【レポート】地方で働くエンジニアのリアル 〜エンジニアにとっての「新しい働き方」とは〜

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【レポート】地方で働くエンジニアのリアル 〜エンジニアにとっての「新しい働き方」とは〜

2017年8月19日(土)13時30分より「テクノロジー × 地方 Meetup! これが私の生きる道#01 ~北海道/宮城/島根/福岡/沖縄~が開催されました。

島根県が運営する「IT WORKS@島根」が主催する本イベントは、北海道・宮城・島根・福岡・沖縄に拠点を持つIT企業で働く5名にご登壇いただき、エンジニアにとっての「新しい働き方」を考えることがテーマです。会場には地方でのワークスタイルに興味を持つ約40名が参加しました。

当日の登壇者と内容は下記の通りです。

北海道:
「北海道で全国区と戦う 最先端の最後尾を目指す会社の支え方」

株式会社インフィニットループ 小野真弘さん

宮城:
「地方だからこそ未踏分野に切り込める!」

株式会社テセラクト 小泉勝志郎 さん

島根:
「『Ruby City MATSUE』×『日本酒王国山陰』だから生まれたエンジニア・コミュニティ」

株式会社モンスター・ラボ 羽角均さん

福岡:
「ハードコアライフハック ~場所なんて関係ない生き方~」

株式会社オルターブース 小島淳さん

沖縄:
「沖縄と東京とブラジルと地方を飛び回って見えてきた意外なリアル 〜外資&東京じゃないからこそエバンジェリストを目指す」

株式会社レキサス 常盤木龍治さん

パネルディスカッション:
「地方で働くエンジニアのリアル白書」

それでは内容を紹介します!

北海道で全国区と戦う 最先端の最後尾を目指す会社の支え方

1人目の登壇者は北海道を拠点に展開するインフィニットループの小野さんです。

小野真弘(おの・まさひろ)/株式会社インフィニットループ 取締役副社長。北海道出身。新卒後は約10年東京で勤務。自身で独立後、インフィニットループへ参画。ウイスキー好き。

小野さんが取締役を務めるインフィニットループは、札幌市を拠点にしたゲームの開発会社。ほぼスマホゲームを事業の領域としていますが、最近ではビーコンを使った勤怠管理システムやVRなどゲーム以外の領域にも取り組んでいます。

設立10周年を迎えたインフィニットループでは、今年社是を更新しました。その社是は「最先端の最後尾を目指す」というもの。同社では150名ほどが勤務する札幌本社の他に、仙台にも支店がありますが、組織全体の95%がエンジニア。「エンジニア会社」として地方でどう在るべきかを考えたときに、「最先端の最後尾を目指す」という考えが浮かんだと小野さんは説明します。

元々はPHP歴が長いプログラマーとして活動していた小野さんは、インフィニットループおいて自身の役割がどのように変化してきたのかを次の3つのステージごとに紹介します。

・初期(さてどうするよ時代)
協力会社として初期のインフィニットループで働くことになった小野さん。当時は40名ほどの組織でした。代表から特に何をやるべきかを指示されたわけではない小野さんは「さて、なにをやるか?」と考えました。

そこまで大きな組織でなかったこの初期の段階では、小野さんは全体を管理し、目の前の仕事や人間関係の交通整理をしていたといいます。

・少し前まで(イケイケ時代)
現在から4年ほど前から組織は急成長します。この「イケイケ時代」に集まった人材は、ほとんどがプログラマーでした。マネジメントができる人材がいなかったため、小野さんは設計や技術選定、コードレビューなどのマネジメント業務やバックオフィス業務の合理化に取り組みました。

・最近
150名の規模になった最近では、なかなか社内に声が通りづらくなったと小野さんは感じます。そこで、小野さんはエンジニアリングから離れ、組織論や心理面からアプローチして組織のマネジメントに取り組みます。また、人材と技術、さらに事業の選定も担当します。

インフィニットループでの自身の取り組みを「特定のプロダクトではなく、基盤や組織にコミットするのが自分の主な仕事。でも、プロジェクト自体やチームそのものをメンバーに見立てられるのがおもしろかった」と小野さんは振り返ります。

最後に小野さんは「『最先端の最後尾』はネガティブな印象があるかもしれないが、東京にいない私たちが地方で受け皿を作ることができる、地方ならではの戦略のひとつだと考えている」とまとめました。

地方だからこそ未踏分野に切り込める!

2人目の登壇は、塩釜を拠点に活動するテセラクトの小泉さんです。

小泉勝志郎(こいずみ・かつしろう)/株式会社テセラクト 代表取締役。東北大学大学院修了。東北デベロッパーズコミュニティ運営委員。年間200本の映画を映画館で鑑賞。

まず、小泉さんは「東京よりも地方の方が新しいモノを生み出しやすい。なぜかと言えば、いい意味でも悪い意味でも、その地域で一番になりやすいからだ」と主張します。

人数が少ないという短所はあるものの、小泉さんは「地方で一番になる」と「他ジャンルの一番とつながりやすい」という長所を感じているのです。「異質なモノの組み合わせから、新しいモノが生まれる」と言われていますが、地方で一番になることでそのチャンスが増えるわけです。

では、小泉さん自身は地方でどのような活動をしてきたのでしょうか。まず、東京での勤務から宮城に戻った2008年、小泉さんは「東北デベロッパーズコミュニティ」を立ち上げます。当時は東京で勉強会がブームでしたが、宮城県にはほとんどなかったのです。

現在、「東北デベロッパーズ」は600名を誇る規模に成長しています。これはもちろん東京でもなかなか集められない数字です。

さらに、東日本大震災後の2011年4月には養殖場を再生するためのクラウドファンディングを設立。日本初のクラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」がローンチされる前にも関わらず自らプラットフォームを作成し、1億8600万円の資金を集めることに成功します。また、小泉さんはそのノウハウを活かし水産物販売の会社を設立したり、離島でハッカソンを開催したりもしています。

このような宮城での成功により、小泉さんは様々な人脈を紹介されます。その中の1人が81歳の女性である若宮さんでした。

若宮さんは当初「年寄りでも若者に勝てるゲームを作って欲しい」と小泉さんに依頼します。しかし、自分でゲームを作ってもおもしろくないと感じた小泉さんは「若宮さんがゲームを開発したら話題になりますよ」とプロデュース。その結果、若宮さんは多くのメディアに取り上げられ、2017年6月にはAppleが主催する「WWDC」にて最高齢ディベロッパーとして紹介されるまでになったのです。

最後に小泉さんは「地方にいることはカラーになる。今持っているスキルでも、場所を変えれば何かが変わるかもしれない」と会場にエールを送りました。

『Ruby City MATSUE』×『日本酒王国山陰』だから生まれたエンジニア・コミュニティ

3人目の登壇は、モンスター・ラボの島根開発拠点で勤務する羽角さんです。

羽角均(はすみ・ひとし)株式会社モンスター・ラボ 島根開発拠点。千葉県出身。2014年にモンスター・ラボへ参画し、2016年より島根県へIターン。島根の蕎麦とお酒の他、コーヒーも好き。

羽角さんが勤務するモンスター・ラボは主に3つの領域で事業を展開しています。その事業は、世界中のエンジニアに開発を依頼できるプラットフォームサービス「セカイラボ」を運営するグローバルソーシング事業、音楽配信サービス事業、ゲーム事業の3つ。羽角さんはグローバルソーシング事業部に所属し、ベトナムやバングラデシュのチームとともに開発をしています。

島根開発拠点で勤務するのは羽角さんを含めて4名。島根で一番古い大正14年竣工の鉄筋コンクリートビルを見つけ、自分たちで内装などを行い、2016年11月にオフィスを開きました。

キレイな海、おいしい海産物、国宝松江城など様々な魅力がある島根県。実際に島根に勤務した羽角さんが特に魅力に感じているのが「蕎麦」と「お酒」の2つです。

「割子そば」という1枚が小さな蕎麦が名物なため、蕎麦屋を何件もハシゴしたり、日本酒を連日飲み歩いたりしていた羽角さんは、酒蔵の杜氏さんや飲食店とのネットワークを構築。

そして、「蕎麦」と「お酒」という2つの名物の魅力を活かして何かできることがないかと、羽角さんらエンジニアを中心に「ひやおろしGO」というハッカソンを開催します。「Ruby」のコミッターや学生も参加したこのハッカソンから生まれたのが、日本酒飲み歩きイベント「松江トランキーロ」でした。

2016年に開催された「松江トランキーロ」は大好評を博しました。第2回の開催となる2017年の「松江トランキーロ」ではスマホアプリを開発。ネイティブアプリ内では飲み歩きチケットを購入したり、参加店舗へのチェックインができるようになりました。

2017年の松江トランキーロは9月17日(日)の開催です!

ハードコアライフハック ~場所なんて関係ない生き方~

4人目の登壇は、福岡で活動するオルターブースの小島さんです。

小島淳(こじま・あつし)/株式会社オルターブース 代表取締役。1976年生まれ。千葉県出身。IT業界数社での勤務を経て、2012年に福岡へ移住。2015年、オルターブースを設立。元ヌンチャクのベーシスト。

自身もエンジニアである小島さんが創業したオルターブースでは、フルスタックサービス開発やクラウド導入を中心に事業を展開。また、オリジナルソース、オリジナルドレッシングを作る「MySauceFactory」という自社サービスも運営しています。

6年前に福岡に移住した小島さんは、あてにしていた仕事がいなくなり、当時は深夜に倉庫でアルバイトをしていました。特別なコネクションを持っているわけではなかった小島さんがまず行ったことは、仲間づくりでした。

福岡のコミュニティリーダーに会いに行き、コミュニティに積極的に参加していくことで仲間を増やした小島さんは、自身でもコミュニティを立ち上げます。それが、「Azure」と「AWS」の福岡でのユーザーグループでした。競合といえるクラウドサービス同士のユーザーグループではありますが、「東京ではありえないことも、地方だとできるからおもしろい。それが地方の楽しみ方だと思う」と小島さんは語ります。

続いて小島さんは、「アジアのリーダー都市を目指す」という福岡市の戦略を紹介。これは平成26年に、福岡市が国家戦略特区に選ばれたために掲げている戦略で、福岡市では次のような施策を実施しています。

・スタートアップ法人減税
特定条件を満たせば法人税全額免除になる。

・近未来技術検証
IoT関連事業の実証実験を福岡市がサポートになる。

・スタートアップビザ
主に北米の外国人を意識した創業活動支援。6ヶ月の在留資格が得られる。

・FUKUOKA Growth Next
廃校になった小学校を利用した官民連携のインキュベーションセンターで、オルターブースも入居。毎月、銀行やVC、大手事業会社などから300人規模で集まり、入居者は必ずピッチが可能。

このように多くの大胆な規制緩和が実施されている影響で、福岡市には多くのスタートアップが集結しています。

最後に小島さんは「個人として移住するならコミュニティに参加して仲間を増やす。起業したいのであれば地域の戦略を上手く活用する。どちらにしても地域を上手く使いこなして、自分のやりたいことを実現していきましょう。それが『ハードコアライフハック』です」とまとめました。

沖縄と東京とブラジルと地方を飛び回って見えてきた意外なリアル 〜外資&東京じゃないからこそエバンジェリストを目指す

5人目の登壇は、沖縄に住みながら日本&世界中を飛び回るレキサスの常盤木さんです。

常盤木龍治(ときわぎ・りゅうじ)/株式会社レキサス 事業推進部マネージャー兼エバンジェリスト。通称“トッキー”。1976年生まれ。桜美林大学卒。東洋ビジネスエンジニアリング、インフォテリア、SAPでエバンジェリストなどの経験を経て、2014年よりレキサスに入社。アイラモルトと城巡りが大好き。

常盤木さんが勤めるレキサスでは、2030年までに2,000億円の経済圏をつくる企業になることを目標に掲げています。この金額は沖縄の基地経済と同じ額。まず沖縄の経済状況を変えたいという想いがあり、さらに、東京一極集中であった日本経済を地方から盛り上げたいと掲げているのです。

続いて常盤木さんは「With Heartful Technology」というビジョンのもとでレキサスが展開している事業を紹介します。

2017年1月にレキオ・パワー・テクノロジー、リバネスと提携して始めた事業が、途上国における簡易超音波画像診断装置(エコー診断機)の提供と、AI活用画像データベース構築です。これまで1台数百万円ほどの金額が必要だったエコー診断機ですが、これを数十万円ほどの価格帯で、途上国を中心に普及を開始。更に今後の機能拡張として、ディープラーニングを活用する事で医者がいなくてもリモートで診断することで医療問題の解決を目指しています。

その他にもレキサスでは、AIを活用したウェディングアルバムを作成するサービスや、沖縄では珍しい、クラウドインテグレーションとUX改善を軸とした課題解決型のシステム/プロダクト開発に力をいれています。さらに沖縄という立地を活かして、製品企画開発合宿を提供するサービスを実施。通常であれば1ヶ月ほどかかる製品企画開発を3日間で行うというもので、国内大手の企業も参加しています。

レキサスは、クラウド、ハードウェア、通信、AIなどあらゆる領域をマルチベンダーで提供しています。「それはIoT/AI時代には顧客体験を最大化するために必要なことだと考えているから」だと常盤木さんは説明します。

さらに「IoT時代のエンジニアは、AI層、アプリケーション層、データ層、通信層、デバイス層の全てのレイヤーでフルスケールに設計できる力が必要」だと常盤木さんは今後求められる人材像を語りました。

また、JICAのブラジル連携調査団の一員としてブラジルを2週間訪問した際のエピソードを紹介します。サンパウロやその他ブラジルの地方4都市を訪れた常盤木さんは「内閣支持率5%と政府が腐敗しているため、他責にしている暇などなく国民自身が強いイノベーションに対する欲求を持っていると感じた」と話します。

最後に常盤木さんは「企業価値の根底は『価値創造の原資を毀損していないかどうか』という観点にある。『地方であることそのもの』が大切なわけではないが、地方にいると周りに流されないので、企業価値を毀損せずに課題解決に集中できる。地方から世界へ飛び出そう」と会場にメッセージを送りました。

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パネルディスカッション「地方で働くエンジニアのリアル白書」

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