【レポート】地方で働くエンジニアのリアル 〜エンジニアにとっての「新しい働き方」とは〜

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地方で働くエンジニアのリアル白書

休憩を挟んで5名の登壇者によるパネルディスカッションが行われます。モデレーターを務めるのは常盤木さんです。

常盤木 なぜ、地方で働くことを選んだのですか?

羽角 私は「Ruby on Rails」で開発したかったんです。松江は「Ruby on Rails」を推しているので、「松江で働けたらいいよね」なんて、鳥取出身の後輩と東京で話していました。

山陰ってアクセスもよくないし、それこそ東京からなら沖縄よりも心理的には遠い場所ですよね。「そんなところでエンジニアやれたら最高じゃん!」と思って、チャンスが出たときに手を挙げました。

小泉 私はUターンで戻ってくる前に、仙台に本社がある企業の東京支社で7年ほど働いていました。宮城に戻るきっかけは、その企業で昇進するタイミングでしたね。

その3年後に震災があり、「塩釜っていいところだな、地元を盛り上げたいな」と初めて考えるようになりました。そこから、今は塩釜を拠点に活動しています。

小野 私は札幌市の出身なのですが、いつかは地元に戻りたいと漠然と考えていました。東京で自分の会社を起こしてからも「いつかは札幌へ帰るから」と周りに言っていたんです。

実際に札幌へ戻ったのは、自身が30歳の頃でした。30歳という数字に特に明確な理由があるわけではなく、なんとなくで決めましたね。

小島 私は東京でエンジニアとして働いているうちに「もうITは辞めよう」と考えていました。「逃避先」を探すように札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、沖縄などを全国行脚していたのですが、福岡に着いたときに「地域に入り込めそうだ」という空気を感じたんです。

この時は整骨院で働く柔道整復師の資格を取得して、福岡に骨を埋めようと考えていました。ただ、仕事がなかったので、後ろ向きにITの仕事を始めて今に至っています。

常盤木 私は沖縄に行きたいと思ったわけではなく、まずレキサスという会社に惹かれました。当時、「Wantedly」に「就活する気のない方、ウォンテッド」って掲載していたんですよ。

新卒向けのウェブページを見てみると「レキサスを使い倒せ」っていう表現をしていました。この「自分や会社をAPIとして使う」というマインドセットに興味を持ちました。

もうひとつは、先の大戦で壮絶な戦地となり日本の盾になってくれた沖縄に平和的創造活動で貢献したいという個人的な想いです。

常盤木 地方でTechの世界で働くメリット、デメリットについてどう思いますか?

羽角 「Ruby」以外の勉強会がないことはデメリットかもしれません。でも、ネットで調べられないような人は勉強会に出ても意味がないと個人的には考えています。だから、それほど大きなデメリットだとは思いませんね。

小泉 メリットはナンバーワンになりやすい、オンリーワンになりやすいことです。デメリットは、ひとりぼっちになりやすいことですね。でも、この2つは同じ状態で、要は捉え方の問題です。同じ状態でも見方を変えればメリットになると思いますね。

小野 テックの世界に限った話しではないのですが、北海道の人はのんびりはしてると思います。ですから、あくせくしない働き場を提供できるのはメリットかもしれません。デメリットは情報の鮮度がワンテンポ遅れることですね。

もうひとつメリットで言えば、会社のカラーを打ち出しておけばリファーラルがもらいやすいと感じています。営業はほとんどせずに済んでいますね。

小島 福岡はコミュニティがとても多いので、情報の入口はあまり東京と変わりません。これはメリットだと思います。

デメリットは、「福岡の価値」を「他の地方の価値」と一緒にされることです。「ニアショア」という価値は大嫌いなのですが、福岡でも「ニアシェアだから安いんでしょ?」と言われやすいですね。

常盤木 自律型人材にとっては沖縄は天国のような場所だと思いますが、言われたことだけやるイエスマンにでは給与は6割くらいになると感じています。私も含めた自律型の人間でも8割くらいの水準になることは多いのではないでしょうか。みなさんは、お金と幸福度のバランスをどのように考えていますか?

羽角 私たちは東京でも地方でも、給与テーブルは一緒です。ですから、可処分所得はむしろ増えていますね。

また私はIターンなのですが、自身の生活は今とても幸せです。別の会社に勤めている妻も「東京の仕事を松江でやらせろ」と社長に直談判したんです。当初、「松江ってどこ?」と言っていた妻も、とても楽しんでいますね。

小泉 私はサラリーマン時代の昇進のタイミングで東京から仙台へ移ったので、東京よりも宮城にいる方が給与は高いです。会社を辞めるときにも既に事業を起こしていましたから、収入が下がることはありませんでした。

現在は好きな時間に働けるのがいいですね。講義をしたり、コンサルをしたりするのはある程度時間が決まってしまいますが、開発は自分の好きなにできますよね。平日の昼間には映画館が空いてるのでよく映画を見ています。

小野 札幌全体で見ると、ニアショアといわれる金額で請け負ってしまう企業は多いですね。給与も東京の8割くらいの水準だと思います。ただ、私たちは受け皿になりたいので、東京水準の金額で受注していますし、給与も東京水準に設定しています。

小島 地元福岡の企業のIT案件だと予算が削られると感じています。だから、東京の案件をニアショアではなく、福岡でリモートでやるというスタンスですね。

私たちはスタートアップですから賃金は安いと思います。でもそれは地方にいるからではなく、東京にいても同じであくまでスタートアップだからです。でも、可処分所得は増えますし、幸福度は福岡にいたほうが高いと思いますね。

常盤木 私は外資系の給与水準が高い会社にいましたので、沖縄移住で給与は下がりました。でも、人生の幸福度は300%になったと感じています。手取りそのもののみを所得として考えるのではなく、実態感覚の幸福度+実収入の合計こそが“真の所得”なのではないでしょうか。

外資にいた頃にはまわりに、世界中に優秀な層が圧倒的にいて、「自分がいなくても会社が回る感覚」が強いプレッシャーになっていました。自らの成長に伸び悩みを感じていました。様々な考え方があると思いますが、私自身は「自分だからこそ」「社会に必要とされること」が大きなテーマだったのです。

常盤木 最後に、今後どうしたいと思っているのかお聞かせください。

羽角 私はサラリーマンですが、会社的には異動命令のような制度がいまのところないので「東京に戻される」というような不安はありません。ただ、今後は「住みたいところに住んでも、指名されて仕事がもらえる人材」にならなければいけないという実感があります。

現在も東京の案件がメインですが、そこだけ意識できれば地方でもどこでもなんとでもなると思っています。

小泉 地方で生き残るには「異種格闘技戦」に持ち込むことが大切だと思っています。違う業種の方々とのコラボレーションですね。

それは相手が持ってないカードを出せれ強いからです。私も最初は官公庁向けの人事サービスを担当していたんです。そういったものを半歩ずつずらすと新しい領域が見えてくると思います。今の力を地方に持っていくだけでも意外と目立つものがありますよ。

小野 今後も自分が何者なのかを訴えられるようにしていくべきだと考えています。「自分自身の市場価値を高めて、会社が明日倒産しても食べていける人間になれ」とインフィニットループ代表の松井がスタッフに言ってますね。

そういった点で考えると、一番大切なのはコミュニティだと思います。所属する会社がどうなったとしても、個人が持っているネットワークは生き続けるんです。

小島 個人としては、早くITから足を洗って柔道整復師として活動したいですね(笑)。

小泉さんもおっしゃっていたように、地方ではピボットすることが本当に大切だと考えています。ただ、地方では資金調達に課題があります。行政の補助金はありますが、スタートアップとしてVCやエンジェルから地方で資金調達できるチャンスはゼロに等しいんです。スタートアップとしては東京でドライブするか、海外でドライブして逆輸入する形になるでしょう。

福岡に限っていえば、現在行政がユニコーン企業を排出しようと力を入れています。そういった部分は自分の目できちんと見て欲しいですね。

常盤木 私も今後はエンジェル投資家と地方のベンチャーを直接つなぐシステムをいかに作れるかがカギになると思います。コミュニティにも様々なレイヤーがありますが、資金調達のコミュニティに課題が多いですよね。生きていくことはできますが、もう一段階上の楽しくワクワクするレベルに広げていくために、産業化していく動きが必要だと思っています。

個人として地方に行くと、“他責”のスタンスでは高いレベルに行けません。「個人」「会社」「コミュニティ」は個別ではなく、全てつながっているんです。自分をAPIと捉えて、周りをジョイントしていく意識がないと楽しい状況は生まれないと思います。

懇親会!

パネルディスカッションの後は懇親会です。主催である島根県の広沢さんの音頭でカンパイ!

懇親会では地方での働き方に興味を持つ多くの方が、直接登壇者にお話しを伺っていたようです。

またの開催を楽しみにしています!

取材・文/108UNITED

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