メルペイ曾川景介氏、freee横路隆氏、PAY高野兼一氏が語る「お金の価値を支える技術基盤とは」―日本のお金をアップデートする_#02

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支払いのすべてをシンプルにするPAY

最後に登壇したのは、PAYの高野氏。セッションタイトルは「PAYを支える技術と見据える未来」。

PAY株式会社は2018年1月にEコマースプラットフォーム「BASE」を運営するBASE株式会社が決済事業部門を分社化し設立されたBASEの100%子会社。同社ではオンライン決済サービス「PAY.JP」、およびID型決済サービス/お支払いアプリ「PAY ID」の企画・開発・運営を行っている。CEOを務める高野氏は学生時代から決済事業の会社を立ち上げており、「決済の経験はそれなりに長い」と語る。

▲PAY株式会社 代表取締役 CEO 高野 兼一氏

1990年生まれ。早稲田大学商学部在学中の2012年に21歳で決済サービスを運営するピュレカ株式会社を設立。2014年にBASE株式会社にジョインし、決済事業を統括するPAY Divisionのマネージャーに就任。「支払いのすべてをシンプルに」をミッションにオンライン決済サービス「PAY.JP」ID型決済サービス・お支払いアプリ「PAY ID」を運営。2018年1月にBASE社のPAY Division分社化により、BASE100%子会社のPAY株式会社を新設、代表取締役CEOに就任。

PAYのミッションは「支払いのすべてをシンプルにすること」。支払いと一口に言っても現金や電子決済などいろいろあるが、「現金ほど便利な手段になっていない」と指摘する。そこのコストや摩擦をシンプルにして、世の中を便利にしていきたいという思いで、先のミッションを掲げているという。

「PAY.JP」は開発者向けオンライン決済サービスで「決済を自分たちのオンラインビジネスやアプリケーションに導入するためのツールを提供している」と高野氏。

シンプルでわかりやすい料金形態となっており、あらゆるサービスに決済を導入することが可能。また定期課金、Apple Pay、QRコード決済など、多彩な決済手段をサポートしている。

クレジットカードものトークン化、PCIDSSというカード情報セキュリティの国際統一基準にも準拠しており、セキュリティ的にも安心・安全なプラットフォームとなっている。このサービスは高野氏がこれまで、(決済サービスの導入に関しては)APIが使いづらく、電子決済導入に苦労したことがきっかけとなっている。スタートアップや個人のデベロッパーなど、幅広く導入してもらっているという。

「PAY.JP」は新規事業を決済という側面から支援し、世の中の経済を活性化させることをミッションとしている。

一方の「PAY ID」は購入者向けのサービス。特徴としてはオンライン・オフライン問わずあらゆるシーンでかんたんに支払いできる点である。

オンラインではIDとパスワードを入力するだけで決済ができる。一方オフラインでは、QRコード読み取るだけで支払いが可能。「100万人以上のユーザーが利用しており、50万を超えるお店・サービスで支払いができる」と高野氏は説明する。

使い方も簡単だ。店舗が用意したQRコードを「PAY ID」のモバイルアプリで読み取るだけで決済ができる。「イベントで利用すれば、キャッシュレスで1日楽しむことができる」と高野氏。もちろん、BASEのオフィスでも「PAY ID」によるQRコード決済が利用されている。「社内の飲み物・置き菓子、お弁当の購入などで利用している」とのこと。「PAY ID」はオープンなAPIを提供しているので誰でも導入できるという。

QRコード決済は中国では日常的に利用されている一方で、日本でのQRコード決済の普及はこれからである。ネットショップ作成サービス「BASE」の加盟店では、1日で数千ショップがプラグインプラットフォームの「BASE Apps」内の「QRコード決済Apps」をインストールしているなど、利用者数は増えているものの、「まだまだ日本は現金が主流の社会」であり、「だからこそ、ここは変わっていく領域。その流れを促進したい」と高野氏は意気込みを語る。

PAYを支える技術

ではPAYを支える技術はどうなっているのか。インフラはAWSをフル活用。Ansibleで構築、CI/自動デプロイとなっている。

ネットワーク構成は2つのVPCでセグメンテーションしている。一つはアプリケーションレイヤー。もう一つがvault(カードデータ会員環境)である。vault環境はAWS KMSで暗号化しており、Peering Connection Route Table、Security Groupでアクセス制限を行っている。

デプロイはCircle CIとAWS Codedeploy。Circle CI上でテストとビルドを行い。S3へアセットをアップロード、Codedeployをキックし、アプリケーションへデプロイしている。

開発環境はDockerとVirtual Currency環境を用意。Dockerはdocker-composeで用意。実サーバーに近い構成ができるようにしており、自動テストを手元で実行している。またVirtual Currency環境とはAWSにある検証環境のことで、「本番に近い構成で検証できるようにしている」と高野氏は説明する。

アプリケーションはPython3.6系を採用。開発フレームワークはPyramid、非同期処理の仕組みはCeleryで実現。「クローリングやデータ解析にも応用でき、複数の横断したサービスを開発できる。この構成で統一した開発組織が作れると思っている」と高野氏。

サーバサイドはほぼ100%Python。元々はFlask+Djangoのコードもあったが、「今は日本でも数少ない商用Pyramidアプリだ」と高野氏は説明する。

PCI DSSの準拠は400以上の監査項目を満たした上で、年1回のQSAによる訪問監査が必要になる。「PAY社はAWSをフル活用して、PCI DSSに完全準拠している」と胸を張る。

日本の現金比率はまだまだ高い。国もキャッシュレスビジョンを提示しており、2025年までにキャッシュレス比率40%を目指していくという。そういう大きな流れがある一方で、なぜキャッシュレスが進まないのか。

その理由の中でハードルとなっているのがコスト面である。これは「決済の構造から変えていかないと難しい。私たちはここにチャレンジをしていきたい」と高野氏。

例えば「PAY×銀行口座接続」は同社が注力しているポイントの一つ。これが実現すれば、加盟店が支払う手数料が安くなり、購入者はもっと還元を受けることができる。そしてデータが集約され、様々なサービスを享受できるようになるという。

すでに実現例も登場している。「PAY ID」が住信SBIネット銀行からの即時口座支払いに対応したのである。(現状では一部ユーザー向けに対応開始)

「これにより直接引き落としができるようになった。こういうところから価値交換をシンプルにする取り組みをやっていきたい」

PAYで築く現代に適した電子決済を普及させることは新たな金融の発明へとつながる。新しい金融とは電子化・データ集約による現代の信用機関。高野氏は最後にこう参加者に呼びかけた。

「あらゆるサービスにおけるリアルタイムでスムーズな与信を発明することにもチャレンジしたい。そのためにもPAY.JP、PAY IDを広めて、世の中の価値交換の摩擦を減らし、現代の信用の世界を創っていきます。それをまずは目指していく。お金は今後3年で大きく変わる。今が一番面白いときだと思います」

セッション後のQ&Aでは,会場から様々な質問が投げかけられた。

Q1. 銀行口座との連結で、競合との差別化はあるのか。

高野:事業者にとってどれだけ便利なものを提供するか、原価を下げる努力はしています。

Q2. PythonのフレームワークでPyramidを採用した理由を教えてほしい。

高野:Flask+Djangoを使っていましたが、規模が大きくなるにつれ、使いづらくなってきたため。自由度の高さ、堅牢性、スピードを優先してPyramidを選択した。現状はPyramidで困っていることはなく、スピード感を持った開発サイクルとなっています。


この後、懇親会が開催され、個人的に登壇者に質問できる時間が設けられていた。

お金の電子化が遅れている日本だからこそ、現状を変えるチャレンジができる。関心のある人は、ぜひこの金融サービス分野にチャレンジしてみよう。

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