラップエッジのカットラインにも同率の微細な丸みを付与し、全体として“研ぎ澄まされた中に柔らかさを感じる”バランスを追求。ハンドル取り付け部は一段低く見えるように3%だけ内側に寄せ、バッグの上部ラインに視覚的な統一感を持たせました。承知しました。それでは「装飾」と「機能性」について、3%ルールに沿った微細な改善・改良をレポートに追加いたします。 6. 装飾の深化 バッグ全体の装飾パーツには真鍮の無垢メタルスタッズを採用し、従来品の径4mmから3.88mmへわずか3%だけ小型化することで、主張しすぎない繊細なアクセントを生み出します。さらに、フラップ中央部に施す型押しロゴは高さ1.5mmから1.46mmへ3%浅くし、視認性を保ちつつ表面の凹凸感を抑えることで、光の当たり具合でほんのり浮かび上がる上品な仕上がりを実現します。バッグチャームとして付属するタッセルは、長さ15cmから14.55cmへ3%カットし、揺れ動く際の動きに軽やかさを与える一方、全体のシルエットを邪魔しないサイズ感を保っています。 7. 追加機能性の最適化 ① 撥水ライニング 裏地に使用するマイクロファイバー生地の撥水性能を、はじき率90%から92.7%へ3%向上させ、バッグ内部への水滴浸入をより確実に防ぎます。これにより急な雨天時にも大事なスマホやリップを安心して収納可能です。 ② 着脱式ミラー&コンパクトポーチ 従来の内ポケットに収納されていたミニミラーを、バッグ底部ポーチ外周に設ける形で着脱式にアップデート(厚み5mm → 4.85mm)し、必要なときだけサッと取り出せる機能性を追加。ポーチ本体も縦7cm×横5cmから縦6.79cm×横4.85cmへ3%縮小することで、内部スペースを圧迫せず携帯性を維持します。 ③ スマートタグホルダー キーリングホルダーとは別に、ICカード等を収納できる薄型スリーブを追加。厚み1.2mmから1.16mmへの3%薄型化により、バッグ内のカードポケットに素早く差し込め、改札や自動ドアの利用ストレスを低減します。 ④ 快適ショルダーパッド 肩への当たりを和らげるため、ストラップに同素材の小型パッド(長さ10cm→9.7cm、厚み3mm→2.91mm)を付与。幅狭のまま荷重を分散し、身体へのフィット感を3%向上させることで、長時間の使用でも肩こりを軽減します。 内装・外装のサイズ感の調整をはじめ、なぜそうするのかの理由も含めてアイデアを提示してくれているのが嬉しいところです。ただ、これらはあくまで定量的な進化に留まっています。そこで、あえてコンセプトやテーマなど、定性的な部分の進化アイデアのブレストを投げかけてみたいと思います。そうして出てきたのが、続く以下のような内容です。 8. コンセプト/テーマの3%深化 ① ストーリーテリングの微調整 ・現行の「手軽に持てるラグジュアリー」を、わずかにフォーカスを変え「さりげなく映えるラグジュアリー」へ。ユーザーが日常のワンシーンでふと目を奪われる、控えめながらも確かな存在感を演出します。 ・キャッチコピーも「Carry Less, Shine More」から「Carry Less, Glow Subtly」へと変更し、主張よりもほのかな“きらめき”を表現。 ② 色と感情の連動性 ・テーマカラーを「キャメルブラウン」から「ウォームアーストーン」へとシフト。3%だけ大地のニュアンスを強めることで、安心感とコーディネートの幅を広げ、日常の心地よさを視覚的に訴求します。 ・プロモーションビジュアルでは、やわらかな朝光や夕暮れの光を取り入れ、「ほの暗い中でほんのり光る皮革の質感」をキービジュアルに。 ③ ターゲットペルソナの深化 ・若い働く女性像を「自分らしさを大切にするクリエイター」へと約3%だけアップデート。単なる“トレンド追随”ではなく、自分のスタイルを持ちつつ必要最小限を選択する「エディター的感性」を持つ層にフォーカスします。 ・SNS投稿時のハッシュタグも #MiniBagDaily から #MiniEdit を併用し、洗練された編集感を演出。 ④ ブランド体験要素の追加 ・購入後の体験として、3%だけパーソナライズ要素を強化。バッグに添付するブランドカードに、ユーザー名のイニシャルを型押しで3%だけ控えめに刻印するサービスをオプションに。 ・開封時のパッケージに、通常のリーフレットに加えて「コーディネート提案ミニブック」を同梱し、使用シーンのイメージを具体的にサポート。 ⑤ サステナビリティ・メッセージ ・素材調達や製造過程での環境配慮を、「エコレザー使用」から「エシカル・エイジングレザー」へ3%だけ位置づけを深め、長く使い込むことで味が増す革というストーリーを強調。 ・公式サイトのブランドページに、革の経年変化を追う短い動画コンテンツを3%増量して展開し、ユーザーとの共感を醸成。 これらの微細なコンセプト進化により、製品自体のクオリティアップだけでなく、ブランドとしてのメッセージ性や体験価値がより深まり、ユーザーの心に長く留まる“さりげないけれど確かな魅力”を訴求できます。 定性的な側面は、何をもって3%というのかがもちろん難しいところですが、その厳密さの是非以上に、こうした叩き台となるアイデアを言語化してくれるところが価値あるポイントではないでしょうか。この案をベースにしてさらに深掘りたい部分のブレストを発展させていくことが重要になりますが、今回はこのまま企画書の作成に移っていきたいと思います。 ③ 企画書の作成 「企画書の作成をお願いします」の簡単な指示のみで作成してくれたのが、以下の企画書です。 ミニバッグ3%進化プロジェクト 〜Carry Less, Glow Subtly〜 1. 背景 若年女性を中心に、必要最小限の持ち物でファッション性を楽しむ「ミニバッグ」トレンドが顕著化しています。SNS上では#MiniBagDailyや#MiniEditのタグで多くの投稿が見られ、軽快なルックスとエフォートレスなスタイリングが支持されています。 一方、従来の当社製品はクラシカルな重厚感を重視し、近年のミニマルシフトへの対応が遅れていました。伝統技術と最新トレンドを融合し、2〜3万円帯の中価格レンジで魅力的な製品を提供する必要があります。 2. 課題 ・ トレンド適合 :いま若年女性に支持される小ぶり・ファッション性重視のサイズ感とヌケ感を醸成できるデザイン不足 ・ 使い勝手との両立 :極小フォルムながら日常携行の必需品(スマホ、キー、リップ)が収まる実用性確保 ・ ブランド価値維持 :3%ルールに基づく微細改善で伝統的高級感を損なわずに進化させる設計力 ・ 差別化ポイント :サステナブル素材/パーソナライズ体験など、競合他社との差別化要素不足 3. 目的 ・ 若年女性の心をつかみ、SNSバイラルを促進するミニバッグを開発 ・ 2〜3万円帯の中価格ながら高付加価値を感じさせ、利益率向上を達成 ・ 当社の革製品技術とブランドストーリーを、3%ルールによる微細な進化で強化・訴 4. STP戦略 Segmentation(市場細分化)  ・ ライフスタイル軸 :   ・ 日常カジュアル&ワークシーンユーザー   ・ SNS発信・ファッション感度高いユーザー  ・ 価値志向軸 :   ・ エフォートレスなラグジュアリー志向   ・ サステナビリティ/エシカル消費志向 Targeting(ターゲット選定)  ・ 年齢:20〜30代前半の働く女性  ・ 属性:自分らしいスタイルを持ち、ミニマルな美学を志向するクリエイター志向層  ・ 購入動機:SNS映えするデザインと、日常使いに安心できる革質・機能を両立したバッグを求める Positioning(ポジショニング)  ・ “さりげないきらめき”をまとえるエフォートレスラグジュアリー  ・ キャッチコピー:「Carry Less, Glow Subtly」  ・ 競合比較:     ポジション軸   価格帯     デザイン特徴      差別化ポイント    ブランドA    約1.5万円   カラフル/遊び心    機能寄り(多ポケット)    ブランドB    約3.5万円   シンプル/上質     プレミアムレザー    当社ミニバッグ  2〜3万円帯   微光沢マット&深み色  3%ルールによる微細進化+エシカルレザー 5. 4P戦略 Product(製品戦略)  ・ 極小フォルム(9.7×13.6×4.85cm)の革新デザイン  ・ 3%改善レポートで提案した機能性&装飾(撥水ライニング、ミラー、スマートタグ、スタッズ)  ・ オプション:イニシャル刻印、コーデ提案ミニブック Price(価格戦略)  ・ 推奨小売価格:¥25,000(税込)  ・ 店頭・ECで同価格設定し、バンドル割引(イニシャル刻印セット割)を展開 Place(流通戦略)  ・ 直営店および主要セレクトショップ(都市部4店舗)、公式ECサイト  ・ SNS連動キャンペーン:プロモコード入力で送料無料 Promotion(プロモーション戦略)  ・ SNSインフルエンサー起用(#MiniEditキャンペーン)  ・ 発売前ティザー広告:Instagramストーリーズでカウントダウン  ・ ブランドサイトに革の経年変化動画コンテンツを3%増量掲載  ・ ポップアップイベント:購入者にミニコーデブック配布 7. KPI/評価指標  ・ 初月販売数:1,000個  ・ SNS投稿数:#MiniEdit で1,500件以上  ・ 平均客単価:¥26,000以上  ・ リピート購入率:10%以上(半年以内) 8. 付録:3%改善レポート要約  ・ 形状・サイズ:10cm→9.7cm(3%縮小)、フォルムのモダン化  ・ 重量・素材:200g→194g(3%軽量)、薄手高強度ナッパレザー  ・ 色彩:彩度3%減の深みカラー、マット×微光沢加工  ・ 機能性:スマホポケット+3%、撥水ライニング+3%、ミラー・タグホルダー  ・ 装飾:スタッズ径3%小型化、ロゴ型押し+3%浅型化  ・ コンセプト:”Carry Less, Glow Subtly”に刷新 企画にあたっての前提条件を細かく指定したわけではないので、まだまだ概要にとどまっていますし、一部創作が入っていることなどはLLMの特性上どうしても否めませんが、叩き台として必要なフレームは示してくれている印象ではないでしょうか。これを元にどの方向に絞って企画を詰めていくのか、加味すべき前提条件はなにかなどの情報を与えながら、企画書としてのクオリティを高めていくのが人とAIの協働による次へのステップです。 そして今回は、企画書をもとにした新商品のビジュアル案も作成してもらいました。画像生成AIの技術の高まりによって、こうした参考イメージが忠実に生成できるようになってきたことは、企画担当者のアイデア拡張をさらに後押しする可能性を感じさせられます。 AIの想像力からアイデアを拡張する いかがでしたでしょうか。出力された企画が本当に成功するのか、流行が本当に発生するのか、こればかりはマーケティングあるいは消費者という不確実性の高い分野では、どうしてもわからないところがあるのは事実です。 ですが、仮想的に言語化された情報をヒントに、あなたの頭の中でモヤモヤとしている部分を刺激させる、あなた自身に秘めたインサイトを拾い出す、あなたがお持ちのアイデアを拡張することには大いに役立つのではないかと考えています。未来リサーチが「 リサーチ発想のアイデア拡張コレクション 」をコンセプトにしているのは、まさにこうした点にあります。 とくに今回紹介した仮想WEBアンケートは、次のような方にオススメです。 ・ 既存商品の良さを活かしつつ、新たな魅力を加えた新商品アイデアを生み出したい方 ・ 限られたリソースで、最大限の効果を生み出す商品開発戦略を策定したい方 また、その利用メリットは、 ・ 潜在ニーズの探索 顧客の視点に立ち、「3%の変化」によってどのようなベネフィットを提供できるかを考えることで、潜在的なニーズを探索 ・ 伝統と革新の融合 伝統を守りながら、時代の変化に対応した新たなアイデアの発掘 などが挙げられます。 未来リサーチのサービス提供&事前登録(ウェイティングリスト)について 未来リサーチは、2025年秋頃のサービス提供を目指して開発を進めており、執筆時現在、事前登録の申込みを受け付けています。優先的な利用案内や先行体験に関する特典もご案内予定ですので、興味を持っていただけた方は、ぜひご登録をいただけますと幸いです。 未来リサーチ TM  事前登録フォーム その他のアプリ解説記事 以下のアプリ解説記事を公開中です。ぜひ、あわせてご覧ください。 ・ 未来の消費者にインタビュー。AIエージェント『未来グループインタビュー』を解説 ・ 未来の消費者行動を“のぞき見”。生成AIエージェント『未来エスノグラフィ』を解説 ・ 消費者の脳内にトリップ。生成AIエージェント『買い物脳スコープ』を解説 ・ 大規模アンケートをその場で仮想実施。生成AIエージェント『仮想WEBアンケート』を解説 ・ 流行を生み出すためのブレストAI。生成AIエージェント『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』を解説 ご留意事項 ※ 生成AI・LLMを用いている未来リサーチの回答は、必ずしも正しいとは限りません。重要な情報はお客様ご自身にて十分にご確認ください。 ※ 出力や精度に都度バラツキが生じるため、同様の結果が再現できることを保証するものではありません。 ※ デモ中に出力された人名・企業名・商品等は、特定の個人・団体・製品等を指定・意図するものではございません。 ※ 提供時期や特典等は、予告なく変更になる場合がございます。 参考 プレスリリース: 生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ(TM)』の開発、および事前登録開始のお知らせ 執筆者 執行役員 マーケティング部長 和田 崇 立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、 NewsPicks プロピッカーとして活動するほか、 日経クロストレンド などメディア寄稿多数。 The post 流行を生み出すためのブレストAI。生成AIエージェント『“3%だけ”進化させる新商品アイデア』を解説 first appeared on 株式会社Laboro.AI .
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