【仙台X-TECHイノベーションプロジェクト2026-2027 キックオフイベント】
仙台市が推進する「仙台X-TECHイノベーションプロジェクト」の2026-2027キックオフイベントが7月24日(金)に開催され、「ID野球に学ぶ AI・データ時代の組織と意思決定」と題した講演・ワークショップが行われた。

主催者挨拶に立った仙台市経済局イノベーション推進部部長の齊藤淳志氏は、「人材不足や資材の高騰、中東情勢など不確実な要素がある中、AIをはじめとするデジタル技術を有効に活用した効率化と、異分野との掛け合わせによる新しい価値創出が重要だ」と述べた。
第一部 ID野球に学ぶ AI・データ時代の組織と意思決定
第一部には、元プロ野球選手・監督で「ID野球」の象徴的存在として知られる古田敦也氏が登壇。ヤクルトスワローズ時代に故・野村克也監督のもとで実践した「ID野球」の思想と、AI時代における「データの読み方・使い方」について講演した。

古田氏は、「ID」とは「Important Data(重要なデータ)」の意味であり、情報収集・分析の重要性を説いた思想だと説明。野村監督は就任初日、「耳順」を掲げ、まず人の話に耳を傾け、得た情報を自分の頭で考える姿勢を選手に求めたという。「関わってくれた人をいかに幸せにできるかが仕事」という監督の教えも紹介した。
野村監督から学んだのは「生きたデータを集めろ」という教え。対戦相手の投手と捕手のどちらが先輩かといった、一見プレーと無関係な人間関係まで調べることで、次に何が起こるかを予測する材料が増えるという。データ利活用とは数字の分析だけでなく、データの背景にいる「人間」の判断を読むことだと古田氏は語った。
現在はAIによって「見えるデータ」が飛躍的に増え、選手の得意・不得意分野が一目で分かる時代になった。投手・打者双方が同じデータを見て駆け引きするため、古田氏は「データに縛られた人間がいるところは隙が突ける」と指摘。全員が同じデータで合理的な判断をするようになれば行動は予測しやすくなり、あえてデータから外れることが戦略になる。データは「答え」ではなく意思決定の「材料」だと強調した。
また、メジャーリーグは各リーグ15チームと対戦相手が多く、弱点を徹底的に突く戦略が有効だが、日本のプロ野球は各リーグ6チームで同一相手との対戦が繰り返されるため、過去のデータをそのまま未来に当てはめるだけでは通用しない。「データを起点に仮説を立て、相手の思考まで想像する力が求められる」と語った。
さらに、「現在の若い投手は、現場のコーチのアドバイスの後、自分の部屋でAIに同じ質問をし、さらにYouTubeでトップ選手の考え方を学ぶなど、選択肢が多すぎて迷っている」と古田氏。情報源が増えた時代だからこそ指導者に求められるのは情報を一方的に与えることではなく、その選手にとって何が必要かを一緒に整理することや目的・意義を丁寧に説明し納得感を持たせることだと指摘した。
AIは情報処理や分析能力に優れているがステレオタイプになりやすい面もあり、洞察力や柔軟な判断力、未来を自分で切り開いていくという気概などをもって意思決定することが重要だと講演を締めくくった。
第二部 経営層向けAI実践ワークショップ
第二部には、全国1,500社以上の経営者・幹部にAI教育を提供してきたx3d株式会社代表取締役の武石幸之助氏が登壇。参加者は各自のパソコンでChatGPTを使いながら、生成AI活用のワークショップに取り組んだ。

武石氏はまず自身のツールで参加者のAI活用レベルを自己診断させた。アメリカの企業では約9割がAIを業務で利用している一方、日本では導入率が低く、AIを学んでも8割以上の人が「調べる・要約する・書かせる」段階で止まり、利益に転換できていない現実を示した。その上で、AI・DX化が目指す成果は、外注費削減や転記・事務作業の自動化による「営業利益率の改善」と、生まれた稼働余力を営業・マーケティングに転換する「売上向上」の二つに集約されると説明した。
AI化を継続するには「マインド」「スキル」「インフラ・ツール」の三軸が必要だという。AIを「頭脳を持った情報の文房具」と捉え、素直な言葉で語りかける姿勢(マインド)、ChatGPTやClaude、Geminiなど各AIツールの特性理解や対話を深める技術(スキル)、既存の社内環境との整合性(インフラ)をバランス良く整えることが求められる。「Microsoftの環境ではClaude Codeが動かせないなど、インフラの壁がAI活用の上限を決めることを知っておくことも重要」と武石氏は話した。
AI活用は「プロンプトによる対話」から「自社データの活用(RAG)」「外部サービス連携・自動化」へと段階的に発展するという独自理論「生成AIの5段階活用」も紹介。プロンプトは曖昧な指示ではなく自然な言葉で具体的に伝えること、AIはマークダウンという構造化された書き方で出力するためこの形式を理解すると対話が捉えやすくなることを説明した。また、AIには遠慮のないフィードバックを返すこと、話題が変わったら新しいチャットを開くこと、ハルシネーション(AIの嘘)への警戒と「性悪説で臨む」姿勢の必要性も説いた。
RAG(検索拡張生成)については、業務マニュアルや顧客データをAIに与えることで、プロンプト単体を上回る業務改善が見込めると説明。良い見本だけでなく悪い見本(バッドプラクティス)もRAGとして有効であることや、法改正前後の文書を両方与えて「何が変わったか」を比較させる使い方も紹介された。
さらに進むと、Google Drive、freee、kintone、Gmail、Salesforceなど外部サービスに蓄積されたデータもAIにとってはRAGの対象となり、AIと連携させることで会計データの確認や記帳、メールからのタスク抽出などが可能な「AI社員」「AI秘書」を構築できるという。武石氏自身、Claudeにfreeeをつないで記帳代行を任せているといい、AIが別のAIやサービスを操作する「AIオートメーション」が今後の重要な領域になると話した。実例として、愛知県の運送会社社長がClaude Codeでダッシュボードや業務管理システムを自作し、事務作業を約70%削減した事例も紹介された。
法人向けAIツールの選び方としては、①ChatGPTやClaudeを直接配布する「メーカー直販型」、②Microsoft 365 CopilotやGoogle Workspace Geminiなど「仕事ソフト統合型」、③国産プラットフォーム型の三パターンを紹介。国産といっても中身は海外製LLMを使うケースが多く、真の国産AIはNTTやSakana AIなどが開発したLLMを指すと説明し、営業トークを鵜呑みにせず、利用目的やセキュリティ、コストなど総合的な判断が必要だと述べた。
またAI時代になくならない仕事として、エッセンシャルワーカーや非認知能力を要する職種、AIと協力して成果を生む人材、意思決定と最終責任を担う経営者・管理職を挙げたほか、成功体験への固執が変化への適応を妨げる「イカロスのパラドックス」にも注意を促した。
ワークショップでは、ChatGPTを使った旅行計画の壁打ちや議事録の要約(AIの要約に網羅性のムラがあることを体感)、コロナ禍をテーマにしたハルシネーション見抜き演習、飲食業界用語集を使ったRAGの有無によるクイズ生成結果の比較など、複数の実践演習も行われた。
AI活用に伴うリスクとしては、機密情報がAIメーカーのサーバーに送信される「情報漏洩」、社員が会社の許可なくAIを使う「シャドーAI」、AIの出力をそのまま答えとして受け取ってしまう「AI脳」の三つを挙げ、企業ごとのガイドライン整備の必要性を述べるとともに、最終的な判断と責任は人間が持つ必要があると強調した。最後に、AIは単に「使いこなす」段階から「共に考える」存在として活用していくことが必要だと締めくくった。
参加者の声
20代 コンサルタント
「野球には詳しくなかったが、古田さんの話はビジネスにも通じる内容で面白かった。クライアントへのAI導入支援もしているが、体系的に整理して話すことの価値を改めて感じた」
50代 企業経営者
「社内では一部データ分析や画像生成でAIを活用しているが、今後の展開のヒントを得られた。業務フローの整理からClaudeを使った社内教育まで、いろいろできそうだとワクワクした」
SENDAI X-TECH
https://bd.techplay.jp/sendaixtech/
仙台市 SENDAI CITY: LIFE IS YOUR TIME.
https://lifeisyourtime-sendai.com/
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