IBM Cognitive Night レポート

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IBM Cognitive Night レポート

10月31日、日本IBM本社で「Cognitive Night ~ IBM Watsonで実現するコグニティブの世界を体感★」が開催されました。2011年にアメリカの人気クイズ番組でクイズ王に勝利し、世界を驚かせたコグニティブ・テクノロジー、IBM Watson(以下、Watson)の最新事例を紹介し、その活用方法についてIBMのエグゼクティブ、コンサルタントと参加者が一緒にワイワイガヤガヤと「よりよい未来」の実現についてアイディアを出し合う、短い時間ながら濃密な内容のイベントです。

会場には100名近い参加者が集まり、テーマに対する関心の高さを感じました。

IBMの戦略について

はじめに、日本アイ・ビー・エム(株)取締役専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部長のCameron B. Artさんが登壇しました。

Cameron B. Art
大学卒業後、IBMに入社。20年以上にわたり、大手企業の複雑な経営課題の解決に対し、テクノロジーを介したビジネス変革を支援。2015年1月より、日本IBMにおけるグローバル・ビジネス・サービス(GBS)事業担当のマネージング・パートナーに就任。金融、製造、流通、公共、通信事業におけるコンサルティング、システム・インテグレーション及びアプリケーション・ビジネスを担当。

Cameron氏は、Watsonの日本での発表以降、ローカライズが進められる中、今後はお客様の価値創造に向けた技術の応用が鍵であり、その上で、「Watsonに関するお客様と詳細の検討を行うことが、実装のためのアイデアとしてより重要になってきています。お客様がWatsonのどこに興味を持っているのかを理解した上で、それ以外の分野においても、お客様が価値を創造しうる事例を伝えていく必要があると考えています。」と述べています。

Watsonを多くのお客様と繋げていくことで、より多くのフィードバックを得ることができ、さらに多くのお客様へと繋がっていきます。しかしながら、IBMは単に販売を拡大することを目的にしているのではなく、「Watson Health」のように、人々の医療データをベースに、癌の検出と治療にも取り組んでおり、大規模なユースケースとしてまもなく日本でも発表される予定です。

「Watson Health」は2015年4月に米国IBMが立ち上げたサービス部門で、米国のヘルス・データ企業の買収とアップルとの提携を通じて、医療データ - 臨床情報システムデータ(EHR)を活用しています。Apple WatchやiPhoneで収集するヘルスケア・データをクラウドに集約した、Watsonのコグニティブ・テクノロジーを利用したデータ解析サービスです。

「家族や自分が癌を経験したことのある方も数多くいらっしゃるでしょう。私たちは、このビジネスを売り上げだけを目標に立ち上げたわけではなく、このテクノロジーを使ってより社会に貢献したいという思いで始めたということをご理解いただきたいと思います。
私は、ビジネスの継続的な成功要因は、私たちが社会に貢献したいという高い目標を掲げ、それを達成するまで見届けることだと信じています。
よりよい社会の実現に向けて、みなさんと一緒に働く機会があれば大変嬉しく思います。
今日は、イベントに参加しているIBMの社員とたくさん会話していただき、ビジネスにどう活用できるのかを深掘りし、より詳細な質問もどんどんしてみてください、と話を締めくくりました。

コグニティブの今と未来に目指す世界

次に登壇したのは日本アイ・ビー・エム(株) グローバル・ビジネス・サービス事業 コグニティブ・ビジネス推進室長 パートナーの中山 裕之さんです。

中山 裕之
プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社(現日本IBM)に入社し、その後IBMによるPwCコンサルティング買収によりIBMコンサルティング事業部門に参画。現在に至るまで20年以上のコンサルタント経験を有する。流通、製造、金融、公共など幅広い業界で、ITを駆使した業務改革に従事。現在は、コグニティブ・ビジネス推進室の立ち上げを牽引している。

まずWatsonの機能と最新事例についての紹介がありました。

「今日もたくさんの方にご応募いただき、皆さんWatsonに興味を持っていただいているということをひしひしと感じています。コグニティブの世界は決して夢物語ではなく、現実になっています。先週『World of Watson』というIBMでは世界最大級のイベントがラスベガスで行われましたが、そこではガンの研究をされている東京大学の宮野教授をはじめ、実際に多くのお客様にご登壇いただき、お話を伺うことができました。先日トップニュースとしても取り上げられましたが、治療困難だった患者さんがWatsonの解析技術を使って病名の診断がなされ、治療法が見つかり、命が助かったという事例も実現しています。また、オリー(Olli)くんという自動運転のバスにも採用されていて、実際に会場を走り回り、Watsonを使ってデザインしたドレスも展示されていました」

オリーはアリゾナの自動車メーカーLocal Motorsが開発した自動運転バス。Watsonは乗客とのコミュニケーションのために使われており、乗客の話を聞いて道を説明したり、目的地周辺のレストランや観光地の案内、下車したいという指示に従ってオリーをコントロールすることができるそうです。まさにWatsonの自然言語分類という特徴を活かした製品化と言えます。
また、コグニティブ・ドレスは5月にNYのメトロポリタンミュージアムで行われたMet Galaというファッションのイベントで、ファッション・ブランドのMarchesa(マルケッサ)がWatsonを使ってデザインしたものです。

参考サイト:
http://www-01.ibm.com/software/events/wow/
https://localmotors.com/olli/
http://www.difa.me/articles/ibm-watson-marchesa-cognitive-dress

「またGM(ゼネラル・モーターズ)の社長による基調講演も行われました。GMの新しいナビゲーション・システム『オンスター・ゴー(OnStar Go)』にWatsonが採用されました。これは2017年には実装されるシステムで、車と連動することでガソリンの残量や走行可能な距離、近くにあるガソリンスタンドへの誘導などが行われます。また、将来的には、例えば近くのスターバックスを表示し、車の中からオーダーや支払いまで済ませることができるというものです。興味深かったのは、ここにマスターカードの人も来ていて、ただ単に支払いをするというだけではなくコグニティブを通じてエクスペリエンスを変えたいというお話をしていました。『オンスター・ゴー』のナビゲーションを通じてガソリンスタンドのExxonMobilに行って給油した場合、そのまま登録されたマスターカードにより支払いまで行われる、といったものです」

現在すでに運用されているサービスとして、Staplesの「Easy System」も紹介されました。これは大手文具販売店であるStaplesが、オフィスでのオーダーを簡単にするもので、デスクに置いた物理ボタンを押して必要なものを音声で注文できるというシステムです。ボタンだけでなく、スマートフォンのアプリやメールにも対応しており、どこからでも簡単にオーダーを済ませることができます。

参考サイト:
https://www.onstar.com/us/en/home.html
http://www.staplesinnovation.com/innovations/staples-easy-system/

「このように、すでにコグニティブは現実のものとして運用されていますが、ではコグニティブとはどういうものなのか。流れを追うと、2014年がエポックメイキングの年と呼ばれており、ネットに繋がれているデバイス=IoT機器の数が地球の全人口の数を超えた年です。電気が全戸に普及していないようなインドの田舎に行っても、電気のない家の住民も携帯電話は持っている。先進国であれば、ひとりで何台ものIoTデバイスを所有しています。これにより、デジタル・データの量が爆発的に増え、2020年には44ゼタバイトに膨れ上がると研究所によって予想されています。しかし、その大半がインスタグラムの写真やSNSの投稿などの非構造化データです。データは21世紀の天然資源であると言われていますが、これまでは構造化データしか解析できませんでした。しかし、Watsonは非構造化データを理解し、そこから結果を導くことができるのです。また、その結果を学習し、さらに新たな結果を導くこともできます。世の中に眠っているダーク・データを経営に活用できるインテリジェンスに変えることができる、それがWatsonなのです」

現在、Watsonが提供するAPI(Application Programing Interface)の中で、自然言語を読み取りその意図を理解する「Natural Language Classifier」や自然言語からその人物の性格を読み取る「Personality Insights」といった言語分野のものは、対話式のサービスやマーケティング、価値観の読み取りなどに活用できます。例えばマーケティングであれば、誰かに貢献することが好き、など、その人の性格を読み取ってアピールできるAPIです。
また、映像分野では画像から人物や文字を理解する「Visual Recognition」というAPIがあります。これは写真から人物の年令や性別を判断したり、自動運転の標識の読み取りに応用されています。

コグニティブ・ワークショップの事例と進め方のコツ

これらのAPIの活用方法を考える、今回のコグニティブ・ワークショップの具体的な進め方について、次に日本アイ・ビー・エム(株)グローバル・ビジネス・サービス事業 コグニティブ シニア・マネージング・コンサルタントの岡田 明さんが登壇しました。

「IBMはデジタル・ストラテジーの企業でデザインとは無縁のように思われるかもしれませんが、実は1950年代からIBMはデザインに対してアプローチをしています。しかし、5年前にジニー・ロメッティがCEOに就任してからは、持続可能なデザイン文化を作って、お客様に必要不可欠な存在になっていきましょうと定義しています。我々が言うところの『デザイン』はお客様の体験価値のデザインであり、ビジネスのデザインです。現在、1,000人以上のデザイナーをグローバルに抱えていて、今後1,500人まで増やすことを目標としているのをはじめ、多様な人材でのアプローチを目指している企業です」

しかし、必要なのは単に人材だけではない、と岡田さんは言います。多様な人材を受け入れることで、会社自体がグローバルにトランスフォーメーションを起こしていく、デザイン思考で必要なビジネスを組み立てていく、お客様目線でアプローチしていくことだと岡田さんは言います。

「まさにそのアプローチを体感してもらうというのが今回のワークショップです。コグニティブなテクノロジーでお客様のビジネスをデザインしていくというのがコグニティブ・ワークショップとなります。巷はハロウィンで盛り上がっていますが、こちらも賑やかにやっていきましょう」

コグニティブ・ワークショップ

ここからは具体的なワークショップの進め方の説明となりました。まずお客様のペルソナを設定し、座席の近い参加者同士でチームを作ります。各チームには1人ずつIBMのコンサルタントがつき、リードしながらワークショップを進行しました。

ほとんどが初対面の参加者同士が結成した即席のチームですが、ペルソナの年齢や職業、趣味や好み、生活スタイルなどを各参加者がポストイットに記入し、ボードに貼りながら細かく設定。困りごとなどのイメージングが進むうちに、活発に意見を出し合い、徐々にチーム感が形成されていきました。最終的にはペルソナの「顔」までも設定することでイメージを膨らませていきます。

次はユースケースの明確化です。Watsonをどう活用していくのか、具体的な案をポストイットに書いて貼っていきます。ペルソナが設定されてからは、参加者が提案していくポストイットの勢いも増して、ペルソナのユースケースに起こりそうな困りごと、トラブルの傾向など、活用の可能性などが次々に提案され、参加者同士のコミュニケーションも活発になりました。ひとつのユースケースの設定に向けて協力し合い、活発にワークショプが進行していきます。

さらに発表に向けてアイディアをまとめていきます。立ち上がってボードを囲むチーム、発言者だけが立ち上がるチーム、考えに合わせてどんどんフォーメーションを変えるチーム、キチっと円陣を組んだ席についたまま粛々と進行するチームなど、個性が見られ、案がまとまったチームからは自然に拍手が起こりました。もうこの段階になると、コンサルタントは進行を促すだけで、自然にチーム内での議論が交わされるようになりました。

今度は3チームずつ合体し、さらに大きな集団を作り、各集団で小チームの代表者が発表を行いました。Watsonが各集団の決めたペルソナに対してどんなことができるのか、どんなケースにおいてどんな手助けをすることができるのかを具体的に、ユーモアを交えながら発表します。

それに対して同集団の他チームから、もっとこんなことができるのではないか、などのアイディアが出ます。具体的なケースに当てはめて行くことで、ワトソンの活用シーンの想定への理解が深まり、アイディアの発散が盛んに行われました。最終的にはプロダクトへの発展などのアイディアも生まれ、ワイワイガヤガヤとワークショップは終了しました。

ネットワーキング

最後はフィンガーフードも提供され、自由に親交を深めるネットワーキングのスタート!
一緒にワークショップを経験した参加者とIBMの社員とで、自由な雰囲気での交流が行われました。

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