進化するSIerの最前線!電通国際情報サービス(ISID)が先端技術の活用事例を紹介【AI編】

イベント 公開日:
ブックマーク
進化するSIerの最前線!電通国際情報サービス(ISID)が先端技術の活用事例を紹介【AI編】
「HUMANOLOGY for the future」というビジョンを掲げ、製造業、金融業を中心に、幅広い業界のトップクラスの企業に最適なソリューションを提案する電通国際情報サービス(ISID)。新たなサービス開拓に挑み続けている同社のミートアップでは、先端技術を活用した挑戦と事例をテーマに、製造業における画像診断や自然言語処理の具体的な活用事例、研究事例などが紹介された。

進化するSIerの最前線!電通国際情報サービス(ISID)が先端技術の活用事例を紹介【AI編】

「ISIDにおけるAI部門の位置づけと、製造業を中心とした事例の紹介

オープニングは管理本部人事部の松永泰次郎氏が務め、ISIDについて簡単に紹介された。1975年、TSS(タイムシェアリング・サービス:コンピュータの共同利用)という革新的なサービスを提供することを目的に、広告代理店の電通と米国屈指の優良企業、General Electric Company(GE)との合弁により設立されたISID(現在はGEとの資本関係はなし)。売上高900億円、従業員数は連結で約2700人、一部上場のSIerである。

ISID1 株式会社電通国際情報サービス 管理本部人事部 松永 泰次郎氏

最初の講演は、X(クロス)イノベーション本部 AIテクノロジー部長の芝田潤氏が登壇した。芝田氏がISIDに入社したのは、第二世代AIブームの時。Lispという言語を使ってAIを開発していた。その後、AIブームが去り、勢いがなくなったが、いままたAIブームが再到来。以前培ったノウハウを今に生かしているという。

ISID2 株式会社電通国際情報サービス Xイノベーション本部 AIテクノロジー部長 芝田 潤氏

Xイノベーション本部は先端IT技術を用いて顧客のデータを分析するアルゴリズムを開発し、顧客へ価値を提供するための全社横断組織。芝田氏が率いるAIテクノロジー部は、製造業向けにAI活用を推進する、AI技術者集団だ。そのほかにも社会解決に向けたAI活用推進するオープンイノベーションラボ、ビッグデータ解析サービス「CALC」を推進している因果分析ビジネス推進部などで構成されている。

芝田氏はISIDが取り組んでいるAI事例として、「TUNA SCOPE」を紹介した。TUNA SCOPEとは、双日と電通、ISID3社が協同で開発した、マグロの尾の断面から品質判定を行う画像解析AIである。いけすのマグロを数えられるかという取り組みからチャレンジが始まった。

「これまでは目利きの職人がマグロの品質を見極めていましたが、その技を身につけるには最低10年が必要です。そこで双日が取り扱うマグロの尾の画像をAIに学習させ、目利きの技を1カ月で習得。工場に導入したところ。85%の一致率を実現しています。

そのほかにも牛にセンサーをつけて放牧し、その牛の様子を検証する取り組みなど、2年間で約100件のAI案件を遂行しています。中でも増えているのが、自然言語処理系のサービスです。」(芝田氏)

<最近のISIDが受注するAI案件の傾向>
・人、モノの導線予測や生産設備の故障予知など生産現場のIoT化
・保守サービス向上や顧客利用の把握など製品のIoT化
・良否判定や匠のノウハウをAI化の設計や開発現場のノウハウAI化
・生産設備や製品の故障予測など近未来の予測
・画像認識や機械学習など今あるAI技術の活用
・市場データの活用など

13のサービス分野と具体的事例

現在、芝田氏の部署では以下のような13のサービスを展開している。

①Computer Visionサービス
ドライバーの顔の向きを判定するAIやエキスパートの地層判定AI、走行中の視線動画をAIで認識するサービスの開発など。

②CAD/CAE×AIサービス
CADやCAEを使う業務にAI技術を適用し、人間の判断をサポートする。人が判定しているCADの干渉チェックをAI化やCAE結果の良否をAI化、CAE動画による車体やサスペンションの固有モード判定、CNN&Similarity Searchによる3D-CADの類似検索AIなど。

③AI図面チェックソリューション
A0やA1という大きさの紙の図面のチェックをAI化。チェック漏れや図面のチェック時間を削減が可能に。来期製品化の予定で進めている。

④時系列データを利用した動作予測AIモデル構築サービス
大手建機、農機、汎用機等の限られた製品ログ情報から動作を予測するアルゴリズム開発。人の動きをカメラ映像から把握し、予定作業との違いを検知するAIモデルを構築。

⑤予兆検知AIモデル構築サービス
部品ごとの部品出荷数と不具合対応数の時系列における関係性に着目。部品の不具合を早期に発見し、不具合対策にかかるコスト削減と品質保証底上げを図るため、現場の勘と経験をAIモデル化。

⑥エキスパートの判定をAI化して分析
車の乗り心地指標の官能評価をコメントと走行データを掛け合わせて、機械学習でどこが悪いかを予測するシステムを開発。

ここからは自然言語処理系になる。

⑦文書AI
大量の文書データを、人が正確に全体を把握できるAIシステムを開発。エキスパートの判断を代替する分類AI、文書要約AI、類似検索AI機能を持つサービス。日本と、英語、中国語でよい結果が出ている。「Texaインテリジェンス」という名称で来年度、製品化する予定。

⑧生体データ取得から支援:感性判定AIモデルサービス
生体データを分析し、利用者の感性を判定するモデルを開発。すでに事例もありドライバーの感性検知、脳波などを取得し、働きやすい環境(照明、机の配置など)作りに生かす。

⑨AI化を加速:お客様最適型Data Preparationフレームワーク
AI/データ分析において、全体作業の8割費やされているData Preparation。顧客に最適なDisproportionフレームワークを提供。

⑩AI人材育成/データ分析・モデリングノウハウ提供
ISIDのAI・IoT・データ活用の知見を提供。AI人材育成をファシリテータの立場で支援。

⑪強化学習コンサルティング
強化学習で、機械制御を最適化していくためのコンサルティング を個別に実施

⑫ユーザー主導型AIシステム構築・運用サービス
ユーザーが自らAIモデルを構築し、AIを使うシステムと連携し、運用するための環境を包括的に提供。今年製品として出荷予定。

⑬AIコンサルティング(個別の要件に対応)
顧客の業務課題やデータの性質に対して、サポートベクターマシンやディープラーニングなどの機械学習アルゴリズムや統計的手法を駆使して課題解決を行うサービス。

また、AIプロジェクトの進め方は以下の図のように、技術PoCと記しているが、サンプルデータを出して、3カ月1タームで2~3回くらい回し、現場でトライアルを行う。その後、1年ほどで業務適用に至る。

ISID3

ISIDが提供するAIサービスの強みとは

ISIDのAIサービスにおける強みは、第一にAIプロジェクトにおける上流工程から下流工程まで一気通貫でサポートすること。第二に顧客の要件に応じたAI手法を採用するなど、最適なソリューションを提供すること。第三はISIDが開発したアルゴリズムの技術移転やデータサイエンティスト、AI技術者育成支援など、お客さまのAI活用を支援すること。第四は、AI以外の知見を持ったグループ会社、パートナーと協業することで、因果分析や故障予測、データ取得支援、工場のIoT化などのサービスを提供できることが挙げられる。

「例えば因果分析に使うCALCはソニーグループで開発・実証を重ねたアルゴリズムです。このようなソリューションも提供できます。当社では個別のAI受託開発だけではなく、AI製品の開発、提供を通して、社会課題の解決に貢献していきたい。AIの幅を拡げていきたいと思います」(芝田氏)

AIテクノロジー部の研究開発と製品開発事例

続いて登壇したのは、AIテクノロジー部 データサイエンティストの小川雄太郎氏。学生時代は脳科学の研究に従事。東京大学先端科学技術研究センターのポスドクを経て、ISIDに入社。現業のほかに早稲田大学非常勤講師、日本ディープラーニング協会の委員を務めたりしている。副業としてPyTorchのディープラーニング本や深層強化学習本などの書籍の執筆もしている。近著は「つくりながら学ぶ! PyTorchによる発展ディープラーニング」。

ISID4 株式会社電通国際情報サービス  Xイノベーション本部 AIテクノロジー部 データサイエンティスト 小川 雄太郎氏

小川氏は深層強化学習の研究開発コンサルティングやAI活用の模擬プロジェクト演習・MLOps実装の実践件数などの顧客案件のほか、機械学習を活用した流体シミュレーション高速化などの研究、自社ソリューションの開発などに従事している。

その中で今回の講演では「機械学習を活用した流体シミュレーションの高速化」と自社ソリューション「自然言語処理系などのソフトウェア開発」が紹介された。

機械学習を利用した流体シミュレーションの研究

「機械学習を活用した流体シミュレーションの高速化」研究とは、流体シミュレーションにおいて、水を粒として扱うMPS法と呼ばれる手法の計算の一部に、機械学習の回帰モデル「LightGBM)を使用し、計算の高速化を図る手法を提案するというもの。きっかけは製造ソリューション事業部より顧客課題である流体シミュレーションの高速化を相談されたことだという。

「まずは流体シミュレーションのMPS法を理解することから始めました。従来のMPS法のだと計算の一部に陰解法があり、巨大な連立方程式を解くことになるので、計算の並列化が困難でした。そこでLightGBMを用いた回帰モデルから陽的に計算。これにより計算の並列化により高速化が可能になりました。

研究成果としては特許出願。人工知能学会での口頭発表も実施しました。現在は流体シミュレーション・ソフトの開発会社に対して、本手法の実装による価値共創・クロスイノベーションを提案中です」(小川氏)

Azure DevOps&MLサービスを利用したMLOps的な製品開発

続いて、Azure DevOps&MLサービスを利用したMLOps的な製品開発について説明された。現在、小川氏がリーダーを務めて開発しているのが、自然言語処理ソフトウェア。以下の図のような流れでモダンな新規事業・製品開発を行っている。

ISID5

「これを実際に実施するためには、共有された組織文化と、ツール選定が重要になります。私たちが採用したのが、マイクロソフトが提供するAzure Machine Learning(ML)サービスとAzure DevOpsです」(小川氏)

機械学習部分に求められるツールの要件は以下の通り。

1. 訓練データを保存できるストレージ
2. モデルの学習結果(訓練データや検証データでの性能、作成日時、作成者など)
 を保存・管理できる実験管理のプラットフォーム
3. 学習済みモデルを保存できるストレージ
4. 学習済みモデルを使用して推論を実施するエンドポイントを作成

Azure MLサービスはストレージや訓練を実施するVMを登録する機能、訓練結果のログを保存閲覧できる機能、学習済みモデルを保存・バージョン管理する機能、推論プログラムのイメージを保存するDockerファイル、推論イメージをAPI化するコンテナ・インスタンスなど、先の要件を満たす機能が提供されている。

またスクラム型プロジェクト管理とDevOpsに求められるツールの要件としては、以下が挙げられる。

1. バックログやタスクの内容と進捗を管理できるタスク管理ツール
2. ソースコード管理ツール
3. CI(継続的インテグレーション≒自動テスト)を実施するツール
4. CD(継続的デリバリー≒自動デプロイ)を実施するツール

「DevOpsを実現するには、タスク管理ツールとしてJira、ソース管理ツールとしてGitHub、CIとしてCircleCI、CDとしてDockerを組み合わせることが一般的でした。しかし、AIエンジニアにとってこのようなサービスの組み合わせをするのは、困難なことです。ですが、Azure DevOpsを採用すると、このようなサービスを組み合わせることなく、DevOpsの環境が実現できます」(小川氏)

Azureを使ったMLOpsの流れは図の通り。しかも1つの画面で初めからすべて連携して使えるため、非常に簡単で便利である。

ISID6

実際に開発中の自然言語処理ソフトウェアの構成図も紹介された(コーディング時の実装中と、本番環境では構成は異なり、以下の図はコーディング中)。

ISID7

「このような若干複雑な開発におけるDevOpsの方法について紹介します。スプリントバッグログとタスク管理は、Azure DevOpsのBoardsを活用しています。また、マイクロソフトのコミュニケーションツールTeamsと連携し、Azure DevOpsのスプリントバックログとタスクを表示させています。Teamsにはチケット起票、プッシュ、プルリクエストなども自動投稿したり、AzureDevOpsのダッシュボードも表示することができます。ソースコードの管理はGitHub。ブランチのコミットフローも見えるので便利です」(小川氏)

CI/CDのCIは、DevOpsパイプラインからGUIベースに作れるようになっているので、ITのプロではない人でも容易にできる。一方のCDは環境設定のファイルを読み込むことができるようになっている。AzureへのアクセスキーなどをAzure DevOps内に登録が可能だという。それを別途、取得して、CIで作ったフォルダーに追加していく。

「フロントエンド用のBLOBにNuxtファイルをアップロードし、バックエンドのVMにSSHで接続して、CIで作ったファイルをコピーして、Docker-Composeを再起動する。これが最低限の構成ですが、開発中のところからGitHubにポチっとすれば、今のCICDパイプラインが自動で流れていくようになります」(小川氏)

その他にも、DevOpsのプロジェクトのテンプレートコピーが可能だったり、リポジトリに加え、プロダクトバックログやタスクのチケット、CI/CDパイプラインの設定などコピーして生成するという便利な機能が提供されている。「自社用テンプレートを作ると、便利に開発を進めることができます」と、小川氏は語る。

ポスドク出身の小川氏がISIDで働く理由

最後に、小川氏がSIerのISIDで働き続けている理由について述べられた。

ISID8

「実はLinkedInなどでは様々な企業様やエージェントから次の仕事を誘われています。そんな誘いがある中で、今ISIDで働く理由は3つあります。1つは働きやすさ(7時間勤務+フレックス+テレワーク制度)。

2つめはSIerとしての仕事のやりがいです。ソフトウェアファーストな時代。日本の企業はAIやIT技術を活用して、新たな価値創造や業務効率化を果たしたいものの、まだまだIT能力・人財が足りていないのが現状です。

SIerとして受託で仕事をするのではなく、ユーザー企業と一緒に「深層強化学習のシステムを研究・開発」したり、「AI実践教育」や「協同プロジェクト」などを実施することで、様々な顧客企業の変革と成長、そして顧客の社員の成長、これらに貢献している充実感が、大きなモチベーションとなっています。

3つめは新しい技術・取り組みに挑戦できて成長できること。ISIDは単体で社員は1500人と大手のプライムSIerの中では比較的小さな会社です。自ら手を上げて提案すればいろいろな取り組みやMLOpsなど試したい技術に挑戦できる環境があります。

私は入社して3年目ですが、入社時はJavaもオブジェクト指向も、Webシステムもサーバーも、PythonもGitHubもAzureも知りませんでした。マイクロソフトはofficeソフトの会社と思っていたほどです。それが今、Azureを使った開発やディープラーニングの活用などを行うまでに成長できました。どうすれば成長できるかわかってきたので、それをお客さまにトランスファーすることで、お客さまの成長にも貢献ができます。そこに充実とやりがいを感じているのです。こうした成長と貢献が実現できる場として、今ISIDで働いています。」

登壇資料についてはこちら

グループにあなたのことを伝えて、面談の申し込みをしましょう。

電通総研
X(クロス)イノベーション本部は、オープンイノベーションや先端技術開発、新規事業開発を担う部署が結集している全社横断型組織です。ISIDグループの研究開発活動をさらに強化するとともに、その研究成果やビジネスアイデアの事業化ならびに既存事業分野とのシナジー創出をより一層加速させる仲間を募集しております。
電通総研は、アメリカのGE社と電通の合弁会社として創業しました。 2000年に東証一部上場し、連結で3,388名(2022年12月末現在)が在籍しています。

テクノロジーと共に成長しよう、
活躍しよう。

TECH PLAYに登録すると、
スキルアップやキャリアアップのための
情報がもっと簡単に見つけられます。

面白そうなイベントを見つけたら
積極的に参加してみましょう。
ログインはこちら

タグからイベントをさがす