【北九州市】デジタルで"稼げるまち"をどうアップデートする!?―産学トップランナーと語る【KITAKYUSHU Tech 2025 Day3】
“稼げるまち”は今、新たなフェーズを迎えています。 産学官が連携し、テクノロジーの力でまちを育てる。 都市の可能性をデジタルで拡張する新たな挑戦が、いま動き始めています。 2026年2月13日に開催されたオンラインイベント「KITAKYUSHU Tech 2025 Day3」では、その現場で活躍するIT企業のテックリーダーや有識者が集結。 進化する北九州市の今とこれからを本音で語る会となった。“稼げるまち”は今、新たなフェーズを迎えています。産学官が連携し、テクノロジーの力でまちを育てる。都市の可能性をデジタルで拡張する新たな挑戦が、いま動き始めています。
2026年2月13日に開催されたオンラインイベント「KITAKYUSHU Tech 2025 Day3」では、その現場で活躍するIT企業のテックリーダーや有識者が集結。
進化する北九州市の今とこれからを本音で語る会となった。
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【オープニング】 IT産業の集積地へと進化を遂げる北九州市の現在地

冒頭では、北九州市産業経済局でIT企業誘致を担当する遠藤大介氏が登壇し、テクノロジーを軸に都市の価値をアップデートする北九州のリアルを語った。
北九州市といえば、「ものづくりのまち」や「華やかな成人式」といったイメージが先行しているが、人口の「社会動態」を示す統計データを見ると、その実態は大きく変わってきているという。
北九州市は過去60年もの間、市外へ出る人が市内へ流入する人を上回る「転出超過」の状態が続いていた。しかし、直近でこの状況が一変。総人口自体は減少傾向にあるものの、2年連続で「転入超過」へと転じた。
社会動態がプラスに転じた背景には、市外へ流出する傾向のあった若い女性層の転出入が改善していること。そして首都圏・関東圏をはじめとする市外への転出者が減少傾向にあるほか、進学や就職のタイミングで地元回帰する若年層が増えているのが、主な要因になっていると遠藤氏は説明した。

IT企業の市内進出件数も、ここ数年で右肩上がりに増加している。この約10年間で、累計230社以上のIT企業が北九州市へと進出。このうち、約200社がJR小倉駅や小倉城周辺に集中していることもあり、「小倉デジタル城下町」と銘打っている。
ものづくりのまちとして栄えてきた北九州市は、今まさにIT産業の集積地へと進化を遂げ、若年層や女性に「選ばれる街」へと変化してきているのである。
【トークセッション】なぜ北九州市がIT拠点に選ばれるのか? 「小倉デジタル城下町」が加速させる街の魅力
登壇者プロフィール
株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
システム技術室 室長
千葉 直樹(ちば・なおき)氏
ウイングアーク1st株式会社
地域創生ラボ ラボ長
石山 雅規(いしかわ・まさき)氏
北九州市立大学
国際環境工学部
理事・副学長、教授
中武 繁寿(なかたけ・しげとし)氏
続いては、「なんで北九州に、テック人材とIT企業がやってくるんですか!?」をテーマにしたトークセッションが行われた。
なぜ今、北九州市に人と企業が惹きつけられているのか。その理由を掘り下げていく。
石山:私は北九州市の小倉生まれで、エンジニアからキャリアをスタートしました。その後はプリセールスやプロジェクトマネージャー、コンサルタントなどを経験し、2年ほど前にUターンで帰郷して地域創生ラボを立ち上げました。
千葉:私は1997年にヤマハへ入社し、当初は機械系エンジニアとして働いていましたが、現職では自社のシステムリーダーを務めています。主にコンテンツ管理や外部向け配信サービス、バックエンドシステムの運用・保守などを担当しています。
中武:私は宮崎出身ですが、大学進学を機に上京し、約25年前にJターンで北九州市へ移住してきました。現在は、北九州市立大学に新設予定である情報イノベーション学部の立ち上げに携わっており、その責任者を務めています。また、北九州市と連携しながらデジタル人材の育成にも力を入れています。
産官学の「連携のしやすさ」は、北九州市ならではの魅力
北九州市へのUIターンによる就職者数は、2024年に過去最多を記録するなど、「働く場所」としての認知度が高まっている。
そんななか、IT企業が同地に拠点を出すメリットはどこにあるのか?
石山:北九州市の大きな強みは、行政や大学、地域企業を巻き込みながらビジネスモデルをつくれる点にあると思っています。実際に地域創生ラボでも、地元の企業や大学、市役所と連携しながら、北九州市の課題解決に向けたビジネスモデルの創出に取り組んでいます。
私たちは企業同士の連携には慣れていましたが、「どのように自治体や大学とつながり、関係を築けばいいのか」について、最初は難しい部分もありました。
しかし、市役所の方々からのご紹介など、スムーズに橋渡しいただける機会も多くて、「動きやすさ」や「連携のしやすさ」は北九州市ならではの魅力だと強く感じました。
千葉:当社は2024年に拠点を開設しましたが、北九州市に進出したことで結果的に採用につながりました。正直に言えば、最初から綿密な戦略があったわけではなく、まずはやってみようという気持ちで拠点開設に至ったんですね。
でも実際に来てみると、人口約90万人という十分な母集団があり、行政の手厚いバックアップも受けられるなど、非常に良い環境だというのが率直な感想です。
ITの仕事はどこでもできますが、東京に人材が集中しているため、採用は競争が激しくて困難を極めます。一方で北九州市に来ると、「こんな優秀な人材がいるのに活用されていない」と感じるなど、非常にもったいないなと思っているんですよ。
ITスキル自体は地域による差はほとんどないと考えていますが、実務経験によって培われる実践的な経験値は、どうしても地域や環境によって異なるため、今後はそのギャップを解消する取り組みを積極的に進めていきたいと思っています。
テック人材のキャリア形成における、北九州という選択肢の可能性
テック人材のキャリア形成において、北九州市という選択肢を加えるのは、果たして現実的なのか。各登壇者はそれぞれ次のように回答した。
石山:先述のように、北九州市は地元企業との連携やコラボレーションのしやすさという面では確実にメリットを感じています。私たちのラボで働くメンバーの8割はエンジニアですが、積極的に人脈を作り、さまざまな対話を重ねることで、個人のキャリアの広がりを実感しているように思えます。
千葉:やはり産官学の連携体制が整っている点は、大きな強みだと感じていますね。私たちが北九州市に拠点を置くことで、地元の人材が実践的な経験を積む機会を創出し、企業がその受け皿となる好循環を生み出せれば優秀な人材が着実に育っていくと考えています。
あとはBCP対策の観点でお伝えすると、北九州市は地震が少なく、理想的な地域だというのが拠点を置いた後にわかりました。IT企業はサーバーをクラウド化していても、オペレーションは人が行うため、災害で人的リソースが動けなくなれば業務は停止します。その点、北九州市はバックアップ拠点として最適なのではないでしょうか。
中武:本学では、AIの急速な普及に対応できる人材育成に力を入れています。例えば大学では文学部を卒業し、今は事務職として働いている方が「これからの時代に合わせてAIを学びたい」というニーズに応えるために、最新トレンドを解説する授業を学外向けにも提供しています。
こうした取り組みはどの地域でも行われているかもしれませんが、北九州市の規模だからこそ、企業との横のつながりを活かした人材育成が可能です。人材を送り出した後も、帰ってくるときには新たな出会いやスキルが加わり、さらに成長した姿で戻ってくる。そのような循環が生まれることを期待しています。
北九州モデルは全国へ展開可能か?「ちょうどいい規模感」が育む熱量
3つ目のテーマは「北九州の盛り上がりは他の地方都市でも再現可能か?」。各登壇者が持論を展開し、北九州のリアルを語った。
石山:北九州は毎年約3000人の理系人材が卒業するほど豊富な人材基盤を有しており、全国的なIT人材不足という日本の課題解決に直結する大きな強みだと考えています。
さらに、北九州市は「コンパクトシティ」と言われるように企業や大学、行政が地理的に近く、色々なものが集約されている点が際立っています。このような好条件が揃って初めて、盛り上がりが出てくるのではないかと感じています。
千葉氏は「産官学連携における熱量の高さ」を挙げ、次のように見解を示した。
千葉:北九州へ構えたのは、当社の部長が地元企業の方と知り合いで、「北九州に進出してみませんか」とお誘いを受けたのが始まりでした。そうしたなかで、市役所の方々が持つ熱意を知ることになり、本当に良いご縁に恵まれていると実感しています。
中武氏は、「北九州には新しい変化を受け入れる柔軟な土壌がある」と話し、自身の意見を語った。
中武:私たち自身もさまざまなプログラムを進めていますが、その実現には相応の熱量が不可欠ですし、地域とのつながりも非常に重要です。かつて北九州は鉄鋼のまちとして発展してきましたが、時代の変化とともに産業構造も多様化してきました。
そうした土壌があるからこそ、今回のDX推進や企業との連携といった取り組みも、他地域に展開できる可能性があるのではと考えています。
他の地方都市へ北九州の盛り上がりを横展開していく場合にはどのような点が肝になるのか。
石山:実際、私たちもビジネスモデルを模索しながら試行錯誤を重ねています。そのなかで課題が明確になった際にどのようにアプローチするのか。どういうツールを使って解決につなげるのかといったプロセスは、同様の課題を抱える地域や組織にとって大きな参考になると思います。
一方で、単に仕組みを真似するだけではなく、各都市の特色に合わせてアレンジすることが大事になるのではないでしょうか。
千葉:私は「人口規模」がポイントだと考えています。北九州は約90万人規模の都市ですが、十分な母集団がありながらも、決して大きすぎない。しかし東京のような大都市では企業や人、出会いやチャンスが非常に多い一方で、選択肢がありすぎるがゆえに、関係が深まりにくいと感じることもあります。
その点、北九州の規模感は一定の広がりを持ちつつも、顔の見える関係を築きやすく、連携も進めやすい。
まさに「ちょうどいい」と言える規模感なのではと思っています。
中武:北九州市は企業との関係性が良好で、産学連携も進んでいるなかで、私たちが重視しているのは企業と共同で教科書を作る取り組みです。大学と企業のコミュニケーションを深めるために、意見交換の場として懇親会を設け、そこからコラボレーションの種を見つけ、具体的なプロジェクトへ発展させる過程を大切にしています。
例えば「旦過市場」は交流の場として象徴的な存在になっています。今後は、「世界一のデジタルマーケット」構想のもと、伝統とデジタルが融合した未来の市場へ進化することが期待されています。
【トークセッション】人材がいても停滞する地方創生DXの本質的な課題と解決方法
続いて2つ目のセッション「なんで地方のDXって、こんなに進まないんですか!?── 人材はいるのに進まない、地方創生DXの課題を紐解く」が行われ、DXが進む会社とそうでない会社の違いや、地域のDXを前進させるための勘所について議論が交わされた。

登壇者プロフィール
日本アイ・ビー・エム デジタル・サービス株式会社
地域DXセンター事業部九州・那覇DXセンター
ビジネス開発部 責任者
川上 聡一(かわかみ・そういち)氏
三菱総研DCS株式会社
九州支社 支社長
中村 祥子(なかむら・しょうこ)氏
岡野バルブ製造株式会社
取締役
経営企画室長兼新規事業統括
菊池 勇太(きくち・ゆうた)氏
川上:私は北海道出身で2024年に北九州へ移住しました。北九州に来る前の12年間は、中国のIBMで勤務していたので、デジタル先進国である中国と今の北九州を比較しながらお話できればと思います。
中村:私は北九州市の出身でUターンの経験者でもあります。現在はSIerに所属していますが、これまで製造業の情報システム部門も経験してきたため、システムを提供する側だけでなく、社内のDX推進組織の立ち上げにも関わってきました。
菊池:私は2018年に北九州にUターンして起業しました。その後、創業100年を迎える老舗企業の岡野バルブ製造に参画し、新規事業の開発に携わっています。
地方DXのボトルネックを把握し、優先順位をつけて取り組む重要性
ここからセッションの本題に入っていく。まず1つ目のトピックは、「地方DXが進まない一番の原因は何か」。
川上氏は「判断を先送りにしてきたから地方DXが進まない」と意見を提示した。
川上:DXが進まない理由は、表層的なツール導入にとどまっているからではないでしょうか。本来、DXの難しさは技術そのものではなく、事業のあり方そのものを見直すことにあります。しかし、多くの企業がその本質的な部分まで踏み込めない“壁”があるわけです。
その壁とは、事業を見直すことで伴う関係各所の利害を一致させる難しさです。このハードルを乗り越えるには、トップの意識改革だけでなく、組織全体のカルチャーを変える覚悟が必要になるでしょう。
また、私は長年グローバルプロジェクトに関わってきましたが、北九州のDXは中国や韓国と比べると確実に遅れている。だからこそ、成果を出している企業をベンチマークしておくことが重要です。
日本では大企業の顔ぶれが変わらず、新陳代謝が乏しい面もあるため、必ずしも東京の企業ではなく、グローバルのDX先進企業を参考にして、変革に取り組む視点が重要だと考えています。
中村氏は「DXが進まない原因は1つだけではない」とし、複数の要素が重なり合ってDX推進が停滞していると説明した。
中村:DXを成功させるにはトップの関与や体制構築に加え、現場の推進力とモチベーションが不可欠だと私は考えています。
現場の意欲を引き出し、成果に対して正当に評価する。
企業ごとに置かれている環境は異なりますが、まずは自社の本質的な課題を見極めることがDX推進の最初の一歩です。また、川上さんのおっしゃる組織カルチャーの変革は時間がかかるため、若手社員を中心に少しずつ変えていく姿勢が大切になります。
また、DX推進においてはビジネスインパクトが高い、もしくは、影響範囲が広いものから優先順位をつけて着手することも重要です。前職ではコミュニケーション改革をファーストステップとして取り組み、全社を巻き込むことでより多くの人に自分事である事を実感いただく事が出来ました。
そして菊池氏は、「変えなくても誰も困らないから」という理由を挙げ、地方DXが進まない原因を分析した。
菊池:地方の多くの会社では、DXを進めるメリットやモチベーションを感じにくい業種・業態が多いと思っています。例えば建設業や製造業では、無理にデジタル化しても売上や利益にそれほど大きな差は出ませんし、取引先から求められることも少ないので、現状維持でも特に困らないわけです。
だからこそ、DX推進を実現させるには経営層の意識改革が鍵を握ります。上層部が変わらなければ、現場も動きづらいですが、逆に経営陣が率先してデジタルを積極的に使う姿勢を見せれば、自然と現場メンバーの温度感も変わっていきます。
単に、「デジタル化しましょう」と口だけで言うのではなく、経営陣自らがAIやデジタルを活用することで、初めて現場も本気で取り組めるのではないでしょうか。
DXの成否を分けるうえで重要な「失敗を許容する文化」
次に、「DXが進む会社と進まない会社の決定的な違い」をテーマに、各登壇者が議論を展開した。
川上:DXという言葉は非常に曖昧で、まるで魔法の杖みたいに思われがちですが、まずその認識を正すことがスタート地点だと考えています。
そのうえで重要なのは「失敗を許容する文化」です。つまり、トライアンドエラーが許されるかどうかが肝になるわけで、先述した会社のカルチャーを変える必要があると言ったのは、まさにこの失敗を恐れずに挑戦できる風土を作り出すということなんです。特に最近はAIへの関心が非常に高まっていますが、データサイエンティストなどの人材が首都圏に極端に集中している状況を踏まえ、地方企業はどう人材を確保し、組織で活用していくかを考えることが急務になっているといえます。
中村:DXの成否を分けるのは、「小さな成功体験を積めているかどうか」で決まると思います。理由は単純で、DXは一度やったら終わりというものではなく、継続して取り組む必要があるからです。製造業の現場では小さな改善が当たり前のように行われていて、さらには改善活動を表彰するアワードの仕組みや、良い取り組みを横展開する仕組みが整っている。そのため、その延長線上にDXを位置づけて、無理なく進めていくのが良いのではないでしょうか。
ただ、いきなり難易度の高い大きな目標を目指すと失敗リスクが高く、組織が疲弊してしまいます。なので最初はハードルの低い施策から着手し、小さな成果を積み重ねることでモチベーションを維持することが大事です。
菊池:DX推進で重要なのは、「DXを現場に対して翻訳できる人」の存在だと思います。DXという言葉自体、概念的に正解があるものではないので、工場の現場ではその意味が理解されにくい。だからこそ、会社として売上や利益を上げるために何が必要か、現状の人員でどこまで効率化すべきかといった課題を明確に示すことが大切です。
そのうえで、課題解決の手段のひとつとしてITツールやデジタル化を位置づけ、現場に伝えるマネジメントが適しています。
日本の製造業は改善力に長け、品質や効率をミリ単位で追求することは得意です。
「今の人員のままで生産性を120%に」と伝えれば、自然とデジタル活用の発想が生まれるでしょう。このようなアプローチこそ、現場にフィットするDX推進の方法だと思います。
DXを前に進めるための「覚悟」とは?
会社のカルチャーを変え、小さな成功体験を積み重ねて、地域のDXを前に進めるためには、「何を引き受ける覚悟」が必要なのか。
川上:北九州の製造業にとっての本当のライバルは国内ではなく、中国や韓国といったDX先進国だという前提を押さえておくべきでしょう。ITエンジニアが世界水準のDXに取り組まないと、最終的に地域の製造業そのものが競争に勝てなくなってしまいます。だからこそ、より難易度の高い仕事に挑戦し続ける覚悟を持ち、少しストレッチした高い目標を掲げ続けることが大切です。
当社では年次目標に常にストレッチな目標を設定し、単なるコーディングだけでなくセキュリティやクラウドインフラも理解する複合型人材を目指しています。こうした挑戦を可能にするには、失敗を許容する文化が欠かせません。挑戦と失敗がセットで認められるからこそ、ストレッチ目標も機能するのです。
中村:DXは一部の人だけが頑張っても前に進まないので、成果を急がず、時間をかけて伴走し続ける覚悟が必要になるでしょう。また、今の若手社員に対しては褒めて伸ばすことも必要になります。
取り組みの結果だけではなく、その過程もきちんと評価することが求められます。それによって、たとえ成果に直結しなくても、取り組んだプロセスが認められれば、「次はもっと頑張ろう」と思えるものです。こうした評価の工夫は、私たちの会社でも意識して取り組んでいます。
大規模な東京本社と違い、地方拠点は人数が比較的少ないぶん、一人ひとりの業務プロセスを見守りながら評価しやすいという特徴があります。だからこそ、地方のほうが丁寧なマネジメントを実践しやすい環境にあるのではと考えています。
菊池:川上さんもおっしゃっていた通り、私たちの競争相手はもはや国内企業ではありません。グローバル市場で戦っている以上、DXを進めなくてはならない理由はシンプルに「会社を強くし、競争に勝ち残るため」だからです。市場で生き残り、しっかりと利益を上げて社員の給与を守っていくためには、ときに痛みを伴う局面や、社員に厳しい負荷をかけざるを得ない場面も出てくるでしょう。それでもなお、DXを推進していかなければならないと私は考えています。
岡野バルブはもともとチーム力の高い会社で、組織力という点では他社と比べても強みがあります。だからこそ、サッカーで例えるなら突破力や得点力を持つ前線の選手がもっと必要だと感じており、DXを進める攻めの人材が点をしっかりと取り、最終的にはチームを勝たせる。まさにチームを信じてついてきた人に報いる覚悟が求められているのだと思います。
【4社登壇】北九州に拠点を構える企業のショートピッチ
続いては、北九州に拠点を構える企業4社によるショートピッチが行われた。
サイエンスパーク株式会社

サイエンスパーク株式会社
研究開発企画部
部長
井上 宜子(いのうえ・のぶこ)氏
私は福岡県小郡市出身で、昨年4月にサイエンスパークの北九州拠点「QPark」の開設にあたり、Jターンという形で北九州に戻ってきました。QParkは小倉駅から徒歩4分ほどのオフィスに拠点を構えており、私はそこの拠点長として運営に携わっています。
サイエンスパークは神奈川県座間市に本社を置く創業32年の会社で、主にデバイスドライバーやサイバーセキュリティ製品など、専門性の高いプロダクトを開発しています。そんななか、当社が何より大切にしているのは「全従業員とその家族の幸せ」です。
例えば社員が体調を崩せば、他の社員が差し入れを持って様子を見に行くような、人と人との「繋がり」を大事にする社風があります。創業社長が北九州出身という背景もあり、少し“おせっかい”なくらい温かい会社です。
今回、北九州に拠点を構えた理由は3つあります。
まず、社長が知人から「北九州は良いところだ」と聞いたことに端を発しています。そこから、都内で開かれる北九州関連のイベントに参加したり、市役所の方々と話したりするなかで、その対応が非常に丁寧で好印象だったのが最初のきっかけになったのです。
さらに、拠点を福岡市に出すという選択肢もありましたが、「尖った会社が北九州に進出した」という存在感を出せるのではないかと考え、戦略的に北九州を選んだのも理由のひとつです。
そして3つ目は個人的な理由で、私自身が福岡に戻りたいという思いがありました。私は3人の子どもがおり、全員保育園に入る必要があったのですが、市役所に相談したところ手厚くサポートしていただき、「ぜひ北九州で挑戦したい」と思うようになりました。
拠点を北九州に開設してからは小倉城でイベントを開催するなど、地域との接点づくりにも積極的に取り組んでいます。こうした活動を通じて、北九州に根ざした拠点として成長していきたいと考えています。
株式会社インプル

株式会社インプル
コーポレートグループ HRチーム
マネージャー
田本 卓也(たもと・たくや)氏
当社は北海道札幌市に本社を構える2011年創業のソフトウェア開発会社です。北海道土産の定番として知られる「白い恋人」のシステム開発や地元製紙会社のシステム構築など、地元企業のDX支援やシステムインテグレーションを手がけてきました。
2025年8月には北九州のリバーウォークに拠点を開設し、札幌での経験を活かしながら、北九州で何ができるかを模索しつつ、日々ビジネスに取り組んでいます。
北九州へ進出した理由は「人材の多様性」、「行政の支援」、「地方こそチャンス」の3つです。
人材に関しては、ベトナムの企業と提携し、インターンを通じて来日した人材を正社員として迎え入れる取り組みを行っています。また、行政の担当者が当社のオフィスまで足を運んでいただき、雑談を交えながらさまざまなサポートを受けられる点は非常に魅力的だと思っています。そして、北九州には製造業の大きなマーケットがあり、地域に密着してDXを進めていくことで雇用を創出し、地域活性化を図っていくことを目指しています。
今後は、対面でのコミュニケーションや信頼関係を重視し、まずは北九州の土地にしっかりと溶け込みながら、着実に事業を進めていきたいと考えています。
GMOインターネット株式会社

GMOインターネット株式会社
システム本部お名前.com開発部お名前フロントエンドチーム
リーダー
小林 隆晴(こばやし・たかはる)氏
GMOインターネットは渋谷に本社を置くIT企業で、主にインターネットインフラ事業と広告メディア事業を展開しています。私は2018年に入社して、現在はお名前.comのドメイン関連のバックエンドやメールマーケティングシステムの運用・保守を担当し、大規模システムの安定稼働と継続的な改善に取り組んでいます。
当社初となる地方のエンジニア拠点「GMO kitaQ」は2018年に開設しました。現在はワンフロア増床し約170名が在籍するなど8年間で急速に拡大しており、将来的には250名体制を目指しています。
北九州に拠点を置いたのは、システムエンジニアリングの拠点が東京の渋谷に集中していて、BCPの観点から地方拠点の必要性が出てきたのが背景にあります。そこから検討を進めていくうちに、山口県の下関にグループ内のカスタマーサポート拠点があることから、そこに近い候補地をいくつか比較していきました。
最終的には下関と交通アクセスが良く、企業立地支援や子育て環境が充実しているのに加え、九州工業大学や北九州高専といったIT人材が豊富な北九州を選んだのです。
北九州に進出して7年間が経ち、当初は事業開発の中心拠点として計画していましたが、人材育成の取り組みも拡大したのは想定外の手応えだったと感じています。
現在は北九州市教育委員会と連携した小学生向けプログラミング講座や学生対象の実践型インターン、学生向けセキュリティ開発イベントなど、多様な教育活動を実施しています。
株式会社情報戦略テクノロジー

株式会社情報戦略テクノロジー
九州支店
支店長
藤原 脩平(ふじわら・しゅうへい)氏
当社は2009年に東京で設立した会社で、システムインテグレーション業界の多重下請け構造の解消を目指し、企業のDX内製支援サービスを展開しています。2024年に地方拠点の第一号を北九州に開設したのは、以前弊社の役員が北九州市役所のDXプロデューサーとして行政のDXに携わっていたことがきっかけでした。
地元企業の強さはもとより、教育機関の手厚さや市の活力に当社が目指す「ITで日本の経済を強く豊かにする」という理念と大きなシナジーがあると感じ、北九州に進出を決めました。
現在は黒崎播磨や大石産業といった北九州に本社を構える、数多くの企業とお取引させていただいており、北九州市には大きな可能性があると実感しています。
他方で、東京と比較するとまだまだ情報格差や待遇、経験の差が一定あるのも事実ですので、当社で培ってきた事業開発やDX推進のノウハウ、生成AIなどの先端技術を活用して、北九州市の活性化に貢献していきたいと考えています。
さらにビジネス面だけでなく、J3リーグ所属のプロサッカークラブ「ギラヴァンツ北九州」のスポンサー活動などを通じて、地域の活性化にも取り組んでいます。
文=古田島 大介
※所属組織および取材内容は2026年2月時点の情報です。
KITAKYUSHU Tech Day
https://impact-kitakyushu.jp/
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