【レポート】アクセンチュアが取り組む公共プロジェクトにおけるサービスデザイン事例 - 「Society5.0」 を実現するイノベーション -

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【レポート】アクセンチュアが取り組む公共プロジェクトにおけるサービスデザイン事例 - 「Society5.0」 を実現するイノベーション -

2018年9月27日(木)19時30分より、「『Society5.0』を実現するイノベーション ―アクセンチュアが取り組む公共プロジェクトにおけるサービスデザイン事例-」が開催されました。

生産年齢人口の減少やグローバル化の急速な進展など、社会構造が大きく変化し、新たな社会課題が生じている昨今。アクセンチュアでは、「安心、安全かつ公平、公正で豊かな社会の実現を目指していく」というミッションのもと、「Society5.0」の実現に向けて様々な事業に取り組んでいます。なかでも注力しているのが、「サービスデザイン思考の導入」。これは、単一的だった行政サービスを利用者中心のサービスへの変革を目指していくものです。

本イベントでは、「サービスデザイン思考」と「アクセンチュアの事例」から、公共プロジェクトで起こせるイノベーションを、参加者の方々とワークショップ形式で一緒に考えていきます。当日は約30名が参加しました。

イベントの内容は次の通りです。

「デジタル化における政府・公共機関の動向」
アクセンチュア株式会社 立石英司さん

「某地方自治体における生活困窮者向けのサービス向上に向けた取組事例」
アクセンチュア株式会社 羅景綉さん

ワークショップ
「事例を踏まえた新しい行政サービスの検討」
アクセンチュア株式会社 滝沢啓さん

それでは内容を紹介します!

デジタル化における政府・公共機関の動向

まずは、立石さんの登壇です。


立石英司(たていし・えいじ)/アクセンチュア株式会社 公共サービス・医療健康本部 マネジング・ディレクター。長崎県出身。1996年、九州大学卒業後、新卒でアクセンチュアへ入社。

立石さんは、現状認識のために国家や政府の動向を紹介します。まずは日本の状況です。

「日本では少子高齢化が進み、全体の人口が減少し続けています。その人口ピラミッドはこの何十年で大きく変化し続け、2060年には1人の高齢者を1.2人で支える社会構造になっていくことが予想されています。日本は世界でももっとも高齢化が進行している『課題先進国』なのです。

また、歳出が歳入(税収)を大きく上回る状況も長く続いており、国債残高も増加の一途をたどっています」(立石さん)

こうした状況のなか、この10年間で企業はどのように変わってきたのでしょうか。

「時価総額の観点からみると、アメリカでは時価総額のトップテンの企業は過去10年で7社が入れ替わり、同時に時価総額合計額が大幅に増加しています。それらの企業には、テクノロジーを起点とし、業界の壁を超えて消費者やクライアントにもっとも適切な商品をスムーズに提供していることが共通の特徴として見られます。

それに対し、日本のトップテン企業の入れ替わりは3社しかありません。時価総額合計額に関しては10年間で16兆円ほど下がっており、全体的に勢いがあるとは言えない現状ととらえています」(立石さん)

続いて立石さんは政治的な動向を説明します。

「今年6月に、通称『骨太の方針』と呼ばれる『経済財政運営と改革の基本方針2018』と『未来投資戦略2018』」が閣議決定されました。

前者では『生産性の向上』『外国人受入れ』など人材をテーマとしたものが大部分を占めました。後者では前者の方針に対応していくべく、政府が掲げる『Society5.0』の実現に向けたイノベーション創出及び実用化のための戦略が提示されています。

この『Society5.0』とは『サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会』を指す言葉です。

『Society5.0』実現のために、政府が重きを置いているのが、『次世代モビリティシステムの構築』『次世代ヘルスケア・システムの構築』などのデータを活用する分野です。データ駆動型社会の共通インフラの整備を行い、特区的な形で実証的に試行をしていく『サンドボックス制度』を設けるなど規制・制度改革にむけたチャレンジを企図されています。

しかし、その取り組みには課題も多く、例えば『外国人材受入れ』に関しては、従来の所掌に基づき遂行する縦割り行政という背景ではあるものの、国民サービスを起点とし、多くの省庁による横断的な対応が求められ、全体のイニシアティブやサービス・制度設計の一貫性の確保など、推進上の懸念も内包していると推察しています。

政府はこの現状を鑑み、デジタルガバメント推進方針を打ち出してはいるものの、ビジネスサイドから具体的な提案をし、実験していくことが求められると私は考えています」(立石さん)

立石さんは最後に、社会の潮流からみて、今から考えていくべきこととして、次の3つを挙げて講演をまとめました。

  • 複雑で難しい社会制度
    知識がなくて制度を利用できないことを自己責任として片付けるのではなく、無意識的に享受できる社会保障サービスへ

  • 大きな組織の箱舟から小さな個の多様性へ
    ステレオタイプ的ないわゆる普通の人生モデルを念頭に置いた制度、それをカバーする公共の業務オペレーションモデルを、多様な個々人を前提とした粒度の小さい柔軟な業務オペレーションモデルへ

  • デジタル化する「個」
    すべての活動はデジタルで遂行されることを念頭に、デジタル前提の業務オペレーションとしつつ、デジタルゆえにオペレーションミスが基本的に存在せず、プロアクティブなサービス提供による利便とともに、制度と現状のスピード感のギャップによって生まれるグレーゾーンや、高度化するであろう不正検知の高度化が進められ、公平性をより享受できる社会へ。

「某地方自治体における生活困窮者向けのサービス向上に向けた取組事例」

続いては羅さんによる事例紹介です。


羅 景綉(なー・きょんす)/アクセンチュア株式会社 公共サービス・医療健康本部 マネジャー。2012年アクセンチュア新卒入社。 主に社会保障領域(年金、生活保護分野等)において、大規模事務処理プロジェクトのPMO、改善可能性調査、業務システム刷新に携わる。

羅さんは、ある市町村の福祉政策課の事例を紹介します。

「これまでこの自治体の福祉政策課では、組織や意思決定プロセス上の制約により、市民のニーズにタイムリーに対応できないことが多々ありました。

また、その関係性も受動的であり、自ら市役所にコンタクトしない市民については、何に困っていて、何を求めているのかも把握できていない状態でした。

私たちはこの課題を解決するために『サービスデザイン』の導入を提案しました。

サービスデザインとは、利用者個人がサービスを使う体験にフォーカスし、利用者を理解し、共感して、本当に必要とされるサービスをデザインしていく手法です。そのコア・マインドセットは『人間中心』『多様性を活かす』『早く失敗して再挑戦(アジャイル)』という点にあります」(羅さん)

サービスデザインは、「DISCOVER(実体験から知る)」「DESCRIBE(コンセプトを描く)」「CO-CREATE(クイックに具現化・評価する)」「SCALE(本格化する)」「SUSTAIN(継続的に改善する)」という5つのプロセスから構成されます。

羅さんは、そのうちこの自治体の事例で活用した「DISCOVER」と「DESCRIBE」の過程について詳細に説明を続けます。

「『DISCOVER』のプロセスでは、サービス利用者の実態を調査して、必要なインサイトを導くことが目的です。まずは、対象者の選定を行います。

今回は、生活保護の予備軍である『生活困窮者』のうち、母子世帯(ひとり親世帯)に該当する人を対象に検討しました。

対象者を選定した後は、事前調査を実施します。調査の手法としては、利用者・関係者へインタビューを実施しました。利用者インタビューでは、自宅訪問を行い、口頭で得られる情報以外の環境から得られる情報を拾います。

また、それ以外にも利用者の立場に立って複数の市役所に訪問し、疑似体験することからも課題を抽出します」(羅さん)

続いて「DESCRIBE」のフェーズです。

「『DESCRIBE』では『DISCOVER』によってで得られたインサイトをもとに、ワークショップを通して利用者と現状の課題に対する理解を深めた上で、課題を解決するためのアイディアを出していきます。

大きな流れは、『利用者に対する理解の深化』『利用者観点での課題の識別』『アイディア出し・具現化』の3つで、各段階に様々なサービスデザインツールを活用します。

まず、『利用者に対する理解の深化』では『ペルソナ』を設定します。ここでは年齢や性別だけではなく、『デジタル端末を利用できるか』『子供との関係性はどうか』など具体的なイメージができる粒度で考えることが重要です。

その上で『共感マップ』を用いて、ワークショップ参加者は、実際に利用者になったつもりで『何に困っているか』『何を欲しているか』を想像し、ポストイットに書いて周囲に共有します。この方法には、様々な観点で利用者について考えられることと、多くの人が一緒に考えるので自分では気が付かない観点から利用者の理解ができることの2つがメリットです。

次に『As-Isカスタマージャーニーマップ』を使って、『利用者観点での課題の識別』を行います。具体的には、母子家庭のサービス利用者が、離婚をして、徐々に貧しくなり、最終的に生活保護受給者になるまでのタイムラインの中で、どのようなときにプラスの感情、マイナスの感情になるのかを感情曲線で表現していきます。

そこから、『マイナスの感情になるところには、行政サービスが欠如しているのではないか』という仮設を基に課題を抽出していきます。 最後は、抽出された課題を解決するための『アイディア出し・具現化』です。参加者各自のアイディアを『コンセプトポスター』にまとめてもらい、参加者間で共有します。また、各参加者から出てきたアイディアが実現された後の姿を『To-Beカスタマージャーニーマップ』『コンセプトストーリー』を作成し、課題解決によって利用者がハッピーになることを確認してワークショップを終わりにします。

こうした手法を実践することで大きく2つの効果があったと感じます。まずは、既存の手法では出てこないアイデアが生まれたことです。多くの自治体は保守的ですが、例えばこの事例では、市役所に来ない人との接点を作るために駅前にカフェを出店するアイディアなどが生まれました。

もうひとつのメリットは、ワークショップを通して、利用者を深く理解し、自らが課題だと思ったことに対して、自らがアイディアを出したことによって、参加者が課題を”自分事”として捉えるようになることですね」(羅さん)

最後に羅さんはワークショップを通じての気づきをまとめます。

「このワークショップを通じて、『サービスデザインによる検討アプローチは有用である』『課題構造の変化に対する、組織的対応の遅れの解消が必要である』『アイディアを実現するにあたっては、予防的サービスという性質を踏まえた投資効果の実証が必要である』という気づきを得ることができました。

ワークショップによって出てきたアイディアを、実際のサービスとして実現していくことが次の一歩となります。いずれのアイディアも、今までやったことがない取組なので、サービス化していくにあたっては、いろんな壁にぶち当たると思います。しかし、目に見える効果の裏付けがあれば、保守的なクライアントであっても、意思決定を促すことができます。そのため、最初はスモールスタートであっても、まずはやってみて効果を実証することが重要であると考えます。

中長期的には、サービスだけではなく、組織のあり方そのものを変えていきたいと思っています。それは難しいことですが、とてもやりがいのある仕事です」(羅さん)

事例を踏まえた新しい行政サービスの検討

イベントの後半はワークショップです。滝沢さんがファシリテーターを務めます。


滝沢啓(たきざわ・けい)/アクセンチュア株式会社 公共サービス・医療健康本部 マネジャー。2012年アクセンチュア新卒入社。税・社会保障領域(地方税、国税、年金等)を中心とした官公庁業界において、ビッグデータ分析PoCプロジェクトをリードした他、海外公共機関動向調査、業務・システム刷新業務、基幹システム再構築PMO等に携わる。

ワークショップでは、羅さんのセッションで紹介された「DISCOVER」と「DESCRIBE」を体験します。まず、冒頭に滝沢さんはワークショップの目的やルールを説明します。

「今日のワークショップは『どんな意見でも否定しない』『共感を大切にする』『質より量』『付箋は友達』という指針で実施します。

そして、『インプットからアウトプット・アウトカム思考へ』『コラボから生まれる多様なアイディアの可能性を体感する』『チーム・会場参加者でコミュニティを形成したり、ネットワーキングする』という3つが本日の目的です」(滝沢さん)

ワークショップの課題は「これからの自治体に求められる新しい行政サービスのアイディアを考える」こと。

「今回のテーマは『どうすれば行政は多様な市民ひとりひとりが満足するサービスを提供することができるか?』という点にあります。

ワークショップにおいては、始めに取り組むべき問い、”How might We…?”(hmw)を適切に設定することが重要です。そして、この問いに対して、思いやアイディアをひたすら書きまくり、共有しましょう。これが、『発散(ダイバージェンス)』するフェーズです。

そして、チーム内で共感できるひとつのアイディアを選び、ブラッシュアップします。『収束(コンバージェンス)』させていくわけです。この『発散』と『収束』の作業を繰り返すことがサービスデザインの根幹となります。

その際に、手助けとなるのが『クリエイティブマトリックス』です。ターゲットとするカスタマーセグメントを横軸に置き、縦軸にサービスとして活用してみたいテクノロジーやリソースなどを設定します」(滝沢さん)

ワークショップの時間はあっという間に進行します。各チームで約35分掛けてアイディアをまとめた後は、そのアイディアが発表されます。

あるチームでは、40代の男性をターゲットとした「My内臓ウォッチング」を提案しました。「My内臓ウォッチング」は、日頃の不健康な生活、休みが取れないストレスなどで肝臓が悪くなっていく様子をスマホやデバイスで自分の内臓が3DCG画像で再現し、観察するサービスです。

最後に滝沢さんは「途方もないテーマに対して、初対面のチームと限られた時間のなかで『いいな』と思えるアイディアを出せるのがサービスデザインの力です。様々な人が共感し合いながらアイディアを出して共有していくやり方は、様々な場面で活用できます」とまとめてワークショップを終了しました。

懇親会!

ワークショップの終了後は懇親会です。立石さんの乾杯でスタートした懇親会では、参加者、登壇者、アクセンチュア社員の皆さんで活発に交流されていました。

ワークショップを終えた参加者からは「発散も収束も難しかった」「1時間という短い時間だからこそ出たアイディアだと思う」などの感想が挙がりました。

みなさんのまたの参加を心よりお待ちしております!

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