ソフトウェアエンジニアがクルマのコアを語る─モビリティの価値を最大化する車載ソフトウェア開発の最前線

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ソフトウェアエンジニアがクルマのコアを語る─モビリティの価値を最大化する車載ソフトウェア開発の最前線
デンソーでは、ソフトウェアエンジニアが画像処理、AI、クラウドなどのIT技術を駆使し、クルマづくりに取り組んでいる。デンソーの取り組みや技術活用の舞台裏を語る【DENSO Tech Night】第一回は、車載ソフトウェアにおける取り組み、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の実現、生成AI活用の事例などを語ってくれた。

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車載ソフトウェアにおける デンソーの『これまで』と『これから』

デンソー 林田 篤
株式会社デンソー 上席執行幹部
Chief Software Officer(CSwO)
ソフトウェア統括部長
ソフトウェア改革統括室長 林田 篤氏

最初に登壇したのは、携帯電話やナビゲーションシステムなどの大規模ソフトウェア、コックピットシステムの開発を経て、現在はデンソーグループ全体のソフトウェアを統括する林田篤氏である。

国内最大級の自動車部品メーカーであるデンソーは、従業員数16.2万人、売上高7.1兆円。パワー半導体の開発などにも注力しており、年間の研究開発費は売上高の8%、5509億円にも上る。

デンソーでは、40年以上前から車載全領域のソフトウェア開発に取り組んでおり、Tier1でも全領域に臨んでいるのは世界でもデンソーだけである。まさに自身のソフトウェアエンジニアのキャリアと重なるデンソーのこれまでの歩みを林田氏は語った。

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一方で、デンソーがこれからソフトウェアで実現したい未来についても述べた。これまで長きにわたり培ってきたモビリティ領域のソフトウェア技術を、幅広い産業や社会に展開することで、多くの人々の幸せに貢献していくことだ。

パートナーとの関係性も変化していく。従来のピラミッド型の受注・発注者との関係性や位置づけではなく、「仕入先も納入先も含め、一緒になって新たな価値を共創していきたい」と、林田氏は力強く語った。

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自動車業界には事故や渋滞、物流問題といった課題に加え、燃費など、環境も伴う社会課題がさまざまある。これらの社会課題を解決するためにはSDV化による機能統合が必要であり、「今後ますますソフトウェアの重要性は向上していく」と、林田氏は語る。

実際、統合ECU(Electronic Control Unit)の世界市場ならびに、自動車で使われるソフトウェアコードの桁数のこれからの予測を提示。航空機のソフトウェアコードの行数が約1億桁であることを示し、2030年までには、6億桁にまで増加する車載ソフトウェアの重要性を繰り返した。

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デンソーが描く未来を実現するには、これまで培ってきた以下スライドの中央赤枠、In-Car領域の技術をベースとしながら、そのままでは自動車で使うことは難しいIT技術を車載ソフトとして活用する「界面」の技術に注力することが重要だと林田氏は強調する。「界面を含むIn-Car領域の技術を活用する人材も重要です」と、続けた。

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このような考えからデンソーでは、ソフトウェア人材の育成にも注力している。

キャリアイノベーションプログラムという名称で進めており、プログラムのひとつである「リカレントプログラム」は、リスキリングを通じた優れた人材育成を進めている企業や団体に贈られる「日経リスキリングアワード2024」においては、企業・団体総合部門の最優秀賞を受賞している。

また、ソフトウェア技術のエコシステムを構築することで、開発時間の削減などを通じて、業界全体にも貢献していく。

人材育成についても同様だ。組織や業界の枠を超え、大学や省庁での学びや育成など、社会全体でソフトウェア技術者育成のエコシステムを構築していく。その中心、象徴となるのが優れたソフトウェアエンジニアを認定する「SOMRIE™認定制度」である。

業界の枠を超えて通じる普遍的な認定制度を設けることで、ソフトウェア技術者の学びに対するモチベーションをアップさせる。さらには人材が官学も含め横断、さまざまなキャリアパスを経験することで、より優秀なソフトウェア人材に成長することを目指している。

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実際、デンソーはサプライヤーとして唯一、自動車に関するソフトウェア技術の標準化などを目指す組織、JASPAR(Japan Automotive Software Platform and Architecture)の幹事会社として参画しており、現場の立場から積極的に発言している。

「このようなさまざまな活動に取り組みながら、世の中、社会に貢献したいと思っています」。林田氏は改めてこのように述べ、ファーストセッションを締めた。

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SDV実現のカギはソフトウェアエンジニアが握っている

デンソー藤守 規雄
株式会社デンソー
執行幹部(フェロー)
モビリティエレクトロニクス事業グループ
電子PF技術開発担当 藤守 規雄氏

続いて登壇したのは、車載メーターのソフトウェア開発、海外での開発経験などを経て、現在は執行幹部(フェロー)として、電子プラットフォームシステム部門を担当する藤守規雄氏だ。

「車が好きでデンソーに入社しました」という藤守氏は、サーキットで開催されるカーレースにも定期的に参加しているという。自宅でバーチャルに行う際にソフトウェアの技術を活用して練習していると紹介した。

サーキットでの実際の走行の様子ならびに、自宅でのバーチャルの練習風景を動画で流しながら、「シフトアップやダウンなど、ほぼサーキットと同じように自宅で体験できます」と楽しそうに話した。

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100年に一度の大変革期と言われる自動車業界では、CASEやコネクティッドカーといったキーワードに続き、SDVという言葉が特に使われるようになってきた。

デンソーにおけるSDVとは、「素性の良いメカにハイパフォーマンスECUの上でソフトウェアが活き、そのソフトウェアがイノベーションを起こす」と、藤守氏は説明する。

「エンジンやブレーキを始め、ボデー制御がメカから電子制御に変わった。さらに最近ではADAS、コックピットなど電子制御出来る部分が増えてきた。これらクルマ全体のセンサーやアクチュエータをすべからくソフトウェアで扱える様にする事で、新しいイノベーションが起きると考えています。 」(藤守氏)

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藤守氏は、ソフトウェアでイノベーションを起こすためには、UXならびにDevOpsの思考や取り組みがポイントであり、実際、UX思考でシステムを開発する部門も設けたと説明する。そして、デンソーにおけるソフトウェアにおける取り組みを紹介していった。

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まず語られたのは、UXについてだ。モビリティに対する安心感ならびに、人を理解するインテリジェントな体験を提供していく。

「特に昨今はジェネレーティブAIなど人工知能が急激に発達してきていますので、一味違った車になるのではないかと考えています」と、藤守氏はイノベーションに対する期待を語った。

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デンソーが掲げる5つのUXコンセプトも紹介された。例えばコンセプトBでは、点のサービスではなく、運転免許を取得してから返納するまで、ヒトのライフステージに寄り添うかたちの車を提供していく。

なおA~Cのコンセプトはドライバー向けであるが、DとEは開発者に関するUXである。具体的には、個々のユーザーの体験をリアルタイムでフィードバックしたり、多様な業界とコラボレーションすることで、これまでになかった規模での共創価値を生み出していく。

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藤守氏はここで、特にAのコンセプトを実現する「人と車のハーモニー」をテーマとしたイメージムービーを紹介した。

現在の車にはさまざまな機能が搭載されており、ユーザーはそれらの機能が正しく動いているかどうかを重視する。逆に車側は、機能が正しく情報を伝えることが求められている、と説明した。

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上記イラスト:イメージムービーの一部より抜粋

車側の機能が多いために、特に人側はすべての機能を正確に把握することが難しい。そこでデンソーでは、両者をつなぐマネージャー(下イラスト内オレンジ色の服を着た人)のような存在を提唱している。

マネージャーは、ユーザーの行動から性格までを認識し分析することが出来、個々のユーザーの専属マネージャーと言える振る舞いを行う。それは 運転中の操作だけではなく、ユーザーの車両周囲状況までを把握し、これから運転し始める際に近くで子どもが遊んでいるから注意を促すということまでを可能にさせる。

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上記イラスト:イメージムービーの一部より抜粋

デンソーではすべての車にこのマネージャーが搭載され、マネージャー同士が連絡を取り合うことで、すべての人が安心安全で快適なカーライフを過ごせるようになる。また、人と車のハーモニーがもっと親密になっていく。そのような世界の実現を目指している。

そしてここでも昨今のAIの急激な技術進化などにより、「このような世界の実現も確信が持てるようなっています」と、藤守氏は力強く述べた。

続いてDevOpsについて語られた。ここでもキーワードはAIである。デンソーが掲げるDevOpsでは、機械学習をサイクルに加えているからだ。具体的には市場に展開した後不具合などが生じた際、データを自動的にアップロードするなどのリトレーニングを行い、改めてデプロイするようなフローをイメージしている。

また、いわゆるプロダクトアウトにならないように、市場の声も積極的に取り入れるべく、ビジネスディベロップメントもサイクルに加えている。

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このようなUXを短期間で実現していくために、スマートフォンのアーキテクチャを参照している。藤守氏は次のように述べ、セッションを締めた。

「ソフトウェアが車の価値を、どんどん変えていく時代だと思っています。多くの方が車載用ソフトウェアの開発を体験し、活躍するような時代です。そのような社会になるのが私の願いです」(藤守氏)

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新技術の活動で乗車体験はどう変わる?生成AI活用の事例を紹介

デンソー近藤 真之
株式会社デンソー
統合システム開発部
課長 近藤 真之氏

デンソーでは現在、車載ソフトウェアに従事しており、2021年からSoftware Defined Vehicle開発を担当している。近藤氏は社内のスペシャリストSOMRIE™に認定されている他、未踏ソフト創造事業スーパークリエーター/天才プログラマーで、藤守氏はバトンを渡すときに「若手のホープです」と紹介した。

近藤氏はまず、車載ソフトウェアの開発環境を大きく3つに分けて紹介した。1つ目はミラーなどを動かすソフトウェアであり、OSはなし。アセンブラやCといった言語で書かれている。

2つ目は、C言語を使いリアルタイムOSで動かすソフトウェアだ。エンジンやネットワーク制御といった機能で使われる。3つ目はカーナビやメーター表示を実現する、CやC++言語で書かれたソフトウェアであり、こちらはLinuxで制御する。

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だが、「それぞれのソフトウェア開発領域において課題がある」と、近藤氏は語る。中でもSDVの定義である、発売後にソフトウェアを更新することについて「非常に難しかった」という。そこで、簡便にソフトウェアを更新できる環境を構築するとした。Dockerを活用した、車載ソフトウェア開発プラットフォーム「Quad」である。

近藤氏はイメージ図も紹介した。パソコン上で開発した車載アプリケーションは、OTA(Over the Air)を介してDockerコンテナの車載アプリとしてインストールされ、そのまま実行される。

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パソコン上の開発環境もDockerですべて提供されており、ワンコマンドでインストールできること。Webインターフェースであることを、実際の画面とともに紹介した。

シミュレーションを行う様子も紹介された。画面内に描かれたバーチャルの車を利用することで、ドアの開閉の動作チェックなどが、実車を使うよりも遥かに簡便に行えることが分かる。また動画ファイルをアップロードすることで、カメラのシミュレーションも行える。

ローカルPCで開発したDockerコンテナは、OTA経由で車にインストールされるが、その動作もドラッグアンドドロップだけ。しかも100台同時に、一度の操作でインストールすることも可能だ。

車からアップロードされたデータはAWSのS3に保存、Snowflakeのデータウェアハウスに追加される構成となっており、Webシステム上でいつでも確認でき、データの抽出が行える。例えば、スピードが100km以上で走る車のデータをSQLで簡単に抽出できる。

QuadプラットフォームにはJupyter Notebookも内蔵されているため、コードの可視化や公開されたAPIを使い、独自のスマホアプリを作ることも可能だ。そして既に、同環境は公開され、利用されている。

Quadのプラットフォームで重要なのがデジタルツインの考えであり、こちらもRustを使ってDUOというアーキテクチャを車載機とクラウド上に構築した。まさにデジタルツインらしく、DUOの内容が車両・開発側と同期しており、データの確認や書き換えが可能となっている。

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車両データの取得に関しては、コネクティッドカーの技術や標準開発などを目指す国際的な枠組みであるCOVESA(コネクテッド・ビークル・システムズ・アライアンス)。同組織が定義し、公開しているVSS(Vehicle Signal Specification)に則り、RESTを使って取得している。

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近藤氏はデジタルツインの例も示した。リアルな車のドアを開けると、モニターしているスマホ内のバーチャルカーのドアも同期し、開いていることが分かる。

また、紹介したような技術を使うことで、開けっ放しにされた窓を、スマホを使って遠隔操作で閉めることも、RESTを使ってちょっとしたコードを書くだけでできるようになる。

一方で、車に悪影響を及ぼすような同期がなされないように、サンドボックスやファイアウォールを使って、常に車の安全性が保たれるような配慮もしている。近藤氏は改めて、ここまでの内容を次のようにまとめた。

「これまでの車業界は組み込み技術のみで、職人の世界でした。しかし今は、クラウドネイティブな技術で車が作れる時代が来たと思っています。実際、私のまわりにもIT系から移ってきた人が増えています」(近藤氏)

ここからは生成AIに関する取り組みについて紹介していった。まずは、生成AIが作り出す未来の姿をデモ動画で紹介した。1つ目の例は、ディナーの予約をしていたユーザーと生成AIとのやり取りである。

ユーザーのスマホにはQuad AIという生成AIアプリがインストールされており、突然の渋滞により、このままでは予約した時間にお店に行くことが難しいことを察知したQuad AIは、ユーザーにプッシュ通知で伝える。

ユーザーが「出発を早くして」と返答すると、Quad AIはGoogleカレンダーのイベントを編集して、出発時間を早める。また時間を早める以外にも、タクシーやバスなどを使い、どうにか当初の時刻に間に合わせるような検索も生成AIはしてくれるようになるという。

「今後のさらなる発展が進み、非常に便利な世界になると思います」(近藤氏)

続いては、高速道路を運転中のドライバーの疲労を感知し、休憩場所を提案する事例だ。活用する機械類の構成はスライドのとおり。カーナビ、車内カメラの他、トランク内にQuadを内蔵した車載器を搭載している。

カメラによりドライバーがあくびをしたことを感知したAIは、「お疲れのようですね。サービスエリアで休憩しませんか?」と提案する。ドライバーが「頼みます」と返事をすると、ナビゲーションシステムと連動し最寄りのサービスエリアを設定。車間距離を最大に設定する提案も行う。

近藤氏は紹介したAIサービスの構成図、まずはバックエンド側を紹介した。まさにデジタルツインである。DUOを噛ませることで、クラウド上に車内と同じシステムを構築していることが分かる。

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対してフロント、自動車サイドではリアルなカメラが得た画像データを、画像の解説をするLLMを経て、デジタルツインに登録する。

このデジタルツインに登録されたカメラ画像の説明を、先ほど紹介した見守りアプリは取得する。具体的にはあくびの他、車速、座標といったデータである。

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見守りアプリには、Alexaのようなユーザーの声とやり取りできるAIモデルが実装されており、DUOの画像からユーザーが疲れていると判断したら、休憩を提案する。

ただし、休憩場所の選定においては「ChatGPTなどに聞くと、結構嘘をついてきます」と近藤氏は解説する。

そこで、休憩場所の選定に関してはナレッジベースをあらかじめ用意しておき、確実な場所を伝える構成とした。

車間距離(ACC/アダプティブ・クルーズ・コントロール)においてもDUOを設定することで、リアルな自動車に反映される仕組みとなっている。近藤氏は最後に次のようなメッセージを送り、登壇セッションを締めた。

「本日お話した内容のように、これからのソフトウェアデファインドビークルで活躍するのは組み込み系のソフトウェア技術だけでなく、IT系の技術者です。我々と一緒に、未来の車を創りましょう」(近藤氏)

【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答

本イベントにはオンライン枠だけで、1000名を超える申し込みがあった。セッション終了後は、参加者から寄せられた質問に、登壇者が回答する時間が設けられた。抜粋して紹介する。

Q.これからの自動車ソフトウェアの開発人材に求められる要件とは?

林田:近藤が最後に説明したように、AIやITといったこれまでの組み込みエンジニアやデンソーの常識とは異なる、文化や考え方を持つ方々が刺激になると考えています。

Q.車載ソフトウェアの開発主体はこれから誰になるのか?

林田:「みなさん」というのが答えだと思っています。というのも、我々は命に関わる重要な部分は担保しますが、アプリケーション自体はさまざまな業界の方々に作ってもらいたい、と考えているからです。このような考えで、基盤ソフトやアーキテクチャを設計しています。

Q.サイバーセキュリティに関する取り組みとは?

藤守:万が一セキュリティが破られても、次のファイアウォールを何段階も用意する。このような多層防衛の考えならびに仕組みを用意しており、車の心臓部にはダメージがないよう努めています。

一方で、このような取り組みだけでは不十分だとも考えていて、エッジ側とクラウド側をセットで、攻撃をすぐに察知して対策する見守りサービス的なことも考えています。

Q.ソフトウェアももちろん大事だが、ハードウェアも大事なのではないか?

藤守:おっしゃるとおりです。特に2つあります。安全を守ること。新しい体験において、ハード・ソフトウェアの両立が必要だと考えています。ただ両立をしながらも、両者にはしっかりと境界線を設ける。変えなければいけないこと、逆に、変えてはいけないことの両立も意識しています。

Q.Kubernetesも使っているのか?

近藤:以前は使っていましたが、移動体での利用は品質面などに課題があったため、オーケストレーターに当たる部分はデンソー内で完全内製化しました。

Q.SDVが進むと安価なハードの台頭などにより価格競争に陥るのではないか?

林田:そのような世界は来ないと考えています。というのも車の安全担保は手間がかかるからです。実際、これまでも半導体ベンダーなどが参画してきましたが、長続きしていませんし、ハードとソフト分離の動きは15年ほど前からありますが、参入してきて成功した企業はいないからです。

Q.車内カメラのデータをクラウドにアップすると、プライバシーの問題が発生するのではないか?

近藤:今回紹介したデモンストレーションでは、車内でビジョンLLMを動かしているため、画像そのものはクラウドにアップされていません。クラウドに上がるのは結果や休憩場所を探すといった内容のみです。個人情報に該当するデータはアップロードしないことが一番重要だと考えており、ハードウェアを持つ我々が活かせる領域でもあると考えています。

株式会社デンソー
https://www.denso.com/jp/ja/

株式会社デンソー ソフトウェアのページ(DRIVEN BASE)
https://www.denso.com/jp/ja/driven-base/feature/software/
クルマづくりの主役はソフトウェアエンジニア   車載ソフトウェア開発歴40年

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