NECが取り組むクライアントのクラウド基盤・開発基盤のモダン化事例と開発組織とは?

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NECが取り組むクライアントのクラウド基盤・開発基盤のモダン化事例と開発組織とは?
クラウドサービスおよびプラットフォームSIの提案を行い、モダナイゼーションを提供するNECの全社組織「サービス&プラットフォームSI事業部」。複雑で重厚な大企業のミッションクリティカルな大規模システムを、多く手がけている。一方で、20〜30年前に構築したシステムのクラウド化やモダナイゼーションといった検討案件も多くある。具体的にどのような技術や取り組みを行っているのか。事例と合わせて紹介する。

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顧客に最適なSI・デジタルプラットフォームを届ける


日本電気株式会社
サービス&プラットフォームSI事業部
上席事業主管 淺野 友彦氏

最初に登壇したのは、上席事業主管としてサービス&プラットフォームSI事業部を牽引する淺野友彦氏だ。淺野氏はNECの経営戦略や事業内容などについて紹介した。

NECは中期経営計画の中で、コアDX事業を梃にベース事業の変革を掲げている。これまでクライアントごとに個別最適で提供していたサービスの全体最適化を目指す。一気通貫で包括的に技術やサービスを提供することで、顧客企業のDXを推進するというものだ。

その実現のポイントとして、淺野氏は以下の3つを挙げた。150名を超えるITコンサルタントを採用し、NEC自身が社内DXを進めているという。目標としては、2025年までに国内IT事業における営業利益を、8%から13%に引き上げることを掲げている。

  1. コンサルティングからデリバリーまで
  2. 共通基盤とオファリング
  3. ハイブリッドクラウド
ちなみにオファリングとは、クライアントごとに個別でにサービスを提供するのではなく、何度も繰り返し使えるサービスの総称である。クライアントの属性や業界ごとにある程度フレームワーク化されているのも特徴だ。

サービス&プラットフォームSI事業部のメンバーは約300名。業種ごとに分けられた事業部を横断するデジタルプラットフォームユニットに属する。

同ユニットには全社で必要な技術やサービスの専門家が、それぞれ事業部としてSPSI事業のように属している。生体認証、クラウド、モダナイゼーション、コンサルティングなどが、同ユニットに属する。

「我々の役割はNECの持つ全アセットをフル活用し、顧客に最適なSI、デジタルプラットフォームを届ける牽引役となることです」(淺野氏)

具体的な業務としては、コンサルタントと一緒になって上流工程から顧客にアプローチする。その上で本来の得意分野であるSIを設計・実装する。クラウド、モダナイゼーション、ローコードプラットフォーム(LCP)といった、モダンで最新の技術やサービスを積極的に提供する。

「これまでのSIメニューを組み合わせたり、システム構築を自動化するツールを活用することで、さらなる効率化を目指しています。同時に、DXオファリングの整備といった社内基盤の整備も我々の仕事であり、営業利益率改善をアップさせるためにさまざまな施策にトライしています」(淺野氏)

具体的なツールも紹介した。SIの設計や構築、運用を自動化・自律化するOSS「Exastro Suite」だ。変革を実現していくことのできるDX人材の育成にも力を入れている。

淺野氏は次のように述べ、セッションをまとめた。

「お客様にさらなる付加価値の高いSIサービスを提供していくのはもちろん、自社だけでなくパートナー企業の育成にも注力することで、短時間でより効果的な成果を出す。そのような働き方のマネジメントもあわせて実現していきます」(淺野氏)

クラウド化に向けた「基本計画策定」の勘所とは


日本電気株式会社
サービス&プラットフォームSI事業部
セールスエンジニアG マネージャー 毛利 雄介氏

続いて登壇した毛利雄介氏は、クラウドジャーニー(クラウドネイティブ化)における基本計画策定の重要性やポイントについて、クラウドジャーニーのトレンドも含めて説明した。

「クラウドサービスの台頭により、顧客自身でクラウドの構築ができるようになった。その結果、SIベンダーは単に設計・構築・導入・保守といったシステムを構築するだけではなく、顧客と一体となった価値の共創を目指す必要性が生まれました」(毛利氏)

このような背景から、顧客とともに企画から要件定義、実装後の運用までの包括的かつ一気通貫したサービスをインテグレーションしていく必要がある。その上で顧客と一体となり、DXや価値創造することが求められていると語った。

当然ながら、顧客の業務をビジネスも含め、同じ立ち位置で理解することが重要だと毛利氏。その上で、SIのプロフェッショナルとして、あるべき姿や実現方法を明確に定義した基本計画ならびにロードマップを、顧客と一緒に共創していくことが重要だと強調する。

顧客がクラウドを構築できるようになったとしても、実際には目指すべきシステムを構築することは簡単ではない。だからこそ知見を持つクラウドSIとして、基本計画の策定からシステムの実現まで、適切にサポートすることが必要となる。

基本計画策定は現状の調査からはじまり課題を洗い出し、整理・明確化し改善策を明確化。クラウド移行計画を策定していく。

「計画はシステム的な観点だけでなく、ガバナンス、運用などさまざまな側面から検討する必要があります。企画工程でいかに十分な計画を立てられるかが、クラウドジャーニー成否の分かれ目でもあります」(毛利氏)

毛利氏は、クラウド移行方針の立案からクラウド利用ガイドなどの成果物の作成など、計画策定の進め方や事例なども紹介した。

このような実績を踏まえた上で、顧客によってクラウドジャーニーの検討ステータスはさまざまであること。それらの要求を計画に落とし込み、設計や構築・運用といったサービス提供につなげていくことがポイントだと説明した。そして、次のように話し、セッションを締めた。

「実績、経験、知見、人材など、NECにはSIベンダーとしてこれまで築き上げてきた豊富なアセットがあります。計画策定においてもNECならではのアセットがあるからこそ、さまざまな施策を提案することが可能であり、上流から下流まで一気通貫で行えるのも特徴です。強みであると共に、仕事のやりがいにもなっています」(毛利氏)

DX時代に向けたシステムやアプリ開発のパラダイムシフト


日本電気株式会社
サービス&プラットフォームSI事業部
デジタルSIグループ マネージャー 高橋 健輔氏

続いては高橋健輔氏が登壇。LCP(Low-Code Platform)が求められている背景やトレンド、実際にNECが導入している製品を紹介した。

「市場やニーズの変化が激しい昨今は、以前のように“欲しい”と言われてから開発をスタートしたのでは間に合いません。また、開発している間にもニーズが変化することが考えられるため、スピード感はもちろん、変化に柔軟なに対応ができる開発環境が求められています」(高橋氏)

こうした環境の変化を踏まえた上で、現在の開発環境(基盤)は大きく二極化のパラダイムシフトにあるという。

専門性の高いJavaフレームワークなどを使った従来型の開発がひとつ。もうひとつは昨今の開発ニーズにマッチするLCPを使うことによるスピーディーかつ柔軟な開発であり、一般的な業務処理はLCPが向いていると高橋氏は説明した。

LCPと従来の開発ツールの違いも説明した。LCPは、要件定義を除く外部設計以降のすべてのプロセスを自動化等により支援するツールであるため、ビジネスニーズの変化の対応に素早く寄与することは一目瞭然だ。

LCPは、汎用型と特定のユースケースに対応する特化型に大別され、NECでは幅広い企業の一般的なニーズに対応する汎用型製品を扱っている。

その汎用的なLCPの代表例として紹介されたのが、開発・運用ライフサイクル全体をオールインワンでサポートする、23.5万システムの開発実績を持つローコードプラットフォーム「Mendix」だ。

メリットが多いLCPだが、デメリットもある。高橋氏は日本の商習慣に合わせた機能追加などの調整、DevOpsやコンテナ技術といった新しい開発手法を理解する必要性など、6つのデメリットを挙げた。

NECではこのデメリットに対応したかたちで、LCPの利用方法を提案・提供している。具体的にはこちらもスライドに詳細が示されているが、機能部品の提供や研修などであり、単にMendixを提供するだけではない、NECならではの付加価値サービスと言える。

その付加価値のひとつが、最近注目されている「aPaaS(Application Platform as a Service)」だ。アプリケーションの設計から開発、デプロイ、管理までの環境を提供するマネージドサービスであり、高橋氏は次のように説明し、次の登壇者にバトンを渡した。

「aPaaSを提供することで、開発環境の構築から運用保守までお客様を一気通貫でサポートできるため、まさしくお客様のDXパートナーとして共創している存在と言えるでしょう。ビジネス視点でもSI事業の網羅的受注につながり、業績に貢献できます」(高橋氏)

NECと米国AWSのアライアンス、専門チームの開発事例を紹介


日本電気株式会社
サービス&プラットフォームSI事業部
PFSIグループ VPEC(Virtual Platform Enginering Center)
マネージャー 小林 崇史氏

続いては小林崇史氏が登壇。米国AWSとの協業や戦略アライアンスについて紹介した。

2020年11月、NECは日本では初となる米国AWSとコーポレートレベルの戦略的協業を締結。主に次の3つの領域において、両者で協業しながら強化していくことを発表している。

  • 官公庁・金融・医療機関など業種特有のレギュレーション対応マネージドサービスの提供
  • 顧客のデジタルジャーニーをサポートするオファリングメニューの共同開発
  • NECグループのAWS認定資格保有者を倍増し、デリバリー体制を強化
「さらに10カ月後の2021年9月には新たに、グローバル5G、デジタル・ガバメント、ハイブリッドクラウドを実現するオファリングメニューの提供といった領域でも、連携や協業を強化していくことを発表しました」(小林氏)

SPSI事業部内にはプラットフォームSIグループがあり、SIの知見をメニューやテンプレートとし、高効率・高品質のSI事業を実現する命題を掲げている。小林氏は同グループの6名からなるAWSチームに所属している。

AWSチームでは、社内外両者に対してAWS環境の提供や設計などのAWS関連の技術支援から実装、ビジネスの拡販といったプロモーション活動まで担う。

NECではAWS認定ソリューションアーキテクト(以下、SA)のアソシエイト以上の資格を持っていれば、誰でもAWSが使える環境にある。加えて、プラットフォームSIグループに所属していれば、AWSの利用自由度はさらに高まる。基本的に基本、無制限でAWSのサービスを利用できるからだ。

「コストも含め時間など、常識範囲内との暗黙知は当然あります。一方で、コストを意識するよい機会にもなり、いつでも自由にAWSを使える環境は、我々エンジニアがやる気になる環境であることは間違いありません」(小林氏)

AWSの資格取得に向けた試験バウチャー(電子チケット)は、社員であれば誰でももらえ、各種講座や研修メニューといった学ぶ体制も充実している。もちろんどちらも無料だ。

SPSI事業部がAWS社との全社的な連絡的に窓口になっているため、技術者との定期的な情報交換会や交流などもあるという。加えて、NEC専任のSAもいるため相談や課題対応も、最適なタイミングでできる。

「自分たちで解決が難しい高難度なプロジェクトであっても、サポートを適切なタイミング受けることができるので、お客様にとってはもちろん自らのスキルアップにも寄与しています」(小林氏)

開発事例も2つ紹介された。1つ目は、官公庁系基盤システムの改善プロジェクトである。NECではなく他社がAWSを使い構築したシステムであったが、いくつかの課題があった。

アクセスはが運用拠点のみ。踏み台サーバーをElastic Load Balancingで構築していたが冗長化しておらずシステム全体の障害点、SPOF(Single Point Of Failure)となっていた。Zabbixで管理していたが、他との共通基盤なども監視していたため負荷がかかりすぎて落ちることが度々あった。

そこで下部のシステムアーキテクチャを構築。Zabbixは廃止し、AWSクラウドネイティブな構成に刷新した。

フルマネージド型のアプリケーションストリーミングサービスAppStreamはこれまで使ったことがなかったが、AWSのSAに相談をしながらPoCを重ね、導入に至った。

2つ目は医療系SaaSサービス立ち上げにおける、連携基盤(ゲートウェイ機能)の構築だ。クライアントからはサービス・利用者ともに今後増減する可能性があるため、フレキシブルに対応できるシステムにしてほしいという要望があった。

そこで、CloudFormationやCLIといった構成情報をコードとして記述化し管理する手法、IaC(Infrastructure as Code)を選択。以下スライドのようなシステム構成とした。

小林氏はプロジェクトの振り返りを次のように述べ、セッションを終えた。

「サービスによってはIaCで完全に自動化できない箇所もあり、一部スクリプトを作って補完しています。スクリプト作成の業務ボリュームが苦労点であり、今後の課題でもありました。一方で見方を変えると、プログラミングが好きな人にとっては興味の高いプロジェクト。Pythonでコードを書いてLambdaを起動させるなど、IaCの重要は高まっているので、技術スキルがある人が活躍できる環境です」(小林氏)

キャリア入社メンバーがNECの魅力や職場環境を本音で紹介


日本電気株式会社
サービス&プラットフォームSI事業部
PFSIグループ WPEC(Windows Platform Enginering Center)
マネージャー 佐藤 亮氏

最後のセッションは、20代半からIT業界でキャリアを積み、2018年10月に4社目のキャリアとしてNECを選んだ佐藤亮氏だ。

「NECに入社して驚いたのは、大手企業に対するミッションクリティカルなプロジェクトが多く、しかも上流工程から運用保守までワンストップで携われることです。各種ベンダーとの協業が積極的であることも特徴の一つだと感じています」(佐藤氏)

NEC入社後3年目に、佐藤氏をワクワクさせるトピックが飛び込んでくる。2021年7月、マイクロソフトとNECが戦略的パートナーシップを拡大するという発表だ。このリレーションシップにより、その後はマイクロソフトのメンバーと隔週でミーティングを行ったり、新技術の提供を受けるなどの関係性が続き、SEやPMといった佐藤氏も含めた現場メンバーが、忌憚なく意見を交わすことが当たり前になった。

佐藤氏はWPEC(Windows Platform Enginering Center)チームに属する。役割は名のとおり、Windowsをはじめとするマイクロソフトサービスのスペシャリスト集団として、NEC全社のSIを支援する。

チームは総勢16名。平均年齢は34.7歳。佐藤氏も含め4名がキャリア入社であり、昨年にも30代が1人、今年の4月からも新たな20代のキャリアメンバーがジョインしてくるという。

「プロジェクトでは縦割りの弊害をなくすために、スキルベースでメンバーをアサインしています。そのため各人が強みを発揮できる環境であり、得意分野の底上げはもちろん、他の領域にトランスファーすることも可能です。評価においても上司だけでなく、同僚や部下からの365度360度評価も導入しています」(佐藤氏)

佐藤氏は改めて入社してからのNECでの仕事や環境を振り返り、NECの魅力や苦労を赤裸々に話していった。魅力については、100年以上連綿と培ってきたモノづくりのノウハウならびに、それらのアセットが社内で広く公開されている点を挙げた。

改めてNECで働く魅力を次のように述べ、セッションを締めた。

「プロジェクトの上流工程から参加することができます。また、SEの発言力も強いので、リスクを早期に排除することができます。成果が評価にきちんと反映される点も魅力だと感じています。私事ですが今年の4月からワンランク上のポジションに昇格、年収も以前よりアップしています」(佐藤氏)

【Q&A】視聴者からの質問に答えるセッション

視聴者からの質問に登壇者が回答するセッションも設けられた。

Q.計画策定での苦労や実際のつまずきポイントなどは?

毛利:何がお客様にとって最適なソリューションなのかをしっかり検討した上で、計画の策定や提案を行うのですが、進めていく中でどうしても差異が出てくることです。現在も改善策を検討しています。

Q.モダナイズの難易度が高い業界や特徴はあるか

淺野:どれも難しいのですが、特に難易度が高い案件を挙げるとすれば、日本特有のビジネスロジックが残っている官公庁案件です。そもそもモダナイズしていいのかどうか、判断から難しいことが往々にしてあります。

Q.LCPに関してセッション以外の懸念点はあるか

高橋:やはりコスト面です。長期的に取り組むことのできるプロジェクトでないと、フィットしないように感じています。

Q.LCPはNECから提案するのか、それともクライアントからの要望なのか

高橋:私たちからクライアントに提案することもありますし、LCPに関する記事やイベントなどを通じて情報を得た方から問い合わせをいただくこともあります。また、SAPなどのシステムが入っている場合や、いわゆる疎結合で別の業務ロジックを構築したいときなども、LCPを提案することがあります。

Q.LCPよりも従来型のシステム構築を提案した方が受注金額は大きいのではないか

淺野:クラウドのサービスは常に新しい機能がリリースされており、かなりのスピードで技術やサービスが進化しています。このようなイノベーションのトレンドに乗り遅れることなく、適切な提案を心がけています。

Q.自社クラウドを積極的に提案することはないのか

佐藤:お客様にとって最適なコスト、技術的な良し悪しを判断して提案しています。例えば、ハイブリッドクラウドを構築したいときは、Azure、AWS、GCPと合わせて自社クラウドを提案することが多いですね。

日本電気株式会社
https://jpn.nec.com/
日本電気株式会社の採用情報
https://jpn.nec.com/recruit/index.html

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