クラウドヂカラ #AWSセミナー 〜エンジニアに求められる本当のスキルとは〜
2018/07/05(木)19:00
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AWSの本格設計を実践。「クラウドヂカラ #AWSセミナー」レポート
多くのシステムやデータをクラウドに集約する現在のトレンドは、黎明期からそれを支えてきたAWS(Amazon Web Services)抜きにしては語れません。GoogleやMicrosoftなど他社のクラウドプラットフォームが台頭してきた今も、依然としてAWSは大きな存在感を放っています。
同イベントでは、そんなクラウド時代に不可欠なAWSを、これから始めるにはどうしたらいいのか、AWSを活用したシステム開発の豊富な経験をもつ株式会社BFT 部長代理の富岡秀明氏が解説しました。
また、AWSにかかわらずシステム開発に携わるエンジニアが、今後「より価値あるエンジニア」となって活躍するには何が必要なのか、エンジニアのキャリア形成という観点から同社取締役 専務の古賀彌奈子氏が語りました。
そしてイベント後半のワークショップでは、提示された課題に沿ってシステム構成図を作成し、AWSの実践的な設計手法を学びました。
AWSにおける「非機能要求グレード」の内容を詳しく紹介
BFTの富岡氏は、これから本格的にAWSを導入しようと考えている人に向けて、自社で独自に管理するオンプレミス型のシステムと比べたときの、AWSの特徴や利点を解説。AWSに含まれる個々のサービスや機能に関することではなく、AWSの基盤システムとしての「非機能要件」あるいは「非機能要求グレード」と呼ばれる部分を軸に展開する、ユニークな内容となったのが印象的でした。
一般的な「非機能要求グレード」の内容は、可用性、性能・拡張性、運用性、保守性、セキュリティ、システム環境という6種類に分けることができます。それぞれどういった対応を求められる要件なのか、そしてAWSが各々についてどのようにサービスレベルを定義しているのか、富岡氏は1つずつ丁寧に掘り下げていきました。
例えば「可用性」は、サーバーやサービスの稼働時間、停止時間などのスケジュール、障害・災害発生時の稼働目標といったもの。AWSではこの可用性について、個々のサービスで全ユーザー(顧客)に対し統一的なサービスレベルを決めており、ユーザーの意向で変えることはできない、と富岡氏。稼働率99.99%としているにも関わらず、人為的な障害で5時間もの長時間に渡りサービスダウンした例もあると語りました。
しかし、そういったデメリットを踏まえても、AWSはオンプレミスのシステム以上に可用性を高められる設計になっていると同氏は言います。突発的な大規模障害の可能性はオンプレミスでもAWSにおいてもゼロではなく、障害が発生する前から万が一のケースを想定するのはそもそもナンセンスであると述べました。
次の「性能・拡張性」の面では、負荷の程度に応じて自動でサーバー台数を増加しアクセス集中を分散させるAWSの「オートスケール」が便利としつつも、課題もあると同氏。例えばWebサイトの場合、過去のある時点でのスナップショットを他のサーバーにコピーする形になると言います。
つまり、増加したサーバーに必ずしも最新のコンテンツが反映されるとは限らないということ。こうした運用時に注意しなければならない細かなポイントが、AWSには多くあることを紹介しました。
最後に同氏は、「(アクセス数などの)需要予測がきっちりできるならオンプレミスでもいい。コストも安く済む」とし、自社のビジネススピードが変化したときに、それに合わせてカスタマイズしにくい点もAWSなどのクラウドのデメリットだと話しました。
一方で、正確な需要予測ができていない場合は、オンプレミスだと「損をする」と断言。「クラウドを使える場面、使えない場面をよく考えて選ぶべき」と強調しました。
自分の幸せな将来のために、仕事のやり方を考えて
続いて登壇したBFT取締役専務の古賀氏は、いったんAWSから離れ、「あなたが年収1000万以上になれない理由」という刺激的なタイトルで講演しました。
東京都のシステムエンジニアの平均年収のピークが45〜49歳にあることを示したうえで、「45歳以降は勝負がついている。30代後半から40代前半が勝負の時期であるため、キャリア形成に重要な年代は30代と言える」と分析。年収1000万になれる人となれない人との差は「技術マジック」にあるとしました。
「技術マジック」とは、簡単に言えば、技術や知識の習得こそがエンジニアとしての価値であると錯覚すること。「仕事ができる」=「技術や知識を身に付けること」と思い込み、しばらくするとそれによって実際に仕事をこなせるようになることから、そのうちエンジニアは「技術や知識の習得が優先事項になる」状況に陥りがちだと指摘します。
本来、会社が社員に期待しているものは技術や知識の習得そのものではなく、あくまでも成果。入社直後の若い頃はともかく、年月を経るとともに会社が社員に求めるものは徐々に変化していき、プロジェクト管理や顧客管理を含めた調整能力と、そこから生まれる売上や利益の重要性が増してきます。
もちろん、多くの人がそう頭では理解しているはずですが、実践できていないのが実情だと同氏。商品の値段が支払う顧客側の考え方や市場ニーズによって決まるのと同じように、給与額も「支払う側の考え方(価値)、市場のニーズによる」とのことで、「給与を支払う側はプロジェクトの成功を、給与を受け取る側は技術知識を重要と考える」というミスマッチがある限り、給与が上がることはないと自覚してほしい、と話します。すなわち、給与を支払う側の価値基準に、自分の仕事における考え方、動き方をいかに合わせられるかが重要と言えるでしょう。
同氏は、「年収1000万円」はあくまでも自分が満足感や幸福感を得られる「成功基準」に置き換えるべきものであり、それに到達するのに必要なことは「将来の目標を先に決めること」と「それに必要な年収を考えること」だと訴えます。「目標を明確にせず時間が経過した場合、後戻りはできない。自分が幸せと感じる未来のために、仕事のやり方を考えてほしい」と述べ、締めくくりました。
イベント後半のワークショップも、引き続き古賀氏が進行役を務めました。海外展開を見据えたECサイトを構築する、という課題のもと、その要件を満たすAWSの構成図を30分で作るという実践的な内容。数人ずつの班に分かれ、ポストイットの巨大な模造紙に、システムモジュールを表すアイコンシールを貼り付けてAWSのシステム構成図を作成していきました。
最後に手本となる回答が示されたものの、答えは1つではなく、各班のシステム図で手本とは異なる考え方が示されるなど、参加者と運営側の双方が学ぶことのできたセミナーとなりました。