入社2年目のチャレンジ!顧客と共に事業を創る、NRI流”コンサル×ソリューション”開発
アーカイブ動画
株式会社野村総合研究所
産業ソリューション事業本部
デジタルソリューション事業部 足達 美波氏
野村総合研究所(以下、NRI)の足達氏は、大学時代は生命化学を学んでおり、IT未経験で2020年にNRIに入社した。入社後は旅行業界の顧客システム保守を担当。
その後NRIデジタルへの出向を経て、入社2年目の2021年に「どこかにビューーン!」というサービスの新規システム構築プロジェクトに、システム開発リーダーとしてアサインされた。
「どこかにビューーン!」とは、JR東日本とNRI、NRIデジタル3社の共同事業である。すでに多くのJRE POINTユーザーから高評価を得ており、2023年度グッドデザイン賞も受賞している。 JR東日本のポイントサービス「JRE POINT」5000ポイント、または6000ポイントを使って、
JR東日本の新幹線停車駅の中からランダムに選ばれた4駅のどこかに行ける新しい旅のサービスだ。
「どこかにビューーン!」の運営は、JR東日本とNRIグループの2社共同で行っている。NRIでは組織の壁を越えたワンチームでの運営体制で、ビジネスサイドのコンサル担当を含め、マーケターやデータサイエンティストなど、さまざまな専門家でチームが構成されている。その中で、足達氏はシステム開発チームの開発担当を務めている。
入社2年目で、初期構築かつ共同事業という特殊なプロジェクトに携わった足達氏は、「さまざまな困難やシステム、進め方の難しさがありました」と、振り返る。
システム的な難しさの一つ目は、4択組成時に行き先を分散させる仕組みをつくることである。行き先が固定されないように、在庫に合わせた4択出現ロジックを創出する必要があるからだ。
「限られた在庫の中からユーザー体験を損なわずにどう4択を生成するのか、ビジネスサイドのコンサルタントを含め、かなり検討を重ねました」(足達氏)
二つ目は、1本の列車の在庫の管理方法についてである。新幹線の場合は、乗客の情報から発生するので、出発駅と到着駅の全組み合わせ分の在庫管理を考慮する必要があったからだ。
「新規構築なので業務や要件もまったくなく、まさにゼロスタート。すべてを想像しながら機能設計していく必要がありました。設計思想に基づいて、事業マネージャーであるコンサルタントに、なぜこうした仕様にするのか説明して納得してもらわないと前に進むことができない。その点にも非常に苦労しました」(足達氏)
このような経験を通じて、足達氏は共同事業の中でSEのあるべき姿について考えたという。
「システムはあくまでも手段であり、事業拡大を目指す視点や姿勢を持つことが必要だと感じました」(足達氏)
というのも、この共同事業ではSEが企画から効果検証まで関与してプロジェクトを推進しているからだ。SEがビジネスサイドと一緒に検討することで、スピーディーかつ高品質な開発が可能になる。そしてそれはアジリティの高いサービス拡大に欠かせない。
その例として足達氏が紹介したのが、「どこかにビューーン! With Kids」だ。同企画では、起案からリリースまでを2カ月で実現している。
共同事業の中でエンジニアとして全行程に関わった足達氏は、自信の役割を「ビジネスとシステムの架け橋だと考えた」という。サービスを検討するビジネスサイドとはユーザー目線でサービス拡大について語る必要がある。
一方、エンジニアと会話するときには、システム言語で設計ベースの会話が必要になる。
「しかもビジネスサイドとエンジニアでは、互いに気になる観点も異なるので、それぞれの観点を意識しながら前に進めていくバランス感覚が必要になります」(足達氏)
足達氏は、この役割で難しいことや大事にしていることも語った。コミュニケーションについては、相手の視点を想定し、相手の話を良く聞き、相手に合わせたコミュニケーションを心がけていると言う。
仕様の根拠については答えがないことが多いため、なぜこうしたいかを自分の言葉で説明できるように徹底的に考えることが大事だと、足達氏は言う。
仕様理解については、企画会議などでスピーディに検討が進められるように、現行のシステム設計を把握し、改修内容を即イメージできるようにしていると語った。
エンジニアとしての専門知識については、「大前提として必要になる」と語る足達氏。自身が入社2年目からプロジェクトに携わったため、ベテランプログラマーが言っていることが分からず、パートナー企業からNRIとしての判断を求められて辛かった経験があるからだという。
「どこかにビューーン!」という社会的価値インパクトの大きいJR東日本との共同事業を経験できたことで、開発力と人間力の両方を培うことができたという足達氏。「若手の頃から、この事業に携われたことが、自分のキャリアとして大きな経験となりました」と、言い切る。
足達氏は、女性エンジニアとして今後どのようなキャリアを積み重ねていくのか。NRIでは2024年4月1日付けで、柳澤 花芽氏が同社初の女性社長に就任した。その他にも生き生きと働いている先輩社員や後輩社員もいるという。
「開発力を身につけていくことはもちろん、人間力という点では女性目線を活かし、相手の立場に立った寄り添う姿勢を誰よりも意識して、バランス感覚に優れたオールラウンドエンジニアを目指していきたいですね」(足達氏)
【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答
セッション後は、イベント参加者から足達氏に質問が寄せられた。抜粋して紹介する。
Q.今は学生ですが、エンジニアを目指しています。男性が多い業界で働くことに不安を感じています。女性ならではの苦労や、逆に良かったことはありますか。
足達:周りは男性社員が多いので、ランチタイムは急いで食べるみたいになることもよくありますね。そのようなときは大変だなと思うこともあります。女性で良かったことは、周りが優しく接しようと気を遣ってくださることが多いことですね。女性でラッキーだったと思うこともあります。