dots.女子部勉強会 vol.9「機械学習」をはじめよう!~研究機関での活用方法いろいろ聞いちゃいます!~

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dots.女子部勉強会 vol.9「機械学習」をはじめよう!~研究機関での活用方法いろいろ聞いちゃいます!~

6月16日(木)19時30分より「dots.女子部勉強会 vol.9 『機械学習』をはじめよう!~ 研究機関での活用方法をいろいろ聞いちゃいます! ~」が開催されました。

会場には「機械学習」に興味を持つ160名近くの方が集まりました。

今回は「dots.女子部」の主催ではありますが、ARアドバンステクノロジ株式会社様がスポンサーとして支援してくださったことで実現したイベントでもあります。 なお、「dots.女子部」のイベントですが、今回は男性の参加もOKです。

基調講演とLT4名の登壇者とテーマはそれぞれ次の通り。

「『機械学習』をはじめよう!基礎から活用事例まで」
横浜国立大学 理工学部 濱上 知樹 教授

LT1. 「機械学習とかに、幸せにしてもらいたい」
株式会社インテリジェンス 山下 澄枝さん(@Ysumie

LT2. 「これで恥をかかない⁉︎『音楽×機械学習』」
関 郁子さん(@ikppp_73

LT3. 「これからダイエットしたら、どれくらいやせますか」
meuron株式会社 芦田 美保さん(@ippomihosanpo

LT4. 「Twitterのつぶやきで明日の自分のご機嫌を予測してみる」
株式会社インテリジェンス 矢野 桐子さん(@little_85

『機械学習』をはじめよう!基礎から活用事例まで

濱上知樹(はまがみ・ともき)/横浜国立大学大学院工学研究院 教授。セコム株式会社の研究員、千葉大学大学院での助手などを経て、2008年より横浜国立大学大学院工学研究院の教授に就任。高校時代には山岳部の主将を務める。

まずは、横浜国立大学大学院の濱上友樹教授による基調講演からスタートです。

濱上教授の「機械学習」や「人工知能」に関する研究の取り組みは25年近く。「人工知能システムエンジニア(AISE)の創生」を目標に様々な活動をされています。

実は、大学の講義や学会以外の場でお話しすることは初めてとのことで、今回の講演は大変貴重な機会となりました。

「『機械学習』をはじめよう!基礎から活用事例まで」では、濱上教授がよく質問されるという下記の6点を中心としたお話がありました。

  • 「機械学習」と「人工知能」の関係
  • なぜ、「機械学習」が今ブームなのか?
  • 「機械学習」をうまく使うポイント
  • 具体的事例の紹介
  • 「機械学習」は何からはじめたらいいのか?
  • これから「機械学習」はどうなるのか?

「機械学習」ってなんですか?

昨今、「人工知能」「機械学習」という単語を耳にする機会が急激に増えています。この流れはいつから始まったのでしょうか?

濱上教授が「Google トレンド」で調べたところ、世界ではいくつかのタイミングで検索数が上昇しています。

2011年の「IBM Watson」がクイズ王を破ったこと、2012年に「Google Brain」が猫の画像を認識したこと、直近では「AlphaGo」がプロ囲碁棋士を破ったことなどがそのタイミングです。

一方日本では、コンピュータ将棋関連のニュースで一時的に検索数が上がることはありましたが、本格的にトレンドとして浮上してきたのは2015年以降のようです。

その「人口知能」と「機械学習」の関係について、「『機械学習』は人工知能の中の分野のひとつ」と濱上教授は説明します。

人工知能の分野には「強いAI」と「弱いAI」の2つの潮流があるのだそう。

「強いAI」とは、「知能はもともと脳から始まるもので、脳の仕組みを計算機で表現すれば知能ができる」とした考え方です。

一方、「弱いAI」とは、「知能は現象であり、根源的な仕組みが違っても模倣した別の仕組みを作れば知能ができる」という機械的な知能の存在を認める考え方です。

そして、この「弱いAI」が「機械学習」の研究へと繋がってきます。

ただし、近年両者は理論の上で同じところを目指しており、「機械学習」では両範囲にまたがって研究が行われるようになってきているそうです。

なんで注目されているの?

現在のブームには、1995-2005年に起きた3つの出来事が関係していると濱上教授は指摘します。

それは、

  • 理論に裏付けされた実用的な機械学習アルゴリズムの発明
  • プロセッサ能力の飛躍的な向上
  • ネットワークとストレージ価格の低下

の3つです。

こうした流れの中、現代では「データから価値ある知識を抽出・利用したい」「データから未知なる事項を予測したい」「人が経験的にやっていることを機械に任せたい」などの社会的ニーズがあります。このニーズも大きなトレンドに押し上げた要因です。

機械学習を使う4つのポイント

では、実際に機械学習を上手く利用するにはどのようにすればよいのでしょうか。濱上教授は次の4点をポイントにあげます。

  • 目的と問題クラスの整合性をとること
  • アルゴリズムのタイプを理解すること
  • データの規模・性質・品質を理解すること
  • 評価に基づいて運用すること

中でも濱上教授が「今日一番伝えたかったこと」と力を入れて話すのは、3点目のデータについて。

機械学習を利用する上で一番の問題は「データをどうにもできないこと」です。「ノイズ」「欠損」など様々な原因があり、上手く整理しないと出てきたデータも活用できなくなってしまいます。

濱上教授は、データを上手く活用するために

  • 不要なデータをクレンジングする
  • データの次元をできるだけ下げる
  • エクセルではなくてデータベースに入れる

といった対処法をオススメします。

しかし、「万能な方法は恐らく存在せず、データを有効な形に整理することは機械学習にとって一番の鬼門かもしれない」と濱上教授は実体験に基づいて話します。

119番通報患者の重症度を機械学習が判断する

続いて濱上教授は、機械学習を活用した具体的事例を紹介します。

1つ目の事例は「救命救急コールトリアージの高精度化」。

現在、救命救急の出動回数は増加しているのに対し、救急車の数は増えていないため救急サービスは低下している現状にあります。そこで、傷病者の重症度に応じて、救急隊の編成を動的に変える試みを横浜市と共同で行ったのがこの取り組みです。

横浜市では、119番通報があった傷病者との電話口でのやり取りから、機械学習を使って重症度を5段階に分けて判定を行います。重症度をいかに判定するのか、診断行為を機械が行ってよいのかという議論もありましたが、横浜市では機械学習による判定を条例化して運用を実現しています。

様々な学習方法を試し、現在は「ランダム・フォレスト+マージン判定」のアンサブル学習を実施。その判定精度は91%にまで上げることができました。これは実際の医師と比べても、高い判定精度を誇ります。

この他にも「インフラ設備機器の故障予測」や「画像のモチーフ抽出」の事例を紹介。千葉県佐倉市の国立民族博物館と共同で行った「画像のモチーフ抽出」に関する研究は、今秋より、同博物館において体験することができる予定です。

機械学習を始めたい!

では、機械学習に初めて取り組みたい人はどこから手をつければいいのでしょうか。

これから始めるという個人の方は、「TensorFlow」「Chainer」などでチュートリアルを参照しながら理解することがオススメだそうです。ちなみに、世界的に見ると、機械学習に用いられるプログラミング言語は、「Python」が非常に高い割合を占めています。

以下、機械学習に取り組む手順の一例です。

  1. 最初のデータに対して、まず「R」を使って性質をいろいろ試す
  2. 必要があればデータのクレンジングを行い、特徴をつかむ
  3. 処理によっては「OpenCV」を使って「スクラッチ」で書く
  4. インタビューでデータの不明な点は聞く
  5. ある程度整理できたらPythonなどを使う

機械学習が実現する未来

最後に機械学習がどのような道へ進むのか、濱上教授が予測を述べます。

まず「クラウドAI」への流れです。

現状では、クラウドが連携してスケールすることに魅力がある反面、データをクラウド上に置くことに抵抗感を感じるなどの問題もあります。しかし、クラウド化の流れはさらに加速するようです。

次に、「機械学習のコモディティ化」。 最近、日本語を話せない外国人が日本語の手書き文字認識率98%のサービスを約3ヶ月で完成させるなど、機械学習はエンジニアの手を離れていくことが予想されます。機械学習を利用することで、知識がなくても目的を達成できるようになってきているのです。

濱上教授は個人的に「人文系」と「製造」といった分野に着目しつつ、人間が楽しく暮らしていけるように「組織・マネージメント」の分野こそAIの使いどころがあると言います。

一方、機械学習には課題もまだまだたくさんあります。

「AlphaGo」がプロに勝った囲碁は、「完全情報ゲーム」と言われるもの。つまり、蓄積されたデータをもとに未来を予測することが可能なため、機械学習によって比較的簡単にクリアできてしまうのです。

しかし、多くの現実の問題は「不完全情報ゲーム」であり、加えて人間は嘘をつきます。これに対し、人工知能がどう対処していくことができるかがこれからのひとつの課題となっていきます。また、人口知能による人間の排除をいかに防ぐかというところも大きな課題として長年議論が続いています。

課題もまだまだ多い中、「アルゴリズムやアプリケーションは技術としては重要だが、現実の世界ではいかに高い質のデータを自動で取得してくるかを求められます。そうしたときに、機械学習をうまく使うことで解決できることが多くあります。」と濱上教授は言います。

近い将来、人間と機械の関係性がどのように変化していくか誰もが楽しみに感じながら、基調講演は終了となりました。

基調講演の後、休憩時間を挟んでLTに移ります。懇親会と並行してスタートです。

機械学習とかに、幸せにしてもらいたい

山下澄枝(やました・すみえ)/株式会社インテリジェンス エンジニア。インフラ系のエンジニアの経験を経て、2016年にインテリジェンスへ入社。「りんな」や「pepper」がお気に入り。

まず、1人目のLTは山下さん。山下さんは、facebookの情報を元に自分に合いそうな異性をレコメンドしてくれるマッチングアプリを使い始めたそうですが、そこである仮説を立てます。それは「自分からDeep Learningに協力していけば、もっと幸せになれるかもしれない!」というもの。

しかし、その仮説に基づき「ありのままの自分の生活」をWebに書いていても思うようなマッチングが実現しません。そこで、現実の自分よりも少し幸せな自分をセルフブランディングする路線へ軌道修正します。

そのためには現状の自分を認識する必要がありますが、山下さんは人工知能が自分の「見た目年齢」や「顔の美しさ」「性格診断」などを分析してくれるサイト、アプリを紹介してくれました。

当日のスライドはこちらで公開されています。

これで恥をかかない!?『音楽×機械学習』

関郁子(せき・いくこ)/SIer勤務のエンジニア。中央大学出身。ラーメンとライブが大好き。

2人目のLTは、関郁子さん。機械学習は全くの初心者だという関さんは、初めて機械学習に取り組んだ体験を紹介します。それは、友人の結婚式で流すムービーのBGM選曲でした。

関さんは、機械学習を用いることで曲のポジティブさを検証できればと考えました。実際の実装には「indico」を使用。「indico」は、機械学習初心者でも、Pythonを知らない人でも、最短3行のソースコードを書くだけで簡単に機械学習入門できるそうです。

今回はアップテンポな曲を7曲選択し、それぞれの歌詞からネガポジ判定を実施。ちなみに、明るい曲調の『Call Me Maybe』は7曲の中でも一番ネガティブな曲だと判定されました。

これからダイエットしたら、どれくらいやせますか

芦田美保(あしだ・みほ)/meuron株式会社エンジニア。「無駄にスタイリッシュな」パンツ数えアプリ「[ZanQy](https://itunes.apple.com/jp/app/id1112073876)」を最近リリース。

3人目のLTはmeuron株式会社の芦田美保さん。芦田さんは、1ヶ月後の自分が感謝してくれるべく、1ヶ月後の体重の増減を予測するサービスを作成しました。

芦田さんが使用したのは「Amazon Machine Learning」。「二項分類」「多クラス分類」「回帰分析」が簡単に行えるのでオススメとのことです。

当日のスライドはこちらに公開されています。

Twitterのつぶやきで明日の自分のご機嫌を予測してみる

矢野桐子(やの・きりこ)/株式会社インテリジェンス エンジニア。「dots.」の担当。最近の興味は、「機械学習」と「loT」と「星野源」。

最後のLTは、「dots.」の開発を担当している矢野桐子さん。矢野さんは機械学習を用いてTwitterのつぶやきから未来の自身の機嫌を予測した事例を紹介しました。

分析は、ツイートに使用した単語を形態素解析し、ネガポジ判定(ポジ/ネガ/ニュートラル)を行います。その際に、気温、気圧などのデータも取得し、複数のパラメータから機嫌との関係性を探ります。

結果は、「楽しくない」という単語もポジに判定されたりと、まだまだうまくいかない点もあるようでしたが、「自身の機嫌予報」ができる可能性を多分に感じさせてくれました。

懇親会&参加者感想

LTと同時にスタートした懇親会は、LT終了後もまだまだ盛り上がります。

最後に参加者の感想を紹介します。

https://twitter.com/little_85/status/743395331052703744

https://twitter.com/alligator_tama/status/743397581695262720

https://twitter.com/asami_lin/status/743436899470086144

https://twitter.com/ippomihosanpo/status/743438699749269504

https://twitter.com/ikppp_73/status/743451452299894785

次回の「dots.女子部」の企画もお楽しみに!

取材・文/108UNITED

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