【コラム】エンジニアもキャリアを「テーラーメイド」? 「R」でデータ分析を行うアクセンチュアの女性技術者に聞く!
グローバルで蓄積する高い専門知識と技術力をもとに、多くのクライアントの課題を解決するアクセンチュア株式会社。その業務の幅は、戦略コンサルティングから、デジタルコンサルティングシステムインテグレーション、運用保守に至るまで多岐に渡っている。
テクノロジーを強みに世界で活動を続ける同社は、エンジニアに何を求めているのだろうか? また、エンジニアは同社でどのようなキャリアを歩むのだろうか?
本稿では、同社でデータ分析のトレーニングを担当する松本リサさんにお話を伺った。
松本リサ(まつもと・りさ)/アクセンチュア株式会社。東京都出身。大学院工学研究科修士課程修了。2009年に新卒でアクセンチュアへ入社。現在は4歳と1歳の2児の母。
制度改革で離職率が大幅減!
―― まず、松本さんの足跡をご紹介ください。
松本 私は2009年に新卒で入社し、当時はコンサルティング部隊の中でも技術寄りのプロジェクトを担当していました。そこでは技術基盤構築のチームに所属し、例えば、Unix系のOSをいじったりするなど実際に自分で手を動かしてエンジニアリングを行っていました。
その後は、1人目の子供の出産を機にバックオフィス系の管理部門に移りました。
―― それは、子育てをしながらでは以前の業務を続けるのは難しかったからですか?
松本 いえ、外資系コンサルティング企業なので意外と思われるかもしれませんが、実は子育てを支援する制度は当時から多くありました。しかし、やはり一度ブランクを経験してから、バリバリと仕事をしていた頃と同じように業務をこなせるのかといった不安がむしろ大きかったです。
その後、さらに私は2人目の子供を出産しまして、現在は時短勤務制度や、在宅勤務制度を活用して働いています。「時短」は週20時間および週3日を担保すれば自由に勤務時間を選択できるという柔軟な制度なので、取得する時間数などは人それぞれですね。
こうした取り組みは「社会から求められているから仕方がなく始めた」と思われがちですが、会社にも社員メリットが大きく、実際に成果もあがっています。例えば、この制度の開始以後、離職率は大幅に下がっているんです。
―― 松本さんは現在はどのような部門で働かれているのですか?
松本 1人目の育休後、復職して両立ができることに自信がついたので、2人目の育休明けからは管理部門を離れて、また自分のテクノロジースキルを活かせるところで働きたいと希望を出しました。その結果、現在はエンジニア職向けの様々なトレーニングを企画・運営するチームで働いています。
―― どのようなトレーニングを担当されているのか、具体的にご紹介いただけますか?
松本 私が担当しているのは、新しく入社した技術寄りの若手エンジニアを対象としたデータ分析系のトレーニングが中心ですね。
統計的な基礎知識の学習や、データサイエンティストなどが使う定番ツール「R」を用いた基礎的なデータ分析を、ハンズオンで指導しています。他にもBIツール「Tableau」を使って、データのビジュアライズを実践するトレーニングなども行なっていますね。
―― そのようなツールなどの技術採択はどのように行っているのでしょうか?
松本 例えば「Tableau」の場合では、アクセンチュアのデジタルコンサルティング本部で採用していたので、私の部門でも導入したという経緯です。しかし、私たちにはグローバルでも多くの知見がありますし、また国内だけでも多くのプロジェクトがありますので、どのような技術を採用するのかは本当にそれぞれです。
重要なことは、最新技術を使うことそれ自体ではありません。最新技術を含めた既存のテクノロジーのうち、どれがお客さまにとって最適なのか判断し、実際に既存システムなとどインテグレーションして運用することです。
また、ツールをひとつ使えるようになれれば、他のケースでも応用はできますよね。そういった意識でトレーニングを行なっています。
―― 現職ではトレーニングがメインとのことですが、現場のジョブに戻りたいという気持ちもあるのでしょうか?
松本 もちろん、スキルを活かしてお客さまを担当して貢献したいという思いも持っています。ただ、私は子育てにまだちゃんと時間を取っていたいので、対お客さまとなると、日本の社会ではまだ少し難しいのかなと感じています。
アクセンチュアでは、勝どきにある「東京ソリューションセンター」で、お客さまがアウトソーシング先として利用できるサービスを立ち上げています。特定のお客さまに対してだけではなく、この組織に様々なお客さまに対して共通して提供できる専門性を蓄積しているイメージですね。「東京ソリューションセンター」であれば、対お客さま向けのソリューションに関わりながらも、勤務時間を安定させることができるので、自分のスキルが求められるのであれば、私もまた手を動かしながらエンジニアリングやデータ分析の現場で働きたいと考えています。
キャリアの「テーラーメイド」
―― 松本さんがアクセンチュアにおいてマネジメントを意識するようになったのはいつですか?
松本 入社してから数年すると部下がつくようになります。その部下を育てる義務が生じたときからですね。
一般的にマネジメントというと「プロジェクトマネジメント」「ラインマネジメント」というイメージがあると思いますが、「マネジメント」と呼ばれる業務の中には間違いなく「人材教育」が含まれますよね。私も、実際にはメンバーを注意することひとつでも、まだ苦労しています。
伝え方によってモチベーションが下がることは自分も経験しているので、人としてのスキルも求められると感じています。
―― かなり早い段階からマネジメント的な業務が求められるのですね。
松本 社内では各キャリアレベルでマネジメントのためのトレーニングが設定されていています。マネージャー以下の社員もそのトレーニングやマネジメントツールを使うことで、マネジメントスキルを担保できるようになっています。
―― 組織として、エンジニアに対するマネージャーの役割は必要だと思いますか?
松本 アクセンチュアで扱う案件はどれも規模が大きいので、マネージャーは必要です。エンジニアもひとりではなく、基本的には誰かと組んでチームでやることが求められています。
―― プロジェクトに参加するエンジニア自身にも、マネジメント力が必要だとお考えですか?
松本 メンバー自身にもマネジメントスキルは必要だと思いますね。
エンジニアとしてスペシャリティを持つことはもちろん大切です。しかし、プロジェクトは、エンジニアだけではなく各領域のスペシャリストによる知恵が集まって進行します。
エンジニアもマネジメントスキルを持って自ら舵を握らなければ、プロジェクトでは単なる「部品」で終わってしまいます。ですから、マネジメントスキルがあった方がやりがいのある仕事ができます。どの会社でも同じだと思いますが、技術だけを磨いている人よりも、技術を通じたリーダーシップの発揮や貢献ができる人の方が、市場価値の高いエンジニアでいられると思います。
―― 貴社はコンサルファームとしての印象が強いので、少し意外な印象を受けました。
松本 確かにアクセンチュアはマネジメント中心の仕事も多くありますし、SIerが専門の企業と比べると業務の範囲が格段に多く、プロジェクトマネジメントのスペシャリストも多くいますので、エンジニア自身にマネジメント力がなくてもいいのでは、と思われる気持ちも分かります。
しかし、そういったプロジェクトマネジメントのスペシャリストを自分が進めている開発系のプロジェクトにアサインすることも、マネジメントのひとつですよね。ですから、アクセンチュアで働く上ではエンジニアにもマネジメント力がどうしても必須というわけです。
―― 貴社に入ったエンジニアはどのようなキャリアを歩むことが多いのでしょうか?
松本 アクセンチュアでは入社して1年が経過すると、社内異動の制度を利用することができるようになります。面接を受けて合格しないと異動は成立しませんが、アクセンチュアの特色でもある幅広いサービス −「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」− のどこのポジションでも自分で選べますし、さらにアクセンチュアが展開している国・都市であれば、どこでも異動の希望を出すことができます。
ですから、エンジニアのキャリアパスも本人の希望によって本当に多岐に渡りますね。
エンジニアリングの現場にいた人が経営コンサルティングに行く例もありますし、最近ですとデータサイエンティストの道を目指す人も多いですね。
―― エンジニアが何かしらのスペシャリストとして生きる道もあるのでしょうか?
松本 もちろんです。例えば、現場でテストの自動化に取り組み続けて、テストのスペシャリストになっている人もいます。
何がやりたいのか、何に向いているのかを自分で自由に「テーラーメイド」してチャレンジできる環境が整っているわけです。
私自身もマネジメントスキルだけではなく、自分のエンジニアリングスキルを磨き続けたいという気持ちはありますね。
―― 最後に、エンジニアにとってアクセンチュアとはどのような会社だとお考えなのかお聞かせください。
松本 学ぼうという意欲のある方であれば、本当にいろいろなチャンスがある会社だと思います。特にエンジニア職に対してはマネージャー層からも「人材を育てよう」という気概を強く感じます。
IoT、Analytics、AIなど最先端の技術を用いた企業変革にチャレンジしながら、常に新しいものにアンテナを張っていられる環境が整っているのも、エンジニアにとってはとても大きな魅力です。