テレワーク環境におけるBIの課題とその解決
第1回 BIツールの種類とその構成
新型コロナ対策の長期化が予想される現在、テレワーク環境においても、BIツールを使ったデータ分析業務を支障なく遂行できるようにする必要があります。
この連載コラムでは、テレワーク環境でBIツールを使用する場合に発生するさまざまな課題とその解決策について全4回にわたって解説していきます。
このコラムの概要
BIツールをテレワーク環境で使用する際に発生する課題は、BIツールの構成によって異なるため、まずは、BIツールの種類と、その構成を知る必要があります。
第1回「BIツールの種類とその構成」では、定型レポーティングに使われるレポーティング・ツールと非定型分析に使われるセルフサービスBIツールそれぞれの構成を解説します。
セルフサービスBIツールに多く見られるデスクトップ型構成のBIツールは、テレワーク環境で使用する際にさまざまな課題が発生します。
第2回「テレワーク環境における課題(1)」と第3回「テレワーク環境における課題(2)」では、
- ソースデータの収集
- データの統合と加工
- DB(データベース)作成
- 分析操作からレポートの共有
に至るデータ分析作業のステップに沿って、デスクトップ型構成のBIツールで発生する課題を解説します。
デスクトップ型構成のBIツールをテレワーク環境で使用する際に発生するさまざまな課題の解決には、フルクラウドBIツール(ETLツール、分析用DB及び分析ツールの全てが同一のクラウド内で構成されるBIツール)の利用が有効です。
第4回「フルクラウドBIツールによる課題の解決」では、フルクラウドBIツールの特徴とデスクトップ型構成のBIツールとの違いを、データ分析作業のステップに沿って解説します。
BIツールの種類:定型レポーティングと非定型の分析
第1回の今回は、定型レポーティングに使われる「レポーティング・ツール」と非定型分析に使われる「セルフサービスBIツール」それぞれの構成を解説します。
まず、BIツールがカバーするデータ活用ニーズの種別についてですが、こちらは「定型的な分析」「非定型な分析」2つとなります。
定型的な分析
ユーザが決まった形式(いつも同じ形式)のレポートを閲覧するだけの場合、「定型的な分析」と分類されます。
Ex.)
日次や月次の売上/収益実績/前年対比などの報告書
勤怠実績レポート
Webアクセス解析
パフォーマンスモニタリグ
この種別の分析ニーズに適したBIツールは、「レポーティング・ツール」と呼ばれる種類のツールです。
レポーティング・ツールは、定型的なレポート画面を開発する機能と、開発されたレポートを閲覧するユーザ向け機能の二つから構成されます。
非定型な分析
異なる視点での集計や、新たな指標の作成といった、ユーザの自発的な分析作業が行われる場合は、「非定型な分析」と分類されます。
Ex.)
定型レポートからグラフの軸(地域、製品、顧客など)を変えたグラフ作成
担当者や業態ごとに尺度の異なる分析、および分析レポートの作成
その場その場に応じた分析結果の共有
この種別の分析ニーズに適したBIツールは、「セルフサービスBIツール」と呼ばれる種類のツールです。
セルフサービスBIツールは、非定型な分析を一般のエンドユーザでも簡単にできるように設計されています。
レポーティング・ツールの構成
レポーティング・ツールの多くでは「サーバー型」の構成が採用されています。
サーバー型の構成では、以下の3つのソフトウエアの全てが、オフィス内、あるいは会社が所有するデータセンターに設置されたサーバーで動作します。
ETLツール ー 企業内にあるさまざまDBやファイルからソースデータを収集し、分析しやすいようにデータの統合や加工を行うソフトウエアです。
BIツールの機能に含まれる場合もありますが、サーバー型構成の場合は、通常、独立したソフトウエアとして導入されます。
分析DB ー ETLツールによる統合や加工が行われたデータを格納するデータベース・ソフトウエアです。
BIツールの機能に含まれる場合もありますが、サーバー型構成の場合は、通常、独立したソフトウエアとして導入されます。
分析ツール ー 定型レポートの表示や、非定型分析操作を行うソフトウエアです。
サーバー型の構成では、全てのソフトウエアは、オフィスや会社が所有するデータセンター管理に設置されたサーバーで動作しています。
テレワーク環境でも、自宅で使用するPCにはブラウザーが入っているだけでよく、ブラウザーから分析ツールを利用するためのネットワーク・セキュリティさえ確保できていれば、特に大きな課題は発生しません。
セルフサービスBIツールの構成
セルフサービスBIツールの多くでは「デスクトップ型」の構成が採用されています。
デスクトップ型の構成では、ETLツール、分析DB、分析ツールの3つのソフトウエアの全てが、クライアントPCで動作します。
この構成では、ソースデータのダウンロードや、分析済みデータを共有するためにアップロードする際に、企業内にあるさまざまDBやファイルとの間で、大量のデータ転送が発生します。
これにより、テレワーク環境においては、通信トラフィックやセキュリティ上の課題が発生します。
また、全てのソフトウエアをクライアントPCで動作させるために必要なPCリソースやライセンス費用もサーバー型と比較すると、はるかに大きくなるため、全体的にテレワーク環境を整備するためのコストが割高になる傾向があります。
まとめ
以上のように、BIツールをテレワーク環境で使用する際、レポーティング・ツールの多くで採用されているサーバー型では、大きな課題は発生しませんが、セルフサービスBIツールの多くで採用されているデスクトップ型では、「トラフィック量」「セキュリティ」「コスト」など、様々な課題が発生する可能性があります。
次回からは、デスクトップ型BIツールをテレワーク環境で使用する際に発生する課題を、ソースデータの入手、データ準備、DB作成、分析操作からレポートの共有に至るデータ分析作業のステップに沿って解説します。
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