LINEエンジニアが「LINE DEVELOPER DAY 2018」で初の試み──ポスターセッションで参加者と密に交流

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LINEエンジニアが「LINE DEVELOPER DAY 2018」で初の試み──ポスターセッションで参加者と密に交流

11月21日、東京・港区にあるイベント会場「八芳園」で、エンジニア向け技術カンファンレンス「LINE DEVELOPER DAY 2018」が開催された。今年のイベントコンセプトは「Next LINE」。LINEが投資する新たな技術領域におけるチャレンジや目指すビジョンなどが紹介された。

今回からの試みとして、ポスターセッションを実施。より参加者と密な交流ができる機会を設けた。10時の開場から18時の終了まで、目一杯、LINEの技術を堪能できる一日となったイベントの様子をレポートする。

テーマは「Next LINE」。LINEは何を目指して進んでいるのか

「LINE DEVELOPER DAY 2018」は、朴イビンCTOのオープニングセッションで幕を開けた。今回のイベントのコンセプトは「Next LINE」。つまりLINEが目指す未来、それを実現するために挑戦している技術について語られるという。


▲LINE / CTO 朴イビン氏

「LINEが目指している方向性は2つある」と朴氏。第一が「Connect」。それを強化する技術としてLINEが取り組んでいるテーマが「DiscoverとNatural UXです」と朴氏。サーチやレコメンデーション、パーソナライゼーションを高度化していくとともに、音声認識や音声合成、対話力、OCRなどのテクノロジーを通じてよりリッチなインタフェースの構築にチャレンジしているという。これらの技術のベースにはAIがあり、LINEではその研究開発にも取り組んでいる。

第二の方向性が、「Mutually Beneficial Ecosystem」。これを実現するために、取り組んでいるのがAPIの公開の推進、そして「LINK Chain」というトークンエコノミープラットフォームの提供である。

これまでLINEではさまざまなAPIを公開してきたが、朴氏は今年6月にリリースした「LIFF(LINE Front-end Framework)」と7月にリリースした「Clova Extentions Kit」を紹介。LIFFはLINEアプリのトークルーム内で動作するWebアプリの実装を可能にするフレームワーク、「Clova Extentions Kit」はClovaデバイス上で動作するスキルを自由に開発・拡張するためのキットである。

またLINK Chainのベーステクノロジーとして採用しているのがブロックチェーンである。

「LINK Chainは大規模なコンシューマサービスに対応した、サービスオリエンテッドなブロックチェーンとなっています」(朴氏)

LINEはなぜ、AI、ブロックチェーン技術に注力するのか

AIおよびブロックチェーンのさらなる詳しい取り組みについては、AIについては上級執行役員 サービス開発担当 池邉智洋氏、ブロックチェーンについてはBlockchain Labの那須利将氏が登壇した。


▲LINE / 上級執行役員 サービス開発担当 池邉 智洋氏

池邊氏はAIに取り組む理由として、「音声アシスタントには可能性があるため」と言う。そのためその要素技術である音声認識技術、自然言語理解技術、音声合成技術の開発を推進。そのほかにも、パーソナライゼーションや画像を元に類似検索するようなコンピュータビジョンの領域にも投資し、開発を進めているという。

「開発したこれらのAIの関連の技術については、APIという形で提供していくことを予定している。そうすることで私たちのエコシステムを拡張していきたい」と池邊氏は意気込みを語る。

続いて登壇した那須氏はブロックチェーン技術を用いて独自開発したLINK Chainについて紹介。LINK Chainを使うことで、「現金やポイントをユーザーに還元する仕組みを容易に実現できる」と語った。

ブロックチェーンを採用しているので、安全性と透明性も確保できるのも特徴だ。「dApps(分散型アプリケーション)、サービスを使うユーザー、サービス提供者がお互いに成長していくエコシステムを目指すためのプラットフォームとなる」と説明する。

またLINEはLINK Chainを活用したサンプル実装として、dAppsを開発。「4CAST(みんなで参加する未来予想コミュニティ)」「Wizball(知識共有のためのQ&Aサービス)」などはその一例だ。今後、12月にスケーラビリティを強化し、来年春にはパートナー企業向けにLINK Chainを公開。また夏には一般の開発者にもLINK Chainを公開する予定だ。

Fintech領域にも積極的に進出

LINEはまたLINEプラットフォーム上で展開するサービスの開発にも取り組んでいる。今年最も力を入れているのがFintechである。フィナンシャル開発室 室長の池田英和氏が登壇し、LINE Payをはじめ、日本とアメリカを除いて提供されているBITBOX(ユーザー間で仮想通貨の取引ができるグローバルな取引所)、LINEほけん、LINEスマート投資、LINE家計簿などLINEが取り組んでいるFintech領域のサービスについて紹介した。


▲LINE / フィナンシャル開発室 室長 池田英和氏

LINEでは今後、「LINE Pay for ID決済」を推進し、他社のECサイトからLINE Payで決済ができるよう対応していくという。「Profile+と連携しているので、住所などを入力することなく決済ができ、ユーザーの利便性が上がるはず」と池田氏は説明する。

もちろん、Fintechサービスを展開していくためには、セキュリティ対策は欠かせない。「LINEでは利便性の向上を目的に、パスワードレスの認証技術の研究開発を進めています」と池田氏。またFIDOという生体認証など、よりシンプルで堅牢な認証技術の標準化に取り組む団体のボードメンバーにも参加し、国際標準の推進にも貢献していく。

このオープニングセッションを聞けば、LINEが今、何に取り組んでおりどんな方向性に進んでいるか、その概要がわかるという仕掛になっている。技術の詳細について知りたい、LINEエンジニアの働き方について知りたいという人は、その後4カ所のホールで行われたセッション、もしくはカフェで行われたLTなどを聞くという流れだ。

気軽にLINEのエンジニアと交流できるポスターセッション

「もっと気軽にLINEの技術に触れたい」「LINEエンジニアと交流したい」という人にとって、嬉しい試みだったのが今回、初めて行われたポスターセッションである。ポスターセッションはホワイエと呼ばれる、ホールAとホールBの間にあるロビーで実施された。各ホールに向かう導線にあるため、掲示されている10枚のポスターは多くの人の目にとまるようになっていた。

ポスターセッションは12時25分、14時45分、16時25分の3回、発表者がポスターの前に立ち解説を行うという形で行われた。今回、発表されたテーマ内容は次の通り。

  1. Taipei Metro x LINE TODAY: Rapid Development of Wow Beacon LBS with LINE
  2. 大規模なスパースデータを扱うための分散機械学習処理系について
  3. Practical Lessons from Predicting Clicks on Ads at LINE Corp
  4. LINEのデータサイエンティストを支えるRの技術
  5. 俺の考えた最強のマイクロサービス - LINE Shop の事例を添えて
  6. SAORI: multi-platform, multi-language package manager
  7. GROWTHY, Essential Platform for Data-driven
  8. LINE SDK のオープンソース化
  9. Voice UIによる音楽検索 -「ねえClova、打ち上げ花火かけて」の大変さ-
  10. Deep Learningを用いた楽曲データの特徴量抽出とその推薦システムへの応用

これらの中から、いくつかどのような発表が行われたのか紹介しよう。

ポスター5「俺の考えた最強のマイクロサービス - LINE Shop の事例を添えて」

LINE開発1センター LINE開発1室の川田裕貴さんとLINE Fukuoka 開発センター開発1室の林康司さんが発表。LINE ShopはLINEスタンプやLINE絵文字、着せかえなどLINE内の有料デジタルコンテンツを販売するサービスだ。

「LINE Shopの開発に携わっているのは東京と福岡のメンバーを合わせて18人。当初はモノリシックな実装で、その後どんどんサービスも増えサーバーも増加、メンバーが増えるに伴い、新機能追加、サービスのモニタリングやメンテナンスが追いつかなくなってきた」と、林さんは説明する。

これらの問題を解決するため、マイクロサービス化に取り組む事になったという。「LINEではマクロサービス化のためのフレームワークと環境などが整備されている。だからこそ最強のマイクロサービス化が実現した」と林さん。

マイクロサービス化をしたことで、リファクタリングや新機能の追加などもやりやすくなった。またコードが短くなったことで、問題発見も容易になったり、あるサーバーで問題が発生しても、他のサービスに影響が出ないため、メンテナンスもやりやすくなったという。

「もちろん、学習コストはかかります」と林さん。最強のマイクロサービス化が実現した裏側には、分けすぎて困ったこともあったという。そのため、LINEでは積極的にどのサービスもマイクロサービス化を進めているわけではないという。各チームの判断で取り組んでいるのだそうだ。

ポスター6「SAORI: multi-platform, multi-language package manager」

SAORIは開発2センター ゲームプラットフォーム基盤開発室が開発した、クロスプラットフォームプロジェクトにおける依存性の一元管理を可能にするCLIツールである。スマートフォンゲームなどの大規模なクロスプラットフォームプロジェクトでは、頻繁なフェッチ作業やコンフィグスクリプトの手動管理など、依存性がいろいろなところに分散し、それを開発者自身が管理しなればならなかった。

「それらを1コマンドでできるようにするツール。ゲームの開発者には使いやすいように設計されており、開発効率も飛躍的に上がるはず。現在、LINE社内で試験的に使われており、年内にオープンソースとして公開する予定です」とハーバス安利さん。またLINE GAMEのSDKなども、このパッケージで公開しようという考えもあるという。

ハーバスさんは、ポスターセッションを行ってみて、「1カ月という短い期間で準備をしたので大変でしたが、LTや通常のセッションと違い、参加者の方と直接、会話ができるのが楽しいですね。質問もたくさんもらえるので、参考になります」と語った。

ポスター7「GROWTHY, Essential Platform for Data-driven」

「GROWTHY Analysis Platform」はデータドリブンを通じてビジネス活動を成功に導くための分析プラットフォームだ。データ分析と開発を担当している、LINE開発2センター ビッグデータプラットフォーム室のJaeYong ChoiさんとTaeho Yunさん、LINE Plus株式会社のBig Data Platform GROWTHY PlatformのHyeongBae Shinさんの3人が発表した。

同プラットフォームはSDKを通じてデータを収集するCollector、Hadoop ecoSystem基盤のデータを保存するStorage、ユーザーの行動データを基にデータ基盤の意思決定をサポートする分析ツールGROWTHY Analytics、Raw Dataを通じてSQL基盤のSelf分析環境を提供するGROWTHY Probeで構成。

「分析のプロでなくても、条件を設定すればさまざまな分析ができるような仕組みも用意している」と発表者。ユーザー分析、原因分析などに活用できるUser Segment Analysis、リスクマネジメントに活用できるFrauds Detect Analysis、サービスの今後を予測したり、重要KPIの予測値を提供してくれるSales Forecast Analysisなどがその一例だ。

「データの収集から加工、自動化、そしてサービスがリリースしてからの運営に関してサポートするのが、GROWTHY Analytics Platformです」と発表者談。現在はLINE社内での活用だが、さらにブラッシュアップしていき、外部に公開していきたいという。

ポスター9「Voice UIによる音楽検索 -『ねえClova、打ち上げ花火かけて』の大変さ-」

Search&Clova開発室の四倉晋平さんが、Voice UIによる音楽検索の仕組みについて紹介。実際のデモではAIアシスタント「Clova Friends」に「ねえClova、ドラえもんをかけて」と話しかけ、Clovaが「ドラえもんのうた」というアニメの主題歌を流すことを披露。これを実現している楽曲検索エンジンの開発が、いかに難しいかについて解説が行われた。

楽曲リストは次のようなフローで作成される。

  1. 音声認識で文字列を認識し、検索条件の候補となるキーワードを抽出する
  2. 検索条件を特定するため、曖昧性を含んだ検索を実行
  3. 最終的な楽曲リストの作成

例えばデモで行った「ドラえもんをかけて」という場合、ドラえもんというキーワードだけでは、それがアーティスト名なのか、曲名なのかによって、かける曲が変わってくる。そこで「ユーザーの視聴履歴なども参照して、ユーザーにとって一番適したプレイリストを作成していく」と四倉さんは説明する。

音声UIは子どもや高齢者など、ITに詳しくない人に技術であることから、「さらに改良を加え、より品質の高い検索システムを開発していきたい」と意気込みを語る。

LINEのAIアシスタントの良さについても次のように語ってくれた。

「競合他社に比べ、日本の文化を熟知している日本語のスペシャリストのエンジニアが携わっていること。もっとたくさんの人に使っていただきたいですね」(四倉さん)

ポスターセッションの良さは、気軽に発表している内容について質問ができること。多くの参加者のみなさんが思い思いの質問を、発表者に投げかけていた。このポスターセッションでも発表していたのはLINE本社のエンジニアだけではない。京都や福岡の拠点のエンジニアをはじめ、韓国のLINE Plusに所属するエンジニア、台北のエンジニアとも交流できる機会にもなっていた。


▲池澤あやかさんもポスターセッションを見学

カフェで開催されたLTも大盛況。参加者たちはくつろいだ様子でLTに耳を傾けていた。 八芳園という都会の真ん中でありながら、都会を感じさせない空間で行われた今年の「LINE DEVELOPER DAY」。LINEの今がわかる、充実した一日になったことは間違いなさそうだ。