データサイエンティストとして歩む私のキャリア。マテリアルズ・インフォマティクスによる材料開発支援のやりがいと面白さ
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株式会社日立製作所
公共システム事業部 公共基盤ソリューション本部
デジタルソリューション推進部 照屋 絵理氏
照屋氏は、2017年に日立製作所(以下、日立)に新卒で入社し、材料開発・公共分野のデータサイエンティストとして、「データの力で世の中を良くする新材料の開発を可能にする仕事」を務めている。
日立というと、家電事業をイメージする人も多いかもしれないが、家電の売上は非常に小さい。日立の主力事業はデジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズという大きく3つに分かれている。
デジタルシステム&サービス領域における材料開発ソリューションの開発・拡販は、照屋氏の担当業務の一つだ。
「化学メーカー向けに、AIやデータを活用して材料開発を支援するトータルソリューションを提供しています」(照屋氏)
データやAIを活用して材料開発の効率を高める取り組みは、Materials Informatics(MI)と呼ばれており、日立ではMIを基軸としたサービスを展開している。データサイエンティストとしての照屋氏の役割は、データサイエンスを用いて世の中を変える新材料の開発をサポートし、ソリューションを提供することである。
これまでの化学メーカーにおける材料開発は、材料研究者の試行錯誤とノウハウによって行われてきた。一方、照屋氏たちが目指しているのは、材料研究者が試行錯誤することなく、データの力を借りることで、新材料の開発ができるようにすることだ。では、データサイエンスを用いてどのようなことをやっているのか。
「顧客の要望に沿ったデータを分析し、このようなことをやってみてはどうかというふうに提案をしています」(照屋氏)
業務としては、まず課題をヒアリングし、方式を検討して提案していく。契約に至った後は、データ分析を行い報告するという流れだ。
分析するデータとしては、配合表やプロセス条件表、シミュレーションデータなどのテーブルデータ、化合物データ、画像データ、テキストデータ(論文、特許、社内技術資料など)などがある。照屋氏は、テキストデータの分析を専門に行っている。
PoCのような取り組みがメインだが、顧客の中にはさらにシステム化したいという要望もあるという。
「その場合はシステム開発部隊と共に、開発に取り組むこともあります」(照屋氏)
照屋氏が所属するデジタルソリューション推進部は約50人のメンバーで構成されており、そのうちデータサイエンティストは約20人だという。
「ほとんどは経験のあるキャリア採用者か、私のような社内からの異動者です。おそらく7~8割の人が、他の部署からデータサイエンスをやりたいと希望して異動しています」(照屋氏)
第二の特徴は、組織のメンバーが非常に若いこと。照屋氏より若いメンバーも多いため、照屋氏はメンバーをまとめるポジションに就くことも増えた。第三の特徴は、新規技術・ビジネス立案を重視する部署でもある。
照屋氏は9年間、理学部物理学科で学んでいた。博士課程に進んだが、そのまま研究者になって本当にやっていけるのかを悩んでいたという。そのため就職活動を行っていなかったが、就職活動をしてみたところ、日立への採用が決まった。
「日立の幅広い事業活動に興味を抱き、就職することに決めました」(照屋氏)
配属されたのは、日立の研究所のITやAI系の部署である。「IT系の知識がゼロでとても辛かった」と照屋氏は振り返る。もちろんIT系の研修が用意されており、先輩のサポートもありキャリアを積み重ねてきた。そして2年半前にデータサイエンティストに転身する。
「研究所時代にお客さまと話す中で、直接価値を届ける方が楽しいと思うようになりました。事業部ならそうした機会が多い。そこで異動したいと思ったのです」(照屋氏)
日立で働く面白さは、「大企業の安定基盤とベンチャー気質を兼ね備えているところ」と照屋氏は言う。日立には開拓者精神が根付いており、新しいソリューションが次々と立ち上がる環境になっているからだと強調する。
一方で、日立には人財や技術、資金など大企業ならではの豊富なリソースがある。「それを潤沢に使えるのは魅力です」と、照屋氏は語る。
日立には全社で約30万人の社員がいるが、その半数以上が海外籍だという。つまり、世界中の仲間と、世界中の企業のビジネスを推進しているのである。
「IT・OTの技術を持つ日立にしかできないソリューションはかなりあると思います。それも日立で働く面白さです」(照屋氏)
日立では、社会課題の解決に対して、開拓者精神を持って共に取り組む仲間を求めている。
「少しでも日立に興味を持ったら、オウンドメディアも展開しているのでそちらをチェックしてください」(照屋氏)
【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答
セッション後は、イベント参加者から照屋氏に質問が寄せられた。抜粋して紹介する。
Q.私はマーケターというバックグラウンドから、現在データアナリストとして働いています。将来的にはデータサイエンティストになりたいと考えているのですが、データ関連のキャリアパスについて、何か参考にされているものはありますか?
照屋:現在、データサイエンティストは求められている分野なので、データサイエンティストになりたいと思うのであれば、チャレンジしてみたらいいと思います。データサイエンスは実際に携わってみないと身に付かない技術だからです。
顧客のニーズをヒアリングしてどう課題を解き、提供していくのか。それは実際に経験しないと身に付きません。スキルに不安を感じているのであれば、データサイエンティストのキャリアセミナーや、Kaggleなどの技術コンペなどに参加してみてはいかがでしょうか。