エンジニアの視点で変革を導く:エンジニアバックグラウンドを活かしたマネジメントへの挑戦
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パーソルホールディングス株式会社
グループデジタル変革推進本部
本部長 朝比奈 ゆり子氏
朝比奈氏のキャリアは、外資系プロジェクトマネジメントソリューションベンダーで製品開発に携わったことから始まる。その後、外資系ITセキュリティ会社に転職し、情報システム部門長を務める。2014年にパーソルキャリアに転職。2018年よりパーソルホールディングスへ転籍し、現在に至る。
エンジニアとしてキャリアをスタートさせた朝比奈氏。最初のプロジェクトマネジメントソリューションベンダーでは、言語製品を担当する。
「ローカライズや製品の開発を担当していました。設計や共通のライブラリ的なモノを作るのを好きだったのですが、モノ作りのセンスがないかもと、今後のキャリアについて迷うようになりました」(朝比奈氏)
そこで朝比奈氏は、自ら手を挙げてユーザー会の事務局を務めたり、経理や人事、総務などの職にも就いたりしたという。
「外資系だったので、担当が変わると給与が下がるんです。最初は年俸で100万円下がり、その次は160万円下がりました。当時は辛い時代を過ごしていましたね」(朝比奈氏)
親会社との経営方針が合わず、朝比奈氏は転職することになる。だがそのときは、「何の職種で転職するのか迷った」と朝比奈氏は言う。
最後に就いていたのが経理だったため、経理で外資系ITセキュリティ会社に応募した。すると、その会社から「ビジネスアナリスト」というポジションを提示された。
「経理をやりながらもずっとITは続けていたので、経理もITもわかる。外資系だったので、英語も使える。情報システム部門なら自分でERP導入もできる。自分のこれまでのスキルと経験がうまく紐付けできたと考え、この会社への転職を決めました」(朝比奈氏)
入社後、ビジネスアナリストとして様々なプロジェクトを仕掛けたことで情報システム部門での役割や役職が上昇していった。ところが、情報システムが完成間近というときに、またM&Aに合ってしまった。
M&Aによって、社内の状況は激変する。幸いにも、朝比奈氏はPMI(会社統合)を任され、M&A後もグローバルラインに残ることになったが、朝比奈氏の周りの役員などを含め、社員全員に雇用期限が設けられ、解雇となった。
「解雇まで9カ月後や2年後という期限を設けられている人もいました。そんなモチベーションが続かないメンバーを抱えながら、仕事をするのは辛かったです」(朝比奈氏)
PMIをやりきったとき、外資系企業の「仕事ができない人は去りなさい」というような風土ではなく、「もっと組織で仕事がしたいと思うようになった」と考えた朝比奈氏が選んだのが、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)だった。
だが、パーソルグループに入ってからも、パーソルキャリア、パーソルイノベーション、パーソルホールディングスと異動があり、マネジメントとしても様々な困難にぶち当たってきたという。
その一つが、朝比奈氏が管掌する前に、その前身組織のメンバーが、代わる代わる退職の挨拶に来るのを目の当たりにしたことだ。そのガタガタとなった組織を朝比奈氏が立て直していった。
「ホールディングスのIT部門は業務部門よりも立場が弱く、また同じITでもインフラ部門の人に強く言えない、社内で上下関係があるような雰囲気でした。そういう組織風土を改革するため、私たちは何のためにいるのか、どうなりたいのか、そういうミッションやビジョンをまずは設定。そして開発や保守運用なども、外部ベンダーにお任せすること一気にやめました」(朝比奈氏)
2020年、マネジメント体制を変えることを宣言し、社員と業務委託の人たちが一体となって領域別に専門チームを組むという取り組みにチャレンジすることになった。すると組織は成長。公益社団法人企業情報化協会(IT協会)が選定する2022年度には「IT奨励賞(マネジメント領域)、2023年度には「IT賞(マネジメント領域)」を受賞した。
2024年にはHR総研が主催する「第9回HRテクノロジー大賞」で「人的資本経営部門優秀賞」を受賞した。これは社内ユーザー向けプロダクト(キャリアオーナーシップ支援プラットフォーム「CareerMill」)を内製し、ダイレクトリクルーティング型異動制度を実現したことが評価されたという。
「組織の疲弊に直面したとき、これまでのエンジニア経験を活かしてモノづくりをしていくことにトライした結果だと思います」(朝比奈氏)
最初に就職した会社ではキャリアに迷い、いろんなことに手を出した結果、ビジネスアナリストにつながり、業務の幅を広げることができた。そしてM&A経験の辛さにより、マネジメントの考えを変えることができた。
パーソルホールディングスで先のようなトライができたのは、「組織ビジョンの設定や自立的に働く仕掛けを作っていくことの重要さを学んだ」と朝比奈氏は言う。このように辛い経験は学びの宝庫だというのだ。
「仕事をしていくといろんなことが起こる。自分で迷うこともあれば不可抗力で状況が変わったりもする。ですが、自分で考えて行動し、変化していくことを恐れずにトライする。そうすれば自ずと結果がついてくると思います」(朝比奈氏)
【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答
セッション後は、イベント参加者から朝比奈氏に質問が寄せられた。抜粋して紹介する。
Q.現在社会人5年目です。これから専門性を極めるかマネジメント領域にいくか悩んでます。女性はライフイベントで休職しなければいけないこともあるので、技術の移り変わりが速いこの業界で復職できるのか不安です。
朝比奈:専門職を極めるエキスパート系とマネジメント系は行ったり来たりできます。また復職しようと思えば復職も可能です。そのときに必要なものはキャッチアップすればいいので、あまり考えすぎずに取り組んでいいと思います。