【レポート】1日3.5兆円の売上を支える「Alibaba Cloud」最新機能と活用事例

イベント
【レポート】1日3.5兆円の売上を支える「Alibaba Cloud」最新機能と活用事例

1999年、ジャック・マー氏が創業したeコマース企業アリババグループ。そのサービスを支えるアリババクラウドは、世界3位のIaaSプロバイダーだ。日本でサービスを開始したのは2016年末。日本でも徐々に認知を拡大しているとはいえ、まだまだよくわからないという人も多いのではないだろうか。

12月12日に開催された「Alibaba Cloud 最新機能/技術勉強会」では、Alibaba Cloudの最新機能や技術について、同クラウドサービスを提供しているSBクラウド株式会社(以下SBクラウド)の奥山朋さん、サール・エルハジバシルさん、河野誠さんの3人が解説を行った。

1日3.5兆円のEC決済・発注を支える「Alibaba Cloud」

最初に登壇したのはSBクラウド奥山朋さん。技術部で部長を務める傍ら、アリババクラウド・インターナショナルグループにも所属し、ソリューションアーキテクトとしても従事している。奥山さんのセッションは「Alibaba Cloudの全体像と活用事例」について語られた。


▲SBクラウド株式会社 技術統括部 技術部 部長 奥山 朋さん

「Alibaba Cloud」を運営するアリババグループは、中国のEC、リテール事業を中心に事業展開をしている企業である。1999年にジャック・マー氏がB2Bの領域で中国国内の経済を発展させることを目的に事業を開始。B2Cマーケットプレイス「淘宝(タオバオ)」、モバイル決済サービス「ALIPAY(アリペイ)」、B2Cプラットフォーム「天猫(Tmall)」のほか、動画配信サービス「YOUKU」やSNSサービス、地図サービスなどさまざまな事業を展開している。

これらの事業を支えるための基盤を、アリババグループのエンジニアは自ら設計、運営してきた。そこで培ったノウハウ、技術を生かし品質の高いインフラサービスとして提供しているのが「Alibaba Cloud」である。後発だが最新のテクノロジーを投入した基盤や運用の技術、戦略的なプライシングを採用していることで、日本でも認知が拡がり、大企業を中心に採用される機会が増えている。

「Alibaba Cloud」の最大の特長は1日3.5兆円(2018年11月11日実績)のEC決済・発注を捌くことができる強固な基盤を有していることだ。中国で「独身の日」とされる11月11日にアリババでは、大規模なSALEイベントを実施している。

3.5兆円とはこの「独身の日」1日の売上である。日本の国内最大手ECサイトの年間の売上が3兆円超なので、この金額の大きさは驚きだ。それだけではない。総発送依頼数は10億件以上、AIによる顧客サポートは70万顧客、9カ国語対応、ネットワーク攻撃防御成功数は16億回と、いかに柔軟性が高く強固な基盤を提供しているか、この数字からもわかるだろう。

企業が持つデータは今後も増えていく。2020年には3倍、15年後には10倍になると予想されている。このビッグデータをいかに有効活用するか。そのためには「高い処理能力」「大量のデータ集約」「高い管理効率」「低いコスト」「高いセキュリティ」という条件を満たすことが求められる。

「Alibaba Cloud」は現在、200を超えるプロダクトを提供している。この中で重要度、日本のお客さまからの要求の高いものから順にローカライズし、日本で展開している。

「Alibaba Cloud」は日本、アジア地域、アメリカ、欧州など、全世界で19のリージョンを設置している。特にアジア地域にリージョンを豊富に設置していることも、他のパブリッククラウドプロバイダーとは異なる点だ。また日本では特に要求が高い、プライベートクラウド「Apsara Stack」も提供している。中国では金融、製造、政府機関などさまざまな企業・組織で導入されている。

製造、流通、小売にフォーカスした産業別ソリューションも提供している。アリババグループの事業がeコマースから始まっただけに、特に強いのが小売だ。オンラインをさらに発展させるために、ニューリテールというオンラインとオフライン(実店舗)を統合した新しいリテールの形の取り組みを急ピッチで進めている。また製造分野でも幅広く採用され、ビジネスの改善や拡大に貢献している。

今は第四次産業革命のまっただ中である。「Alibaba Cloud」はその革命に必要なテクノロジーの投資を進めている。SBクラウドの技術部の仕事はアリババが持つ技術、ソフトバンクが持つサービスを理解して、お客さまが持つ課題を解決し、お客さまが目指す未来へと導くことだ。

「Alibaba Cloud」のユーザーコミュニティ「AliEaters」は現在、718人の登録者がいる。まだまだ「AWS」などと比べるとコミュニティの規模は小さいが、逆に考えると今がチャンスだと捉えられる。「AWS」「Microsoft Azure」にプラスして、「Alibaba Cloud」を知ることはエンジニアのキャリアにとって大きな価値を持つ。最後に、「Alibaba Cloud」に関心のある人は「AliEaters」に参加してみて欲しい、と訴えた。

「Alibaba Cloud」が日本で提供する最新プロダクト

続いて登壇したサール・エルハジバシルさんは、SBクラウドの設立と同時にジョインし、以降アリババのエンジニアと密に連携し、日本向けにサービス提供をするためローカライズや検証業務に携わっている。サール・エルハジバシルさんは「Alibaba Cloud」の最新プロダクトについてセッションを行った。


▲SBクラウド株式会社 技術統括部 プロダクト開発部 部長 サール・エルハジバシルさん

SBクラウドは「Alibaba Cloud」を日本市場に展開するために設立されたソフトバンクとアリババグループとのジョイントベンチャー。「Alibaba Cloud」のポータルでアカウントを登録すると、SBクラウドとの契約となる。コンソールでは日本語と英語、中国語をサポート。支払いは日本円で行える。全てのリージョンを、日本のポータルから購入可能となっている。

日本でサービス化を開始したのは2016年12月。翌17年9月には「Express Connect」を提供開始。12月にIaaS、ビッグデータ、ネットワーク、IoT領域でプロダクトを拡充させるプロジェクトを立ち上げ、1年間で40以上のプロダクトをリリースしてきた。その中からいくつかのプロダクトを紹介する。

Elastic Compute Service (ECS)はオンデマンドで提供するコンピューティングサービスで柔軟性、信頼性、安全性、高いネットワーク品質を提供する。インスタンスは小規模Webサービス向けのT5からGPUまで用意。さまざまな業種、領域のワークロードでも柔軟に対応できるようになっている。

その他の提供されているプロダクトは以下がある。

  • オートスケーリング
    ECSの柔軟性を最大化する自動拡張サービス

  • DDH(Dedicated Host)
    物理ホストを占有したシングルテナント環境を提供し、セキュリティ、コンプライアンス、ECSの柔軟な移行、ライセンスの要件に対応

  • コンテナサービス
    Kubernetesに対応したフルマネジードのクラウドコンテナ管理サービス

  • Function Compute
    基盤の管理が不要で、コーディングに集中できる完全にホストされたサーバレス実行環境

データベースはRDB、NoSQLのほか、OLTPとOLAPの機能をサポートするハイブリッドDB、データベースマネジメントツールを提供。データベース関連のツールはデータベース間でデータ移行とデータ同期を行う「Data Transmission Service(データ・トランスミッション・サービス)」と、データベースサーバをコンソールで管理するためのクライアント「Data Management Service(データ・マネジメントサービス)」の2種類を用意している。

ストレージはオブジェクトストレージ、ECSにアタッチできる高性能・高拡張性のブロックストレージ、最大10ペタバイトの高性能ネットワークアタッチストレージを提供している。

これらはIaaSだが、その他のプロダクトも提供している。その一つがIoTプラットフォーム。素早く低コストでIoTアプリケーションの構築が可能になる。デバイスの管理が容易にできるのはもちろん、他のアリババクラウドのプロダクトと簡単に連携できるという特長を持つ。

次にビッグデータプロダクト。MaxComputeの計算エンジンとストレージキャパシティや圧縮機能により、ペタバイトクラスのデータ処理が可能。データの同期、転送、タスクのスケジューリングを支援するのが「DataWorks(データワークス)」。

  • DataV
    豊富なグラフパターンや地図と融合した視覚か機能を兼ね備えた可視化ツール。リアルタイムで新しいデータを入手して表示できるのが特徴だ。予めデザインされたウィジェットを数多く提供さているため、簡単に綺麗なダッシュボードが作れる人気のプロダクトだ。

AIを活用したプロダクトとしては「Image Search」がある。これはタオバオでも使われており、カスタマイズ可能な画像検索サービス。画像のアップロードをするのみで自動的に学習され、API連携することで安易に画像検索機能を実現できるサービスだ。

現在、チームで注力して開発しているのがマシンラーニングのプラットフォーム。AIの開発を考えているお客さま向けで、AIで使われるアルゴリズムが数多く組み込まれている。Stream Compute(ビッグデータ関連プロダクトの一つでリアルタイム分析のためのプロダクト)などもローンチする予定だ。

その他にも重要なプロダクトのリリース予定がある。まずは「Anti DDoS Pro」。現在は無料版が提供されているが、これはある程度DDoSのトラフィックが多くなるとネットワークが遮断されてしまう。有料版のProはどれだけトラフィックが来ても処理できるようになる上、トラフィックをクリーニングする機能も提供される。

次に「Apsara Stack」。これは大規模なプライベートクラウドを構築したいお客さま向け。お客さまのニーズに合わせて3つのエディションを用意している。

プロダクト開発部は日本のお客さま向けにいろいろなプロダクト、技術を発信していくため、人員を拡充していくので、関心のある人はぜひ声をかけてほしい。

安定した接続を提供するネットワークプロダクト

最後に登壇した、技術統括部設備基盤部の河野誠さんは2018年4月にSBクラウドに入社。現在はアリババクラウド日本リージョンの設備基盤の部長を務めている。河野さんのセッションは「Alibaba Cloud 日本リージョン設備基盤と本基盤を用いたネットワークユースケースのご紹介」について語られた。


▲SBクラウド株式会社 技術統括部 設備基盤部 部長 河野 誠さん

「Alibaba Cloud」日本リージョンでは現在、約50個のプロダクトが提供されているが、各プロダクトへの接続にはインターネット接続、もしくは閉域ネットワーク接続が欠かせない。そこで「Alibaba Cloud」では7個のネットワークプロダクトを用意している。その中でも今回は重要な3つのネットワークプロダクトを紹介する。

  • VPC
    安全な仮想プライベートネットワークサービス。Alibaba Cloud VPCでは、クラウド上で分離されたネットワークを構築して、外部からのアクセスが制限された安全な環境でリソースが運用できる。独自のIPアドレス範囲を選択し、ルーティングテーブルとネットワークゲートウェイを設定することで、ネットワークを制御できる。

  • VPN Gateway
    VPCとオンプレミスデータセンター間をVPNで接続するサービス。IPsecとSSL接続に対応、セキュアな接続を提供する。

  • Express Connect
    さまざまなクラウド環境を接続するマネージドネットワークサービス。異なるリージョンにあるVPCを相互接続するVPCコネクション、お客さまのデータセンターとクラウドを接続するダイレクト・アクセスの2種類を用意している。さらに後者はUNI接続とNNI接続がある。

現在、ダイレクト・アクセス構成において、日本リージョンとの接続パートナーはソフトバンク株式会社とEquinix(エクイニクス)の2社だけだが、複数のキャリアとも接続の交渉を進めており、今後も増やしていく予定だ。

すでにさまざまなユースケースも登場している。例えばVPCコネクションでは、中国拠点のデータを日本側で一括管理することを実現したユースケースや企業内の基幹ネットワークとして応用し、VPN通信の高速安定化、セキュリティの強化を実現したユースケース、日本でのライブストリーミングを、CDNを使って中国で快適に配信するためのネットワーク基盤として活用したユースケースなどがある。

設備基盤部は日本リージョンへの安定した接続を提供することがミッション。現在日本リージョンは東京のみとなっている。東京リージョンでは安定したインターネット接続、POP運用、POP-IDC間回線運用、IDC運用が求められる。例えばIDCであればデータセンターの電源や空調、ネットワーク、ロケーションの完全冗長性を確保する。そういう一つ一つの冗長設計、その構築から携わるのが設備基盤部である。

今はグローバルキャリアがネットワークを構成しているが、将来はWANという世界はなくなり、クラウドプロバイダーがネットワークを構成するようになる。「Alibaba Cloud」を運営するSBクラウドはその1社。設備基盤部の仕事はかなり地味だが、「ハイパージャイアント」のような大規模基盤に触れてみたい人には面白い仕事だ。

予定時間より少しオーバーしてセッションは終了。その後懇親会が行われ、登壇者との和気藹々とした交流が行われ、「Alibaba Cloud」最新機能/技術勉強会は盛況のうちに幕を閉じた。

関連するイベント