技術イベントの振り返りと改善【TECH PLAY -Branding Method- 第5章】
10年間で500社以上のエンジニア採用ブランディングを支援してきたTECH PLAYのノウハウを凝縮した「Branding Method」を基に、成功事例と具体策を解説するシリーズの第5弾。こんにちは。TECH PLAYプランナーの坂本です。これまで80本以上のエンジニア向けコンテンツを企画・制作してきた経験を踏まえ、「TECH PLAY -Branding Method-」をもとに、エンジニア採用や採用ブランディング、エンジニア向けのコンテンツ企画に役立つ実践的なノウハウをお届けしています。
このシリーズでは、私がナビゲーターとして、全5回にわたり「TECH PLAY -Branding Method-」を順を追ってご紹介していきます。
最終回となる第5回では、技術イベントの効果を最大化するための「振り返り」と「改善」をテーマに取り上げます。
イベントは開催して終わりではなく、その後の振り返りによってこそ価値が積み重なります。アンケート設計やPDCAサイクルの回し方を工夫することで、単発イベントが「採用ブランディングの資産」へと進化していきます。
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この記事で分かること
- アンケート設計の具体的な方法
- 定量・定性両面での評価の仕組み
- イベント運営における典型的な課題と改善法
- 成功イベントと苦戦イベントの違い
- 採用ブランディング資産に育てる方法
こんな方にオススメ
- 採用広報や採用ブランディングでイベントを活用している方
- 技術イベントの集客や満足度改善に悩んでいる方
- 自社の採用活動を“仕組み化”したい方
技術イベントの振り返りと改善|アンケート設計の極意
技術イベントを振り返る際、まず鍵になるのがアンケートの設計です。
アンケートには「申込時」と「事後」の2種類があり、取得できる情報が大きく異なります。両方を設計してはじめて、イベント全体の効果が可視化されます。
申込時アンケート|ターゲット精度を測る“入口データ”
申込時アンケートは、参加者がイベントに触れる最初の段階で行います。参加前の状態を把握できるため、参加者が「どんな属性を持っているのか」「どのような期待を抱いているのか」を確認するのに適しています。
実際の設計イメージは以下の表の通りです。
目的ごとに「設問」と「選択肢」を具体化しておくと、イベント後の改善に直結するデータを得やすくなります。

- 自社に対する認知把握
- 自社ブランドの浸透度を測る。単に「知っている/知らない」ではなく「名前は知っているが事業内容は知らない」といった層を可視化できると改善ポイントが明確になる。
- 自社×ソフトウェア技術活用の認知把握
- 自社がどの程度技術的に挑戦しているかを参加者が理解しているかを測る。ソフトウェア人材採用では「技術フィールドとしての魅力」が伝わっているかを把握できる。
- 業界に対するイメージ把握
- 業界全体の魅力度を測る指標。ポジティブな回答が多ければ業界認知の底上げに成功しているといえる。逆に「特にイメージはない」が多ければ情報発信不足のサイン。
- 自社に対するイメージ把握
- 「成長できそう」「著名なエンジニアがいる」など、自社のブランドイメージを測る。業界イメージと比較して「自社ならではの強み」が伝わっているかを評価できる。
こうした設問は単なる満足度調査ではなく、「ブランド浸透度」「技術理解度」「業界魅力度」「自社ポジショニング」といった観点を数値化する役割を果たします。
そして得られた結果は、第2章で取り上げた「コンセプト/ターゲットを設定する|情報発信の土台をつくる」のブラッシュアップにもつながり、継続的な採用ブランディング活動の推進に欠かせないデータとなります。
関連記事:[採用ブランディング活動のはじめ方【TECH PLAY -Branding Method- 第2章】]
事後アンケート|態度変容を測る“出口データ”
一方で事後アンケートは、実際に参加した人が「どのように感じたか」「どんな変化があったか」を把握するものです。満足度だけでなく、自社や業界への印象変化、次回参加意欲まで確認できます。これにより「イベントを通じて何が伝わったのか」を可視化できます。
さらに、アンケートの結果にポジティブな変化が見られた場合は、それ自体が発信内容がターゲットの認知変容や態度変容を生んだことの証明になります。これは「採用ブランディング施策として有効だった」と説明する強い根拠になります。
また、得られた成果を次の施策に活かす方法として、コンテンツ・リパーパス(再活用)の発想が有効です。
例えば、イベントのアーカイブ動画やイベントレポートをまとめて、
- スカウト文面にリンクを添える
- 面接予定の候補者に事前視聴してもらう
- オウンドメディアやSNSで配信する
といった形で活用すれば、単発イベントの価値を拡張し、採用活動全体の効率化やブランド認知の拡大にもつながります。
共通ポイント|アンケート設計の鉄則
アンケートを有効に機能させるには、設問数を絞り込み、回答のしやすさを意識することが不可欠です。特に技術イベントでは、参加者が「学び」に集中したい気持ちが強いため、アンケートが長いと負担になり回答率が下がってしまいます。
そのため、選択式を中心に設計し、必須項目は最小限にとどめましょう。
さらに、登壇資料の配布や抽選でプレゼントなどの「回答特典」を設けると、参加者が自然に答えたくなる仕掛けになり、回答率が改善します。
また、イベント中に回答を促すアナウンスをしたり、終了後のフォローアップメールで複数回リマインドを送ることも効果的です。
こうした小さな工夫の積み重ねが、振り返りに活かせる十分なサンプル数を確保するポイントになります。
PDCAを回す具体的なステップ|改善サイクルの作り方
イベントの成果を最大化するには、定量と定性の両面から振り返り、次回施策へとつなげる仕組みが必要です。
まず定量面では、申込数・参加率・アンケート回答率といった数値を記録し、過去回と比較します。
例えば「申込数は増えたが参加率は下がった」という場合、リマインドメールや当日の導線設計を見直す必要があります。
一方で定性面は、参加者の声や印象の変化を丁寧に拾い上げます。
「この企業はエンジニアに裁量を与えていると感じた」「技術的な知見を持つ社員が多そう」などの声は、採用ブランディングのゴール達成を測る重要な指標です。
こうした結果を整理するには、「ゴールの達成度」「良かった点」「改善点」を一枚の資料にまとめることをおすすめします。ナレッジが蓄積され、同じ失敗を繰り返さないチーム文化が育ちます。

さらに、第4章で解説した「企画書の作り方|棚卸しからテーマ設定、タイトル案へ」で作成した企画書を振り返り資料のベースとして活用すると効果的です。
企画段階で明確にしたターゲットやゴール、想定ペルソナを振り返り指標と照らし合わせることで、イベント設計の意図と成果を比較でき、改善点がより具体的に浮かび上がります。
関連記事:[技術イベントの作り方【TECH PLAY -Branding Method- 第4章】]
よくある悩みと改善ポイント|典型課題と処方箋
振り返りをしていると、多くの企業が共通してつまずくポイントが見えてきます。

まず「集客が伸びない」という悩み。
これはタイトルが抽象的すぎることが多いです。
実際に、下記のような比較は分かりやすい事例です。

- 集客に苦戦するイベントの例
- 「DX経営の高度化に向けた価値創出をするには」など、抽象的なキーワードが多く、どのようなサービスや技術を扱うのかが不明確。
- 説明文も一般論に留まり、現場の工夫や失敗談といった“ここでしか聞けない話”が不足している。

- 集客しやすいイベントの例
- 「リリース10年『TP』アプリの技術負債を乗り越える際の4つの観点」のように、具体的なサービス・技術・課題が明示されている。
- Javaからの書き換えやフルスクラッチかリファクタリングかといった具体論が提示され、参加者が自分の経験や関心と結びつけやすい。
結局のところ、タイトルと概要でどれだけ具体的に価値を示せるかが、集客の成否を大きく左右します。
また、外部露出経路が限られているケースも見受けられます。
求人票や企業HP、エージェント経由の告知を組み合わせることで、認知経路を広げる必要があります。
次に「満足度が低い」という悩み。
参加者は学びを求めているのに、企業説明に時間を割きすぎると不満が出ます。
内容がタイトルと乖離していたり、ネット検索で得られる一般論ばかりだと、期待外れ感が強くなります。ここで重要なのは「イベントでしか聞けない話」を必ず盛り込むこと。
現場のエンジニアしか語れない課題や失敗談は、それだけで満足度を高める要因になります。
最後に「ターゲットが違う」という悩み。
これはペルソナ設計が曖昧な場合に起こります。
「誰に来てほしいイベントなのか」を再度精査し、そのペルソナが日常的に触れる媒体で告知することが欠かせません。
まとめ
第5章では、技術イベントの効果を最大化する「振り返りと改善」の方法を解説しました。
- アンケートは“入口”と“出口”をセットで設計する
- 数字と声を合わせて振り返り、改善サイクルを回す
- 集客・満足度・ターゲット精度の課題は必ずパターン化して改善可能
- 成功するイベントは「具体性」と「共感性」で参加者を惹きつける
イベントを単発施策で終わらせず、継続的に改善しながら採用ブランディング資産へと育てることが重要です。
あなたの会社の技術イベントは「やりっぱなし」になっていませんか?
今日から「次回につなげる仕組みづくり」を意識してみてください。
より詳細を知りたい方へ
本記事では「TECH PLAY -Branding Method-」第5章の内容を中心に解説しました。
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執筆者

坂本 奈穂
パーソルイノベーション株式会社
TECH PLAY BRANDING
2016年にパーソルキャリア(旧 インテリジェンス)に新卒入社し、約4年間IT・インターネット業界への採用支援を担当。その後、エンジニア領域の転職支援に従事。2022年よりエンジニア向け採用ブランディングのプランナーとして『TECH PLAY』に参画。これまで80本以上のイベントや動画・対談を企画。自動車業界をはじめメーカー・小売・IT・Web・スタートアップなど、様々な業界で企業の採用ブランディングを支援。














