経営コンサルティングファームBCGが手掛ける「機械学習による需要予測と最先端のデジタルイノベーション事例」

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経営コンサルティングファームBCGが手掛ける「機械学習による需要予測と最先端のデジタルイノベーション事例」

世界をリードするコンサルティングファーム、ボストン コンサルティング グループ(BCG)。近年、同社はデジタル化を通じた企業変革のサポートを最重要項目の1つとし、デジタル専門人材を擁する組織を立ち上げています。こうした組織では、BCGがこれまでに培った産業や企業、組織に対する知見と、AIやビッグデータ分析などの最先端技術を組み合わせることで、さまざまなプロジェクトを通じてビジネスインパクトを生み出しています。

BCGのコンサルタントが同社のデジタル戦略と組織、最新事例などについて語ったイベント「BCGが手掛けるデジタルイノベーション事例 #01 -機械学習による需要予測とパーソナライズ事例-」の概要を紹介します。

BCGがデジタル戦略をグローバルで推進している背景

最初に登壇したのは、パートナー&マネージング・ディレクターの高部陽平氏。高部氏はイベント開催日である10月30日当日、米ロサンゼルスに出張しており、オンラインでの登場となりました。


▲ボストン コンサルティング グループ パートナー&マネージング・ディレクター 高部 陽平氏

BCGがデジタル領域に特化した新たな組織を立ち上げた背景について、高部氏は次のように語ります。

「従来、コンサルティングファームの仕事は経営者の意思決定をサポートすることでした。しかし戦略を描いた際に意図した構想を実現し、さらに拡大発展させるためには、社員一人ひとりの意思決定も重要になります。それらが組み合わさって、業績となり、事業の成長や企業の発展へとつながっていく。こうした中で、私たちコンサルタントも経営者の戦略策定の支援にとどまらず、日々の意思決定をサポートするところまで踏み込む必要がでてきています。

その日々の意思決定のサポートに欠かせないのがテクノロジーの活用です。現在のコンサルティングワークでは、ビジネスのエキスパートとデジタル技術のエキスパートが協働することが重要になっています」

BCGでは世界各地で、次のようなデジタル領域の専門チームを立ち上げています。

  • Technology Advantage:世界クラスの技術エキスパートによるグローバルチーム。企業のデジタル戦略全般を手掛ける。
  • GAMMA:先進的なデータアナリティクスに基づく組織変革支援を行う。
  • Platinion:デジタルプロダクトデザイン及びクリエーションに特化したエンジニア集団。
  • Digital Ventures:ゲームチェンジャーとなるデジタルビジネスへの投資、立ち上げ、スケールアップ。

「日本では、GAMMAとPlatinionにあたる機能を担う組織、"DigitalBCG Japan"が創設されました。スキルの重なりはありますが、BCGではさまざまなエキスパートが活躍できる環境になっています」(高部氏)

AIや分析の専門家が集まるBCG GAMMAとは

続いてDigitalBCG Japanプリンシパルの関根正之氏が登壇し、AI/アナリティクス領域の専門組織GAMMAについて解説しました。GAMMAは数学やコンピュータサイエンスの博士・修士などで構成される、データサイエンティストのチームです。

▲DigitalBCG Japan プリンシパル 関根正之氏

GAMMAはデータサイエンティストのチームとして世界で指折りの規模を誇り、さらに拡大を続けています。 「GAMMAのメンバーは現在400人ですが、1年以内に1000~1200人規模にするべく、世界各地のオフィスでデータサイエンティストを採用しています」(関根氏)

対象領域は幅広く、機械学習やディープラーニング、ビッグデータ処理などAI/アナリティクスなどの要素技術、認識アルゴリズムや予測アルゴリズム、解釈技法などの応用技術などが含まれます。サービスメニューも多種多様です。

「パーソナライゼーションや解約予測、商品スペックの最適化、ダイナミックプライシング、生産プロセスの最適化、エネルギー効率の最適化、予知予防メンテナンス、店舗配置の最適化、配送ルートの最適化、審査の自動化・精度向上、取引の不正検知、人材の最適化、採用の最適化など、あらゆる産業、業務に対してアプリケーションを提供しています」(関根氏)

金融や流通・小売、製造、通信などさまざまな業界・業種の企業のプロジェクトを手掛けているBCG GAMMA。その中で関根氏が「面白い」と思う事例についての紹介がありました。

一つは銅の採掘企業の事例。どこを掘れば銅が出てくるのか、専門家を超えることを目標に、機械学習を用いて予測プログラムを構築し、90%という高い精度を実現しました。

次に物流のネットワーク最適化を行って10%のコスト低減を実現した事例、さらにケミカルプラントの合成プロセス速度の最適化を行った事例も紹介。この例では機械学習を用いて職人の仕事の改善点を発見し、スループットで5%程度の改善が見られました。

また、GAMMAは独自の統合開発環境を構築する、10数名からなる専門チームを擁しています。「効率的な開発を促進するだけではなく、ひとつひとつのツールの知識は深くなくても、一貫して使えるようにするため」と関根氏は説明します。

このように、BCGはPoC(Proof of Concept)だけではなく、本番環境まで実現できるリソースを内部で抱えようとしているのです。

パーソナライゼーションとは

三番目に登壇したのはDigitalBCG Japan プリンシパルの椎橋徹夫氏。椎橋氏はパーソナライゼーションの成功事例を紹介しました。


▲DigitalBCG Japan プリンシパル 椎橋徹夫氏

BCGでは、特にデータサイエンスや機械学習の領域の技術を使って、お客さまと共にプロジェクトを進めていますが、そのテーマの一つがパーソナライゼーションです。

「パーソナライゼーションのプロジェクトは複数の業界、複数の企業で大きな成果につながっています」と椎橋氏は語ります。これまでBtoCのビジネスを展開している企業においては、マスマーケティングが中心でした。「しかし今は消費者と事業者の関係は、双方の顔が見えるOne to Oneに進化している」と椎橋氏。つまりこれまでのようにマスに対して同じモノではなくて、一人ひとりに合ったモノを提供することが重要になっているのです。

「レコメンドエンジンを買ってきて入れればパーソナライゼーションは可能なのでは」と思うかもしれませんが、「パーソナライゼーションと一口に言っても進化の段階があり奥が深い。いろいろな施策がある」と椎橋氏は下の図表に沿って説明を続けます。

第一段階である、会員組織化では、ポイントカードやIDを管理して、クーポンやDMを出すことが挙げられます。次の段階がロイヤリティプログラム(ポイントプログラム)。

第三段階はセグメントオファー。購買行動や属性から顧客を複数のセグメントに分類し、それぞれのセグメントに適した商品やサービスを提供するという取り組みです。

第四の段階はOne to Oneオファー。顧客一人ひとりの購買行動や属性からニーズを推測し、それに合った商品や特典を定期的に提案すること。一人のお客さまといっても、時によって10人の顔を持つと言われています。

最終段階のパーソナライゼーションは、リアルタイムのOne to Oneオファー。「リアルタイムのOne to Oneオファーは最先端企業でも実現できていません」(椎橋氏)。

BCGではクライアントがパーソナライゼーションの段階に到達する支援をしていますが、ともすれば技術面のサポートの割合が大きいと考えられがちです。

「BCGが取り組む意味があるのかと聞かれますが、これは技術だけの話ではありません。ビジネス全体を変えていかなければインパクトが出ないテーマであるからこそ、取り組む意味があるのです」(椎橋氏)

BCGでは、パーソナライゼーションを下図のようにとらえています。「戦略的設計や分析、テクノロジー、働き方などすべての観点を統合したモデルで顧客の行動を変化させ、素早いインパクト、収益の増加、顧客体験の向上、ケイパビリティの強化などを実現していくことが大事だと考えています」(椎橋氏)

BCGが取り組んだ最先端パーソナライゼーション事例

先進的な事例として紹介されたのが小売流通系のA社の例です。A社はもともと先進企業であり、デジタルの顧客接点をいくつも作っていました。しかし「期待する成果が得られていない状況だった」と椎橋氏は言います。

そこでBCGが支援に入り、1年という短期間でOne To Oneのパーソナライゼーションの仕組みを実現しました。スタート時はExcelで顧客データを集計し、数十のセグメントに対してそれぞれ異なる手作業でメールを作成し配信していたので、集計からメール配信まで2週間程度のタイムラグが発生していました。

それを半年後にリアルタイムで行える体制を構築するため、Excelで集計するプロセスをやめ、昨日の顧客行動などに基づいて、すぐに情報訴求できるパーソナライゼーション・エンジンを構築しました。次に取り組んだのは高頻度で使いたくなるアプリの仕組み作りでした。

まず、ゲーミフィケーションの考え方を取り入れて、人間はどのようなリワードが与えられると行動を起こしたくなるのか。心理学的なアプローチでプログラムを設計しました。さらに、プレオーダーの仕組みを入れて待ち時間をゼロにしたり、GPSの情報を使って近い店舗をガイドしたりするなど、顧客との接点がトータルで増えるようなアプリのUXの設計をしていきました。

さらにOne to Oneオファーを実現する仕組みづくりでは機械学習を活用。パーソナライズされた割引やクーポンを提示したり、ユーザーの販売履歴に応じて千差万別のレコメンド商品を提案するような仕組みを構築。また同社が導入している機械学習は、強化学習に近い仕組みとなっています。

パーソナライゼーションを支える予測アルゴリズムとして、ロイヤル化のモデル探索、ステージの特定、最適なレコメンドの実行の3つを活用していますが、「ロイヤル化のモデルはアルゴリズムだけで見出せるわけではありません」と椎橋氏。技術と人による判断を融合してアルゴリズムを作っていくことが大事だといいます。

そこでBCGではアルゴリズムを使いながら、PDCAを早く回していくための組織体制やオペレーションの仕組み作りも支援しています。

「毎週1%ずつ改善すれば1年で60%以上の改善が可能になります。これを1%ルールと言っていますが、こうしたやり方で組織を変えていくことをめざしています。もう一つがアジャイル。当社が支援している企業ではこのような仕事のやり方を採用することも難しく、組織がハードルになってパーソナライゼーションが進まないこともあります。クライアントと一緒に根気よく進めていくことが大事です」(椎橋氏)

パーソナライゼーションを導入したA社はキャンペーン効果やレスポンス率が向上、会員売上が約10%上がったといいます。

「BCG自体も進化している」と椎橋氏は言います。「パーソナライゼーションのエンジンをSaaSで展開する企業をスターバックスと合弁で設立し、アメリカで事業を展開しています」(椎橋氏)

つまりコンサルティングファームとしてSaaSの領域に踏み出していくという新しい取り組みが始まっているのです。

「自らリスクを取って、新しい事業を作っていくこともやっています。そういったことに関心のある人にとっても魅力的な職場だと思います」(椎橋氏)

DigitalBCGとコンサルタントによるコ・バリュー・クリエーション

最後に登壇したのは、BCGプリンシパルの中澤佳寛氏。中澤氏はこれまで従来型のコンサルティングに従事してきましたが、現在はTechnology Advantageに所属。「デジタルテクノロジーやデータ・アナリティクスを使ってトランスフォーメーションをいかに実現していくか。バリューを創出していくかということを中心にコンサルティング活動を行っています」と語ります。


▲ボストン コンサルティング グループ プリンシパル 中澤 佳寛氏

中澤氏が現在、携わっているA社のプロジェクトチームは、執行担当パートナーの下、複数のビジネスプロフェッショナルのコンサルタントとアナリティクスプロフェッショナルで構成されています。

「強調したいのはコンサルタントとAIソリューションズアーキテクトは日々、コラボレーションしていることです」(中澤氏)

A社は大規模事業会社。同社にはビッグデータやAIを使ったアナリティクスを通じてビジネスバリューを生むというカルチャーがありませんでした。同社のCEOにはデータ・アナリティクスを起点とした価値創造の仕組みを構築したいという意向があり、BCGに相談を持ちかけられました。

データ・アナリティクスをどう活用すれば、バリューを出すことができるのか。まずは全社的にユースケースを仮説として書き出すことから始まりました。そして優先付けし、「定期的にアップデートするサイクルを確立しました」と、中澤氏。その仕組みがデータ・ストラテジー・ワークショップです。最終的に実行するユースケースについては部門長が集まり、議論します。このようなサイクルをBCGが支援して構築しました。

「このサイクルをすでに何回か繰り返しており、わずか半年で多くのユースケースを立ち上げました」と中澤氏。そのうちのいくつかでは分析を行い、パイロットを実施し、現場への落とし込みも行っています。「お客さまからはそのスピードを評価されています」(中澤氏)

コンサルタントとDigitalBCGのコラボレーションのメリットは、「BCGのコンサルタントによるビジネスドリブンの仮説と、DigitalBCGによるデータドリブンの仮説を融合させることでインパクトの最大化を実現できることだ」と中澤氏は言います。

ビッグデータを分析しても、その結果をビジネスに生かすことができていないという話もよく聞かれます。しかしBCGのアプローチであれば、予めビジネスにとって有効な打ち手仮説を構築し、データ分析の設計をAIソリューションズアーキテクトと共に行います。

「つまり私たちの分析の成果を無駄にすることなく、現場に落としていくことができます」(中澤氏)

またその一方で、DigitalBCGには最先端のアルゴリズム、応用技術の知見やケイパビリティがあるので、それを活用し”The What”を進化させます。

「両者のシナジーが、お客さまへのインパクトの最大化につながっているのです」(中澤氏)

さらに中澤氏はコンサルタントとDigitalBCGによる協業プロセスについても説明。上の図のように、コンサルタント1人、AIソリューションズアーキテクト1人でチームを編成し、社内外の関係者と日々議論を重ね、最高スピードで最適解を進化させていくようなサイクルを作っています。

「議論して現場に落とし込むまでの一連の流れでは週次で意思決定を行っています」(中澤氏)

ユースケースの内の一つはお客様の離反を防止することをテーマとしたモジュール。同モジュールでは一般的な予兆の捕捉に留まらず、営業に実際に活用してもらうための分析も実施しました。

まず全顧客に対し、どのような属性の顧客が離反をしているのかを可視化し、さまざまなアルゴリズムやケイパビリティを用いたことで、その予測精度を大幅に向上。「これは評価されました」と中澤氏。

次に営業職員による最適なコミュニケーションを実現することを目的としたアナリティクスを実施。インパクトを実現するために、パイロットを通じてどのような結果が創出できるとビジネス部門が動くのかという観点から全体を設計。それと共に、実際に営業職員に活用してもらうためのプロセスを具体的に設計し、関連部門長から現場が腹落ちするまで丁寧に議論を行ったのです。

「クオリティとスピードを評価いただき、現在もこのプロジェクトは継続しています。新たなユースケースを立ち上げて進化させていき、最終的にはデータドリブンなカルチャーを作るところまで支援していく予定です」(中澤氏)

中澤氏はDigitalBCGのAIソリューションズアーキテクトという職種につくメリットは3つあるといいます。

第一が全社レベルでのビジネス問題を解決するための、BCGのチャレンジングかつ高度な仮説構築・分析を日々経験できること。第二が真のビジネスインパクトをBCGと創出することによって、アナリティクスケイパに加え、ビジネスセンスも身につけられること。第三がアジャイルで業務をすすめるため、他では見られない成果に近い分析の効果を短期サイクルで実現できること。

「データサイエンスに携わっている方にとっては最高の場所です。またテクノロジーやイノベーション領域のコンサルティングに興味のある人にとっても面白いプロジェクトが多く経験できる場です。関心のある人はぜひ、応募してください」

今や戦略コンサルティングにもデジタル技術の活用が欠かせない時代。デジタル技術で企業や社会を変革させたいという人にとってBCGは魅力的な仕事場であるといえよう。

関心のある人は、ぜひ、次の機会に参加してみてはいかがでしょう。

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