日本の行政・住民サービスを電子化へ ──NTTデータが官民連携で挑む自治体DXとは

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2021年9月にデジタル庁が新設される背景もあり、マイナンバーカードを軸とした新たな行政サービス・住民サービスを創出する自治体DXが加速している。そこで今回は、政府や民間企業の連携プロジェクトに着目。官民連携の自治体DXプロジェクトを数多く推進するNTTデータの現場リーダーに、実際のサービス事例からシステムアーキテクチャ、さらには同社が官民連携プロジェクトに携わる意義を語ってもらった。
日本の行政・住民サービスを電子化へ ──NTTデータが官民連携で挑む自治体DXとは

(プロフィール)

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株式会社NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
デジタルソサエティ事業部 営業統括部 営業企画担当
課長代理 浜口 麻里氏
中央省庁向けのSE、営業を経て、2014年より地方自治体向けの営業に従事。グループリーダとして、基幹系システム等の提案に加え、地方自治体のデジタル化を推進している。

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株式会社NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
デジタルソサエティ事業部 開発統括部 企画開発担当
部長 藤田 裕介氏
ネットワークエンジニア、ITコンサルタント等を経験した後に、民間企業のWebサイト開発や各種官公庁システム開発のプロジェクトマネージャーを歴任。現在は自社プラットフォームサービスのプロダクトマネージャーを担当しながら複数プロジェクトのプロジェクトマネージャーを兼務。

30年以上築いてきた顧客基盤を礎に、DXを生み出す

最初に登壇した浜口麻里氏は、まずNTTデータがデジタル・ガバメント計画に取り組むミッションについて紹介した。

「必要なサービスが時間と場所を問わず、最適な形で受けられる社会。官民を問わず、データやサービスが有機的に連携し、新たなイノベーションを創発する社会を目指す」

デジタル・ガバメントとは、まさしくデジタル庁の創設で実現しようとしているものであり、これからの行政の変革も含めたあり方である。浜口氏が所属するデジタルソサエティ事業部は、マイナンバーを軸に、国民生活や社会環境の観点からより良いデジタル社会の実現を目指している。

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3つのドメインのうち自治体DXドメインである浜口氏の具体的な取り組みは、まさに各自治体のDXになる。浜口氏は、NTTデータが自治体DXに取り組む強みを次のように語った。

「私たちは30年以上も前から、自治体の各種システムを構築・提供してきた実績があります。そのためシステムや事業はもちろんですが、顧客とのリレーションシップも含めた膨大な基盤を持っています。この顧客基盤こそ、私たちが自治体DXに取り組む最大の強みだと捉えています。DXによる新たなサービスやシステムといったシーズは、現場のニーズから生まれるからです」(浜口氏)

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【事例①】要介護認定事務を人に変わりAIが行う ~『Aitice™(アイティス)』

これまでも、要介護認定のフローでは電子化やコンピュータによる判定など、デジタル化は進んではいた。だが、認定調査員から上がってくるドキュメントの確認においては、自治体職員が目検で行っていた。そこをAI化することで、自治体側にとっては業務負担の軽減を、住民にとっては認定までの期間短縮を目指した。

「ご存知のように、少子高齢化の影響で要介護認定者は、5年で10%増えると言われています。対して、自治体の職員は、30年間で17%ほどの割合で減っています。さらに業務が複雑化していることや、内容確認の是非が担当者の経験やスキルで異なるとの問題がありました」(浜口氏)

福島県の郡山市での実証を経て、11月から『Aitice™(アイティス)』という商品名で運用が始まっている。

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【事例②】各種申請ならびに対応・処理業務の電子化

続いては、各種申請業務の電子化が紹介された。すでにNTTデータでは「ぴったりサービス」「行政総合サービスモール e-tumo」といったサービスを提供しており、ぴったりサービスにおいては、1741自治体に導入。e-tumoにおいても全国26都道府県、約700の自治体で導入されている。

すでに利用している人や知っている人もいるかもしれないが、以下のような申請や確認業務が、自治体の窓口に足を運ぶことなく、パソコンやスマートフォンで行うことができる。

・マイナンバーカードの交付予約
・マイナンバーカードによる電子署名(本人確認)
・健康診断や予防接種などの申込み
・体育館やスポーツイベントの予約
・児童手当や各種給付金の申請や請求など
・粗大ごみの受付

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「これまでにさまざまな電子化を行ってきましたが、ただ電子化を進めてきたわけではありません。自治体によっては予算の関係で新規システムの導入が難しいケースもあります。高齢者が多い地域では、そもそもパソコンやスマートフォンの普及率が高くありません。また、福祉系の業務のように専門職と相談しながら申請書を作成するケースもあります。このような各自治体の状況を加味した上で、自治体、住民どちらにとっても最適なサービスを提供することを心がけてきました」(浜口氏)

具体的には、既存システムとRPAを連携することでサービスの拡充を図ったり、導入することでどのようなメリットがあるのかシナリオも含めて提案するといった配慮や工夫だ。

現時点では電子化できない業務においても、どうしたら両者の負担が減るかを考え、QRコードを活用したタブレット、スマートフォンでのオフライン連携のサービスも提案している。そして次のように述べ、セッションを締めた。

「私たちの取り組みのベースにあるのは、顧客、住民、市場の声を聴き続けることです。そこから社会課題を捉えると共に、解決していきたいと考えています。ただし、私たちだけでできることは限りがあります。多くの方々や組織とコラボレーションし、それぞれの強みを持ち寄ることで、より大きなことを実現したいと考えています」(浜口氏)

官民連携プラットフォームサービス「mint」が開発されるまで

NTTデータは2020年10月、運転免許証や健康情報、マイナンバーカード情報などの個人が持つデータを、官民の各種システムやサービスに連携するプラットフォーム「My Information Tracer(通称mint)」をローンチした。共通IDや機能を有することで、これまで各所がそれぞれ行っていたデータの管理や活用を、よりシームレスかつスムーズに一元的に紐付けて繋いでいく。

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※mint(情報銀行):https://www.nttdata.com/jp/ja/services/information-bank/

続いて登壇した藤田裕介氏は、このmintの企画開発担当者であり、開発経緯からサービスとしてローンチされるまでの流れ、今後について紹介した。

アイデアの源泉は日々のディスカッション

NTTデータでは普段から、新しいビジネスの芽を見つけるための取り組みが頻繁に行われている。主には次の3つの内容だ。なお「豊洲の港から」とは、いわゆるオープンイノベーションである。

・各種新規ビジネスファンド
・各種アイデアソン
・豊洲の港から(https://oi.nttdata.com/program/forum/

「予算の一定割合は新規ビジネスに充てるなど、実際に毎年各種新規ビジネスファンドが立ち上がり、アイデアを持ったメンバーが応募しています。また、日々さまざまな場所でさまざまなメンバーが集まり、議論を行うのが当たり前の環境です。メンバーは企画開発だけでなく、私のようなプロジェクトマネージャーが参加しているのも特徴です」(藤田氏)

そうした議論のなか、テーマに挙がったのが本イベントのテーマ、「官民連携」だ。議論を進めていくと、21世紀の石油と言われているパーソナルデータや流通がビジネスになるのではないか、という意見が出された。

実際に調べてみると、すでに欧州では議論が進んでいることもわかった。特にフランスでは顕著で、保険会社や通信会社、スタートアップが参加して大規模実証実験も行われている。

あわせて日本の動きも調べると、こちらでもすでに、内閣、総務省、経産省を中心に、パーソナルデータ関連の制度設計や推進を行っていた。さらに情報を調べたり議論を深めていくと、Google DriveやDropboxなど、パーソナルデータを格納するサービスや、マネーフォワード、グーグルペイといった、アグリゲーション系サービスへの活用が進んでいることもわかった。

「調査を進めていくと、パーソナルデータが溢れていて、その溢れたデータを格納したり、より活用するための『情報銀行』のようなプラットフォームが必要なのではないかという結論に至りました。同時に、GDPR違反でEUがGoogleを訴えるなど、パーソナルデータの流通ではしっかりとしたレギュレーションに則って行われるべきであり、当社のようなエンタープライズ企業がやるべきとの使命も感じました」(藤田氏)

GDPRは「General Data Protection Regulation」。言葉どおり、パーソナルデータの保護取扱いを定めたEUでのレギュレーションであり、「EU一般データ保護規則」とも呼ばれる。

企業も職種も多様な顔ぶれを集めグランドデザインを練り上げる

情報銀行プラットフォームの概念が固まると、次は、実際にどのようなビジネスモデルにするのか、グランドデザインの策定に移った。自社だけで考えるのではなく、多様な意見を取り入れるべく、まざまな企業と人材が集結した。

月に一度のペースで議論を重ね、半年ほどかけて、およそ100ページにおよぶ素案の作成に至る。なおNTTデータでは、このようなマトリクス的に組織を立ち上げ、新たなビジネスの創出をすることが多いという。開発手法についても言及した。

「ミッションクリティカルなシステムは従来のウォーターフォールで開発しますが、今回のような新規ビジネスはアジャイルやスクラムで開発することが一般的です。今回のプロジェクトでは10名1チームのスクラムチームを立ち上げ、1週間を1スプリントして開発を進め、12スプリント。つまり、3カ月ほどでβ版の開発に至りました」(藤田氏)

その後はβ版を実際に713名に使ってもらい、得た課題や要望をフィードバック。そうして冒頭のローンチに至る。ただし、ローンチ以降も日々、活用シーンをディスカッションするなど、より良いプラットフォームに進化しようとブラッシュアップ中だ。

「立ち上げてからの今がまさに本当の勝負です」と、藤田氏は力強く訴える。NTTデータがこのような事業に取り組むべき根幹の想いを述べ、セッションを締めた。

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「単にパーソナルデータの流通プラットフォームを構築し、利益を得ることが目的ではないことを、常に意識して開発を進めています。このような想いは、私たちが日々意識していることでもあり、経営層から言われ続けていることでもあります。

システムやサービスが社会にどう役立つのか、どのような社会基盤になるのか。利益云々ではなく、国民に役立つサービスを創出することが、我々の使命だからです。

一方で個人的には、このような新規ビジネスの創出はディスカッションも含め、とても楽しいですし、今回のようにローンチまでこぎ着けた際には、大きな達成感を得ることができています」(藤田氏)

【Q&A】参加者から寄せられた質問を紹介

セッション後、参加者から寄せられた質問に、浜口氏と藤田氏が答えるQ&Aタイムが設けられた。

Q:新型コロナウイルスの特別定額給付金事業では、紙で郵送申請した方が、WEBで申請するよりも給付が早かったなど、DXというバズワードが先行しているように思う。官公庁の本気度を知りたい

浜口:特別定額給付金事業では、確かにそのようなケースもあったと聞いています。まさに先ほど紹介したとおり、Web申請の内容を紙のドキュメントとして出力して、担当者が確認していたからです。

しかしこれからは、電子申請が浸透することで、そのような矛盾はなくなると感じています。コロナ禍で非接触が浸透したこともあり、自治体担当者からは取り組みに対する本気度を肌身で感じています。また、デジタル庁の創設も含め、国全体としてDXは結実していくと思っています。

藤田:以前は、国と自治体が検討を重ねながら、さまざまな新しい仕組みなどを導入する流れが一般的でした。しかしDXにおいては、国がオンライン化を先導するなど、本気度を感じています。そして国が推進する以上、自治体も動かざるを得ない。そのような流れに変わってきていると思います。

Q:データ分野において日本は発展途上国だと思う。世界との違いはどこにあるのか

藤田:国によって動きが異なります。たとえばエストニアでは、トップダウンで進めることで一気に普及しました。一方、アメリカではGAFAがビジネスとして進め、そこから政府が動くという構図です。

Q:クラウドの活用などデータセンターについて聞きたい

藤田:官民ともに、クラウド・バイ・デフォルトの考えが強いです。そのため、システムごとに、AWSやAzure、またグループ会社のNTTコミュニケーションズがクラウドを持っていますので、それらを使い分けています。さらに最近の傾向としては、マルチクラウドを取り入れようという議論も挙がっています。

Q:ITリテラシーの問題など、自治体にDXプロジェクトを導入する上での工夫は?

浜口:デジタル人材の採用に取り組むなど、自治体担当者のITリテラシーは高くなっていると感じています。一方で、自治体の中には、長きにわたり紙媒体で仕事を進めてきた方も大勢いらっしゃいます。このような異なるバックボーンを理解した上で、リテラシーが高くない方からのご要望にも応えられるよう、分かりやすい言葉を選ぶことに加え、実際に動く画面等を作って体験していただくことによってすり合わせるようにしています。

藤田:以前であれば確かにITリテラシーが低い方もいましたが、最近はまったく感じません。むしろ、私たちより詳しい知識を持たれている方もいます。

Q:サービス開始後のUI/UXの改善についてフォローやブラッシュアップについてはどのように進めているか

浜口:UI/UXの改善については、民間の消費者が使うシステムについては以前から積極的に行われていた印象ですが、最近は、自治体でも住民が使うシステムについてはニーズが高まっていると感じています。

Q:既存・新規業務の配分やスケジュール管理について

藤田:業務の何割かは、イノベーションに充てようという取り組みはあります。ただ本日紹介したような新規サービスの取り組みについては、個人の意欲によるところも強いように感じています。

浜口:営業サイドも同じです。新規ソリューション検討をミッションとしているメンバーもいますが、結局のところ熱量のあるメンバーが率先してプロジェクトを引っ張っています。

Q:プロジェクトではどのような人材を求めているか

藤田:システム開発プロジェクトが多いため、これまではPM人材が多いとの特徴がありましたし、成長しやすい土壌でもありました。ただ今後は新しい技術に強い人材を集めようとの方針を打ち出しています。

浜口:お客様のニーズや行動が多様化していることもあり、新しく、かつ多くの情報を持っている人材が頼りになると感じています。

Q:今後の展望について聞きたい

浜口:入社したときからNTTデータだからできることをずっと考えて続けてきました。そしてその答えは「社会課題の解決」。課題が複雑化している昨今こそ、DXがポイントになる。国民生活を豊かにするためにデジタルソリューションを、今後も手がけていきたいと考えています。

藤田:システム開発に携わる誰もがやりがいを持って臨めるような、そのような環境の整備にこれからは努めたいと考えています。

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

https://www.nttdata.com/jp/ja/

株式会社エヌ・ティ・ティ・データの採用情報

https://www.nttdata.com/jp/ja/recruit/careers/

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