TECH PLAY

iOS

イベント

該当するコンテンツが見つかりませんでした

マガジン

技術ブログ

はじめに 株式会社エブリーでデリッシュキッチンのiOSアプリの開発をしている成田です。 iOS 26から、Appleの新しいデザイン言語である「Liquid Glass」が導入されました。 2026年4月の現時点では設定のフラグによって適用を回避できますが、次のXcodeのメジャーアップデートではこのフラグの廃止が見込まれています。 また、2027年春頃には新しいメジャーバージョンのXcodeでのビルドが必須になると考えられ、対応は避けられない状況です。 こうした背景から、すでにLiquid Glassへの対応を進めているiOSアプリ開発者の方も多いのではないでしょうか。 デリッシュキッチンでも現在ユーザーへのリリースを目指して対応を進めています。 本記事では、以下のような流れでデリッシュキッチンにおけるLiquid Glass対応への取り組みについて紹介したいと思います。Liquid Glassの概要については他の記事でも多く紹介されているので本記事ではできるだけ割愛します。 Liquid Glass対応の進め方 大まかな対応箇所 デリッシュキッチンにおける課題 AppleのLiquid Glassワークショップへの参加 Liquid Glass対応の進め方 キックオフと開発の流れ 今年の1月にPdMとデザイナー、エンジニアが集まりキックオフを行ってプロジェクトがスタートしました。 まず最初に、アプリのプロジェクト設定のオプトアウトフラグ UIDesignRequiresCompatibility を外した状態のアプリを社内に配布し、Liquid Glassがそのまま適用された状態で各画面をデザイナーに確認してもらいました。Appleの標準アプリや他のメジャーなアプリのUIも参考にしながら、対応が必要な箇所の洗い出しと優先度付け、そして大まかな工数見積もりを行いました。 また、対応方針については単にデザイン観点だけで決めるのではなく、技術的な実現可否や実装コストも踏まえながら、エンジニアとデザイナーで議論を重ねて整理していきました。デザインと実装の両面から検討することで、現実的かつ一貫性のある方針を定められていると感じます。 さらに、初期段階では一定期間を設けて集中的に実装を進めることで、実際の対応にどの程度の工数がかかるのかを把握することもでき、おおよそのベロシティ感を掴むことができました。 なお、参考事例としてAppleが紹介している デザイン事例集 も、実際にどのようにLiquid Glassがプロダクトに取り入れられているかを把握するうえで非常に参考になりました。 専任を置かず全員で対応する このプロジェクトでは、iOSチーム内に専任を置かず、各プロジェクトごとに分担して対応を進めています。 専任を設けると知見が特定のメンバーに偏り、今後の機能開発においてプロジェクトごとに実装のばらつきが生じる可能性があるためです。Liquid Glassのようなデザイン言語の変化は一部の対応にとどまらず、プロダクト全体に継続的に影響していくものだと考えています。 また、UIはデザイナーだけで完結するものではなく、エンジニアと連携しながら作り上げていくものです。こうした背景もあり、プロダクトに関わるiOSエンジニア全員で取り組む形で進めています。 独自フラグでコードを先行リリース 現在対応を進めているコードは、まだユーザー向けには公開せず、以下のような独自のフィーチャーフラグを設けることで、コード自体は順次リリースしつつ、ユーザーにはLiquid Glassが適用されない状態を保ったままにしています。 public enum LiquidGlassAvailability { /// Liquid Glass デザインが有効かどうかを返す。 /// iOS 26 以降かつ UIDesignRequiresCompatibility が設定されていない(または false)場合に true。 public static let isEnabled : Bool = { guard #available(iOS 26.0 , * ) else { return false } // UIDesignRequiresCompatibility が true の場合は互換モードなので Liquid Glass 無効 if let requiresCompatibility = Bundle.main.object(forInfoDictionaryKey : "UIDesignRequiresCompatibility" ) as? Bool , requiresCompatibility { return false } return true }() } このような進め方にしているのは、変更をため込むことでGitHub上のPRが滞留し、コンフリクトが発生しやすくなるのを防ぐためです。対応が完了した箇所から順次マージしていくことで、開発の流れをスムーズに保っています。 ユーザー向けの初回リリース時にはプロジェクト設定のオプトアウトフラグを取り除き、Liquid Glassが適用された状態で提供する予定です。また、リリース後も優先度に応じて段階的に適用範囲を広げていく方針です。 初回リリースに向けた大まかな対応箇所 ユーザーへの初回のリリースに向けて、優先度が高いのは以下の内容です。 ナビゲーションバー・タブバー周りの対応 最も優先度が高く、Liquid Glassの効果が大きい箇所がナビゲーションバーとタブバー周りです。Liquid Glassではこれらのバーが透過されることでコンテンツへの没入感が高まりますが、デリッシュキッチンでは元々これらのバーに対して背景色やボタンのスタイルなどを独自にカスタマイズしていました。Liquid Glassに対応するにあたり、これらの独自設定を取り除いていく作業が必要になりました。 レイアウトの修正 独自設定を削除していくと、画面によってコンテンツのレイアウトが崩れるケースが発生しました。Liquid Glassではナビゲーションバーやタブバーの背面にまでコンテンツが広がるレイアウトが前提となりますが、一部の画面ではそのような構造になっていなかったためです。各画面ごとにレイアウトを見直し、コンテンツがバーの裏側まで自然に潜り込むよう修正する作業も対応範囲に含まれています。 その他の表示崩れの修正 ここでは書ききれないので紹介を省きますが、上記の対応に加え、Liquid Glassの適用によって生じる細かな表示崩れについても最低限の修正を行ったうえでユーザーに向けた初回のリリースを行う予定です。 デリッシュキッチンにおける課題 ここでは、Liquid Glass対応を進める上でのデリッシュキッチンにおける課題をいくつかピックアップして紹介します。 ナビゲーションバー直下のカスタムViewの扱い デリッシュキッチンには、ナビゲーションバーの直下にタブやカスタムViewが配置されている画面がいくつかあります。単純にナビゲーションバーを透過にするだけでは、その下に続くカスタムViewとの境界が不自然になってしまい、コンテンツの表示領域も狭まってしまいます。これはLiquid Glassが目指すコンテンツへの没入感という思想に反してしまいます。 これらのカスタムViewをコンテンツ領域の中にどう自然に溶け込ませるか、デザインと実装の両面から検討する必要があり、現在取り組んでいる課題の一つです。 幅広い環境での検証体制 デリッシュキッチンはユーザー数も多く、現在は最新から3つのメジャーバージョンのiOSをサポートしています。Liquid GlassはiOS 26以降でのみ適用されますが、それ以前のOSでもレイアウト崩れが発生しないよう、すべてのサポートバージョンで表示を確認する必要があります。そのため、単一の環境での検証にとどまらず、複数バージョンをまたいだ確認が求められる点が大きな負担となっています。 また、弊社には専任のQAチームがないため、動作検証はPdM・デザイナー・エンジニアが協力して行っています。Liquid Glass対応のように影響範囲が広い変更では、確認すべき画面やパターンも多岐にわたるため、検証の抜け漏れを防ぎつつ、いかに効率的に進めていくかが課題となっています。 並行開発による手戻りリスク また、もう一つの課題として、通常の機能開発との並行進行があります。 現在のプロダクトでは複数のプロジェクトが並行して開発を進めており、Liquid Glass対応と並行して進行しています。そのため、新規機能の開発時にLiquid Glassの考慮が十分に行われないケースも発生しがちです。 その結果、後からデザインの調整や実装の修正が必要になり、手戻りが発生してしまう可能性があります。こうした手戻りをいかに防ぎ、現状の開発の中にLiquid Glass対応を組み込んでいくかも重要な課題となっています。 AppleのLiquid Glassワークショップへの参加 Liquid Glass対応の一環として、Appleが時折に開催しているワークショップに会社で参加する機会をいただき、3月にエンジニアとデザイナー数名で参加してきました。 ワークショップは、まずLiquid Glassの概要や設計思想、もたらす効果について一通り説明いただくところから始まり、その後はAppleのデザインのエバンジェリストの方と直接やり取りできる時間が設けられており、デリッシュキッチンにおける対応方針について質問やディスカッションを行いました。 自社アプリの課題を持ち込み、その場でフィードバックをもらえる形式だったため、抽象的なガイドラインだけではイメージしづらかった部分についても、具体的な方向性を確認することができました。 せっかくなので、ワークショップに参加して特に印象に残っている学びをいくつか紹介します。 ナビゲーションバーやタブバーで特色を出さない ナビゲーションバーやタブバーといった操作周りのUIで個性を出すのではなく、コンテンツでプロダクトの特色を表現することが重要であるという考え方が印象に残りました。 透過させることが目的ではない Liquid Glassは単に透過やブラーを適用すること自体が目的ではなく、コンテンツへのフォーカスを高めるための手段であるという話がありました。見た目だけをなぞるのではなく、どういう意図で使うかが重要だと感じました。 システムとの一貫性を保つ OS全体の表現と調和することが重要で、過度に独自のスタイルを持ち込むと違和感につながるという点も印象的でした。標準の振る舞いを尊重することが結果的に良い体験につながると感じました。 おわりに 本記事では、デリッシュキッチンにおけるLiquid Glass対応の取り組み状況についてご紹介しました。 同じようにLiquid Glassへの対応を進めている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。 デリッシュキッチンのLiquid Glass対応のリリースもぜひ楽しみにしていてください!
こんにちは、LINEヤフー株式会社の福野です。社内のさまざまなアプリの開発を横断的に支援する仕事をしています。本記事では当社のAndroid・iOSアプリを衛星通信に対応させるための取り組みについてご...
アプリ開発の現場において、リリース後にユーザーから予期せぬ不具合報告が相次ぎ、対応に追われる経験はないでしょうか。 原因を振り返ると、テスト設計の不十分さや、ユーザー視点での検証不足に気づかされることも少なくありません。 アプリテストの本来の役割は、単にバグを見つけることだけではなく、プロダクトが提供すべき価値を保証し、ユーザー体験を最大化することにあります。 しかしWebとモバイルでの検証観点の違いや、膨大なテスト項目の優先順位付け、さらには自動化の判断基準など、実務レベルで品質を安定させるには多くの壁が存在します。 今回はアプリ開発のリーダー候補として品質改善に取り組むエンジニアに向けて、テストの種類や具体的な進め方、そして効率化のベストプラクティスを詳しく解説します。 属人化を排除し、チーム全体で高品質なアプリを継続的にリリースできる体制を構築するためのステップを一緒に見ていきましょう。 import haihaiInquiryFormClient from "https://form-gw.hm-f.jp/js/haihai.inquiry_form.client.js";haihaiInquiryFormClient.create({baseURL: "https://form-gw.hm-f.jp",formUUID: "927d2c4e-f06c-45b1-bd36-0240e55ccf72",}) ▼アプリ開発の基本について知りたい方はこちら▼ アプリ開発とは?種類・流れ・必要スキル・費用感まで初心者向けにわかりやすく解説 アプリテストとは?なぜ必要なのか アプリテストの目的は「不具合発見」だけではない アプリテストの主要な目的として、まず挙げられるのが品質保証です。 これは、単にプログラム上のバグを見つけることにとどまらず、プロダクトが仕様を満たし、本来提供すべき価値を正しく届けられているかを確認する一連のプロセスを指します。 開発の初期段階からテストを組み込むことで、リリース直前や運用開始後に重大な欠陥が発覚する事態を防ぎ、結果として修正コストの増大を抑制することができます。 また、ユーザー体験の向上も欠かせない視点です。 操作のしやすさや応答速度といったストレスのない利用環境を担保することで、ユーザーの離脱を防ぎ、信頼性の高いサービスとしての地位を確立できます。 さらに、多種多様な環境で正しく動作するかを確かめる互換性の確認や、外部攻撃から情報を守るためのセキュリティリスクの低減も、現代のアプリ開発においては必須の項目です。 不具合報告が相次ぐような状況を改善するには、これらの要素を網羅的に捉え、単なる動作確認を超えた品質管理の体制を構築することが重要となります。 Webアプリとモバイルアプリでテスト観点が変わる理由 開発対象がWebアプリかモバイルアプリかによって、重点を置くべきテスト観点は大きく異なります。 Webアプリの場合は、ChromeやSafariといったブラウザの種類やバージョンの違いによる挙動の変化が中心となりますが、モバイルアプリの場合は考慮すべき変数が飛躍的に増加します。 まずiOSとAndroidというOSの違いだけでなく、各メーカーが独自にカスタマイズした端末特有の依存関係が品質に強く影響します。 画面サイズや解像度のバリエーションも豊富なため、レイアウト崩れが起きていないかを詳細に確認しなければなりません。 さらに、モバイル特有の挙動であるプッシュ通知の受信、位置情報の利用許可、あるいは他のアプリへの切り替えに伴う中断と再開といったシナリオも検証の対象となります。 屋外での利用を想定した不安定な通信環境下での動作や、バッテリー消費の激しさなども、ユーザー満足度に直結する重要な要素です。 こうしたモバイルならではの物理的な制約や利用環境をシミュレートすることで、現場で発生しがちな「特定の条件下でだけ発生する不具合」を未然に防ぎ、再現性の高い品質基準を設けることが可能になります。 手動テストと自動テストの違い テストを効率化し、チーム全体の生産性を高めるためには、手動テストと自動テストの特性を理解して使い分けることが求められます。 手動テストは、人間が実際にアプリを操作して直感的に違和感を探る手法であり、特に新規機能のユーザーインターフェースや操作感の評価に向いています。 仕様が頻繁に変更される開発初期や、探索的な視点が必要な場面では、人の判断力による柔軟な対応が最大の武器となります。 一方で自動テストは、回帰テストのように何度も繰り返される定型的な検証において真価を発揮します。 プログラムによって高速かつ正確にテストを実行できるため、深夜や休日など時間を問わずに品質チェックを回し続けることが可能です。 これにより、人的ミスによる確認漏れを排除し、チームがより高度な設計や改善に注力できる環境を整えられます。 属人化を解消し、誰が実行しても同じ結果が得られる体制を構築するためには、まずは安定した機能から順次自動化を取り入れ、手動テストと組み合わせたハイブリッドな運用を推進するのがベストプラクティスです。 アプリテストの主な種類一覧 開発工程ごとのテストの種類 アプリ開発において品質を担保するためには、開発の流れに沿って段階的にテストを実施することが基本です。 まず行われるのが単体テスト(ユニットテスト)です。これはプログラムを構成する最小単位である関数やクラスが、設計通りに動作するかを確認する工程です。 不具合を早期に発見することで、後続工程での手戻りを最小限に抑える効果があります。 次に、個別のモジュールを組み合わせて正しくデータが受け渡されるかを検証するのが結合テスト(統合テスト)です。 複数の機能が連携した際に発生する矛盾や予期せぬ挙動を洗い出します。 さらに、アプリ全体を本番に近い環境で動かし、システム全体の要件を満たしているかを確認するのがシステムテスト(総合テスト)です。 ここでは性能や負荷といった側面も検証対象となります。 最後に、最終的な利用者が実際に操作を行い、ビジネス上の要件や使い勝手が満たされているかを判断するのが受け入れテスト(UAT)です。 エンジニア視点だけでなくユーザー目線での検証を徹底することで、リリース後の「期待していたものと違う」というミスマッチを防ぎます。 これらの工程を積み重ねることが、チーム全体の開発プロセスを標準化し、再現性の高い品質管理を実現するための第一歩となります。 観点別に見るテストの種類 機能が正しく動作するかを確認する機能テストは基本ですが、高品質なアプリをリリースするためには多角的な観点からの検証が欠かせません。 例えばUIテストでは、ボタンの配置や画面遷移が直感的に操作できるか、デザイン崩れがないかを確認します。 また、現代のアプリ開発において欠かせないAPIテストでは、バックエンドとの通信が正しく行われ、正確なデータが返却されるかを検証します。 さらに大量のアクセスがあった際に応答速度が低下しないかを見るパフォーマンステストや、脆弱性を突いた攻撃から情報を守るためのセキュリティテストも、信頼されるアプリ作りには必須です。 モバイルアプリ特有の課題である端末やOSごとの動作差分を確認する互換性テスト、そしてユーザーが迷わず目的を達成できるかを評価するユーザビリティテストも重要です。 これらのテストを網羅することで、特定の環境でしか発生しない不具合や、使い勝手の悪さに起因するユーザー離脱を未然に防ぐことができます。 リーダー候補としてプロジェクトを統括する際には、どのテストにリソースを割くべきかを論理的に判断し、効率的な検証計画を立てることが求められます。 初心者が混同しやすいテストの違い 現場で混乱を招きやすいのが、似たような名称や役割を持つテストの境界線です。 まず単体テストと結合テストの違いは、検証の範囲にあります。 単体テストはロジックの正しさを個別に確認するものですが、結合テストはそれらを繋ぎ合わせたときの「インターフェース」の不整合を見つけるものです。 また、システムテストとE2Eテストも混同されがちです。 システムテストはシステム全体が仕様通りかを検証するのに対し、E2Eテストはユーザーの最初から最後までの一連の操作(フロー)を網羅することに重点を置きます。 さらに、UIテストと受け入れテストの違いも明確にする必要があります。 UIテストは見た目や操作の挙動を確認する技術的な側面が強いですが、受け入れテストはビジネス要件を満たしているかという目的の達成に主眼を置きます。 そして、機能テストと非機能テストの違いも重要です。 機能テストは「何ができるか」を確認し、非機能テストはパフォーマンや安全性といった「どのように動作するか(品質特性)」を評価します。 これらの違いを正しく理解し、チーム内で定義を統一することは、属人化を排除し、スムーズなコミュニケーションを促進するために不可欠です。 明確な基準を設けることで、メンバー全員が同じ品質目標に向かって動けるようになり、結果としてリリース後のトラブルを大幅に削減することが可能になります。 アプリテストのやり方|実務で迷わない進め方 1. テスト対象と目的を明確にする 効率的なテストを実施するためには、まず「どの機能を何のために確認するのか」を定義することが不可欠です。 限られたリソースの中で全ての機能を網羅的に検証するのは現実的ではないため、ビジネスへの影響度が高い重要機能や、過去に不具合が頻発した障害影響の大きい領域から優先順位をつけます。 この段階でコア機能の安定性を最優先にする方針をチーム内で共有しておけば、リリースの直前になって致命的な不具合に直面するリスクを大幅に軽減できます。 また、検証項目を洗い出す際に「自動化する対象」と「しない対象」を切り分けることも重要です。 例えば、頻繁に繰り返し実行される基本機能の確認は自動化の候補となりますが、UIの微細な調整や新機能の使い勝手といった人間による感覚的な評価が必要な項目は、手動テストとして残すべきです。 このように目的を明確化し、リソースの配分を論理的に決定することで、属人化を防ぎ、チーム全体が納得感を持って作業を進められる土台が整います。 2. テスト観点を洗い出す テストの漏れを防ぎ、ユーザー視点での品質を確保するためには、多角的な観点からの洗い出しが欠かせません。 まず基本となるのは、仕様通りに正しく動くことを確認する正常系です。 しかし、実際の現場で不具合の引き金となるのは、想定外の操作を検証する異常系や、仕様の閾値となる境界値の確認不足である場合がほとんどです。 最小値や最大値、あるいはその前後の値を入力した際に予期せぬ挙動をしないか、徹底的に確認する必要があります。 さらに入力値のバリエーションやユーザー権限ごとの動作、状態遷移の整合性も重要な観点です。 特にモバイルアプリにおいては、電波の遮断といった通信エラーや、操作中の着信による中断など、スマホ特有の挙動が品質に直結します。 こうしたイレギュラーな状況をあらかじめリストアップしておくことで、現場の問題に対する不安を解消し、誰が担当しても一定の品質を保てる再現性のある検証が可能になります。 3. テストケースを作成する テストケースの作成では、一貫性と客観性が求められます。 原則として「1つのケースに対して、期待される結果は1つ」という構成を徹底し、合否判定に迷いが生じないようにします。 操作手順、入力値、そして期待される具体的な結果を明確に記述することで、経験の浅いメンバーでも正確にテストを遂行できる環境を作ります。 手順が曖昧だと再現性が失われ、後の不具合調査で混乱を招く原因になるため注意が必要です。 また検証に必要となるテストデータや実行環境は、本番環境と切り離して事前に準備しておきます。特定のユーザー状態や決済履歴が必要な場合、テストが始まってから用意していては効率が大幅に低下します。 あらかじめ必要な条件を整理し、クリーンな環境で検証を行えるように準備を整えることで、テスト工程そのものの品質が向上します。 こうした標準化されたプロセスを導入することが、将来的にプロジェクト全体を統括するリーダーとしての信頼にもつながります。 4. 実行・記録・不具合管理を行う テストの実行フェーズでは、単に結果を記録するだけでなく、不具合が発生した際の「再現条件」を詳細に残すことが極めて重要です。 どのような手順で、どのような環境下で、どのような入力を行った際に問題が起きたのかを正確に記述することで、開発エンジニアの調査コストを劇的に下げることができます。 スクリーンショットやログを併記する運用をチーム内で徹底すれば、不具合報告の精度が上がり、修正のスピード感も向上します。 修正が完了した後は、該当箇所が正しく直っているかを確認する再テストに加え、その修正が他の機能に悪影響を及ぼしていないかを確認する影響範囲の検証(回帰確認)が不可欠です。 一つの修正が別の場所で新たなバグを生む「デグレード」は、リリース後のトラブルの大きな要因となります。 記録を確実に残し、修正から確認までのプロセスを管理ツールなどで可視化することで、品質改善の進捗を客観的に把握できるようになります。 5. 回帰防止のために自動化を組み込む 継続的なリリースを行いながら品質を維持するためには、再テストの負担を軽減するための自動化が鍵となります。 特にバージョンアップのたびに繰り返し実行される基本的なシナリオは、自動テストの格好の候補です。 自動化を始める際は、期待結果がイエス・ノーで明確に定義できるものや、ビジネスインパクトが大きいコア機能から着手するのが成功のコツです。 ただし、全てのテストを自動化しようとすると、かえってメンテナンスコストが増大し、開発の足を引っ張る恐れがあります。 常に費用対効果を見極め、変更が頻繁な画面周りなどはあえて自動化を避けるといった柔軟な判断も必要です。 自動テストをCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)のパイプラインに組み込むことで、不具合の早期発見を仕組み化し、障害対応に追われる日々から脱却して、より価値の高い開発に時間を割ける体制を目指します。 モバイルアプリテストで必ず押さえたいチェック項目 1. インストール・起動・更新まわりのテスト アプリがユーザーの端末に無事に届き、正しく動き出すまでのプロセスは、第一印象を左右する極めて重要な工程です。 まず各プラットフォームのストアから正常にインストールできるかを確認し、ホーム画面に表示されるアイコンが指定通りのデザインで、ぼやけや欠けがないかを確認します。 起動時間については、ユーザーがストレスを感じない許容範囲内に収まっているかを実機で計測することが不可欠です。 特に現場でトラブルになりやすいのが、アプリアップデート時の挙動です。 新バージョンへ更新した際に、これまでの設定値やログイン状態、保存済みのデータが意図せず消去されることなく保持されるかを徹底して検証します。 またアンインストールを実行した後に、不要なキャッシュファイルや一時データが端末内に残ってストレージを圧迫し続けないかも確認ポイントです。 これらの項目を網羅することで、利用開始直後の離脱を防ぎ、信頼性の高いサービス提供が可能になります。 2. 画面操作・UIのテスト ユーザーが直接触れるUIの検証では、論理的な設計通りの動作と、視覚的な正確さの両面からチェックを行います。 ボタンの反応やメニュー遷移が仕様通りであることはもちろん、多種多様なアスペクト比の端末でレイアウト崩れが起きていないかを細かく見ていきます。 フォントの種類やサイズ、色のコントラスト、さらには誤字脱字といった細部まで確認を怠らないことが、プロダクト全体の質感を高める鍵となります。 モバイル特有の観点として、端末の縦横回転を切り替えた際に表示が崩れたり、入力内容がリセットされたりしないかの確認も欠かせません。 入力欄のバリデーションについては、空欄送信の防止、最大文字数制限、絵文字や記号などの特殊文字の扱い、日付や数値のフォーマット指定が適切に機能するかを一つずつ検証します。 こうした泥臭い確認の積み重ねが、リリース後の不具合報告を半減させる着実な一歩となります。 3. 通信・端末・利用環境のテスト モバイルアプリは常に安定した通信環境で使われるとは限りません。 そのため、電波が極端に弱い場所や、Wi-Fiとモバイル通信が切り替わるタイミングなど、通信が不安定な状況下でもアプリがフリーズせずに適切なエラーメッセージを表示するかを検証します。 通信エラーが発生した際のハンドリングが不十分だと、ユーザーに「壊れている」という印象を与えてしまうため、タイムアウト処理などの確認は必須です。 また、Android端末に代表される多種多様な端末差・OS差への対応も大きな課題です。 特定のメーカーやバージョンでのみ発生する表示崩れや動作不良がないか、実機やシミュレーターを駆使して互換性を確認します。 さらに、カメラや写真ライブラリへのアクセス、プッシュ通知といったデバイス固有の機能との連携がスムーズか、権限の許可・拒否設定が正しく反映されるかについても、利用環境をシミュレートしながら漏れなくチェックします。 4. 中断・再開・バックグラウンド時のテスト スマートフォンの利用シーンでは、アプリ操作中に着信やアラーム、他アプリからの通知によって操作が中断されることが日常的に起こります。 このような割り込みが発生した際でも、アプリが異常終了することなく、再開時に入力途中の内容や遷移状態が保持されているかを確認します。 バックグラウンドから復帰した瞬間に画面が真っ白になったり、データが初期化されたりする不具合は、ユーザー満足度を著しく低下させる要因です。 加えて、端末が低電力モードに入っている場合や、メモリなどのリソースが不足している低スペック端末での挙動も検証対象に含めます。 システムによってプロセスが強制終了された後の復帰プロセスが正しく設計されているかを確認することで、予期せぬクラッシュを未然に防ぎます。 こうした「動いて当たり前」の挙動を保証することが、現場のエンジニアが抱える不安を解消し、安定した運用体制を築くための土台となります。 5. 見落としやすい非機能テスト 機能が正しく動くだけでは、真に品質の高いアプリとは言えません。 性能面では、長時間利用した際のメモリリークの有無や、画面遷移のレスポンス速度といったパフォーマンスを評価します。 セキュリティ面では、重要な情報の暗号化や不必要なログの出力がないかを確認し、リスクを最小限に抑えます。 これらはリリース後に問題化すると修正コストが膨大になるため、設計段階からの意識が求められます。 また最新OSだけでなく旧バージョンとの互換性や、アプリがクラッシュせずに動き続ける安定性も重要です。 そして最後に、初めて触るユーザーでも迷わず操作できるかというユーザビリティの観点から全体を見直します。 エンジニア視点では見落としがちなこれらの非機能要件をプロセスに組み込むことで、属人化を排除した再現性のある開発体制が整います。 結果としてチーム全体の評価が高まり、テックリードやマネージャーへのキャリアアップを支える確固たる実績につながります。 アプリテストを効率化するコツと自動化の始め方 自動化に向いているテスト・向いていないテスト テスト自動化を成功させる鍵は、リソースを投入すべき対象を正しく見極めることにあります。 自動化に最も適しているのは、リリースのたびに繰り返し実行される定型的なテストや、入力値に対して期待される結果が論理的に明確なテストです。 一方で、使い心地やデザインの微細なニュアンスといった感覚的な評価が求められるUI/UXの検証は自動化には向きません。 また仕様が頻繁に変更される開発初期の機能も、スクリプトの修正コストが膨らむため、手動で柔軟に対応するほうが効率的です。 まずはコードレベルの正しさを保証する単体テストや、外部システムとの連携を確認するAPIテスト、そしてアプリの核となる主要フローの回帰テストから着手するのが定石です。 これらを自動化することで、人的ミスを防ぎながら高速に品質をチェックできる体制が整います。 現場のエンジニアが抱える「修正によるデグレード」への不安を払拭し、論理的な裏付けを持って開発を進めるための第一歩となります。 自動テスト導入の基本ステップ 自動テストを導入する際は、闇雲にコードを書くのではなく、段階的なプロセスを踏むことが重要です。 最初のステップは自動化対象の識別です。 頻度や重要度を軸に、どのテストを自動化すれば最大の効果が得られるかを判断します。 次に、検証に必要なテストデータの準備とテストケースの整理を行います。 手順や期待結果が曖昧なままでは自動化は失敗するため、誰が見ても明快な形にドキュメント化しておく必要があります。 続いて、プロジェクトの特性に合ったツールを選定し、開発フローに組み込むためのCI/CD連携を進めます。 一度構築して終わりではなく、アプリの進化に合わせてスクリプトを更新し続ける継続運用とメンテナンスの仕組み作りも欠かせません。 この一連の流れを標準化することで、属人化を排除し、チーム全体で品質を底上げできる再現性の高い開発基盤が構築されます。 ツール選定で見るべきポイント ツール選定においては、単なる機能比較だけでなく、実務での運用負荷を考慮することが不可欠です。 まずWebアプリだけでなくiOSやAndroidといったモバイル環境への対応状況を確認します。 さらに、チームの技術スタックに応じて、スクリプトを書くプログラミング型か、非エンジニアでも扱いやすいノーコード・ローコード型かを選択します。 リーダー候補としては、自分だけでなくチーム全員が使いこなせる「共有のしやすさ」も重要な評価基準となります。 また、既存のCI/CD環境との連携のしやすさや、テストコードの保守性が高いかどうかも見極めるべきポイントです。 メンテナンスに時間が取られすぎて開発が停滞しては本末転倒なため、将来的な拡張性を含めて論理的に比較検討します。 適切なツールを導入し、品質管理を仕組み化することは、プロジェクト全体を統括するマネージャーとしての視点を養う絶好の機会にもなります。 手動テストだけで終わらせない運用体制 テストを「リリース前の一時的な作業」として終わらせず、継続的な改善サイクルに組み込むことが品質向上の極意です。 不具合が発生した際には、その傾向を蓄積・分析し、テスト観点そのものをアップデートし続ける文化を醸成します。 なぜそのバグが漏れたのかを振り返り、新たな検証項目として追加することで、次回リリースでの不具合発生率を確実に下げることができます。 さらに、テストケースや知見を個人の頭の中に留めず、チームの共通資産としてドキュメント化・共有する仕組みを作ります。 これにより、特定の担当者がいないと検証が進まないといった属人化を防ぎ、常に一定の品質を保てる体制へと進化します。 トラブル対応に追われる現状を脱却し、ユーザー満足度の向上に直結する価値の高い開発に時間を投資できるよう、組織としての品質意識を高めていくことが求められます。 まとめ 高品質なアプリを安定してリリースし続けるためには、開発工程ごとに適切なテストを配置し、漏れのない検証観点を持つことが不可欠です。 単体テストから受け入れテストまでの流れを標準化し、モバイル特有の「中断・再開」や「通信環境」といったユーザー視点の項目を網羅することで、リリース後の致命的な不具合は大幅に抑制できます。 また、手動テストの柔軟性と自動テストの継続性を賢く組み合わせることは、チームの生産性を向上させるだけでなく、エンジニアがより価値の高い開発業務に集中できる環境作りにも直結します。 今回ご紹介したプロセスやチェックリストを実務に適用し、不具合の傾向を蓄積してテスト設計をアップデートし続けてみてください。 品質改善の実績は、チームからの信頼獲得や、将来的にテックリードやマネージャーとしてプロジェクトを統括するための強力な武器となるはずです。 まずは次回のリリースに向けて、優先度の高い機能のテスト設計から見直してみることをおすすめします。 QA業務効率化ならPractiTest テスト管理の効率化 についてお悩みではありませんか?そんなときはテスト資産の一元管理をすることで 工数を20%削減できる 総合テスト管理ツール「 PractiTest 」がおすすめです! PractiTest (プラクティテスト) に関する お問い合わせ トライアルアカウントお申し込みや、製品デモの依頼、 機能についての問い合わせなどお気軽にお問い合わせください。 お問い合わせ この記事の監修 Dr.T。テストエンジニア。 PractiTestエバンジェリスト。 大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。 2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。 記事制作: 川上サトシ (マーケター、合同会社ぎあはーと代表)

動画

書籍