Sendai DX最前線。仙台にはなぜDX推進者が集まるのか? ー医療、農業、防災。仙台発5つのプロジェクトから考える、UIJターンという選択肢ーTechDriveSendai2025.#1
社会インフラの老朽化、人手不足、地域産業の担い手不足──日本は今、さまざまな課題に直面している。仙台市でもまたこれらが顕在化するなか、本イベントでは仙台を拠点にAIやIoTを活用したDX推進にチャレンジする5社が登壇。農業、医療、介護、子育て支援、自動車IoTの各分野で社会課題解決に挑む企業が、地方・仙台市だからこそ実現できるイノベーションの可能性とUIJターンの魅力について語った。アーカイブ動画
ITで農業をイノベーション!仙台発・舞台ファームが切り拓く新時代とは
株式会社舞台ファーム
未来戦略部
吉永 圭吾氏
320年の歴史を持つ農家が起源
最初に登壇したのは、株式会社舞台ファーム 未来戦略部の吉永圭吾氏。吉永氏は福岡県生まれで岩手大学農学部卒業後、就職を機に宮城県へ。現在は、経営層の意思決定を現場に実装する役割を担っている。

同社は「未来の美味しいを共に創る。」を理念に掲げる農業法人である。320年以上つづく農家の15代目で現在の代表取締役社長・針生 信夫(はりう・のぶお)氏が創業した会社だ。
現在は一次生産者として野菜や米を生産するだけでなく、その前段階の研究開発から生産後の商品の製造や流通、販売に至るまで一連の流れを自社で担う。カットサラダやパックライスの製造、大手コンビニエンスストアへの販売も手がけ、東北を中心に全国へ商品を供給する食料供給会社として成長している。
ロボティクスやAIで課題解決!次世代植物工場とは?
本講演では、伝統的な農業の歴史と最新のテクノロジーを融合させ、農業の未来を創造する同社の取り組みが紹介された。

まず吉永氏は、同社が運営する日本最大級の植物工場「美里グリーンベース」のIT化推進について紹介。「美里グリーンベース」は、仙台市から車で1時間ほどの距離にある美里町に位置する巨大な次世代植物工場だ。太陽光でレタスを生産し、光量不足時は自動でLEDが点灯する太陽光LED併用型で、約90%の作業が自動化されており、収穫のみ人の手で行っている。

同工場では作業を自動化する意味でのAI活用はもちろん、蓄積したデータを活用した課題解決にも取り組んでいる。その例としてレタスの画像から重さを予測し、最適な収穫タイミングや効率的な生産に活かす技術を紹介。この技術は、2025年の「仙台X-TECHイノベーションアワード2025」で最優秀賞を受賞した。
一方「近年は農業の価値観が広がってきており、食材をつくるだけでなく、新たな価値や体験を提供したり、エネルギーをつくるのも農業の重要な役割だ」と吉永氏は強調する。

その例として、エネルギー生産に関する取り組みを紹介。同社では営農型太陽光シェアリングにより太陽光で発電しながら農作物を育て、植物工場に電気を供給する仕組みを展開していくという。「農業分野でAIやロボティクスの活用が進む未来を考えると、今よりも電力が必要になる。今後は食料だけではなくエネルギーもつくっていく、農業はそんな役割を担うのでは」と将来像を語った。
農業は衰退するのではなく「イノベーションが加速する」可能性を秘めた領域

続いて、仙台市に本社を構える同社が力を入れる地域ネットワーク構築に関する取り組みに言及。地域の学校にレタスを給食提供する「グリーンエデュケーション機能」や収穫体験を提供する「グリーンツーリズム機能」、地域農業者と提携して農作物買取や苗を提供する「グリーンステーション機能」など、さまざまな地域ステークホルダーとの関係づくりに注力してきたそう。
産官学連携も推進しており、美里町および地域農家と連携して香港の企業に米を輸出する事業を推進したり、東京農業大学や東北大学とはよりおいしいレタスを生産するべく共同研究を実施したりしている。

講演の最後で吉永氏は、社会の変化とともに変わっている農業産業について言及。個人農家の減少と法人化した大規模農家の拡大や世代交代、EC活用による販路多様化、自社での商品開発など、近年は業界全体で大きな新陳代謝が起きているという。
吉永氏は「我々は、農業は衰退するのではなく、時代変化に応じてイノベーションが加速すると信じて、事業を展開している」と強調。「仙台市というテクノロジーに恵まれた環境に、そして農業という分野に可能性を感じて、ぜひ仙台市に来ていただければ」と講演を締めくくった。
2025年4月ローンチのプロダクト『食通(ショクツー)』と高齢者社会の世界最先端をいく日本、東北、そして仙台。
バイオソノ株式会社
代表取締役 CEO
遠山 賢氏
介護現場が抱える社会課題「誤嚥」の根深さ
2番目に登壇したのは、バイオソノ株式会社 代表取締役CEOの遠山賢氏。東京を拠点に5つの業界で5度の起業を経験したが、東日本大震災で宮城県石巻市の実家が被災したことをきっかけにUターン。現在はバイオソノ株式会社で、高齢者社会における「誤嚥(ごえん)」という社会課題に対して生体音×音響分析AIを活用したソリューション「食通」の開発・販売事業を推進している。
遠山氏がまず語ったのは、介護現場が直面する現実だった。

介護施設入居者の約半分が誤嚥性肺炎で入院し、平均入院回数は5.7回。一定日数を超えると強制退去となってしまう。この問題は入居者だけでなく、介護現場にも深刻な影響を与えている。入院中は介護保険収入が得られないが制度上施設のベッドを空けて待機が必要だ。これが特別養護老人ホームだけで年間1200億円の機会損失、誤嚥性肺炎関連医療費の増大につながっている。

さらに問題を根深くしているのは、言語聴覚士の不足だ。誤嚥の早期発見に有効な頸部聴診技術を持つ言語聴覚士の存在が欠かせないが、全国に約2800人しかいないという。介護士全体の約760分の1という圧倒的な人材不足により、コスト高で介護現場で活用困難な状況が続いている。
言語聴覚士の持つ頸部聴診技術をAIで「量産化」

そこで同社が開発したのが、言語聴覚士が持つ頸部聴診技術とノウハウを音響センシングとAIで「量産化」し、デジタルクローン化するソリューション「食通」だ。現在の要介護者約1800人に対して1人の言語聴覚士しかいない状態から、究極的には1対1のパーソナライズ化された環境実現を目指している。

「食通」は言語聴覚士を語るうえで実現しなければならない3つの解析技術を標準化している。まず、約6000件の咽頭音データを学習したAIが喉の音が正常か異常かを判定する機能。2つ目は、異常な状態を正常へと導くためのアウトプットの出力機能。3つ目は聴診器に代わる役割を果たす、小型軽量化を実現したセンサーデバイスだ。

導入戦略として、同社では介護保険制度の「経口維持加算」に着目。「口から食べ続けることで認知症進行を遅らせるというエビデンスに基づき、国が推進している加算制度」だが、業務負担の大きさから加算を目指す施設は多くないという。「食通」導入により業務負担を軽減しつつ加算取得が可能になるため、課題解決と収益拡大を両立できるアプローチで介護現場への普及を進めている。
高齢化社会、視点を変えると「高齢者のバイタルデータの宝庫」
講演の後半では、同社の事業の意義と仙台市に拠点を置くことの強みが明かされた。
遠山氏は「日本は世界一の高齢化社会として語られがちで、基本的にはネガティブな文脈で捉えられる。とくに東北6県は、5年後には日本でもトップクラスの高齢化率になると言われている。一方この現状をデータで事業を推進する企業の視点で見ると、東北エリアが高齢者のバイタルデータの宝庫であることを意味する」と語り、データビジネスの観点では”強み”になりうると主張した。

さらに「喉の音に関するデータベースは、世界的に見ても珍しく非常に貴重なデータアセット」であると強調。その構築を進めながら、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の早期発見に貢献できるプロダクト開発を推進しているという。
仙台市に拠点を置く強みの1つとして、東北大学をはじめとする学術機関があることを挙げる。同社では2025年6月より東北大学大学院工学研究科 通信工学専攻の伊藤彰則教授と同社プロダクトに関する共同研究開発を進行中だそう。
最後に遠山氏は「学術機関だけでなく、仙台市をはじめとした行政も地域課題やDX推進に対して協力的。このように産官学の連携がそろった仙台市の地をハブとして、高齢者領域のバイタルデータという豊富な資源にアクセスし、事業をスケール化していきたい」と、講演を締めくくった。
DXを活用した地域の社会課題解決
株式会社NTTデータ東北
デジタルトランスフォーメーションオフィス部長
相場 映希氏
高齢化社会裏側の実態とは

仙台市に本社を構える株式会社NTTデータ東北では、東北地方の行政や法人を中心にさまざまなソリューションで課題を解決している。3番目に登壇した相場映希氏が部長を務める デジタルトランスフォーメーションオフィス部では、DXやクラウド、AIなどテクノロジーの文脈でクライアントの新規事業創出をサポートしている。
相場氏は秋田県秋田市出身で大学時代を新潟県で過ごし、「住みやすさに加え、都会と自然がちょうどよく融合している」仙台に魅力を感じ、就職を機に仙台市へ移住したそうだ。
本講演では、同社が手がける地域課題解決のためのソリューションのなかでも、介護領域でのユースケースが紹介された。

相場氏はまず、日本の高齢化の現状を数字で示す。2000年に17%だった65歳以上の高齢化率は、2025年には30%に達すると見られる。2000年には4人弱で1人の高齢者を支えていたのが、2025年には2人に満たない人数で支える状況に。なかでも東北においては高齢化率が顕著である。高齢者の増加に伴い要介護認定者数が増加する一方で、労働者は年間およそ5%ずつ減少している深刻な状況だ。
AIで要介護認定業務をサポート、業務量削減の実績も
この構造的な課題に対し、同社は要介護認定業務に着目した。要介護認定制度とは客観的に介護の必要性を数値化し、国から受けられるサービス給付費を算定する制度だ。その算出に多くの自治体で遅延が発生しており、介護保険法の処理日数は30日以内と定められているが、長ければ60日もかかるケースがあるそう。

遅延の原因の1つが認定調査票の修正・確認作業の業務負担である。認定調査票は選択式の「基本調査①」に加え、記述式で補足する「特記事項」の2部構成となっている。訪問調査でヒアリングした結果を調査票に記すものの言葉の曖昧さから、2部間で内容に不一致があることが少なくないという。内容のおおよそ8割に整合性がとれているにもかかわらず、間違いを防ぐためにすべて目視で確認する必要があり、その工数が大きいことが主な課題だ。

同社は、この認定調査票の修正・確認作業にAIを活用した要介護認定事務支援AIサービス「Aitice(アイティス)」を提供している。このサービスでは、「基本調査①」と「特記事項」の整合性をAIが確認する。本サービスを導入することで、両者に差分が見られる全体の1割程度を洗い出せるようになるのが大きなメリットだ。

同サービス導入効果の事例も紹介。要介護認定に約45日かかっていた業務をおよそ10日削減できたほか、職員の時間外労働も月平均で約30時間減らすことにも成功した(それぞれ「Aitice」導入前の2018年と導入後の2021年の比較)。
東北の地域課題解決を通じて、持続可能な企業として成長したい
講演後半で相場氏は、企業と社会課題の関係性が大きく変化していることを強調。「従来は、企業の経済活動を基盤に社会や環境があるという価値観があった。ただ近年は、環境や社会があってはじめて企業の経済活動が成り立つ、という関係性で捉えられるようになってきた」と話す。

同社は「地域の課題にアプローチする事業を通じて、社会的なインパクトを起こしつつ収益を得る」ローカル・ゼブラ企業の概念に共感している、と説明。東北が高齢化社会における「課題先進地域」であることを相場氏はネガティブに捉えず、「課題の先進地である東北で自治体や地元企業と協創し、ともに社会課題を解決するエコシステムを形成したい。かつそれができる人材を育成したい」と今後の展望に触れた。
最後に相場氏は「東北の会社を選ぶ方は、『東北に貢献したい』という想いを持つ人材が多い。優秀な人に来ていただくためにも、やりがいを持てる仕事を東北でつくらなければならないと認識している。社会課題をテーマに今後も事業を継続していきたい」と意欲を語った。
仙台での「挑戦」を支える力~IT×子育て支援事業で見えた、自治体・アカデミア・地域との共創~
MUSASI D&T株式会社
代表取締役
佐藤 里麻氏
ITを軸に東北エリアの子育て課題解決に挑戦
4番目に登壇したのは、MUSASI D&T株式会社 代表取締役の佐藤里麻氏だ。佐藤氏はもともと仙台市出身で、2005年に東京・六本木で同社を起業した。2019年にすべての機能を仙台市に移し、現在は青森県のサテライトオフィスを含めて東北2拠点で事業を展開している。

「東日本大震災を仙台で経験し、自宅がなくなった。その際に地域の人たちに本当にお世話になったので、もっと人と近い仕事をしたい」という想いがあったという。同社は2025年に創立20年を迎えるシステム開発企業だが、現在はそのバックグラウンドを強みにIT×子育て課題解決にも取り組んでいる。
システム開発会社である強みを生かし、女性のIT領域就労を推進
まず、ITを軸に地域課題を解決する事業として2つの事例が紹介された。

1つ目は、2024年度から取り組んでいる「仙台市町内会デジタル化推進事業」。各町内会を訪問し、課題に対するデジタルでの解決策提案や、持続可能な運用構築を伴走支援している。2025年度は全25団体の伴走支援を同社が担当中だ。

もう1つは、ニアショア推進による東北エリアにおける女性の職業選択支援だ。ニアショアとは、システム開発やその業務の一部を国内の地方都市の企業や個人に委託することを指す。「ITスキルを身につける講座は東北各地域で提供されているが、システム会社がない仙台以外の多くの地域では、せっかくスキルを学んでも就労につながらない」課題があるという。同社では、このギャップを埋めるため、自社で受託した案件を一緒に担当してもらうことでニアショアにつなげる支援をしている。
地域ぐるみで子育てをサポートする仕組みづくりに注力
つづいて佐藤氏は、同社が取り組む子育て支援事業について言及した。

佐藤氏自身の次男が1年間の待機児童となり、自宅で子育てしながらリモートワークしていた経験から、「自分の子どもを預けたくなるような企業主導型保育園」を実現したという「ベビープラス仙台」を仙台市大町に開設した。食育にこだわり、子どもの成長に合わせて手づくりのおもちゃを提供する。1階には交流スペースや子ども食堂、3階には親子で利用できるキッズスペース付きコワーキングスペース「親子プラス仙台」を設置。「保育園を利用するほどでもないが少しだけ仕事に集中したい、半日だけでも1人で過ごしたい」など多様なニーズに応えている。

この取り組みが派生して、2024年度から東北大学大学院の大関研究室と共同研究を行っている。「ベビープラス仙台」や「親子プラス仙台」に物理的に通えないなどの問題を解決するべく、「親の考え方や価値観、お子さまの年齢」などをパラメータに、量子アニーリング技術で近隣の子育て経験者と親子を最適な組み合わせでマッチングできる仕組みの構築に成功した。
※量子アニーリング技術:組合せ最適化処理を高速かつ高精度に実行することを目的に開発された計算技術
佐藤氏は「これまでも託児や家事代行など何かを代行するサービスはあった。一方で、親本人を直接的に支援する仕組みはあまりなかったと思う。短時間の交流であっても深い共感が生まれることは、親にとって心の支えになるはず」と語り、この取り組みの意義は地域コミュニティで親の孤独感を軽減してやすらぎや安心感を提供することにあるとした。
この取り組みは、2024年度に仙台市の「先端テクノロジー・データ利活用ユースケース創出支援事業」として採択されたほか、実験段階ですべての利用者が2回目の利用を希望する成果を上げ、サービスインも間近となっている。
仙台でITベンチャーを起業するということ
トライポッドワークス株式会社
代表取締役社長
佐々木 賢一氏
ITマーケットが小さい、東北エリア
5番目に登壇したのは、トライポッドワークス株式会社 代表取締役社長の佐々木賢一氏。仙台市出身で大学入学を機に東京へ。日本オラクル株式会社在籍中の2000年、東北支社が開設されたと同時に約15年ぶりに仙台市へUターンし、自身のことを「典型的なUターン人材だ」と語る。
大人になって改めて見た東北エリアにビジネスチャンスを感じ、2005年にトライポッドワークス株式会社を設立。「イノベーションで『未来』を『現実』に」をミッションに掲げる同社は、現在仙台と東京それぞれに拠点を置く。

佐々木氏はまず東北の現状を客観データで示した。国土18%、人口6.8%、GDP6.3%を占める一方、ITマーケットにおいては事業者数3.9%、売上シェアは1.4%と極めて小さい。
仙台の強みを最大化するビジネスとは…起業時の頭のなか
15年ぶりに戻った故郷は「自然も多いし、街もきれい。子どもが3人いるが、子育てには東京よりも仙台の方が良いと思う」と話す。一方で「仕事面、経済面で考えるとちょっと寂しい。少しでも東北を盛り上げたい、という想いで起業した」と経緯を語った。

佐々木氏は、起業時に2つの仮説を立てたそう。1つ目は「仙台のポテンシャルを引き出せば、おもしろい事業ができるはずである」こと。2つ目は、地方に多い労働集約型の仕事ではなく「クリエイティブな仕事をつくれば、優秀な人材が集まるはずである」ことだ。
一方でIT領域のマーケットの小ささをふまえ、「東北エリアをマーケットにせず、あくまでもものづくりや経営の拠点にし、マーケットでは全国・グローバルを見据えたい」と考えた。さらに「自社ブランドのプロダクト・サービスで勝負したい」という2つのルールを設定したそうだ。
佐々木氏は、仙台のポテンシャルについて「中核都市で交通アクセスがよく、研究機関が多いため外国人が多く、ローカルとグローバル両方の視点を持てる。さらに企業の持続的活動に必要なステークホルダーとの距離が近く、東京まで新幹線1.5時間で東京と変わらず仕事できる」ことにアドバンテージがあると分析する。
また「昔から東北は、UIJターンが多い土地。多くの人が一度東北から離れるが、一定期間後にまた戻ってくる人も少なくない。ここが実はチャンス。UIJターン人材、新卒、東北大学の留学生など、東北にいる優秀な人材を東北で採用したい」と強調した。
ITの力で自動車業界を持続可能に
同社では本社管理部門を仙台、営業マーケティング拠点を東京と機能を分けている。創業当初から仙台を「ものづくりの拠点」と位置づけ、全国・グローバル展開を目指す。

同社では大きく分けて2つの事業を推進しており、1つ目は中小企業向けセキュリティプロダクトを提供するオフィスソリューション事業。もう1つは「この6、7年特に力を入れている」と語るIoTソリューション事業だ。

IoTソリューション事業では自動車アフターマーケットに着目し、車載センサーからクラウドにデータ収集する独自プラットフォーム「トリモビ」を開発。これを活用・応用して運輸、物流業界など車両に関わる課題解決をサポートしており、 安全性確保、人手不足解消、CO2削減など「自動車業界を持続可能にするためITで貢献したい」と想いを語る。

自動車分野は巨大な市場であるため、大手企業と資本提携することで事業を前進させている。住友ゴム工業株式会社とは、タイヤの空気圧や温度をリアルタイム監視し、バーストやパンクの予兆を予見するタイヤセンシング事業を加速化させている。安全性向上と同時に、点検のデジタル化による人手不足対応、適切なメンテナンスによる燃費向上とタイヤライフ延長による環境への貢献に取り組んでいるそうだ。
【パネルディスカッション】仙台でDX事業を展開する意義と魅力とは
各社の個別講演につづき、イベント後半では株式会社zero to oneの竹川隆司氏をモデレーターに迎えたパネルディスカッションが実施された。「DX実装の最前線」「UIJターンのリアル」「活躍する人材像・チーム文化」の3つをテーマに、仙台発企業の経営者らが地方でDX事業を展開する意義と魅力を語った。
モデレーター
株式会社zero to one
代表取締役CEO
竹川 隆司氏
⚫︎DX実装の最前線
遠山氏(バイオソノ):東京は人口が多く=高齢者も多く、我々が事業でデータセットする対象も多いのが事実です。ただ、そこにアクセスする術が私にはありませんでした。一方仙台では、地元のコミュニティやつながりがあり、そこのネットワークを活用すれば東京にいるよりも早く高齢者がいる施設にアクセスできます。そういったステークホルダーとの距離の近さが、仙台で事業を進める意味です。
相場氏(NTTデータ東北):仙台に拠点を置いて事業展開することで、仙台にダイレクトに貢献している実感を得られるのが魅力だと思います。一方でせっかく課題をヒアリングしても、いざ進める段階になると企画・プロジェクトに落とし込む段階でクライアント側の労働力不足により負担がかかり、息切れしやすい側面があることは課題に感じます。
吉永氏(舞台ファーム):我々のように装置産業的に工場を物理的に拡大しながら地域に還元するビジネスモデルを考えると、そういった取り組みに対して自治体が寄り添って「一緒にやりましょう!」と後押ししてくれる体制が仙台市にはあると思います。
また高齢化社会における課題先進地域である自覚があり、自治体側に我々を受け入れてくださる器と体制があるような気がします。先にお話しした「美里グリーンベース」も仕組み自体はヨーロッパからそのまま取り入れたもの。そういった今までにないドラスティックな取り組みも含めて提案しやすく、協力的なのがありがたいですね。
佐藤氏(MUSASI D&T):先ほど子育て事業の一部を東北大学大学院の大関研究室と共同研究で進めていることを紹介しましたが、このように仙台に拠点を置いているからこそ研究機関とともに取り組む機会が生まれたと思っています。実際に私たちが取り組みを始めよう、という段階で仙台市が実証実験の場所をサポートしてくれるなど、自治体からの協力も手厚く、先進的だと感じました。
佐々木氏(トライポッドワークス):仙台に拠点を置くことの最大の魅力は、優秀な人材を採用できることですね。優秀な学生、東京から戻ってきた優秀なUIJターン人材を採用できるのは大きなメリットです。
あとは、「なぜ仙台で事業を推進しているの?」というコミュニケーションが生まれていること自体がメリットだと思いますね。会社を覚えてもらうきっかけになります。
⚫︎UIJターンのリアル
佐藤氏(MUSASI D&T):子どもが生まれてから子育て環境を重視するようになりました。もともとは東京を本社に仙台に支店を構えて2拠点で事業展開していましたが、子どもが生まれてからは子育ては仙台でしたいと思いました。
佐々木氏(トライポッドワークス):仙台は最高の場所です。とにかく緑が多いですよね。街中であっても子どもたちが遊ぶ場所もあり、海や山も近い。金曜日、仕事終わりにスキー場だって行けますし、すごくワークライフバランスを取りやすい土地だと思います。それでいて政令指定都市であり100万人以上が暮らす街だから、なんでもあるんです。ちょうど良い大きさで、都会でもあり自然もある、本当に良いとこ取りです。
相場氏(NTTデータ東北):私もそもそもワークライフバランスを大事にしたいタイプでした。大学のインターンで東京に住んでみて、通勤時間の負担が大きいと感じました。今は自宅から職場まで15〜20分で通えているのですが、「人生」という長い視点で見ると通勤時間だけでもだいぶ無駄が減らせるのでは、と思います。仙台という場所を選んだことに全然後悔していませんし、むしろ自分の生き方に合っていますね。
吉永氏(舞台ファーム):仙台の好きなところでいうと、率直に寒いところの方が好きなのはありますね。あとは皆さん仰っていますが、やはり土地が広くて自然豊かなところはどこの地域にも負けないのではないでしょうか。街中でいうと定禅寺(じょうぜんじ)通りの豊かな自然もそうですし、壮大な風景が日常的に見えて恵まれた環境だと思います。
遠山氏(バイオソノ):東京から仙台に来て感じるのは、春と秋が感じられることでしょうか。それを私自身はもちろん、子どもたちにも体験させてあげられるのは意味のあることだと思います。極端な話、仙台では仕事に行き詰まったらサクッと山に行って叫ぶこともできますが、東京では山に行くにも気合いが必要です。そういったことが平気でできちゃうのもリアルな仙台の魅力ですね。
なんでもコンパクトに都市機能がそろっている点で、アメリカのシアトルに似ているところがあると思いますが、1つ欠けているのは大企業の本社が少ないこと。こんなに良い環境ではたらきやすいことを考えると、シアトルのようにもっと大企業が出てきてもおかしくないはず。私も引き続きIPOを目指して頑張りたいです!
⚫︎活躍する人材像・チーム文化
佐藤氏(MUSASI D&T):自分が「何かやりたい」と本気で口に出していると、それを拾ってくれてつなげてくれる人がいるな、と思ったのが私が仙台ではたらこうと思った大きな理由です。手伝ってくれる人が現れ、つないでくれる人がいて、いつの間にか実現している。自分で明確に「これをしたい」と決めてからスタートしなくても、曖昧な状態で1歩踏み出せるのが仙台のすごく良いところだと思います。
佐々木氏(トライポッドワークス):私も、仙台には応援してくれる人が多いと思いますね。東日本大震災は大変でしたし、悲しいできごとでした。ただ東京にいる皆さんや震災を経験した世代では特に、東北は特別に見てもらえている実感があります。「仙台で何かやります!」といった際には、積極的に協力してくれたり一緒に何かしようと行動してくれる人がすごく多いと思います。
あとは、震災をきっかけに仙台に移住したり仕事をつくったりする人も増えている肌感覚がここ数年あります。おもしろい活動をしている人がほかの地域から仙台に集まるようになったので、あとは地域側のプレイヤーがいかに盛り上げるかが大切なのではないでしょうか。
遠山氏(バイオソノ):「言葉が行動に移す」という意識の変化が、行動につながると考えています。仙台に少しでも意識があるのであれば、東京から新幹線で1時間半程度で来れるので、ちょっとした時間に飛び込んでいただくと非常に良いきっかけになるのではないでしょうか。まずは行ってみて、どう感じるかを試してみるのが良いと思いますね。
相場氏(NTTデータ東北):想いが強い人、突破力がある人が仙台で活躍しています。まずは仙台で事業を起こす。そこから拡大するフェーズで情報をどれだけ収集できるかが重要です。震災後、環境が整ってきているなか、グローバル含め新たな情報にしっかりキャッチアップしてどのように生かすかを考えられる人材が活躍されているのかな、と感じます。
仙台市
https://www.city.sendai.jp/
株式会社舞台ファーム採用情報
https://butaifarm.com/recruit/
バイオソノ株式会社
https://biosono.jp/
株式会社NTTデータ東北採用情報
https://www.nttdata-tohoku.co.jp/recruit/
MUSASI D&T株式会社
https://musasi-dt.co.jp/
トライポッドワークス株式会社採用情報
https://www.tripodworks.co.jp/recruit/
株式会社zero to one
https://zero2one.jp/
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