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人工知能

人工知能(AI:Artificial Intelligence)はコンピュータサイエンスの一分野であり、画像認識、音声認識、意思決定、言語翻訳など、通常人間の知能を必要とするタスクを実行できる知的機械を創造する研究です。

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はじめに ZOZOTOWN開発本部のらぷ( @laprasdrum )とイッセー( @15531b )です。WWDC現地参加は、らぷは2016年以来2回目、イッセーは初参加(かつ初渡米)です。本記事ではWWDC26の現地参加レポートとともに、ZOZOのiOSエンジニアによるおすすめセッション、6月18日に開催されたLINEヤフー株式会社との合同報告会イベントについてもご紹介します。 目次 はじめに 目次 WWDC26のSpecial Event Day 0 Day 1 Keynote Download stations Platforms State of the Union 現地視聴をより楽しむために In-person labs Inner ring reception Day 2 Developer session Mixer @Developer Center Theater event 併催コミュニティイベント おすすめセッション集 優れたデザインのための原則 Foundation Modelsフレームワークの新機能 WWDC26 報告会 at LINEヤフー, ZOZO さいごに WWDC26のSpecial Event 今年6月7日〜9日(現地時間)のWWDC26では、昨年と同様に招待制のSpecial Eventが現地開催されました。昨年の様子は「WWDC25現地参加レポート」をご覧ください。 techblog.zozo.com 今年のSpecial EventはWelcome receptionから始まりました。基調講演後には、Appleの方へ新APIを質問したりアプリのフィードバックをもらえたりするIn-person labsが開かれました。その後、Apple ParkのInner ringで交流会がありました。最終日はSteve Jobs Theaterで、スター・ウォーズ作品『The Mandalorian and Grogu』の上映とスペシャルゲストのインタビューを楽しめました。 Date Pacific Time Content Venue Day 0 (June 7) 3 p.m. Welcome reception Infinite Loop Day 1 (June 8) 8 a.m. Check-in Apple Park 10 a.m. Keynote Apple Park After Keynote Download stations open Apple Park 12 p.m. Lunch Apple Park 1 p.m. Platforms State of the Union Apple Park After Platforms State of the Union In-person labs Apple Park 4-6 p.m. Reception in the inner ring Apple Park Day 2 (June 9) 10 a.m. Developer session Steve Jobs Theater or Apple Developer Center Cupertino 11:30 a.m. Mixer Apple Developer Center Cupertino 8 p.m. Pre-show presentation and special screening of The Mandalorian and Grogu Steve Jobs Theater Day 0 私たちはDay 0の午前にSFO(サンフランシスコ国際空港)へ到着し、宿泊先のホテルに荷物を置いてからInfinite Loopへ向かいました。道中は初めてWaymoを利用しました。急カーブでもほとんど揺れずに走行するため、仮眠できるほど静かでした。 Infinite Loopに到着するとチェックイン待ちの長蛇の列がすでにできていました。並んでいる間のおもてなしとして配られたジェラートバーとお水で暑さをしのぎつつ待ちました。 2種類の味から選べたジェラートバー 入口前でセキュリティチェックを済ませると、参加者用のバッジとノベルティを受け取りました。バッジにはNFCタグが入っており、各イベントのチェックイン時にAppleのスタッフのiPhoneにバッジをかざすことになっています。ノベルティ恒例のピンバッジにはLil Finder Guyと創立50周年を象徴するデザインが含まれていました。入場時はAppleのスタッフの方々が歓声とともに出迎えてくださり、Day 0から盛り上がりを肌で感じました。 今年のノベルティバッグ 今年のピンバッジ、ステッカー、ボトル 参加者用バッジ ── お気に入りのピンバッジを添えて その後は終了時刻の夕方7時まで自由に過ごしました。軽食とドリンクをいただきながら各国の参加者との交流、Apple Design Awardsの受賞者とファイナリストとのトーク、Appleのスタッフによるモニュメント前の記念撮影などを楽しみました。 快晴に恵まれたこの日 モニュメント前で記念撮影 また、APACの参加者で集まって記念写真も撮りました。オフラインで参加すると、多くの方がApple Platformの開発者として関わっていることを実感できました。 Day 1 Keynote まずはKeynoteの会場に向かうため、Visitor Center前でチェックインを済ませてApple Parkに入場しました。入場まで横断歩道の信号待ちで列がゆっくり進む中、Caffè Macsのスタッフからいただいたドーナツを食べながら近くの方と「今年のWWDCは何を期待してますか?」と雑談しました。話しかけた方の多くがAIのトピックを気にされていました。 Visitor Center前のチェックインも長蛇の列 Caffè Macsからいただいたオレンジ味のドーナツ 会場に到着したのは8時半頃でした。Keynote開始時間の10時までは自由に散策し、参加者とお話を楽しみました。 KeynoteおよびPlatforms State of the Unionの会場 会場のスクリーンでは、オンラインで公開されているKeynoteの動画が再生されます。現地では動画の再生前にCraig Federighi氏がステージに登場し、挨拶がありました。 developer.apple.com 続いてTim Cook氏も登場し、このときの会場の盛り上がりは強烈でした。CEOとしてのKeynoteでの登壇は今年が最後です。参加者全員が立ち上がってiPhoneを掲げて撮影する光景を前に、Cook氏自身も「これまでこんなにiPhoneに囲まれたことはありません」と語っていました。 壇上に登場したTim Cook氏 Download stations Keynoteが終了すると、高速の有線ネットワークが提供されるDownload stationsに集まりました。ここでXcode 27 BetaやiOS 27 Betaのダウンロードを始めました。この日は晴天で気温も高かったため、パラソルの影に集まって休憩する参加者も多かったです。 有線ネットワークが用意されたDownload stations Platforms State of the Union developer.apple.com 手元にiOS 27 BetaをインストールしたiPhoneを触りながら、先のKeynoteの内容も踏まえてPlatforms State of the Unionを視聴しました。今回のSiri AIやCore AI、Foundation Modelsなどのアップデートには、共通した方向性があります。デバイスへ蓄積された写真やテキストなどのパーソナルなデータをもとに、AI体験を最適化することがAppleの狙いです。Newsroomで公開されたSiri AIの記事には、Apple Intelligenceのアーキテクチャ図が掲載されています。この図では、デバイスとアプリケーション(またはSiri AI)の間にユーザーコンテキストが示されています。Appleプラットフォームのアプリ開発者には、このコンテキストを活かしたAI活用が求められているのでしょう。 www.apple.com 視聴後しばらくすると、スクリーン上にさまざまなアプリのアイコンが表示されました。幸運なことに弊社のアプリが映し出されたタイミングで撮影できました。 どこかにある弊社アプリのアイコン。見つけられましたか? 現地視聴をより楽しむために 現地ならではの視聴の楽しみ方も、二人それぞれ工夫してみました。らぷは Rokid Glasses というスマートグラスのリアルタイム翻訳機能を使って視聴しました。体感1秒未満で翻訳結果が表示されたので和訳文も追いつつ快適に視聴できました。 Rokid Glassesのリアルタイム翻訳結果 イッセーは英語に自信がなかったため、セッションの視聴でAirPods Proのライブ翻訳機能を試しました。実際に使ってみると、登壇者の英語が純正の翻訳アプリ上に日本語テキストとして表示されるだけでなく、AirPodsからも日本語に翻訳された音声がリアルタイムで流れてきます。この機能のおかげで、英語に自信がなくてもセッションの内容を大まかに理解できました。イッセーとしては、画面上のテキスト翻訳はあえて見ず、登壇者の様子を見ながら日本語音声だけを聞くスタイルがとても快適でした。 ライブ翻訳機能の翻訳結果 私たち以外にもスマートグラスやAirPodsを使って視聴している参加者が多くいました。海外カンファレンスへ現地参加する際の言語の壁はこれまでもありましたが、こうした技術によって乗り越えやすくなったと感じました。 In-person labs Platforms State of the Unionが終了するとIn-person labsが始まり、各ラボで新しく発表されたAPIや日々の開発で困っていることを相談しに行きました。特に困ったことがなくても「まだ触れたことのないFrameworkを始めようと思うんだけど何から始めたら良いですか?」といった相談でも問題ありませんでした。気さくな雰囲気の中でいろいろ話せるので、来年現地に行かれる方はぜひ積極的に利用してみてください。 Inner ring reception その後夕方6時まではInner ring内で自由に過ごしました。Xcode 27 Betaで開発したり、初対面や既知の開発者との会話を楽しんだり、Appleの方に質問したりと、あっという間に時間は過ぎていきました。 Xcodeダウンロード中にAppleのWWDRの方にいただいたFoundation Models Frameworkのステッカー 虹のApple Stage前で撮影してもらったイッセー。青いシャツの方は各国のApple Storeのスタッフ Day 2 Developer session Developer sessionに参加するため、Apple Parkへ向かいチェックインを済ませました。今回のセッションはSteve Jobs Theaterで開催されました。ここは過去のWWDCでは立ち入ることができなかった特別な場所です。定員制のため、シアターに入れない場合はApple Developer Centerでの視聴でした。開始1時間前に到着したものの、すでに多くの参加者が列を作っていました。皆がこのシアターでの参加を待ち望んでいる熱気を感じました。 無事に入場でき、ガラス張りの円形の建物と緑豊かな造形美に圧倒されました。会場で軽い朝食をとった後、いよいよセッションがスタートしました。 Developer session前のSteve Jobs Theaterの様子 今回のセッションでは、Xcode 27の「Agentic Coding」やFoundation Modelsなどの新しいAIフレームワークが取り上げられました。実際のアプリ開発にどう組み込むかという実践に焦点を当てた内容です。その中でも、Evaluations Frameworkはどのように役立てられるのかイメージができていませんでした。セッションを通して、LLMの出力の品質を容易にテスト・評価できる点を理解でき、実際に触ってみる良いきっかけになりました。動画でも公開されているので、使い方のイメージが付いていない方の参考になります。ぜひチェックしてみてください。 developer.apple.com Developer sessionの様子 Mixer @Developer Center セッション終了後はDeveloper Centerへ移動し、「Mixer」というイベントに参加しました。会場にはさまざまなフードトラックが用意されており、昼食をとりながらコーディングをする人々の姿も見られました。また、特定のテーマごとにブースが設けられており、参加者同士で交流したり、Appleのエンジニアに直接質問したりできる貴重な場となっていました。さらに、Developer Center内ではGroup Labが開催されており、会場の内外いずれも非常に活気に満ちていました。 テーマごとに交流ができる場所 Mixerの会場図 Theater event 夜は、現地参加者の中で先着申し込みができた「Theater event」に参加しました。日中と同じくSteve Jobs Theaterで開催されるとのことで、再びあの空間に足を踏み入れることができました。 Theater eventでのSteve Jobs Theater 今回上映されたのは、今年公開されたスター・ウォーズ作品『The Mandalorian and Grogu』です。上映前にはスペシャルゲストによる対談が行われていました。その際、通路の透明なディスプレイに会話の文字起こしと手話がリアルタイムで表示されていました。Appleらしいアクセシビリティへの高い配慮に、とても驚かされました。スター・ウォーズにあまり精通していなかったため少し心配でしたが、思った以上に内容が分かりやすく、シーンによっては観客の歓声で盛り上がるなど、非常に楽しむことができました。 インタビュー中に字幕と手話が表示される透明なディスプレイ 併催コミュニティイベント らぷはCommunityKitが主催している2つのイベントに参加してきました。ひとつはPaul Hudson氏が開催した「What's new in iOS 27?」です。 luma.com WWDCでは、Day 1にAppleから全セッション動画とサンプルプロジェクトが公開されます。Hudson氏はSwiftUIやSwiftDataなどのサンプルプロジェクトを実際にビルドし、発生したエラーと修正方法を紹介してくださいました。すべてのサンプルプロジェクトが修正なしで期待どおりに動作するわけではないので、こうした知見を聞けるのは助かります。 会場の様子 もうひとつは「Swift Contributor Social」というイベントです。こちらはSwiftのコントリビューターと、それに興味がある人たちによる交流会です。まだコントリビューターではありませんが、どんな観点で活動しているのか聞いてみたくて参加しました。 luma.com 今回はstdlibのメンテナーでSpanの実装を担当された方にじっくりお話を聞くことができました。 developer.apple.com メモリ安全性への興味や今後の展望、コンパイラーチームが別途持っている構想と突き合わせた上での定期的な議論などを伺いました。Swift Forumsを眺めているだけでは得られない情報が多く、刺激的な時間でした。 ボウリング場のビリヤード台を囲んで自由に交流中 参加中、もしくは興味のあるWorking Groupのバッジ おすすめセッション集 優れたデザインのための原則 ZOZOTOWN iOSアプリの開発をしているつっきー( @tsuzuki817 )です。 今回のWWDCでは、Appleが考える優れたデザインの原則を扱うセッションがありました。デザインを単なる「見た目やふるまい」ではなく、「意図をもってものを作ること」と定義した上で、数々の重要な指針を解説しています。詳細は「 Principles of great design 」のセッションをご覧ください。 私が特に注目したのは、「主導権」「寛容さ」「柔軟性」という3つの原則のつながりです。ユーザーをあらかじめ決められた道に無理に誘導するのではなく、主導権を人々に委ね、自分のペースで探索させることの重要性が語られています。しかし、自由に探索できるようになると、ユーザーは誤って削除してしまったり意図しない操作をしてしまったりすることがあります。 そこで重要になるのが「寛容さ」です。操作を簡単に取り消せるようにし、大惨事を避けられるようにすることで、ユーザーに「いつでも回復できる」という自信を与え、安全な探索を支えることができます。さらに、ユーザーがアプリを使う状況(ランニング中や運転中など)や能力は人それぞれであるため、それらに適応する「柔軟性」を持たせることも強調されていました。 すべての人に合う単一のレイアウトを見つけるのは難しいため、ユーザー自身が好みに合わせて体験をカスタマイズできるようにすることが、最良の柔軟性です。セッションの最後では、これらの原則を正しく実行した自然な結果として、真の感情的なつながりである「喜び」が生まれると語られていました。これは製品に込めた「思いやりの総和」であるとのことです。自分がアプリを開発するうえで大事にしていることでもあり、同時に難しいと感じている点でもあります。 普段ZOZOTOWNの開発や個人開発をするなかで、ユーザーにどのような体験をさせたいのか迷うことが多くあります。このような原則に則って考えることで、よりよいプロダクトが作れそうだと期待しました。また、この考え方はZOZOTOWNのアプリ開発でぜひ意識していきたいです。さらにユーザーだけではなく、普段の仕事で起きるコミュニケーションにも活かせます。相手に選択肢を委ね、ミスを許容し、状況に柔軟に対応していきます。 Foundation Modelsフレームワークの新機能 ZOZOTOWN iOSアプリの開発をしているpe( @shumpei_nagata )です。 今年のWWDCでは、Foundation Modelsフレームワークの進化に興味を惹かれました。詳細は「 What's new in the Foundation Models framework 」で紹介されています。 このフレームワークは昨年登場し、アプリ上でオンデバイスの大規模言語モデルを扱えるようになりました。そして今年は画像入力(Vision)に対応しました。テキストだけだったプロンプトに Attachment(UIImage(...)) のように画像を差し込むと、その画像について回答が得られます。ガイド付き生成( @Generable )やツール呼び出しなどの既存APIもそのまま使えるので、これまで書いたコードを活かして画像対応に広げられます。 また、Foundation Modelsの導入に役立つ道具も増えてきました。生成AIは出力が確率論的に決まるので、生成結果の品質を確かめるのはなかなか骨が折れます。サービスの機能として安心して導入するには、品質を測定できる仕組みが必要です。そういった課題には Evaluations Framework が役立ちます。併せてAppleからオープンソースで公開された foundation-models-utilities も参考になります。コンテキスト超過を防ぐトランスクリプトの圧縮やSkills APIなど、Foundation Modelsをより便利に扱えるツールが揃っています。 このセッションが気になったのは、業務と個人開発のどちらでも視覚的な情報を多く取り扱うアプリを開発しているからです。進化したFoundation Modelsフレームワークを組み込むことで、アプリ上の体験を大幅に拡張できそうです。たとえば説明文の作成、属性の抽出、altテキストによるアクセシビリティの補完などが挙げられます。こうした処理が通信なし・無料で、しかもプライバシーを保ったまま端末の中で完結するのは非常に魅力的です。 とはいえ、既存のサービスへ導入するハードルは低くありません。Foundation Modelsは利用にiOS 26以降が必要で、今回の画像入力はiOS 27以降でないと動きません。その上、Apple Intelligence対応デバイスという条件もつきます。またZOZOTOWNはiOSアプリだけでなく、AndroidアプリやWebサイトなどさまざまなプラットフォームでお客様にご利用いただいています。OSや端末が限られる機能をそのまま主役に据えると、体験に大きな差が生じてしまうので、導入の見極めが難しい技術であるのも事実です。 それでも、アプリに導入するとどのような新しい体験を提供できるかとワクワクしました。技術的な好奇心もくすぐられるセッションでした! WWDC26 報告会 at LINEヤフー, ZOZO WWDC後の6月18日にLINEヤフーと合同で報告会を実施しました。 lycorptech-jp.connpass.com イッセーは「現地で盛り上がったWWDC26 Keynote」というタイトルで登壇しました。 speakerdeck.com 報告会では、実際に現地参加して見えたことを紹介しました。Keynoteで周囲のデベロッパーがどのようなテーマで盛り上がったのか、意外と反応が落ち着いていたテーマはどれか、思いもよらないサプライズは何だったのかを共有しています。一番印象的だったのは、事前に「これが目玉だろう」と考えていたトピックと、会場が実際に沸いたトピックのズレです。この差は公式の発表資料やニュース記事を後から追っても分かりません。世界中のデベロッパーがどのトピックに興味関心があったのかは、その場にいた人にしかわからない情報でした。 らぷはパネルディスカッションに参加し、印象的だったセッションや現地参加に必要な準備などを共有しました。先ほどのスマートグラスの活用や気になったセッションの話も取り上げています。「WWDCに現地参加するなら何をすべきですか?」という質問への回答は、他の参加者やAppleのスタッフの方と積極的にコミュニケーションすることです。これはLINEヤフーのパネラーの方と同じ意見でした。自分にはない考え方に触れたり、同じ考えをもつ同志に出会えたりできる機会です。ぜひ最大限に活用してください。 パネルディスカッションの様子 さいごに 今年のWWDCで感じた現地の雰囲気とおすすめセッション、報告会の様子をお届けしました。この記事を読んで現地での思い出を振り返ったり、新しいAPIの調査を始めて共有したりしていただけると嬉しいです。 ZOZOでは、一緒にサービスを作り上げてくれる仲間を募集中です。ご興味のある方は、以下のリンクからぜひご応募ください。 corp.zozo.com
こんにちは。流通小売・消費財・飲食業界を担当するソリューションアーキテクトチームです。 6 月 25 日(木)、26 日(金)の 2 日間にわたり、千葉・幕張メッセにて AWS Summit Japan 2026 が開催されました。会場には Day 1 に 22,000 名以上、Day 2 に 20,000 名以上、Executive Forum も合わせると延べ 43,000 名以上の方にご来場いただきました。基調講演や数多くの事例セッションとともに、AWS Expo エリアでは AWS サービス・ソリューションの最新活用事例や、実際に AWS に触れられるデモを、さまざまな角度から体験いただきました。 AWS Expo エリア内の AWS Industries Zone では、製造、金融、自動車、そして私たちの担当する流通小売・消費財・飲食など、業界別に特化したソリューションをご紹介しました。私たち流通小売・消費財・飲食業界担当チームのブースには、両日ともに終日、途切れることなく多くのお客様に足を運んでいただきました。デモを体験いただいたお客様からの多くのフィードバックを通じて、私たち自身もまた新しいアイデアと気づきを得ることができました。ご来場いただいた皆さま、本当にありがとうございました。 流通小売・消費財・飲食業界向けブースの様子。両日とも終日、多くのお客様にお立ち寄りいただきました 本ブログでは、流通小売・消費財・飲食業界向けブースの展示内容と当日の様子をダイジェストでご紹介します。展示内容に使われている AWS サービスやアーキテクチャの詳細については個別の解説ブログも公開しており、本ブログの中からそれらのブログもご案内しています。( 事前のご案内ブログはこちら ) AWS 展示ブーステーマ 「AI エージェントが業務の主役になる日」 昨年の Summit では「The Future of Retail」をテーマに、カスタマージャーニーを軸とした店舗体験の “少し先の未来” をご紹介しました。今年、私たちが皆さまにお届けしたのは、その一歩先 — AI エージェントが、業務そのものの主役になっていく世界 です。 生成 AI を「試してみた」というお客様は、この一年で本当に増えました。一方で、実務での大規模な活用にまで踏み込めている企業は、まだ決して多くありません。そのあいだに横たわっているのは、多くの場合「いまの業務プロセスを全部つくり変えなければならないのではないか」という、心理的なブロッカーです。 今年のブースでご提案したのは、その逆の発想です。既存のプロセスはそのままに、まずは業務の “一部” に AI を組み込んでみる。そこから自律エージェント、そして複数のエージェントが連携するマルチエージェントへ少しずつ広げていくことで、やがて業務全体の最適化へたどり着く — この段階的な進化のステップを、実機デモで体感いただきました。 商品をつくり、届け、そして売る。流通小売・消費財・飲食業界のバリューチェーンのそれぞれの現場で、AI エージェントがどのように働き始めているのか。本ブースでは 「商品をつくる」「商品を届ける」「商品を売る・つながる」 の 3 つの切り口で、合計 6 つの展示テーマ(7 デモ)と 2 社のお客様事例展示をお届けしました。それでは、当日の様子を順にご紹介していきます。 商品をつくる — AI と共創する、これからの商品開発 バーチャル AI エキスパート — 専門家ペルソナたちが、あなたのアイデアを形にする CEO 視点、IT Director 視点、店舗マネージャー視点、顧客価値視点 — それぞれ異なる専門性と立場を持つ個性豊かな AI ペルソナたちが「バーチャル専門家チーム」を構成し、来場者が音声で伝えたビジネステーマについて、並列で Deep Research とディスカッションを重ねてベストなアイデアを提案するデモです。各ペルソナが独立に調査した結果を持ち寄り、モデレーターが議論を取りまとめ、レッドチームが厳しい指摘と改善案を入れる — その過程が縦型ホログラムディスプレイと 3D アバター、カード型 UI でリアルタイムに可視化され、エグゼクティブサマリーからアーキテクチャ案・コスト試算、さらには PoC 用サンプルアプリケーションまでが「数分の対話」で立ち上がります。 縦型ホログラムディスプレイに映る AI ペルソナたちの議論。可視化されるプロセスに多くの方が足を止めました 最も反響が大きかったのは「AI が議論する」という体験そのものでした。単なる Q&A ではなく、複数の視点が交わり「考えが深まっていくプロセス」が目の前で可視化される様子に、来場者からは「すごい壁打ちができるということですね」「社長に見せたら、やるって言いそう」といった声をいただきました。また、実在人物のペルソナ(上司や取引先など)を再現して壁打ち相手にしたい、という声も複数いただいています。マルチエージェントという概念が昨年より自然に受け入れられていることも印象的でした。 技術的には Amazon Bedrock AgentCore Runtime 上で Amazon Nova 2 Sonic による音声対話、 Strands Agents によるマルチエージェント、A2A / AG-UI プロトコルによるエージェント間通信と UI 可視化を組み合わせています。開発の裏側は以下のブログで詳しく解説しています。 詳細解説ブログ: 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 — 「AI ペルソナ達がビジネス課題解決を加速する」バーチャル AI エキスパート AI で加速する製品イノベーション — マルチエージェントで実現する製品開発 架空の鞄メーカー・アパレルメーカーを題材に、リサーチ・デザイン・製造の各工程を担う複数の AI エージェントが連携し、市場調査からターゲットの特定、デザイン生成、仮想ペルソナによる検証、そして製造コスト・収益予測まで — 通常であれば半年から 1 年を要する一連のプロセスを、わずか数分で駆け抜けるデモです。各フェーズで AI が多様な選択肢を提示し、戦略的な意思決定は人間が下す「Human-in-the-Loop」の考え方によって、スピードと品質を両立させる新しい商品開発の姿をご覧いただきました。 数分で製品デザイン案が生成される様子を体験いただきました 会場では、多くの来場者が数分のうちにオリジナルの製品デザインが生み出される様子をご覧になりました。製品開発やマーケティングに携わる方々からは「市場調査からデザイン、原価試算までを短時間で回せる」ことへの手応えの声が、経営層・事業責任者の方からは「専任チームがなくてもイノベーションを実行できる体制を作れる」という受け止めが、そして少人数のスタートアップの方からは「大手と同等の製品開発力を持てる、イノベーションの民主化だ」という反応もいただきました。自社の経営戦略資料や販売実績を Amazon Bedrock Knowledge Bases に連携することで「一般解」ではなく「わが社の解」が得られる、という点にも多くの関心が寄せられました。 詳細解説ブログ: 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 — AI で加速する製品イノベーション 〜マルチエージェントで実現する製品開発 商品を届ける — 止めない物流とサプライチェーンのために AI エージェントで危機対応 — 小売×消費財の混乱を AI と人が即座に解決 台風による広域配送停止、ドライバー不足、SNS でのバイラル化による需要急増、原材料の調達難。「想定外」が起きたそのとき、AI エージェントが外乱を検知し、影響を分析し、代替案を探索・提示し、人間が承認したうえで実行と通知までを一気通貫で行う — この次世代のサプライチェーン管理オペレーションをライブで実演しました。小売シナリオ(店舗の在庫不足に対する最適な振替ルートの提案)と消費財シナリオ(原材料供給停止時の代替サプライヤー探索)の 2 パターンをご覧いただき、Amazon Bedrock AgentCore と Strands Agents SDK の Interrupt 機能による Human-in-the-Loop の協調モデルがリアルな課題シナリオの中でどう機能するのかをお見せしました。 AI エージェントの思考プロセスと Human-in-the-Loop の承認フローをライブで実演 ブースを訪れたお客様のほぼ全員が、危機管理や BCP 訓練を「やりたいがリソースや手段がなくてできていない」とおっしゃっていたのが印象的でした。大雪や台風などで実際に困っている企業様からは「これまで担当者が各所に何本も電話をかけて対応していた。AI が初動を担ってくれるだけでもありがたい」という声をいただきました。エージェントの思考プロセスの可視化により「具体的なイメージが湧いた」「エージェントの処理を見て初めて理解できた」というフィードバックも多く、1 回あたり数百円程度というシミュレーションコストの低さにも「想像より安い」と好意的な反応をいただきました。既存システムを置き換えることなく、AI による分析の仕組みを「外付け」し、シミュレーション(レベル 1)から段階的に自動化レベルを上げていけるアプローチに、多くの共感が集まりました。 詳細解説ブログ: 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 — AI エージェントで危機対応:小売×消費財の混乱を AI と人が即座に解決 物流異常を Amazon Quick が自動解決 — 配送在庫の異常検知〜問合せまで一気通貫 基幹システム、受発注、在庫、配送 — 複数のシステムに分散しがちな物流のデータを Amazon Quick に統合し、業務の自動化と可視化を実現するデモです。Quick Automate が業務システムを横断的に監視して異常を自律的に検知し、Microsoft Teams へリアルタイムに通知。Quick Sight のダッシュボードで滞留の状況を一目で把握し、「ABC 運輸の大阪→福岡の遅延率を週別で出して」とチャットで聞けばその場でグラフが生成されます。物流専門家の Chat Agent が構造化データと SharePoint 上の報告書・SLA 合意書などの非構造化データをセキュアに横断して根本原因を深掘りし、最後は業者へのメール問い合わせまで自動生成・送信 — 「発見」から「対応」までが途切れなくつながる体験をご覧いただきました。 Quick Sight のダッシュボードで配送の滞留状況をご覧いただきました 従来なら報告書を探し、データを手動で突き合わせ、ベテランに聞いて半日かかっていた原因究明作業が、チャットで聞くだけで数分で完了する。データの散在・発見の遅れ・属人化という物流現場の普遍的な課題に対し、可視化・AI 分析・自動化・外部連携をひとつのサービス上で統合的に提供する Amazon Quick の姿に、多くのお客様から関心をお寄せいただきました。 詳細解説ブログ: 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 — 物流異常を Amazon Quick が自動解決:配送在庫の異常検知〜問合せまで一気通貫 商品を売る・つながる — コマースと店舗の、新しいかたち Future of Agentic Commerce — AWS で実現する新しい E-Commerce の形 いま US で吹き荒れている Agentic Commerce の旋風。AI プラットフォーマー側の Incoming Agent から EC サイトに流入し、自社 EC サイト上の Onsite Agent による接客を経て購入に至るまで、そして裏側で動く EC バックエンド・バックオフィスの仕組みまでを、一つの Demo システムとして統合してご覧いただきました。UCP、AP2、ECP、MCP Apps といった 2026 年に入って急速に整備が進むコマースプロトコル群への対応、エージェントへの決済権限の委任、さらには友達同士の AI エージェントが購入前に相談し合うコンセプトデモまで、6 つのストーリーで「来たる Agentic Commerce 時代」の実装イメージを具体的にお見せしました。 Incoming Agent から自社 EC への流入・購入までを一つの Demo システムで体験 印象的だったのは、「AI エージェントに決済まで任せたい」という声はそれほど多くなく、むしろ「AI プラットフォーマーに自社の商品を推薦してもらい、自社の EC サイトへ流入させたい」 — まず「見つけてもらうこと」への関心の高さでした。また「Agentic Commerce という名前しか知らず、何のことかよくわからなかったが、このブースを見て完全に理解できた。自分たちが何を検討すればいいかが分かった」と言って帰られたお客様もいらっしゃいました。実際に触れられる実装例がまだ少ない日本市場において、ブースが一つの「アンサー」を示せたことは大きな成果だったと感じています。 詳細解説ブログ: 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 〜 Future of Agentic Commerce ブース Eyes On, Voice On — スマートグラスと音声 AI が融合する、フード・現場業務の未来形 実店舗やキッチンなど「手が使えない現場」の業務を、音声 AI エージェントとウェアラブルデバイスで支援する 2 つのライブデモをお届けしました。 スマートグラスでの音声問い合わせ、音声でキッチン工程を進める体験デモ 一つ目は スマートグラスによる店舗業務支援 です。店員がスマートグラスを装着し、「コーヒーはどこですか」「今日のセール品を教えて」と声で聞くだけで、 Amazon Nova 2 Sonic (Speech-to-Speech 統合モデル)と Amazon Bedrock AgentCore Gateway 経由の MCP Tools が連携して棚位置・在庫・セール情報を即座に音声とグラス表示で案内します。自店舗に在庫がなければ他店舗や EC サイトの在庫まで一声で案内し、タスク管理や英語対応、飲食店での予約確認・リマインド通知まで、スーパー・アパレル・飲食の 8 つのシナリオを体験いただきました。GPS やビーコンは不要、商品マスターと棚位置マッピングデータだけで実現できる導入ハードルの低さも、来場者への大きな訴求ポイントとなりました。併設した Agent Monitor で AI の思考プロセス(AG-UI)がリアルタイムに流れる様子は、このデモ最大の「おおっ」ポイントとして多くの注目を集めました。 詳細解説ブログ: スマートグラス × 音声 AI エージェントで実現する店舗業務のハンズフリー支援 二つ目は キッチン音声レシピナビ です。衛生手袋を着用したまま両手が塞がるセントラルキッチンの調理現場で、「次へ」「戻る」の音声だけでレシピ工程を進め、工程完了時には使用食材の在庫を自動減算。「玉ねぎがない」と伝えれば AI が代替食材を提案し、原材料チェックでは「玉ねぎ/タマネギ/オニオン」といった表記ゆれも吸収します。騒音の多い調理環境でも高精度な日本語音声認識を実現するアドバンスト・メディア社の AmiVoice と、 Amazon Bedrock AgentCore Runtime + Strands Agents による AI エージェントの組み合わせで、レシピ確認・在庫記録・HACCP 対応記録といった現場のデータ入力障壁を解消するアーキテクチャをご紹介しました。 「手が塞がっている環境でのデータ入力障壁」は食品製造に限らず、物流のピッキング、医療の手術室、製造の組立ラインなど多くの業界に共通する課題であり、幅広い業種のお客様から自社現場への適用イメージについてご相談をいただきました。 詳細解説ブログ: 音声 AI エージェントで実現するセントラルキッチンのハンズフリーオペレーション お客様事例展示 — すでに現場で動いている、生成 AI コンセプトのご紹介だけではありません。展示エリアには、生成 AI を実際の現場で活用されているお客様 2 社の事例展示も併設しました。会期中はお客様ご自身による解説とその場での Q&A も行われ、実装の裏側や運用してみて初めて見えてきた気づきなど、現場の生の声を直接お聞きいただける貴重な機会となり、両日とも大変盛況となりました。 ユナイテッドアローズ様・カインズ様の事例展示。お客様ご自身による解説に質問が絶えませんでした 株式会社ユナイテッドアローズ 「Amazon Bedrock で実現 対話で深まる日報 AI」 日報につきものの「書く負担」と「うまく伝わらない」という相反する 2 つの悩みに対し、 Amazon Bedrock を活用した対話型 AI が店舗スタッフの思考整理を支援し、日報を自動で要約する PoC をご紹介いただきました。AI が深掘りの質問を投げかけることで報告内容の粒度と一貫性が高まり、本部の状況把握や店舗の行動改善にもつながる — 現場と本部、その双方の業務品質を高める生成 AI の活用事例に、多くの来場者が熱心に耳を傾け、質問が絶えない展示となりました。 本事例の元となっている AWS のサンプルアセット「SMART(Store Manager Agent for Retail Tech)」は GitHub で公開されており、どなたでもお試しいただけます。仕組みの詳細とユナイテッドアローズ様での取り組みは、以下のブログでご紹介しています。 詳細解説ブログ: 店舗の気づきを本部に届ける AI エージェント SMART のご紹介 — Amazon Bedrock AgentCore × Strands Agents によるユナイテッドアローズでの取り組み 株式会社カインズ 「AI で進化する顧客体験 Amazon Bedrock 活用事例」 ホームセンター大手のカインズ様には、 Amazon Bedrock の画像生成 AI を活用した店頭サイネージ「CAINZ Fitting Room」による、インテリアの疑似 “試着” 体験の取り組みをご紹介いただきました。サイネージ上に表示された部屋の写真の中の家具・ラグ・カーテンなどをカインズ製品の画像に AI で置き換えることで、購入前に「自分の部屋に置いたらどう見えるか」をイメージしやすくし、店頭での訴求力向上と売上・客単価の引き上げを狙う取り組みです。2026 年 4 月ごろから埼玉県の吉川美南店など 3 店舗で試験運用を開始されています。 「お客様が実際に欲しいのは、自分の部屋にあるところを見ること」というご担当者の言葉のとおり、将来的には顧客自身の部屋写真を使った体験への進化も構想されており、画像生成 AI を “購買体験そのもの” に組み込む小売業ならではの活用事例に、多くのお客様にお立ち寄りいただきました。 おわりに — ご来場ありがとうございました 「まだ早い」から「もう始めている」へ。幕張メッセの AWS Industries Zone での 2 日間を通じて強く感じたのは、流通小売・消費財・飲食業界の現場で、AI エージェントが業務の主役になっていく日が、すぐそこまで来ているということです。 昨年と比べ、マルチエージェントという概念が特別な説明なしに受け入れられるようになったこと。「AI エージェントで何ができるのか」という問いが、「自社のどの業務から始めるか」という問いへと変わりつつあること。そして、エージェントの思考プロセスの可視化や Human-in-the-Loop といった仕組みが、AI 活用への心理的なハードルを確かに下げていること。これらは、ブースで数多くのお客様と対話させていただいたからこそ得られた実感です。 今年のデモでお伝えしたかったのは、新しい技術を次々と取り込まなければならない、ということではありません。AWS のサービスを組み合わせれば、皆さまの中にすでに蓄積されてきた知識と経験を起点に、業務の “一部” から無理なく始めていける — そんなアイデアばかりをご用意しました。ご参加いただけなかった皆さまも、「試してみたい!」と思われた方は、ぜひ AWS の担当者までお気軽にご相談ください。 今後も、流通小売・消費財・飲食業界の皆さまに向けたイベントの企画と情報発信を継続していきます。それではまた、来年の Summit でお会いしましょう! 関連ブログ(各デモの詳細解説) 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 — 「AI ペルソナ達がビジネス課題解決を加速する」バーチャル AI エキスパート 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 — AI で加速する製品イノベーション 〜マルチエージェントで実現する製品開発 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 — AI エージェントで危機対応:小売×消費財の混乱を AI と人が即座に解決 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 — 物流異常を Amazon Quick が自動解決:配送在庫の異常検知〜問合せまで一気通貫 【開催報告】AWS Summit Japan 2026 〜 Future of Agentic Commerce ブース スマートグラス × 音声 AI エージェントで実現する店舗業務のハンズフリー支援 音声 AI エージェントで実現するセントラルキッチンのハンズフリーオペレーション 参考情報 AWS ブログ “流通小売” カテゴリー AWS ブログ “消費財” カテゴリー AWS 消費財・流通・小売業向けソリューション 紹介ページ 事前のご案内ブログ:AWS Summit Japan 2026 〜 流通小売・消費財・飲食業界向けブースのご案内 昨年の開催報告:【開催報告】AWS Summit Japan 2025 〜 流通小売消費財業界ブース 本ブログは AWS Japan のソリューションアーキテクト 山下 智之 が執筆しました。
2026年7月15日、ラクスは自社イベント「RAKUS AI Conference 2026 Summer」を開催しました。オープニングは、CTO 兼 開発本部長の「公手 真之」と、執行役員 兼 開発本部 副本部長の「矢成 行雄」による2つのセッションです。 一方は「AIネイティブな開発組織をどう作るか」という組織の話。もう一方は「複数のプロダクトにAIをどう実装するか」というプロダクトの話。扱う対象は違いますが、2人が最後に置いた結論は同じでした。AIを載せること自体はゴールではない、というものです。 「SaaS is dead?」にどう答えるか 組織の話:ツールを導入すれば、AI駆動開発は進むのか 「導入すれば自然に進む」という前提 現場の好感触と、伸びない実数 サーベイで「現在地」を可視化する 浸透を止めていた要因と、「強制力」への転換 セッションの結論 プロダクトの話:ユーザーは「正答率」を求めているのか 複数プロダクトで顧客業務を支える 3つのプロダクトの実装例 「正答率」:ユーザーが本当に求めていたもの 「縦の壁」と「横の壁」、そして専門組織 現在地 2つのセッションが指していた同じ方向 おわりに 「SaaS is dead?」にどう答えるか 2人とも、話の入り口はクラウドサービス業界の現状に置いていました。 競合がひしめくレッドオーシャンで、新規の「白地」と他社からの乗り換えを奪い合う。そんな状況を背景に、近年は「SaaS is dead?(クラウドサービスはもう役割を終えるのではないか)」という論調も出てきています。 これに対する2人の答えは、「dead?」ではなく「 SaaS is evolving 」でした。クラウドサービスは終わらず、むしろ進化する。AIはクラウドを置き換えるものではなく、これまで届けてきた価値をもう一段引き上げるものだ、という立場です。 矢成はここに補足を加えました。ラクスはすでに、System of Record に蓄積した信頼できるデータと、それを動かす業務ワークフローを持っている。その土台の上にAIが乗るからこそ価値が出る。「データ・ワークフロー・AI」がそろってはじめて意味を持つ、という整理です。そして「価値そのものだけでなく、それを届けるスピードが競争力になる」という現状認識は、2人に共通していました。 同じ現状認識から出発しながら、公手は「組織をどう変えるか」を、矢成は「プロダクトに何をどう実装するか」を語りました。 組織の話:ツールを導入すれば、AI駆動開発は進むのか 公手のセッションは「複数プロダクト組織のAIネイティブ化における戦略」。冒頭で「ここから先は、少し泥くさい話になります」と断ったとおり、成功事例の紹介ではなく、うまくいかなかった過程の共有でした。 「導入すれば自然に進む」という前提 ラクスは生成AIを早い段階から取り入れてきました。2022年秋には GitHub Copilot を使い始めるメンバーが現れ、2023年4月に全面導入。その後も Cursor、Devin、Claude Code を、現場の判断で比較的自由に導入しています。ツールが先行したぶん、ガイドラインやセキュリティ対策も早めに整えられました。 開発組織は国内が約350人、海外が約100人。各チームは技術スタックも開発拠点も異なり、それぞれが顧客志向のもとで最適なやり方を選び、成果を出してきました。その実績があったからこそ、「優秀な現場にAIツールを渡せば、良い使い方を見つけてAI駆動開発は自然に進むだろう」という前提が置かれていた、と公手は振り返ります。 結果は、その前提どおりにはなりませんでした。 現場の好感触と、伸びない実数 導入後、現場からはインパクトのある報告が上がってきました。あるプロジェクトではコードの95%を生成AIが実装。SPEC駆動開発(SDD)で開発工数を50%削減、E2Eテスト自動化でテスト工数を30%削減、調査コストを25%削減、海外チームとのリードタイムも30%削減。体感面でも「実装が楽になった」「PoCや新機能開発は確実に速くなった」「学習が速くなった」といった声が目立ちました。 一方で、同じ現場から別の声も上がっています。「AIならではの手戻りが発生する」「レビューが重く、品質確認の負荷はむしろ増えた」。ビジネス側からは「開発が明らかに速くなった」という実感が返ってこず、エンジニアに聞いてもリリースが速くなった手応えは曖昧でした。 そこで公手たちは、体感ではなく実数を確認します。全面導入の前後で、リリース回数と新機能の数がどう変化したかを計測したところ、期待したほどには伸びていませんでした(なお公手は、この数値について「機能の規模は無視した参考値」と限界を明示していました)。 ここから導かれた学びは明快です。実装フェーズは確かに楽になった。しかし、その前後の工程やプロセス全体が変わらなければ、価値提供のスピードは上がらない。従来のプロセスにAIツールを足すだけでは、成果には届かないということです。 サーベイで「現在地」を可視化する 次の打ち手は、現状の可視化でした。ラクスには開発者体験の向上をミッションに掲げる技術チームがあり、そのチームが「AI駆動開発がどこまで浸透しているか」を測るサーベイを作成します。開発チームごと・開発工程ごとに、世の中の最新のAI活用事例をベンチマークとして自己評価し、成熟度をスコアリングする仕組みです。 結果として、チーム間のばらつきの大きさが見えてきました。実装フェーズのAI活用は進む一方で、テストやレビューはほぼ手つかず。そして、開発速度が改善しているチームほど、実装以外の工程でもAIを使い、SPEC駆動開発を取り入れている、という相関が確認できました。 浸透を止めていた要因と、「強制力」への転換 ヒアリングからは、浸透を止めている共通の要因が見えてきます。 コスト意識が高いため、効果が見えるまで新しいツールの導入判断に時間がかかる AI活用の「目指す姿」が見えにくく、学習コストを踏まえると日々の開発が優先される チームをリードする推進役が不足し、良い使い方がチーム全体に広がらない これを受けて、公手たちは方針を大きく変えます。これまでのラクスは「各チームの自律的な最適化」で成果を出してきましたが、それに任せるだけでは組織全体としては思うように浸透しない。そこで今期は、組織として明確な方向性を示し、強制力を持って進める方針に踏み込みました。上記の各要因には、それぞれ次の打ち手が当てられています。 各チームごとの効果検証を待たない: 生産性向上がはっきりしていた Claude Code を全面導入し、それを前提とした SPEC駆動開発を、ベトナムやインドネシアの開発拠点も含めて全面展開する 「AI駆動開発 実践カタログ」を整備する: AIネイティブ開発で実践すべき約20項目を職種ごとに定義し、「どこまでやれば実践できていると言えるか」まで明文化する。ガイドラインにとどめず「組織として目指す姿」の共通言語とし、開発マネージャーの目標にも組み込む 推進役を置き、外から支援する: 勉強会や情報共有会、社内イベント、社内報・社内ラジオでの紹介、表彰制度、他チームの有識者による Enabling を用意し、成功事例とノウハウが横に流れる環境を整える 「各チームの自律に任せる」文化を大切にしてきた組織が、あえて「強制力」に舵を切る。公手は、その難しさも含めて率直に語っていました。 セッションの結論 締めくくりで、公手はこう述べました。AIネイティブ開発組織への変革のゴールは、AI駆動開発を浸透させること自体ではない。顧客価値と事業価値を、これまで以上のスピードと品質で生み出すことだ、と。AIの登場から約4年、ラクスの本格的なAIネイティブな開発づくりは動き出したばかりで、「正解はまだ見えにくいが、試行錯誤しながら一歩ずつ進んでいく」と結びました。 プロダクトの話:ユーザーは「正答率」を求めているのか 続く矢成のセッションは「複数プロダクトで進めるAI機能実装 実践から得たリアルな学びとロードマップ実現への挑戦」。組織の話をプロダクトの現場に引き継ぐ内容で、こちらも「うまくいった話」より「ぶつかった話」が中心でした。 矢成はセッションを貫く問いを立てます。AIがコモディティ化する時代に勝負を分けるものは何か。ユーザーは本当に「正答率」を求めているのか。複数プロダクトの同時並行開発の成否は、何によって分かれたのか。 複数プロダクトで顧客業務を支える ラクスの特徴は、単一プロダクトではなく、顧客業務を支える複数のプロダクトを持っていることです。受注・見積・契約といった販売管理、経費精算や仕訳、問い合わせ応対やFAQといったカスタマーサポート。これらが組み合わさることで、販売から経費、サポートまで、顧客の業務がひとつながりで支えられます。矢成はこれを、点ではなく「面で支える」と表現しました。 そこでラクスが選んだのは、複数のプロダクトへ同時並行でAIを実装する道です。一つに絞って局所最適する方法は取りませんでした。矢成が繰り返し強調したのは、「顧客提供価値の向上につながらないAI実装に意味はない」という前提です。流行っているから載せる、載せること自体が目的になる。それを避けることが出発点でした。 3つのプロダクトの実装例 具体例として、3つのプロダクトが紹介されました。 経費精算(楽楽精算)/伝票作成AIエージェント 伝票入力の手間に対して、AI-OCRとエージェントを組み合わせる。領収書をアップロードすると、過去の申請事例などから経費精算データを予測し、入力まで済ませる。手作業が「確認するだけ」に変わる 販売管理(楽楽販売)/DB構成提案 初期設定や業務フロー構築が企業ごとに複雑で、導入のハードルになっていた。そこへ対話型ナビゲーションのAIアシストを導入する。AIと対話しながら進めるだけで自社に合った設定が提案され、専門知識がなくても使い始められる カスタマーサポート(楽楽自動応対)/メール作成エージェント 担当者ごとの応対品質のばらつきに対して、応対履歴や社内ナレッジベースから回答文案を自動生成し、品質を底上げする。さらに応対履歴からFAQ記事を提案・公開し、問い合わせの発生そのものを減らす 技術の実装方法は異なりますが、狙いは共通しています。「ユーザーの手作業」と「専門性の壁」をAIが肩代わりし、顧客が本質的な業務に集中できる状態をつくる。AIの実装は、そのための手段という位置づけです。 「正答率」:ユーザーが本当に求めていたもの 当初、開発チームがもっとも力を入れていたのは正答率の向上でした。エンジニアとしては自然な発想です。しかし、ユーザーの関心はそこにありませんでした。 ユーザーが重視していたのは、正答率そのものよりも「最終的な正解へ、早く楽にたどり着けるか」でした。なぜその答えになったのかの分かりやすさ、方向を示して軌道修正できること、間違ったときにリカバリーしやすいこと。正答率は入り口の一指標にすぎなかったわけです。 打ち手は、人が最後に主導権を持つ Human-in-the-loop の徹底でした。面倒な作業は自動化し、確認と修正は人に残す。「AIが提案し、人が確認する」という役割分担で、精度と安心感を両立させます。矢成はこの優先順位を、次のように言い切りました。 「90%正解でも、確認・修正しづらいAI < 80%正解でも、確認・修正しやすいAI」 数字の高さよりも、使う人の体験を優先する。開発に熱が入るほど見落としやすい観点です。 「縦の壁」と「横の壁」、そして専門組織 複数プロダクトを同時に走らせたことで、組織面の課題も見えてきました。矢成はこれを「縦の壁」と「横の壁」と呼びます。 縦の壁(チーム内): AI機能の開発には、LLMやAIの専門スキルと、業務ドメインの深い理解の両方が必要になる。しかし、すべてのプロダクトチームに両方を求めるのは現実的でない。 横の壁(チーム間): 複数プロダクトが同時に走ったため、APIのレート制御、LLMの精度評価、トークン消費コストの可視化、負荷試験の設計など、一度作れば共有できるものを各チームが個別に作ってしまう。「車輪の再発明」が各所で発生した。 打ち手は、AI開発の専門組織を新設し、そこに2つの役割を持たせることでした。一つは、難易度の高いコア開発をまとめて引き受ける役割。これにより縦の壁が下がり、各プロダクトチームは自分たちが最も詳しいドメインの実装に集中できます。もう一つは、ガイドライン策定や定例でのナレッジ共有など、知識の標準化を横に広げる役割。これにより横の壁が下がります。この設計は、専門性の高い開発を集約するチームと横展開を支援するチームを分ける「チームトポロジー」の考え方を下敷きにしたもので、この組織はAIロードマップを継続的に実現する役割も担い始めています。 現在地 現時点では、複数のプロダクトにAIが載り、個々の業務効率化で成果が出はじめた段階です。業務ルールや運用にAIが寄り添う「協働型AI」の一部が実現しています。この先は、プロダクト個別の最適化から、データとワークフローをプロダクト横断でつなぐ段階へ。さらに、より大きな顧客価値を生む相乗効果へと進め、プロダクトをより「AI Native」「Agentic」に近づけていく、そう結ばれました。 2つのセッションが指していた同じ方向 組織の話とプロダクトの話は、結論が重なりました。 公手:変革のゴールはAI駆動開発の浸透ではなく、顧客価値と事業価値をこれまで以上のスピードと品質で生み出すこと 矢成:AIを載せること自体が目的ではなく、顧客が本質的な業務に集中できる体験をつくり続けること どちらも主語は顧客です。AIは、価値提供のスピードと品質を上げるための手段として位置づけられている。 ラクスが創業から重視してきた「顧客志向」が、AIという新しい道具を得ても一貫している。 これが2つのセッションに共通するメッセージでした。矢成が立てた「勝負を分けるものは何か」という問いの答えも、モデルの性能や正答率ではなく、AIを顧客の体験にどこまで着地させられるか、という一点にあると読み取れます。 この2つは、「複数プロダクトを持つ組織である」という前提でもつながっています。各領域で最良の製品をそろえる「ベストオブブリード」は、ラクスが長年強みにしてきたものです。矢成の話はこの強みをAI時代に生かす戦略であり、公手の話はその複数プロダクトを横断してAIネイティブ化を進める土台づくりにあたります。開発本部が掲げる「顧客に価値を高速提供できるAIネイティブな開発組織へ変革し、次世代の統合型ベストオブブリードを実現する」というビジョンを、組織とプロダクトの両面から具体化しようとしている、と位置づけられます。 両者が共通して触れていたのが、これから強化したい人材像でした。公手が挙げたのは2種類のエンジニアです。AIが高品質な成果を出し続けられる開発基盤(ハーネス)を設計できるエンジニアと、「何を作るか」を研ぎ澄ます顧客価値の設計エンジニア。実装のボトルネックが解消された先で問われるのは「何を作るか」であり、この視点は矢成の言う「業務ドメインの深い理解」とも重なります。 おわりに 今回の2セッションは、「AIでこれだけ成果が出た」という事例集ではありませんでした。「ツールを導入しても進まなかった」「正答率を上げても使われなかった」と、うまくいかなかった過程を共有する内容です。AIをどう組織に根づかせ、どうプロダクトの価値に変えるか。同じ課題に直面している開発組織は少なくないはずで、ラクスもまた、正解の見えにくい中を試行錯誤しながら進んでいる最中です。 そして、ここで語られた変革は、まだ道半ばです。強制力を持って浸透を進める組織づくりも、顧客体験に着地させるプロダクトづくりも、これから担い手を必要としています。ラクスの開発本部では、先に触れた2つの人材像を、まさに募集しています。この試行錯誤を一緒に進めてくれる方は、ぜひ一度 採用ページ をのぞいてみてください。 また、当日の発表資料はSpeakerDeckで公開しています。ぜひあわせてご覧ください。 - 発表資料 speakerdeck.com speakerdeck.com なお、8月下旬ごろに発表のアーカイブ動画をラクスエンジニア情報ポータルサイトにて公開予定です。 - ラクスエンジニア情報ポータルサイト https://career-recruit.rakus.co.jp/career_engineer/

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