【前編】VR/AR/MRが実現するWithコロナ時代の未来技術とは ──エキスパートだらけのカンファレンス「TechFeed Summit #1」

イベント
ITエンジニア向け情報サービス「TechFeed」を運営するテックフィードが「TechFeedエキスパートコミュニティ」100名突破を記念し、オンラインイベント「TechFeed Summit」を開催した。及川卓也氏のファシリテートにより、「VR/AR/MR」のエキスパートであるKazuya Hiruma氏・Satoshi Maemoto氏・いっこう氏が、VR/AR/MRの課題と展望について語り合った。
AR MR VR
【前編】VR/AR/MRが実現するWithコロナ時代の未来技術とは ──エキスパートだらけのカンファレンス「TechFeed Summit #1」

100名以上のITエキスパートが集結する「TechFeed Summit」

日本のITエキスパートが全員集う場を目指して創立された「TechFeedエキスパートコミュニティ」。Web系技術やプログラミング言語などのエキスパートが日々集結し、発足より4カ月で100名を突破した。

テックフィードの白石俊平氏は、TechFeed Summitを開催する目的を「エキスパートの知見を引き出し、世の中に共有するプラットフォーム」だと語る。

6月に正式リリースしたモバイルアプリ版「TechFeed Pro」も順調に成長を続け、エンジニア100人に1人が、1日あたり平均利用時間が約8分超利用している。

「今後も200を超える専門チャンネルをさらに拡大し、日本のエンジニアが世界で一番テクノロジーニュースに詳しいという状態、エキスパートのためのプラットフォーム作りを推し進めていきたい」(白石氏)

・ TechFeed Pro
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及川卓也氏×VR/AR/MRエキスパートのトークセッション

「日本でエンジニアが楽しく成長し、IT力を高めるコミュニティを立ち上げる」ミッションに強く共感し、TechFeedの相談役を務めているという及川卓也氏。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響で実用化が期待される「VR/AR/MR」に強い関心を示し、その技術トピックや今後の展望について、エキスパートたちと熱いトークを繰り広げた。


及川:TechFeed Summitの「エキスパート・トーク」では、TechFeedのエキスパートに私が聞きたいことを代表して聞き、そのテーマの今を語ってもらいます。まずは皆さんの自己紹介と、最近気になっているトピックを聞かせてください。

Hand Gesture(ハンドジェスチャー)が実現する新しい体験


比留間:MESONという会社で、ARコンテンツの制作をメインに行っています。もともとはWebのエンジニアで、Oculus DK1でVRの可能性を感じ、VRのコンテンツを自分で作ったりしていました。
コロプラのVRチームに転職し、VRのゲーム開発をしていたのですが、まだVRはちょっと早かったよねという空気があり、ARのコンテンツを作っているうちに、ARの方に可能性を感じたんですね。ゆくゆくはVRにマージされていくだろうし、まずはARの方をやってみようと思い、MESONに入社しました。

注目トピックとしては、Hand Gesture(ハンドジェスチャー)。Oculus Questが今年の頭に実装し、Nreal LightというARグラスでも高精度なHand Gestureの実装を計画しています。今後のAR/VR分野において、Hand Gestureはとても重要な技術になるのではないでしょうか。

実際にHand Gestureを使ってコンテンツを作ってみると、新しい体験というか、今までコントローラーに縛られていたのが、別のものになっていく気がしている。一番面白いし気になっているし、今後も触っていきたいですね。


及川:VRのどこがまだ早いと考えて、ARに行ったのですか?


比留間:VRデバイスの普及率ももちろんあるのですが、ARとVRが二つに分離していて、まだどちらも本領を発揮していないと捉えていました。いずれはARとVRが一つになって初めて真の価値を発揮する。そういう世界が来るんじゃないかと。

ARに行った理由として、ARのほうが一般に分かりやすくかつ広まりやすいと思えたこともあります。先にARを推し進め、世界にこんなのがあるぞとVRを伝えることで、結果的にAR/VRが広まっていく、そんな世界を創りたいと考えています。


及川:なるほど、納得感あります。Hand Gestureにどんな可能性を感じ、具体的にどんなことができるのかについても、もう少し詳しく教えてください。


比留間:まず、Hand Gestureでできることでいうと、Oculus Questを実際に体験してもらうとわかるのですが、自分の手を認識するとVRの空間上に3Dモデルの手が出てくるんですね。手の向きや指の曲がり方など、自分の手と同じようにリアルで、高精度に動いてくれる。いろんなコンテンツが作れると思っています。

また、ARが普及してくると、コントローラーを使うという限定的なシチュエーションが難しくなります。例えば外で使う場合、いちいちコントローラーを取り出すのは大変だし、落とすかもしれない。そもそも手がふさがっていることもある。

スマホを取り出してメールを見るのと同じ感覚で、コントローラーを出すのは必要なときだけにし、一番簡単にタスクを遂行することに、Hand Gestureの意味と可能性があると考えています。

LiDAR、ToF、depthなどの認識系技術に注目


及川:ありがとうございます。続いては前本さん、お願いします。


前本:ホロラボ(HoloLab)、TMCN、Microsoft MVPなどで活動しています。10年くらい前MicrosoftのKinectセンサーを触りはじめたらすごく楽しくて。パソコンでこんなことができるんだと感動したんですね。

当時は業務系やWebアプリ、スマホアプリを作っていたのですが、Kinectの方が面白くなってしまって、今はxR系でSDKを設計したり、開発したりしています。チームはグローバルですが、みんな日本語が上手で、僕は英語ができないリーダーです(笑)。

開発は非常に低レイヤーなところが多く、最近はC++を使って、AndroindアプリやUnity用プラグインの実装をしています。認識系技術なので、認識系が良くなっていけば、上に乗ってくるxRやフレームワーク・アプリケーション、そして体験が良くなっていく。そういうふうに繋がっていくかんじ。HoloLensが大好きなので、もっとやりたいと思っています。

注目トピックとしては、認識系技術がコンシューマのデバイスに降りてきていること。depthセンサーというHoloLensやKinectなどにも付いている深度センサーが、スマートフォンなどのモバイルデバイスに載り始めました。

例えば、iPad Proに環境を認識し、部屋のスキャンが高速にできるLiDAR(ライダー)センサーが付いたり、Androidでも環境を撮ったり、人を認識したりするToFセンサーが増えている。ハイエンドな5G機種には、depthカメラも付いています。

例えば、現実世界の裏に仮想世界を創るARクラウドなど、その精度が上がり、撮れるデータが蓄積されてくると、最終的なアウトプットや体験などが良くなっていく。それが最近の注目トピックです。


及川:グローバルなチームで活動されているとのことですが、xR系技術や応用範囲に、国や地域による特性はありますか?それともグローバルで共通なのでしょうか。


前本:人やモノを認識するという点では、地域性はそれほどないかもしれませんね。顔立ちの違いなどを認識できるようになると、地域性が出てくるかもしれません。


及川:認識技術がデバイスに落ちてきているとのことでしたが、作る側としては悩ましい状況もあるのかなと思いました。最新デバイスはそうした技術が載っていることを前提にできる、でも世の中は最新デバイスばかりではない。コンテンツやアプリを作る側としては最新デバイスにどこまで期待していいのか、苦労することもあるのではないかと。そこはどうしているのですか?


前本:たしかに同じデバイスでも性能の差がありますし、depthカメラの有無もあります。アプリの作り手としては広く展開したいので、上位機種や特別なハードウェアがあればそれを認識して、より現実感がある体験ができるようにする。アプリの中で違いを作り、ハイエンドなものが使える機能や体験を作っていく。作業が発生しますが、そういったかんじなのかなと。


及川:そこはxRに限らず、特にハードウェアの進化が速いところの悩みと同じ感じなんですね。

Web Face Wallなど、WebXRの技術進化に注目


いっこう:私はZOZO Technologiesで働いています。Web制作会社在籍時にJS系のイベントで比留間さんがWebVRの話をしているのを聞いて、VRの可能性を感じて始めました。

その後、ソーシャルゲーム系の会社に転職し、Oculus DK2に触れてxRに賭けていこうと決意し、『xR Tech Tokyo』というxR開発者向けコミュニティの運営。自身で作ることもありますが、コミュニティサイドからxRの発展を図っています。

WebXR推しで、めぐるーまーで雛乃木神社氏子の観測者。VTunerに対する知見があります。最近、HEAVENちゃんという人格を手に入れました。

注目トピックは、Web Face Wall。最近WebVRにも対応し、機能もいろいろ追加されています。8th Wall Face Effectsでは顔にエフェクトをかけることができたりと、今までアプリでないとやりにくかったことが、Webでもできるようになった。

アプリはどうしてもインストールが必要で、デバイスが必要。WebVRで作るとその辺の障害が大分楽になってくるので、推しています。


及川:作る側としても使う側としても、いかに敷居を低くするかが、xR界隈で非常に重要ですよね。開発者側の敷居を低くし、利用者側も特別なデバイスなしに使えるWeb技術には注目しています。

一方で、Webは標準化や実装が遅れていた面もあったと思いますが、最近は大分整ってきているのでしょうか?


いっこう:W3Cの定義が最初はWebVR APIしか対応していなかったのですが、現在はWebxRデバイスAPIに変わり、MRやARも全て対応が進んでいます。ただ、コンテンツ側がWebVR APIのままだったりすると、最近のブラウザはWebVR APIを切ってしまっているので、アプリが使えなくなってしまうことも発生している。

技術としてAPIも進化しているが、コンテンツ側とデバイス側がまだ揃ってない状況です。今は過渡期なので、突然の変化にとまどってしまうこともありますが、これからだんだん良くなっていくのかなと。


及川:そのデバイス側の状況には、iOS・Androidだけではなく、Webブラウザの実装も含まれるということですよね。


いっこう:はい、両軸であります。


及川:そこは「ニワトリとタマゴ問題」ですよね。要はコンテンツがないとデバイス(この場合はブラウザ)が対応しないし、ブラウザが整ってないとコンテンツも準備できない。うまく正のフィードバックがうまく回るといいなと思います。

これからのwithコロナ時代、VR/AR/MR活用の可能性は?


及川:今回、VR/AR/MRといったxR系をテーマに取り上げた理由は二つあります。一つはコロナ禍の影響で、AR/VRなどのxR技術が注目される状況になっているのではないか。

つまり、フィジカルには「ソーシャル・ディスタンシング」(Social distancing)が求められ、オンライン上での会議やイベントで人と会う・話す状況となり、そこには必ずしもリアルではなく、どこかにバーチャルな要素や体験が入っていたりする。そこで必要とされてくるxRの今を知りたいと考えたのが、一つ目の理由です。

もう一つは、クラシカルなコンピュータデバイス、キーボード、マウス、ディスプレイという呪縛から逃れらないことにジレンマを感じていたこと。入力デバイスや出力を受け取るものも、聴覚・視覚などに使えるはずなのにそうではない。xRでもっと進むべきであろうと。

Hand Gestureが非常にいい話だと思ったのは、モノに触ったら、手を洗わないといけないとか、顔を触れないようにするといった衛生上の問題や恐怖観念がある中、Hand GestureのようなxR技術をどうにかして応用できないかと。

まずは、皆さんのところで何か変化があったのかをお聞きしたいのですが、いかがでしょう?


比留間:コロナの影響でいろいろなプロジェクトやイベントが中止、あるいは延期になりました。その空いた時間を使って、様々な検証を行っています。

MESONでは、VRを使ってARを検証したり、VRの中でARを再現することに取り組んだりしていますが、前職の知見が結構活きています。VRをメインにARを検証するので、そもそもの開発の方法が変わりつつありますね。


いっこう:作ったものを見せて売る場、いわゆる商談系のリアルイベントができなくなってしまった。AR系のコンテンツだけではなく、普通のコンテンツも展示会オンライン化、ライブ化している動きは感じます。

日本マイクロソフトの開発者向け年次カンファレンス「de:code 2020」では、専用のVRプラットフォームが使われましたし、展示会用のVRプラットフォームでイベントを行うところも出てきました。これからも各社動きが出てくるんじゃないかと予測しています。


及川:経済が冷え込んでいる一方で、確実に言えるのはアフターコロナではなく、withコロナで新しい世界が開けたと。物理的接触ができないから、バーチャルにならざるを得ないこともその一つですね。

でも物理的接触ができるようになったとしても、バーチャルでの価値を感じた人たちは元には戻れない状態になる。おそらくこれまでたくさん仕込んでいた技術の応用範囲を、この時期に探れるんじゃないかと思います。

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