【インタビュー】数々のモバイルゲームを開発する大手企業にはどんなエンジニアがマッチする? 異なる立場で働く現役エンジニアに尋ねる!
KLab株式会社は、数々のヒットタイトルを連発するモバイルゲーム開発企業である。
2000年の創業以来、様々な技術をサービスとしてリリースしてきた同社には、エンジニアの成長に注力した風土があるという。例えば、ゲームを開発するイベントを社員が自発的に開催したり、多くの社員が社内社外を問わずプレゼン大会や講演会、勉強会に参加したりしているのだ。このKLabの文化にはどのようなエンジニアがマッチするのだろうか?
本稿では、KLabと業務委託契約を結び人気ゲームタイトルの開発を行う株式会社Sep10(セプト)の上原正裕氏と、Klabの社員として主に研究開発に従事する稲田直哉氏にお話を伺った。
社員登用の誘いを断っても働き続ける理由って?
上原正裕(うえはら・まさひろ)/株式会社Sep10 代表取締役。エンジニアとして複数の企業に勤務し、2012年に常駐先のKLabでのプロジェクトに参画。将来の夢はバーの経営。
ーー まず、上原さんのキャリアについてお聞かせください。
上原 プログラミングが必要な業界で働き始めたのは20歳の頃です。当初は派遣社員として、ウェブアプリケーションを作成する企業にエンジニアとして勤めたり、自動車のウェブシステムのコンサルを担当したりしました。その後、22歳の頃にウェブサービスをメインとしたSIerに就職しまして、「Java」を使って業務システムとフロントのウェブシステムを担当していました。
その後、さらに数社でエンジニアとして勤務しまして、その中で5年前に常駐先としてKLabさんで働き始めたんです。
ーー 現在はどのような形態で働かれているのですか?
上原 今から3年前、つまりKLabさんで働くようになってから2年後に、私は個人事業主としての活動を開始しました。そこからはKLabさんと業務委託契約を結びエンジニアとして働いています。1年前には法人化もしていますね。
ーー なぜ雇用契約ではなく、業務委託を選ばれたのですか?
上原 自由でいたいからです(笑)。KLabさんで働いて1年ほど経った頃、私が担当しているタイトルがリリースされました。そのタイミングで「社員にならないか?」と声を掛けてもらったこともあったのですが、お断りしました。
でも、もちろん業務委託の私でも社員の方と扱いや対応が変わることはありませんよ。KLabには様々な方を受け入れる社風があると思います。
ーー KLabではどのような業務を担当されているのでしょうか?
上原 5年前から現在まで同じプロジェクトに参加しています。主にスマホ向けリズムゲームアプリですね。立ち上げ当初はプロジェクトリーダーとして参加していましたが、現在はサーバーサイドエンジニアとして関わっています。
ーー チームの規模がどのくらいなのか教えてください。
上原 プロジェクトの立ち上げ当初は、開発チームだけで20名くらいのメンバーがいました。サーバーサイドが7名、アプリ側が13名くらいだったと記憶しています。その他には制作チームと企画チームがそれぞれ4名か5名くらいいまして、プロジェクト全体では30名ほどの体制です。
現在のプロジェクトのエンジニアは、私も含めたサーバーサイドエンジニアは5名ほどで、アプリチームが10名ほど、ゲーム自体ではなく新しい仕組みを開発するパイプラインチームが3名ほどの構成になっています。
ーー 上原さんは様々な企業でエンジニアとして勤務され、また現在も外部の立場としてKLabで働かれています。その上原さんから見てKLabにはどのような文化があるとお考えですか?
上原 とにかく展開が速いと感じますね。新しい技術動向は常に追いかけていますし、何か上手くいかないことがあってもすぐにその失敗を捨てられるような切り替えの速さもあります。
また、私から見ていると、若い人から熟練の方までかなり幅広い年齢のエンジニアが活躍しているように感じます。
ーー 最後に、どのような方がKLabの文化にマッチすると思うかお聞かせください。
上原 向上心がある人ですね。やっぱり技術に興味を持てるということは重要です。KLabの社員の方には非常に優秀なエンジニアの方もたくさんいるんですよ。例えば、「PHP」のコミュニティに深く関わっているような方もいますし、技術的な手法などの情報はあちこちから得られる環境だと思いますね。
リモコンが壊れたらドライバーで分解していました
稲田直哉(いなだ・なおや)/KLab株式会社 Kラボラトリー。大阪府立工業高等専門学校(現、大阪府立大学工業高等専門学校)卒。パナソニックAVCマルチメディアソフト(現、AVCマルチメディアソフト)での勤務を経て、2007年にKLabへ入社。2016年「ISUCON」優勝。
ーー まず、稲田さんの経歴を教えてください。プログラミングはいつから始めたのですか?
稲田 小学生の頃に不要になったパソコンを親からもらったんですね。そのパソコンで「N88-BASIC」というプログラミングができまして、図書館で借りたプログラミングの本をがんばって写してみたりはしていました。
そして、プログラミングを学びたいと思って府立高専に進学します。高専の2年生から5年生までは「高専プロコン」という全国の高専生がプログラミングを競う大会に参加しまして、5年生のときには優勝することができました。
卒業後2004年にAVCマルチメディアソフトというパナソニックの子会社に就職しました。そこには3年間いたのですが、パナソニックのデジカメのファームウェアを開発していました。その後、2007年にKLabへ入社しました。
ーー なぜKLabへ転職されたのですか?
稲田 仙石というKLabの前のCTOとブログでやりとりをしていたんです。直接の面識はなかったのですが、それがきっかけとなりましたね。
ーー KLabではどのような業務を担当されているのでしょうか?
稲田 入社してからずっと「Kラボラトリー」という部署に所属しています。いわゆる研究開発を行う部署でして、目の前の売上に直結しないけど将来役に立つかもしれないテーマの研究を行っています。
ーー 「Kラボラトリー」はどのくらいの規模なのですか?
稲田 兼任のメンバーも含めると9名ですね。全員で共通のテーマに取り組むわけではなく、メンバーそれぞれが独自に研究しています。
ーー 稲田さんがどのような研究をされてきたのか教えてください。
稲田 まだガラケーが主流で表現手法が限られていた時代は、「FLASH」がよく使われていましたよね。クライアント側のプログラミングで制御できることは非常に限られていたので、サーバーで必要な「FLASH」を作成してガラケーに送るというような仕組みを研究していた時期がありました。
その後、ソーシャルゲームのブームが来たんです。ソーシャルゲームでは表現手法として「FLASH」がヘビーに使われていましたので、研究していたものを更に速度が出るように改良しました。これが初めてきちんと売上につながった案件ですね(笑)。
ーー 直近の取り組みについてもご紹介いただけますか?
稲田 現在は、オンラインゲームのリアルタイムで動くサーバーを開発したり、海外の技術書を翻訳したりしています。
また、KLabに入社する前から私は「Python」が好きなのですが、「Python」自体の開発を行うコミッターとしても活動しています。直近では「Python」のメモリ使用量を少なくしたり、少しでも速くしたりするための研究も行っています。
最近では、KLabの開発においてもかなりの領域で「Python」を使っていますね。
ーー 「Python」のどのような点が魅力なのでしょうか?
稲田 汎用的に使えるという点です。さらに、C言語など他の言語での拡張ができるので、レバレッジが効く点も魅力だと感じています。
その他にも最近では「Go」っていう言語が面白いと感じていて、「Go」を使ってサーバーの開発もしています。
ーー 稲田さんからみてKLabにはどのような文化があると思いますか?
稲田 「技術者が成長できる環境」を積極的に作ってくれる点は、KLabのいいところですね。売上を作ることはもちろん大切なのですが、すぐに売上にはつながらなくても技術者として成長するために会社としてどんどん投資してくれます。例えば、技術書などもすぐに購入してくれますし、エンジニアとして他の会社からも評価されるような成長ができる環境だと思いますよ。
また、私のような研究開発を行う部署ではなくとも、労働時間の1割を好きな研究に費やせる「どぶろく制度」という社内制度があります。上司の承認もいらない制度なので、こういった制度を活用して成長につなげるエンジニアもいますね。
ーー 最後にどのようなエンジニアと一緒に働きたいとお考えか教えてください。
稲田 技術を深掘りするときに「普通にできるところ」で止まらずに、時代に先走って「普通にはできないところ」まで挑戦してみようというマインドを持った人は話をしていて楽しいと感じます。
私自身は昔から探究心がとても強いタイプです。小学校に入学する前、電池を替えても動かなくなったリモコンをドライバーで分解したりしていました。もちろん、小さな子供ですから、分解したところで何もできなかったのですが(笑)。
例えば、現在はVRが流行していますよね。そういったトレンドに対してとりあえずデモをプレイしたり、用意されている開発環境でチュートリアルを見たり、オープンソースであれば「ここがまだ出来ていないんだな」というところまで調べて、自分でもできそうなら足りない部分を作ってみる。自分がそこまで探究心は強くないと感じる人でも、「これ後でやってみよう」と思ったことを永遠に後回しにせず、必ずどこかで取り組んでみるのが大切だと私は思います。そういった探究心を持った人と一緒に働きたいですね。