大規模言語モデル(LLM) - TECH PLAY - TECH PLAY

TECH PLAY

大規模言語モデル(LLM)

大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)は人工知能の一種であり、大量のテキストデータを学習して言語に関する知識を獲得する機械学習モデルです。自然言語処理の分野でとても重要な役割を果たしています。

イベント

マガジン

技術ブログ

本ブログは Umios 株式会社様 と Amazon Web Services Japan が共同で執筆いたしました。 みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの辻 浩季(つじ ひろき)です。 食品製造業において、販売計画の策定は生産計画・在庫管理の根幹をなす業務です。しかし、膨大な商品数と拠点数を抱える企業では、この業務が担当者の経験と勘に依存し、多大な工数を要するケースが少なくありません。今回ご紹介するのは、Umios 株式会社様(旧マルハニチロ、2026年3月に社名を変更)が Amazon SageMaker JumpStart 上の時系列基盤モデル「Chronos-2」を活用し、販売計画の自動化を実現した事例で、年間約4,200時間の作業削減を見込んでいます。 はじめに Umios 株式会社様は、創業146年の歴史を持つ食品メーカーです。冷凍食品を中心に、業務用流通事業と市販用冷食事業を展開しています。同社では、全国の支社の営業担当者が毎月、事業・商品・倉庫ごとに翌月以降の販売計画を手作業で入力しており、 業務用流通事業部の全支社で年間約4,200時間 を要すると試算されています。加えて、販売計画管理システム「PPPlan」上の管理データは約470万セルに上り、人手による管理は限界を迎えていました。 プロジェクト体制 本プロジェクトは、Umios 株式会社様の業務用流通事業部・DX 推進部、Umiosテック株式会社、AWS の4社協業体制で推進されました。 業務用流通事業部は業務要件の定義と現場運用ルールの整備を担い、DX 推進部は佐藤様がプロジェクト全体のマネジメントと同事業部・支社との仕様調整を、浦本様が技術選定を、深澤様が AWS 構成設計を、大木様が営業現場との業務フロー再定義を主導しました。Umiosテック株式会社は予測基盤の実装と精度検証を担当し、AWS はソリューションアーキテクトとして、Chronos-2 の提案・精度検証の技術支援・アーキテクチャ策定支援を行いました。 Chronos-2 を選んだ理由 Umios株式会社様では当初、社内で全社展開している生成 AI チャット基盤「UmiChat」(Claude Sonnet 4 ベース)を用いて需要予測の PoC を開始していました。しかし、LLM によるワンショット予測には再現性やシステム組み込みの面で課題がありました。 そこで AWS から提案したのが、 Chronos-2 です。 fig1. Chronos-2とは 説明スライド Chronos-2 は Amazon Science が開発した時系列基盤モデルで、以下の特長があります。 事前学習済み : 膨大な時系列データで事前学習されており、個別のモデル構築が不要。導入初日から予測可能 API ワンコール : 推論は API 呼び出しのみで完結し、ビジネスロジックの開発に集中できる デプロイ容易 : Amazon SageMaker JumpStart から数クリックで実行環境を準備可能 UmiChatを用いて精度検証を行ったデータを用いて、Chronos-2との比較検証を実施したところ、Chronos-2 が UmiChat を上回る予測精度を示したことから、Umios株式会社様は Chronos-2 を用いた本格的な PoC の実施を決定しました。 fig2. Chronos-2とUmiChatでの予測結果の比較(※MNGPTはUmiChatの旧名称) ソリューション / アーキテクチャ 現行運用の課題発見 ── 予測の流れを整理して見えたこと Chronos-2 による AI 予測の導入設計を進めるにあたり、まず販売計画予測の大きな流れを整理しました。流れ自体は3ステップとシンプルです。 営業担当者が自身の得意先の販売増減情報を更新する 支社単位で計画策定担当者が商品・倉庫別に月の販売計画を策定する 事業部にて販売計画をもとに生産計画策定へ進む しかし、この業務フローを AI 自動化の観点で詳細に整理していく中で、 3つの構造的課題 が潜んでいることが明らかになりました。 課題①: 販売増減情報の入力が徹底されていない 支社ごとに管理方法がバラバラで、システムに入力する支社、独自 Excel で管理する支社、運用が停止している支社と大きく3パターンに分かれてしまっており、AI に入力するデータの前提が崩れている状態となっていました。 課題②: 入力精度が担当者の経験に依存  計画値は各担当者の長年の経験と勘にもとづいて入力されており、属人化していました。 課題③:「3ヶ月先を当てなければならない」構造 計画策定から生産計画への反映までのリードタイムにより、予測対象が2〜3ヶ月先となり、精度の確保が構造的に困難でした。 fig3. 現運用の課題洗い出し これらは AI 導入以前に解決すべき課題であり、逆に言えば AI を活用するために必ず整備しなければならない土台 でもありました。「AI で何ができるか」ではなく「理想の姿にどう AI が活用できるか」から逆算した結果、まずこの土台を整えることが最優先だと判断しました。 上記の課題に対し、AI 導入と並走して以下の打ち手を講じました。 「AI 導入以前に、現運用の整理とあるべき運用の定義が重要」── これが本プロジェクトの核心メッセージです。完璧なデータを待つのではなく、入力しやすい仕組みで前進し、AI が「使える」状態を先に作ることで、Chronos-2 の予測精度を最大限に引き出す土台を構築しました。 3つの打ち手による運用設計 発見した3つの構造的課題に対し、AI 導入と並走して以下の打ち手を講じました。完璧なデータを待つのではなく、入力しやすい仕組みで前進し、AI が「使える」状態を先に作ることで、Chronos-2 の予測精度を最大限に引き出す土台を構築する ── という方針です。 課題①「入力の非徹底」に対しては、簡易入力アプリによる運用徹底。 課題②「経験依存」に対しては、Chronos-2 による時系列予測で属人性を排除。 課題③「計画精度の構造的困難」に対しては、日次予測更新と BI による見える化。 以下、それぞれの打ち手を詳しく説明します。 fig4. AI自動化の前にすべきこと 打ち手①: 簡易入力アプリによる入力運用の徹底 上述の課題①に対し、簡易入力アプリを内製しました。得意先ごとの販売増減情報を、全国共通フォームで誰でも同じ形で入力できる受け皿を整備。毎月20日に締切連携する運用ルールを設け、データの欠損とばらつきを排除しました。「全国統一で動いているつもり」は幻想だった ── この気づきが、完璧なデータを待つのではなく入力しやすい仕組みで前進する、という判断につながりました。 打ち手②: Chronos-2 による経験依存の脱却 上述の課題②に対して、担当者の経験と勘に依存していた予測そのものを、時系列予測モデル Chronos-2 で置き換える施策をとりました。ここでの設計上のポイントは、 現行運用を変えないまま 属人性を排除した点にあります。 従来どおり支社の計画策定担当者が最終確定する運用フローは維持し、AI はあくまで「ロジカルなたたき台」を提供する位置づけとしました。Chronos-2 は確率予測(P10 / P50 / P90)を返すため、下振れ・中央・安全側の3点を提示し、担当者が10日間の確認期間で現場の目で点検・修正して最終確定します。AI に任せきりにせず、人が責任を持つ ── この役割分担を事業部と合意したことが、現場の受容につながりました。 打ち手③: 日次予測更新と BI による見える化 上述の課題③に対し、最新の予測値を 日次で更新 する仕組みを構築しました。締切直前の最新実績まで取り込むことで、2〜3ヶ月先の予測であっても精度を底上げできます。さらに、既存BI ツール上で予測値・計画値・実績値を並べて可視化し、予測値との乖離アラート機能を付与。リアルタイムで状況把握が可能になりました。 この仕組みは販売計画策定の効率化にとどまらず、事業部の生産計画と在庫調整にも波及します。日々更新される予測値を素早くキャッチし、在庫最適化につなげる ── 販売計画自動化の効果が、サプライチェーン全体へ広がる設計です。 AWS アーキテクチャ 既存の実績 DB・BI ツールには手を加えず、その外側に AI 予測を追加するシンプルな構成を採用しました。 推論基盤 : Amazon SageMaker JumpStart(Chronos-2 エンドポイント) バッチオーケストレーション : AWS Step Functions 定期実行 : Amazon EventBridge(日次スケジュール) データストア : Amazon S3(実績データ・予測結果) fig5. AWS アーキテクチャ図 既存資産を最大限活かしたサーバーレス構成により、運用負荷を最小化しています。 精度検証と試行錯誤 精度検証の設計思想 Chronos-2を採用するかの判断基準に予測精度を用いました。ただ、初めから完璧を求めるのではなくまずは事業部が販売計画として許容できる受容ラインである60-70%(商品別×倉庫別×販売課別の月次粒度)を超えていればChronos-2を採用すると判断し、その後、特徴量エンジニアリングを行い予測精度80-90%を目指すという計画を立てました。結果として、PoCで対象とした定番商品の年累計総計ベースで95%の予測精度が得られました。 特徴量エンジニアリングによる精度改善 PoC 初期、一部の季節性商品で予測精度が想定を下回る課題が発生しました。具体的には、毎年2-4月にピークが来る商品について、Chronos-2 がその周期的パターンを捉えきれていませんでした(WMAPE 62.57%)。 fig6. 商品B の過去の売り上げ履歴 この問題に対し、周期性を明示的に示す Month 列を特徴量として追加 するアプローチを適用したところ、WMAPE が 62.57% → 20% へと大幅に改善しました。 fig7. 特徴量にMonth列を加えた場合の予測結果(予測値はmean値をプロット) fig8. 過去データを1年増やした場合の予測結果(予測値はmean値をプロット) 試行錯誤から得た知見 精度改善の過程で、以下の知見が得られました。 (1) 実績データ ≠ 真の需要 販売実績データは「売れた量」であって「本当の需要」ではありません。たとえば処分販売(通常100 円の商品を在庫消化のため20円で販売するケース)はデータ上スパイクとして現れますが、これは在庫余剰の結果であり需要ではありません。このスパイクを学習データに含めたまま予測すると、将来もその異常値が繰り返されると誤認し、予測が大きく外れます。 対処として、処分販売データを学習対象から除外し「需要だけ」を学習対象にしました。何を入れ何を外すか ── このデータキュレーションの判断が精度を分けるポイントでした。 (2) 商品コード改廃の壁 食品業界特有の課題として、規格変更のたびに JAN コードが世代交代し、販売履歴が分断される問題がありました。たとえばある冷凍食品は2010年・2012年・2015年・2021年・2025年と5世代もコードが変わっています。コードが変わるたびに販売履歴がリセットされるため、周期性が読めなくなります。 現場では手作業で新旧コードを紐付け(グルーピング)して対処しましたが、抜本的にはマスターデータの整備が必要です。なお、現在展開中の商材にはこの問題に該当するケースがなく、顕在化していませんが、横展開時には避けて通れない課題です。学びは「AI 予測を始める前に、マスターの整備が精度を大きく左右する」ということでした。 (3) 予測に寄与する可能性のある特徴量のデータ入力の整備 上述の打ち手①の具体的な施策として、前述の簡易入力アプリ(内製)で受け皿を統一しました。全国共通フォームで同じ形式で入力でき、毎月20日に締切連携する運用ルールを設けることで、欠損とばらつきを排除。販売増減見込みを予測に寄与する特徴量として使える状態を整えました。統一による精度への効果はこれから検証する段階です。 (4) 季節性の捉え方 初期検証では1年分の販売データのみを使っていましたが、ピークの時期やパターンを捉えきれず誤差が大きくなりました。データ範囲を3年に拡張し、さらに「月(Month)」を特徴量として明示的に追加したところ、季節品の予測精度が大幅に改善。効果のあった調整から順に取り入れる、というアプローチで段階的に精度を上げていきました。 得られた成果 本取り組みにより、以下の成果が得られました。 営業担当者の月次計画入力作業を大幅に自動化: 全商品に展開すると 業務用流通事業部の全支社で年間4,200時間の作業削減見込み 定番品年累計総計ベースで95%の予測精度 : Chronos-2 + 特徴量エンジニアリングによる高精度予測を実現 日次予測更新による迅速な状況把握 : 予測値と計画の乖離をリアルタイムで可視化し、在庫最適化に寄与 今後の展望 Umios株式会社様では、自動化の次のステップとして AI に「説明」と「行動」まで任せることを目指しています。 予測結果の説明可能性向上 : 「Chronos-2 は予測の結果しか返さない」という現場の声に対し、Amazon Bedrock AgentCore を用いたエージェントの構築を予定しています。Chronos-2 による時系列予測の実行と、予測結果の自然言語による考察をチャット形式で実現し、既存のUmiChatに組み込み可能であることを実証しています。 アクションの自動化 : 予測値と計画の乖離が閾値を超えた場合のアラート・推奨アクションの自動提示することで、現場での判断をしやすくする仕組みを導入する予定です。 対象商品の拡大 : 現在の定番品から、スポット品・新商品への予測対象の拡大し、さらに人手の作業量を減らす計画をしています。 まとめ Umios株式会社様は、「予測モデルを作る」のではなく「使う」ことを選び、Amazon SageMaker JumpStart 上の Chronos-2 を中核とした販売計画 AI を構築しました。 本プロジェクトの成功の鍵は、 勝負どころは予測モデルではなく、データと運用にある という方針のもと、AI 導入以前に現場の運用課題を徹底的に洗い出し、業務プロセス改善と AI 導入を並走させたことにあります。 目指したのは、現場が回る運用。それを事業部、DX推進部、Umiosテック(株)、AWSの関係者全員で一緒に作れたことが、一番の成果です。 著者について 浦本 和司  様 Umios 株式会社 DX 推進部 DX 推進課 生成 AI・クラウドを活用した全社業務の AI 化を推進。プロジェクトの技術選定を担当。             大木 優子  様 Umios 株式会社 DX 推進部 営業デジタルマーケティング推進課 デジタルを活用した営業業務の効率化促進。現状業務の整理・デジタル導入後の業務フロー再定義によりスムーズな運用をサポート。             佐藤 勝利 様 Umios 株式会社 DX 推進部 DX 推進課 販売計画AIプロジェクトの実務PMを担当。事業部・支社との仕様調整と、プロジェクト全体のとりまとめを推進。             深澤 薫平 様 Umios 株式会社 DX 推進部 DX 推進課 クラウド基盤の設計・構築を担当。本プロジェクトでは AWS 構成設計を主導。             髙橋 伸幸 アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト 小売・消費財業界のお客様を担当しています。元SIerの経験を活かした幅広い支援を得意としています。             辻 浩季 アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト 製造業のお客様を担当する傍ら、機械学習・生成AI領域で幅広いお客様をご支援しています。特に時系列予測を得意としていますが、自分の未来を予測するのには苦労しています。
この記事は、2026 年 9 月 1 日に Training and Certification Blog Editor によって執筆された「 Certification updates from AWS Training and Certification: September 2026 」を翻訳したものです。 AWS 認定は、クラウドに関わる役割の変化を反映して、3 つの認定を更新します。対象は AWS Certified Machine Learning Engineer – Associate (MLA-C02)、AWS Certified Solutions Architect – Professional (SAP-C03)、AWS Certified Developer – Associate (DVA-C03) です。このブログでは、変更内容、変更の理由、および重要な日程についてお伝えします。 ベータ登録受付中: AWS Certified Machine Learning Engineer – Associate (MLA-C02) AWS Certified Machine Learning Engineer – Associate (MLA-C02) のベータ版への登録が、英語で受け付けを開始しました。現行バージョン (MLA-C01) の英語での受験最終日は 2026 年 9 月 28 日です。現行バージョン (MLA-C01) は、2027 年 1 月 14 日の一般提供開始まで、日本語・韓国語・簡体字中国語で引き続き受験できます。 機械学習 (ML) エンジニアの役割は進化しています。今日の ML エンジニアは、従来のモデルを構築・デプロイするだけではありません。生成 AI ソリューションの実装、基盤モデルや大規模言語モデル (LLM) の活用、エージェンティック AI ワークフローのオーケストレーション、そして AI のプロダクション規模での運用が求められています。こうした変化に対応するため、更新された試験 (MLA-C02) では、従来の ML エンジニアリングに加え、生成 AI・エージェンティック AI・基盤モデル / LLM ワークロードが出題範囲に含まれます。この認定資格は、Amazon SageMaker AI や Amazon Bedrock、その他の AWS サービスを使用して、AWS 上で ML および生成 AI ソリューションを構築・デプロイ・維持・監視する能力を検証します。 対象者 更新された AWS Certified Machine Learning Engineer – Associate は、プロダクション環境で ML および生成 AI ソリューションを構築・運用する専門家を対象としています。主な対象ロールは以下のとおりです。 エンドツーエンドの ML ライフサイクル管理を担う ML エンジニア・MLOps エンジニア 基盤モデルと生成 AI アプリケーションを運用化する LLMOps エンジニア ML データパイプラインを構築・管理するデータエンジニア ML / 生成 AI 機能をアプリケーションに統合するソフトウェア開発者 ML エンジニアリングの役割に移行するデータサイエンティスト ML システムを設計する ML アーキテクトおよびソリューションアーキテクト 推奨経験 Amazon SageMaker AI、Amazon Bedrock その他の AWS サービスを使った ML エンジニアリングの実務経験 1 年以上 バックエンドソフトウェア開発者、DevOps エンジニア、データエンジニア、データサイエンティストなど関連職務での実務経験 1 年以上 従来の ML と生成 AI の両方に関する経験 備考: この認定資格は ML エンジニアと MLOps エンジニアが、従来の ML と生成 AI の両方にわたる最新スキルを保有していることを検証します。チームが今日のビジネス目標を達成するプロダクションレベルのソリューションを提供できることを確認できます。 MLA-C02 の変更点と変更理由 試験のドメイン構成は変わりません。新しいドメインの追加もありません。ただし、ML エンジニアの役割が実務においてどのように広がっているかに合わせた、主要な追加事項を反映しています。 生成 AI の実装: 生成 AI ソリューションの構築とデプロイ、基盤モデルのファインチューニング、検索拡張生成 (RAG) アーキテクチャの実装 エージェンティック AI: AI エージェントと複雑なワークフローのオーケストレーション 基盤モデルと LLM: 大規模言語モデルの選定・カスタマイズ・運用化 Amazon Bedrock: 生成 AI ワークロード向けの Amazon Bedrock 機能の拡張されたカバレッジ 責任ある AI の実践: 従来の ML と生成 AI の両方にわたる、責任ある AI 実装に関するガイダンスの更新 既存のタスクステートメントとスキルは現在の業界慣行に合わせて更新されており、認定資格がこれまで検証してきたコアな ML エンジニアリングの能力は引き続き含まれています。 注: 詳細なタスクステートメントを含む完全な 試験ガイド が公開されています。 重要な日程 2026 年 9 月 1 日: ベータ登録開始 (英語のみ)、試験ガイド公開 2026 年 9 月 28 日: MLA-C01 英語受験の最終日 (日本語・韓国語・簡体字中国語は MLA-C02 のベータ期間中も引き続き利用可能) 2026 年 9 月 29 日: MLA-C02 ベータ版受験開始 2027 年 1 月 14 日: MLA-C02 一般提供開始 (全言語)、MLA-C01 全言語での廃止 ベータ試験の詳細 試験時間: 170 分 問題数: 85 問 受験料: ¥11,000 (税込) 言語: 英語のみ 受験方式: Pearson VUE (テストセンターまたはオンライン監督) MLA-C01 と MLA-C02、どちらを受験すべきか? 英語で受験する方は、以下を参考にしてください。 MLA-C01 (2026 年 9 月 28 日まで): すでに試験準備ができており、早めに認定資格を取得したい場合はこちらを選択してください。取得した資格は元の有効期限まで有効です。 MLA-C02 ベータ版 (現在登録受付中): 従来の ML と生成 AI の両方のスキルを証明する認定資格を取得したい場合はこちらを選択してください。 日本語、韓国語、簡体字中国語で受験する方は、MLA-C02 の一般提供開始日である 2027 年 1 月 14 日まで、MLA-C01 の受験が可能です。 もうすぐ登場: AWS Certified Solutions Architect – Professional (SAP-C03) AWS Certified Solutions Architect – Professional が更新となります。更新された試験 (SAP-C03) の登録は 2026 年 10 月 27 日に開始し、一般提供は 2026 年 11 月 17 日から始まります。現行バージョン (SAP-C02) が受験できる最終日は 2026 年 11 月 16 日です。SAP-C03 は、開始時点で現在サポートされている全言語で提供されます。 ソリューションアーキテクトの役割は拡大しています。今日のアーキテクトは、高可用性でコスト効率の高いシステムを設計するだけではありません。生成 AI とエージェント型アーキテクチャの統合、ポスト量子暗号の実装、サービスとしてのレジリエンスパターンの設計、スタック全体への DevSecOps 自動化の組み込みが求められています。こうした変化に対応するため、更新された試験 (SAP-C03) では、AI/ML 統合を含むクラウドネイティブアーキテクチャ、セキュリティとコンプライアンス設計、コスト最適化、レジリエンスとビジネス継続性、オペレーショナルエクセレンスを含む、AWS Well-Architected Framework に沿った最適化された AWS ソリューションを設計する能力を検証します。 対象者 更新された AWS Certified Solutions Architect – Professional は、複雑なマルチアカウント環境において複数のアプリケーションやプロジェクトをまたいで専門的なガイダンスを提供する、経験豊富なアーキテクトを対象としています。主な対象となる役割は以下のとおりです。 エンタープライズグレードのクラウドシステムを設計するソリューションアーキテクト マルチアカウントガバナンス戦略をリードするクラウドアーキテクト 最新のレジリエンスとセキュリティパターンを実装するインフラアーキテクト クラウドネイティブおよび AI 統合アーキテクチャについてチームを導くテクニカルリード 推奨経験 AWS サービスを使用したクラウドソリューションの設計および実装に関する 2 年以上の実務経験 クラウドアプリケーションの要件を評価し、AWS 上での実装に関するアーキテクチャの推奨事項を提示する能力 最新のクラウドネイティブ、サーバーレス、および AI 統合アーキテクチャ全体にわたるガイダンスの提供経験 備考: この認定資格は、ソリューションアーキテクトが従来のインフラ設計と最新の AI 統合クラウドアーキテクチャの両方にわたる最新スキルを保有していることを検証します。AWS サービスの幅広い機能を活用したエンタープライズグレードのソリューションを提供できることを確認できます。 SAP-C03 の変更点と変更理由 アーキテクトの役割が実務においてどのように広がったかを反映して、以下の内容が追加されました。 生成 AI とエージェンティック AI (新スキル 11 項目): Amazon Bedrock を使用した生成 AI 統合の設計、Amazon Bedrock AgentCore を使用した AI エージェントアーキテクチャ、RAG アーキテクチャ、コンテンツフィルタリングのための Amazon Bedrock Guardrails、AI 運用のための人間による監視ワークフロー レジリエンスエンジニアリング: AWS Fault Injection Service、AWS Resilience Hub、Amazon Application Recovery Controller、AWS Systems Manager による自動化されたランブック クラウドネイティブパターン (新スキル 7 項目): サーバーレスデータパイプライン、AWS Step Functions を使用した耐障害性のあるワークフロー、Amazon VPC Lattice と Amazon ECS Service Connect によるサービスメッシュ、コンテナイメージセキュリティ、マルチテナントアーキテクチャ、リアルタイムデータアーキテクチャ DevSecOps と可観測性 (新スキル 6 項目): パイプラインの脆弱性スキャン、マルチアカウントデプロイメントパイプライン、コンテナ監視、AI/ML メトリクス監視、合成モニタリングとリアルユーザーモニタリング データと分析 (新スキル 3 項目): AWS Lake Formation と Apache Iceberg を使用したデータレイクハウスアーキテクチャ、リアルタイムおよびバッチ分析パイプライン、AWS Clean Rooms によるクロスアカウントデータ共有 ポスト量子暗号: ML-DSA と ML-KEM を使用した AWS KMS SAP-C03 の 5 つのドメイン: クラウドネイティブアーキテクチャの設計と実装 セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス コスト最適化されたアーキテクチャ設計 レジリエンス、移行、ビジネス継続性 オペレーショナルエクセレンスと自動化 既存のタスクステートメントとスキルは現在の業界慣行に合わせて更新されており、本認定がこれまで検証してきたコアなアーキテクチャの能力は引き続き含まれています。 注: 詳細なタスクステートメントを含む完全な試験ガイドは、登録開始日の 2026 年 10 月 27 日に公開される予定です。 重要な日程 2026 年 10 月 27 日: 登録開始 (全言語) 2026 年 11 月 16 日: SAP-C02 受験最終日 2026 年 11 月 17 日: SAP-C03 一般提供開始 一般提供試験の詳細 試験時間: 180 分 問題数: 75 問 受験料: ¥44,000 (税込) 言語: 現在サポートされている全言語 受験方式: Pearson VUE (テストセンターまたはオンライン監督) SAP-C02 と SAP-C03、どちらを受験すべきか? SAP-C02 (2026 年 11 月 16 日まで): すでに試験準備ができており、早めに認定資格を取得したい場合はこちらを選択してください。取得した資格は元の有効期限まで有効です。 SAP-C03 を待つ (2026 年 10 月 27 日登録開始): 従来のアーキテクチャ能力に加えて、クラウドネイティブ、生成 AI / エージェンティック AI、および最新のレジリエンスエンジニアリングスキルを検証する認定資格を取得したい場合はこちらを選択してください。 もうすぐ登場: AWS Certified Developer – Associate (DVA-C03) AWS Certified Developer – Associate が更新となります。更新された試験 (DVA-C03) の登録は 2026 年 10 月 27 日に開始し、一般提供は 2026 年 12 月 1 日から始まります。現行バージョン (DVA-C02) の最終受験日は 2026 年 11 月 30 日です。DVA-C03 は、開始時点でサポートされている全言語で提供されます。 開発者の役割は進化しています。今日の開発者は、単にアプリケーションコードを書くだけではありません。AI 支援開発ツールを使ってコードを生成、レビュー、最適化し、マネージド型 AI サービスをアプリケーションに統合し、AI エージェントのインタラクションをセキュアに保つことが求められています。今や AI 支援開発はオプションの追加機能ではなく、中核的な能力となっています。この進化に対応するため、更新された試験 (DVA-C03) では、最新のツールと AI 支援開発ワークフローを使用して、AWS 上でクラウドベースのアプリケーションを開発、テスト、デプロイ、デバッグする能力を検証します。 対象者 更新された AWS Certified Developer – Associate は、AWS サービスを使用してアプリケーションを構築、テスト、デプロイ、デバッグする開発者を対象としています。主な対象ロールは以下のとおりです。 クラウドネイティブアプリケーションを構築するソフトウェア開発者 AWS サービスと AI 機能をアプリケーションに統合するバックエンドエンジニア CI/CD パイプラインとデプロイメントを管理する DevOps 担当者 アプリケーションの各レイヤーにまたがって開発を行うフルスタック開発者 推奨経験 AWS サービスを使用したアプリケーションの開発、保守に関する 1 年以上の実践経験 1 つ以上の高水準プログラミング言語への習熟 AI 支援開発ツールとワークフローの使用経験 アプリケーションライフサイクル管理と CI/CD パイプラインの理解 備考: この認定資格は、開発者が従来のクラウド開発と AI 支援開発ワークフローの両方にわたる最新スキルを保有していることを検証します。チームが最新のツールを使用して、高品質で安全なアプリケーションをリリースできることを確認できます。 DVA-C03 の変更点と変更理由 開発者の役割が実務においてどのように広がったかを反映して、以下の内容が追加されました。 新タスク 2.3 AI セキュリティ (5 スキル): AI サービスのアクセス管理、データプライバシー制御 (VPC エンドポイント、入出力が AI モデルのトレーニングに使用されないことの保証)、コンテンツフィルタリングとプロンプトインジェクション対策、AI エージェントインタラクションのセキュリティ (ツール使用の認可、セッション分離、人間参加型承認フロー)、監視ログ内の機密コンテンツの保護 全ドメインにわたる AI 支援開発: コード生成と自動レビュー (ドメイン 1)、テスト自動化とリグレッションテスト (ドメイン 3)、自動デプロイ承認を含む CI/CD ワークフロー支援 (ドメイン 3)、エラー分析とトラブルシューティング提案 (ドメイン 4)、パフォーマンス最適化の推奨事項 (ドメイン 4) コンテナ管理: Amazon ECR を使用したコンテナイメージのビルドと管理、Amazon ECS、Amazon EKS、AWS Fargate を使用したコンテナ化アプリケーションのデプロイ 新たにスコープに含まれるサービス: Amazon Bedrock、Amazon Bedrock AgentCore、Amazon Q、Kiro、Amazon Data Firehose、AWS PrivateLink 主な統合・整理 Amazon DynamoDB: 4 つの個別スキルを 1 つの包括的なスキルに統合 セキュリティ (暗号化と機密データ): 2 タスクにまたがる 13 スキルを 1 タスクの 7 スキルに統合 テスト: 2 タスクにまたがる 11 スキルを 1 タスクの 5 スキルに統合 可観測性: 8 スキルを 5 スキルに統合 最適化: 9 スキルを 6 スキルに統合 4 つのドメインは変更なし: AWS サービスを使用した開発 (30%) セキュリティ (26%) テストとデプロイ (22%) トラブルシューティングと最適化 (22%) スコープ外: プロンプトエンジニアリング、RAG 設計、AI モデルの選定、Amazon SageMaker AI、AI ガバナンスフレームワーク設計。 既存のタスクステートメントとスキルは現在の業界慣行に合わせて更新されており、認定資格がこれまで検証してきたコアな開発能力は引き続き含まれています。 注: 詳細なタスクステートメントを含む完全な試験ガイドは、登録開始日の 2026 年 10 月 27 日に公開される予定です。 重要な日程 2026 年 10 月 27 日: 登録開始 (全言語) 2026 年 11 月 30 日: DVA-C02 最終受験日 2026 年 12 月 1 日: DVA-C03 一般提供開始 一般提供試験の詳細 試験時間: 130 分 問題数: 65 問 (採点対象 50 問、採点対象外 15 問) 受験料: ¥22,000 (税込) 合格スコア: 1,000 点満点中 720 点 言語: 現在サポートされている全言語 受験方式: Pearson VUE (テストセンターまたはオンライン監督) DVA-C02 と DVA-C03、どちらを受験すべきか? DVA-C02 (2026 年 11 月 30 日まで): すでに試験準備ができており、早めに認定資格を取得したい場合はこちらを選択してください。取得した資格は元の有効期限まで有効です。 DVA-C03 を待つ (2026 年 10 月 27 日登録開始): AI 支援開発スキルと AI サービス向けのモダンなセキュリティプラクティスを証明する認定資格を取得したい場合はこちらを選択してください。 今すぐ始めよう クラウドに関わる役割は進化しており、これらの認定資格もその変化に合わせて更新されています。ML パイプラインの構築、生成 AI を活用したエンタープライズアーキテクチャの設計、AI 支援ツールを使ったアプリケーション開発のいずれであっても、AWS Certification はあなたのスキルをサポートします。 AWS 認定資格について詳しく見る AWS Skill Builder で学習を始める AWS 認定資格パスを探す 翻訳は Technical Instructor の 室橋 弘和 が担当しました。
はじめに 生成 AI は、いまやあらゆる産業に新たな価値創出の機会をもたらす基盤技術になりつつあります。文章の作成や要約、コードの生成、問い合わせ対応、専門的な調査の補助など、これまで人手に頼っていた多くの業務を支援できるようになり、生産性向上とイノベーション創出のカギとして大きな期待が寄せられています。 その一方で、機密情報や個人情報を外部の生成 AI サービスに入力することへの懸念から、本格的な活用に踏み切れない企業も少なくありません。総務省の調査によれば、約 7 割の企業が AI 活用における「セキュリティリスク」を懸念しており、産業データの活用が十分に進んでいないことが課題として指摘されています(出典:総務省 「令和 6 年版 情報通信白書」 )。つまり、生成 AI の可能性は広く認識されている一方で、「安心して自社のデータを預けられるのか」という信頼の問題が、活用の大きな壁になっています。 一般社団法人 AI データ主権共創機構( CODAS : Co-creation Organization for Data Sovereignty & AI) はこの課題の解決策として日本発の「信頼できる AI」の構築を目指しています。 CODAS は「秘匿性を基盤とした産業特化型 AI 基盤の研究開発・実装・実証」に取り組む共創組織であり、企業・研究機関・行政が対等に参画しながら、日本の産業競争力の強化とデータ主権の確保を目的としています。AWS は、その研究開発を支える大規模言語モデル(LLM)の学習・推論基盤の構築をご支援しています。 この取り組みは、 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) の 「ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業/データの秘匿性を考慮した効率的な AI 学習手法の開発」 の一環として進められています。同事業では、生成 AI の性能向上を支えてきたウェブ上の公開データが学習し尽くされつつあるなか、今後の AI 開発においては企業や組織が保有する実データを安全に活用することが不可欠になる、という認識が背景にあります。しかし、実データの多くは個人情報や機密情報を含むため、データの秘匿性を考慮した学習手法の確立が重要な課題として掲げられています。 本ブログでは、 CODAS が目指す世界と、そのビジネス的な意義、そして、その実現に向けた第一歩として現在取り組まれている産業特化型 LLM の構築と、それを支える AWS 上の学習・推論基盤についてご紹介します。なお、本記事でご紹介するのは、 CODAS の活動のあくまで初期段階における取り組みのみです。 CODAS の構想はこの先、秘匿性技術の研究開発から社会実装、さらにはグローバルなエコシステム形成へと大きな広がりを見せていく予定であり、本記事はその出発点をお伝えするものとご理解いただければ幸いです。 CODAS が目指す、データ秘匿性を考慮した産業特化型大規模言語モデルの構築 なぜ「秘匿性」なのか 現在広く使われている汎用的な生成 AI は素晴らしい技術である一方、機密情報や個人情報の取り扱いという観点では、企業に大きな懸念を残しています。 CODAS は、この課題を大きく 3 つのリスクとして整理しています。 第一に、機密情報・データの流出リスクです。企業が外部の AI サービスに機密データを入力する場合、サービスの利用条件や設定に応じて、入力データの保存場所、保持期間、学習への利用有無などを十分に確認する必要があります。企業にとって、顧客データ、取引情報、技術情報といった競争力の源泉が、意図せず外部に流出するリスクは看過できません。 第二に、プライバシー侵害とデータ主権の喪失リスクです。学習データからの個人特定(メンバーシップ推論攻撃や学習データの再構成など)や、自社データが管理の及ばない環境で処理・保存されることへの懸念があります。加えて、各国でデータ保護規制が強化されるなか、データを国内で管理し、規制に準拠しながら活用することの重要性が高まっており、規制対応の負担も増しています。データがどこにあり、誰がアクセスでき、有事にも継続的に利用できるのかという「データ主権」は、経営レベルの論点になりつつあります。 第三に、こうした懸念が日本企業を AI 活用に踏み切れなくさせている、という現実です。 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS) の調査では、企業が AI 活用で懸念するリスクとして、データ漏洩リスク(70.3%)、AI の誤回答リスク(65.2%)、プライバシー侵害リスク(65.0%)、法令違反リスク(50.5%)が挙げられています(出典:JUAS 「企業 IT 動向調査 2025」 )。懸念が先に立つことで、本来であれば大きな価値を生むはずのデータ活用が後回しになってしまう。この「もったいない」状況こそ、 CODAS が解こうとしている課題です。 CODAS は、この状況に対して「データは動かさない、モデルが動く」(Privacy-First AI)という発想の転換を掲げています。データを外部に送り出すのではなく、データが自社の管理下に留まったままで AI を活用できる世界を目指すものです。この発想は、単に情報漏洩を防ぐという守りの意味にとどまりません。これまで秘匿性への懸念から活用が進まなかった高価値なデータを、安心して AI に活かせるようにすることで、日本企業のデータ活用そのものを前に進める攻めの一手でもあります。守りと攻めを同時に成立させる。ここに、秘匿性を基盤とする AI のビジネス的な意義があります。 ロードマップと現在のフェーズ CODAS の最終目標は、データ漏洩防止、プライバシー侵害耐性、データ主権の確保といった秘匿性を担保しながら、産業の実務に耐えうる高性能な AI を実現することです。差分プライバシーや秘密計算などの秘匿性技術と、産業に特化したモデルを組み合わせることで、汎用モデルにはない「信頼性」と「専門性」の両立を目指しています。秘匿性を高めるほど性能とのトレードオフが生じやすいため、この両立には継続的な研究開発と強固な計算基盤が欠かせません。 秘匿性技術は、適用先となる高性能なベースモデルがあって初めて実証・評価できます。そのため CODAS は、まず秘匿性研究の土台となる産業特化型大規模言語モデルを構築し、その上で秘匿性技術の研究開発を積み上げるアプローチを取っています。 このベースモデルは領域特化の高度な処理を担い、各企業のユースケースに特化した個社モデルと連携する 2 層構造を想定しています。特に、情報漏洩リスクへの懸念から慎重な判断が求められる金融・保険領域を最優先の実装領域と位置づけ、社会実装の標準を確立することを目指しています。また、特定のモデルに依存しない開発手法を採用し、今後さらに高性能なモデルが登場しても柔軟に取り入れられるようにしています。 CODAS では、大学や専門企業が秘匿性技術に関する複数の研究テーマを分担しています。ベースとなる LLM の開発は ABEJA 様が担い、AWS は大規模なモデル学習を支える計算基盤の構築を支援しています。各研究テーマ、ベースモデル、計算基盤を組み合わせる体制が、 CODAS の挑戦を支えています。 産業特化型大規模言語モデルの学習と評価に関する取り組み 産業特化型大規模言語モデル開発の第一段階として、 CODAS では、パブリックデータをベースとした大規模コーパスの構築、教師付きファインチューニング用データセットの合成、継続的事前学習と事後学習(教師付きファインチューニングおよび強化学習)、学習済みモデルの評価に取り組んでいます。本節では、こうした学習・評価の考え方と主な検証内容を紹介します。 (1) 学習済みモデルの評価 モデルの性能は、日本語・英語それぞれにおける汎用的な能力と、金融分野に特化したタスクを遂行する能力の両面から評価します。このため、複数のパブリックデータセットを選定し、必要に応じて対象タスクに合わせた改修を行いました。 評価には、正解との一致を確認する機械採点に加え、自由記述など単純な正誤判定が難しいタスクに対応するため、LLM-as-a-Judge を用いています。これにより、モデルが金融領域の知識を獲得しているかだけでなく、汎用的な言語能力を維持できているかを継続的に確認します。 図 1: JLM-Fin-Eval と EDINET-Bench を用いた、汎用能力と金融分野の能力を評価するベンチマークの例 (2) 大規模コーパスの作成と事前学習 継続的事前学習に向けて、対象領域の知識を取り込むための大規模コーパスを準備しています。コーパスの品質や構成は、その後のモデル性能に大きく影響するため、データの収集・整形・選別を行ったうえで学習に用います。 また、学習の実施を通じて、データ構成や学習条件がモデルの汎用能力および金融関連タスクの性能に与える影響を検証しています。 (3) 学習用データセットの合成と教師付きファインチューニング 事後学習では、教師付きファインチューニング(Supervised Fine-Tuning、SFT)に用いる学習データセットを、生成 AI モデルを活用して合成しています。金融関連タスクの性能を高めながら汎用的な能力も維持・向上させるため、金融特化型データセットと汎用データセットを組み合わせます。 検証では、学習対象モデルの系統を考慮し、SFT 用データの生成に用いるモデルの違いが、SFT 後の性能に与える影響を分析しています。あわせて、金融特化型データと汎用データの配合を変え、汎用能力と金融関連タスクの遂行能力をバランス良く最適化する方法を検討しています。 図 2: 合成データ生成モデルの系統差が SFT 後の性能に与える影響を検証する考え方 (4) 強化学習による論理的能力の強化と指示追従能力の回復 SFT に加えて、論理的能力の向上を目的とした強化学習(Reinforcement Learning、RL)にも取り組んでいます。強化学習では数理的能力の向上に加え、SFT 後に生じ得る指示追従能力の低下、特に指示に含まれる出力制約を守る能力の低下を改善することを目指します。 評価の結果、SFT 後に実施する強化学習が、こうした指示追従能力の回復に寄与することを確認しました。モデルの能力を単一の指標で評価するのではなく、論理性、指示追従性、専門領域のタスク性能を総合的に捉えながら、学習方法を改善しています。 図 3: SFT 後に低下した指示追従能力と、RL による性能回復の評価結果 データセットの構成、実験条件、評価方法、詳細な結果については、今後 ABEJA 様の技術ブログ にて公開予定です。 合成データの作成、産業特化型大規模言語モデルの学習、および、学習済みモデルの評価を実行するためには、GPU を含む大規模計算機リソースが必要となります。また、多くの GPU を用いて効率的に分散学習を行うには、ストレージ・ネットワーク通信の観点でも検討すべき事項があります。さらに、安全に開発を進めるうえでは権限周りの管理・運用も不可欠です。 CODAS では、産業特化型大規模言語モデル構築のための学習・推論基盤として、72 台の p5en.48xlarge EC2 インスタンスをコンピュートノードとして利用する、 AWS ParallelCluster を用いた大規模 GPU クラスターを AWS 上に構築しています。次章では、AWS 上でのモデル学習・推論基盤の構築について紹介します。 AWS 上で実現する大規模言語モデル学習・推論基盤 大規模学習基盤の設計方針 大規模言語モデルの学習・推論基盤を構築するには、GPU の計算性能だけでなく、ノード間通信、共有ストレージ、ジョブ管理、監視を一体として設計する必要があります。そのために CODAS が初期構築の出発点としたのが、AWS Labs のオープンソースである awsome-distributed-ai (旧称 awsome-distributed-training)です。同リポジトリでは、大規模モデル学習向けのリファレンスアーキテクチャ、学習用サンプル、検証・オブザーバビリティ用ツールをまとめたものをオープンソースで提供しています。 学習・推論基盤の実装時には、awsome-distributed-ai リポジトリに含まれるリファレンスアーキテクチャを VPC、共有ストレージ、Elastic Fabric Adapter(EFA)、Slurm といった分散学習基盤の主要な構成要素を構築するための出発点としました。これにより、一からすべて自分たちで組み立てるのではなく、複数のチームで GPU クラスターを共同利用する際のロールや権限、接続方法、安定運用のための設計を含む、独自の要件に関する議論と実装に注力しやすくなりました。リファレンスアーキテクチャはあくまで汎用的なものです。そのため、そのまま採用するのではなく、実際の用途と運用体制に合わせて、不要な要素の削除や、安全性向上などを目的として必要な仕組みを追加実装することが重要です。 学習・推論基盤の全体像 クラスターの構築と管理には AWS ParallelCluster を利用し、ジョブスケジューラーとして Slurm を採用しています。ヘッドノードは Slurm のスケジューリングとクラスター制御を担っています。ユーザーは別途立ち上げたログインノード上で通常のコーディング作業やジョブ投入、コンテナの準備などを実施することが可能です。学習ジョブは EFA を備えた GPU コンピュートノード上で実行し、Enroot と Pyxis を組み合わせて、Slurm からコンテナ化した学習環境を起動しています。現在は NVIDIA H200 を 8 基搭載した p5en.48xlarge GPU インスタンス 72 台をワーカーノードとする規模までスケールしています。 ストレージは役割に応じて使い分けを行っており、学習データやチェックポイントを扱うための高性能な共有領域には Amazon FSx for Lustre 、ホーム領域には Amazon FSx for OpenZFS を採用しています。また、 Amazon S3 と FSx for Lustre は Data Repository Association(DRA) で連携しています。主要コンポーネントとデータの流れを 図 4 のアーキテクチャ図に示します。 図 4: AWS ParallelCluster と Amazon EC2 GPU インスタンスを用いて構築した大規模言語モデル用学習・推論基盤のアーキテクチャ図 組織独自の要件を仕組みに落とし込む 大規模 GPU クラスターを複数のチームで継続的に利用するには、GPU やネットワークの性能だけでなく、誰が、どのように、安全に利用できるかをあらかじめ設計しておくことが重要です。そこで、本環境ではクラスターへのユーザーアクセスを AWS Systems Manager Session Manager に一本化し、SSH キーペアを前提としない構成を採用しています。さらに、SSH キーペアが設定された場合にはクラスターのデプロイを失敗させることで、意図せずアクセス方針から逸脱した構成になることを防ぎます。IAM 権限についても、構築・運用に必要な権限を整理し、最小権限の原則に沿って設定しています。 ノードごとに役割を明確に分離している点も、この基盤の特徴です。ヘッドノードは Slurm のスケジューリングとクラスター制御に専念させ、日常的なコーディング、コンテナの準備、ジョブ投入はログインノードで行います。これにより、ユーザーの作業がクラスター制御に影響することを抑え、安定した運用につなげます。複数のチームが利用する環境では、チームごとにログインノードのプールを用意しつつ、全ノードのユーザー ID(UID)とグループ ID(GID)を統一的に管理します。共有ファイルシステム上の所有権と Slurm が認識する利用者を整合させることで、チームをまたぐデータセットやモデルの共同利用も可能にしています。 また、コンテナのビルドは一時的に大きなディスク負荷を発生させるため、ログインノードのルートボリュームに負荷が集中しない設計としています。ルート EBS ボリュームの容量を確保するとともに、成果物は FSx の共有ストレージに配置します。ローカル NVMe を利用する処理については、Slurm デーモンの起動前に NVMe の準備とマウント元の検証を完了させます。想定したストレージを利用できない場合には処理を停止することで、不完全な状態でノードが起動することを防ぎます。 異常の早期顕在化と計測に基づく運用 大規模分散学習では、単一ノードの異常やストレージ容量の不足、ネットワーク通信の不調が、学習ジョブ全体の性能や成否に影響します。そのため、 Amazon CloudWatch 、 Amazon Simple Notification Service(Amazon SNS) 、 AWS Lambda 、Slack を組み合わせ、FSx for Lustre の容量しきい値超過や GPU の故障を自動的に通知する仕組みを設けています。クラスターの利用者と管理者は必要な状況を速やかに把握し、ストレージの拡張やノードの切り離しといった対応を判断できます。 ノード間通信では、コンピュートノードの構成時に EFA デバイスの存在だけでなく、EFA プロバイダーを実際に利用できることまで確認します。検証に失敗した場合は、診断に必要なログを残してデプロイを停止します。こうした事前検証により、ジョブは実行できても通信性能が十分に出ないという発見しにくい問題を、学習開始前に検出できます。 ストレージについても、推測ではなく実測したメトリクスに基づいてボトルネックを切り分け、必要に応じて容量をスケールさせる運用としています。ノード障害、通信、ストレージのいずれも例外として扱うのではなく、発生を前提に検知・判断・対応できるようにしておくことが、大規模 GPU クラスターの継続的な利用には不可欠です。 ここまで紹介した工夫に共通するのは、運用上のルールや障害時の対応を手順書にとどめず、クラスターのデプロイや起動の過程で自動的に確認できる仕組みとして実装している点です。リファレンスアーキテクチャを出発点にしながら、組織の利用形態や実運用で得られる知見を構成へ反映し続けることで、複数チームが大規模言語モデルの学習・推論基盤を安定して共同利用できる環境を目指しています。 おわりに 本ブログでは CODAS によるデータの秘匿性を考慮した AI 学習手法の開発に関する大規模言語モデル学習・推論基盤の構築に向けた取り組みについて紹介しました。上述の通り、本ブログで紹介した内容は CODAS による初期段階の取り組みの一部に関するもののみであり、 CODAS の活動は今後さらに大きく広がりを見せていく予定です。AWS では CODAS 担当アカウントチーム、コンピュート・生成 AI スペシャリストチーム、生成 AI イノベーションセンターなど、複数のチームが一丸となって、 CODAS の本活動に対する支援を行っています。 著者プロフィール 原田 伴誉 (Tomotaka Harada) 株式会社ABEJA エンタープライズプラットフォーム開発本部/データサイエンス部所属。京都大学大学院修了後、金属メーカーでプラントエンジニアリングとDX推進に従事し、設備自動化や画像処理を活用した検査自動化、データ活用を推進。在職中にボストン大学でApplied Data Analyticsを修了し、米国企業で画像AI開発も経験。ABEJAではRAG、レコメンドシステム、スポーツ動作解析、直近はLLM開発に参画し、製造現場の理解とAI開発力を併せ持つエンジニアとしてプロジェクトを推進している。 久米 拓馬 (Takuma Kume) 株式会社ABEJA 経営企画統括部 情報システム・セキュリティグループ所属。AWSでのインフラ構築を専業とするSierに8年所属。インフラの構築から運用や設計提案を経験し、新規立ち上げからマイグレーションなど幅広く対応。ABEJAでは情報システム部門の運用をメインとし、前職での知見を活かして単体プロジェクトのインフラ構築支援を実施。 長谷川 潤 (Jun Hasegawa) CODAS の最高プロジェクト責任者であり、創業者/リサーチャーです。連続起業家として、Omise(決済事業)と OMG Network(ブロックチェーン事業)を創業し、いずれもユニコーン企業へ成長させました。これまでに累計 5 億ドル以上を調達し、現在は決済・ブロックチェーン・プライバシー AI の 3 領域でグローバル事業を率いています。 中越 洋(Hiroshi Nakagoe) CODAS の Technical Head および Archetype Digital の VPoE として、プライバシー保護技術に関する 7 件の研究プロジェクト、1 つの統合型生成 AI プラットフォーム、プライバシー保護 AI システムを評価する複数の PoC など、研究開発と社会実装プロジェクトをリードしています。テクノロジー業界で 20 年以上の経験を持ち、ML/AI サービス、データ分析プラットフォーム、IoT サービス、エンタープライズストレージ、エンタープライズ向け運用ツール、LSI の研究開発を通じて、専門知識を実社会の課題解決に応用してきました。東京を拠点に活動しています。 黒澤 蓮 (Ren Kurosawa) AWS Startup Frontier AI ソリューションアーキテクトで、Startup 業界のお客様を中心にアーキテクチャ設計や構築をサポートしています。データアナリティクスサービスや機械学習の領域を得意としています。将来の夢は宇宙でポエムを詠むことです。 畔柳 竜生 (Tatsuo Azeyanagi) AWS Generative AI Innovation Center の Senior Applied Scientist です。生成 AI や機械学習サービスを活用し、顧客の課題解決に取り組んでいます。AWS に入社する前は、日本、アメリカ、フランス、ベルギーの大学・研究機関にて、素粒子論の研究をしていました。 松浦 大輝 AWS Startup, Frontier AI Team の Account Manager です。生成 AI の基盤モデル開発企業からフィジカル AI スタートアップまで、日本の最先端 AI 企業のクラウド活用と事業成長をご支援しています。GPU クラスターを活用した大規模学習基盤の構築支援や、業界横断のコミュニティ形成にも取り組んでいます。

動画

書籍