国内外のHRテクノロジー最新トレンドを語る─ピープルアナリティクス、ピープルマネジメント、アルムナイ、スリープテック、Slack─

イベント
ピープルアナリティクス、ピープルマネジメント、アルムナイ、スリープテック、Slackなど、国内外のHRテクノロジーの最新トレンドを語るイベントが10月16日に開催された。アビームコンサルティングのコンサルタントをはじめ、HRテックプロダクトのトップランナー4名も登壇。テクノロジーで進化するHR領域の未来を語り合った。
国内外のHRテクノロジー最新トレンドを語る─ピープルアナリティクス、ピープルマネジメント、アルムナイ、スリープテック、Slack─

【オープニング】HR領域の盛り上がりにワクワクしている

イベントに先立ち、アビームコンサルティングでHR領域のコンサルタントを手がける畠山 聡子氏がスピーチ。最近のHR領域の賑わいを、以下のように述べた。

「10年前の人事業務といえば、給与計算、勤怠管理くらい。社員のパフォーマンスを上げたい、健康続伸に関する施策を行いたいと思っても、できるツールがありませんでした。最近は、人材採用から育成まで、さまざまなHR領域の業務を支援するツールが次々と出てきているので、ワクワクしています」(畠山氏)

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▲アビームコンサルティング株式会社 畠山 聡子氏

【海外HR TECH】ワークエクスペリエンス、プラットフォームがトレンド

続いて登壇したアビームコンサルティングHR領域のコンサルタント、寺谷俊宏氏は、先日ラスベガスで行われた「HR Technology Conference & Expo 2019」を視察。会場で見た、感じた内容から、自身の知見も含め最新のHRテクノロジーについての見解を述べた。

「ここ数年続いているトレンドでもありますが、HR領域が本業ではないFacebookやGoogleといった大手IT企業が参入してきています。一方で、本日ご登壇いただくような、スタートアップ界隈も相変わらず盛り上がっている。その結果、大小さまざまな企業が多種多様なサービスを展開している状況です」(寺谷氏)

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▲アビームコンサルティング株式会社 寺谷 俊宏氏

そのような混沌とした状況の中でも、寺谷氏は特に「デイリーアクティビティズ」「プラットフォーム」という、2つのキーワードがトレンドだと説明した。

まず語られたのは、「デイリーアクティビティズ」についてだ。

従来のトレンドであった、人事・IT部門がユーザーとなる人事管理、給与計算、タレントマネジメントの領域に加え、ここ最近はHR部署以外、マネージャーや従業員がユーザーとなる領域へのサービスが目立つという。

寺谷氏は同領域を「ワークエクスペリエンス」と説明。さらに深堀りし、ワークエクスペリエンスには従業員のキャリアや成長をサポートする「タレントエクスペリエンス」、日々の活動を効率・効果的に行う「エンプロイエクスペリエンス」の2つに細分化できる。

また日々の活動を便利・快適にするツールは多種多様のため、プレイヤーが増えていると述べた。

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ワークエクスペリエンス領域の具体的なプロダクトについても紹介された。

吹き出しを表示し、アプリの操作性を向上する。ミスオペを防ぐ。ミーティングを調整する。アンケート分析。そしてこの後登壇するSlackなど。

プロダクトに共通しているのは先述したとおり、従業員個人にフォーカスしている点だ。

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続いて後者の「プラットフォーム」については、特に、リクルーティング領域で盛り上がっているとのこと。従来からある社内人事システムと、メジャー企業・スタートアップ企業などが展開する人材系プラットフォーム。両者をつなぐサービスがトレンドだと説明した。

もちろんこの2つのトレンド以外にも、ピープルアナリティクス領域にスタートアップ企業が多数参入するなど、HR領域全体が盛り上がっていることも強調した。

一方で、多種多様なサービスやプラットフォームが登場してくると、ユーザーにとっては手間となるため、1つのアクセスで全てのサービスが使えるような、プラットフォーム統合化の動き(アクションプラットフォーム)もあるという。

その結果、大小問わずさまざまな企業が個別にプロダクトを開発する一方で、統一化する動きもある。つまり相反する動きが、今のトレンドだと語った。

また寺谷氏は、HRテックを活用するポイントを紹介し、セッションをまとめた。

「テクノロジー、自社の理念や在りたい姿など、両方のバランスを取りながら、これまでの人事制度や各種プロセスを見直し、恐れることなく変えていくことがポイントです。具体的には、プロダクト、HRテック市場両方の最新情報や動向を常にキャッチアップし、その中から自社に最適なものを、組み合わせることです」(寺谷氏)

【プロダクトピッチ①】「退職者=裏切り者」の価値観を変えたい

プロダクトピッチ最初の登壇者は、企業とアルムナイ(企業のOB/OG)が退職後も繋がるアルムナイ特化型SaaS「Official-Alumni.com」とコンサルティングを提供する、株式会社ハッカズークの鈴木仁志氏だ。

人事・採用畑に国内外で携わってきた鈴木氏は、先の「HR Technology Conference」には、日本人の参加がまだ少ない2014年に参加していたとのこと。

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▲株式会社ハッカズーク代表取締役CEO 鈴木 仁志氏

「ライフスタイルやカルチャーの変化に伴い、働き方も変わってきています。端的に言えば、従来の新卒一括採用、終身雇用から、転職することが当たり前の時代になりました。ただ個人のこのような変化に企業が追いつかず、「退職者=裏切り者」扱いをされてしまうケースがあるのが実情です。」

具体的なプロダクトとしては、企業とアルムナイが退職後もゆるく繋がれる、日本で初めてアルムナイ・リレーションに特化したクラウド型システムだ。フィード・チャット・名簿機能など、企業とアルムナイの良好な関係を強化するための機能を多く搭載しており、オンライン上でお互いの近況を知ったり、1対1やグループでコミュニケーションができる。

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また、オンラインだけでなく、アルムナイとの関係を深めるためにオフラインでの企画も支援。退職者は裏切り者ではなく仲間であり、つながることで企業とアルムナイ双方にメリットがあり、情報交換、協業、オープンイノベーションなどにつながっていく。

当日着ていたTシャツに書かれた”辞め方改革"の文字を指差し、「私たちが目指しているのは“企業と個人の新しい関係”を創ることです」と話した。

【プロダクトピッチ②】睡眠改善で企業の生産性アップに貢献

続いて、睡眠と体内時計に着目したプロダクトを開発する、株式会社Oの谷本潤哉氏が登壇。同社が手がける「O:SLEEP」について語った。

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▲株式会社O Founder/CEO 谷本 潤哉氏

「O:SLEEP」はよくある睡眠の改善に特化したものではなく、一人ひとり異なる睡眠の“仕方”をデータとして集め、テクノロジーで分析。そこから、個々に最適な眠りを提供する。その結果として、昼間の労働における生産性向上に繋げているのが特徴だ。

具体的には、寝る際に枕元にスマホを起き、睡眠データを取得。プロの睡眠カウンセラーがデータを見て、睡眠の良し悪しを判断。悪い場合には改善のコーチングを、企業の人事担当者やマネージャーと連携しながら行う。

ユニークなのは睡眠を知ることで、パフォーマンス状態も分かることだ。そのため難しいプロジェクトや、集中して行いたい作業などは、高パフォーマンスの時間帯に行えば、生産性の向上につながることになる。逆の言い方をすれば、パフォーマンスが落ちているときは、休憩時間に充てるという対策にも繋げられる。

谷本氏は企業で働く多くの人が睡眠不足であり、そのことがコミュニケーション不足、ストレスの増加などを生み、結果として企業の生産性を落としていると指摘する。

実際、生産性が落ちる要因のトップは睡眠で、残業時間などよりもはるかに高いことを、データを見せながら説明。ストレスが減ることで仕事に対する姿勢が変わり、離職率を下げる効果もあると続けた。

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そもそも谷本氏が「O:SLEEP」を開発したきっかけも、まさに睡眠不足による生産性の低下や、メンタルも含めた体調不良を自身が経験したことだった。大手広告代理店で働いていた当時の谷本氏は、過酷な労働で体調を崩した。休みを取り、誰もいない南の無人島で、太陽が昇ると起き、太陽が沈むと寝るような暮らしを2週間続けた。

すると、これまでの不調が嘘のように回復。だが仕事に戻ると、再び以前のように体調不良になったという。また同時期、健康な従業員が働く企業が業績アップしているという社会背景もあり、現在のアプリ開発に至った。

実際、同社では日本企業で働く従業員の平均睡眠時間5時間を大きく上回る、7時間15分の睡眠時間を実現。ローンチから約1年だが、既に大手企業などを中心に導入が進んでいる。谷本氏はこのアプリを通じて睡眠を改善し、日本企業全体の生産性向上を実現していくと宣言した。

【プロダクトピッチ③】どこで、誰と働こうとも、一人ひとりが持っている人生の可能性が、決して毀損されることがない社会をつくる

HR Tech GP 2019、HRテクノロジー大賞など。数々のHRテックコンテストで賞を獲得している「KAKEAI」。日本企業で初めて、世界のHRテックスタートアップ30社に選出されるなど、海外からの注目も高い。

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▲株式会社KAKEAI 代表取締役社長 兼 CEO 本田 英貴氏

そんな「KAKEAI」を開発した株式会社KAKEAIの本田英貴氏は次のように話す。

「私自身が人事を担当していたから分かるのですが、マネジメントは結局、最後は現場のマネジャーに任せるしかありません。属人的でありマネジャー個人の力に依存するということです。そして異動を決めるのは、本人ではなく人事や事業側。つまり、たまたまの巡り合わせで出会った上司によって人生が変わってしまうということです。

また上司の立場からしても、それまでの経験から自分はよかれと思った手法でマネジメントを行います。でもそれがベストかどうかは分かりません。これも私の実体験ですが、中間管理職時代、よかれと思って自信をもって行っていたマネジメントが、まったくもって的外れで、部下からの批判にあった経験があります。つまりマネジメントは、一生懸命やったからといって正解ではないのです」

こうして誕生したKAKEAIのミッションは、「世界中の人々が、どこで、誰と働こうとも、一人ひとりが持っている人生の可能性が、決して毀損されることがない社会の実現」であり、「集約されるデータにより“世界で最もピープルマネジメントの知見を持っている人”として活躍するSaaS」と、本田氏は自らのプロダクトを評した。

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具体的なサービスは、先の課題を解決していく内容だ。これまで属人的だったピープルマネジメントを、KAKEAIのAIエンジンが代行する。

世界中のピープルマネジメントのデータを収集・分析し、1on1や日常における最適な関わり方を提案してくれる。さらに、適していない関わり方を紹介したり、キャリアパスなどのマネジメントにも対応している。

KAKEAIでは、適宜、マネジメント層に対して、最新のベストマネジメントを発信している。また各マネージャーの得意・不得意分野も分析することで、さらなるマネジメントの改善を実現していく。

【プロダクトピッチ④】全社員のアラインメントの一体化に貢献

企業が本来のパフォーマンスを発揮するには、全メンバーが同じ目標を持ち、共通意識で仕事を進めることが大切だ。アラインメントの一体化である。ではどうやって、アラインメントの質を高めるのか。「そこに『Slack』は貢献している」と、Slack Japan西野創志氏は言う。

「Slackのチャンネルという機能を使えば、ある特定の人が発したメッセージを、全社員で共有できます。もちろん一部のメンバーでの共有も可能です。例えばSlackでは、CEOのメッセージは掲示板などではなく、全社員を対象としたチャンネルを通して行われます。また業績なども同じくチャンネルで共有。その結果、全社員が会社の方向性、現在の状況を把握できています」

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▲Slack Japan株式会社 エンタープライズセールス チームリーダー 西野 創志氏

情報の共有が簡便にできる以外にも、一般的なコミュニティツールやメールとの違いは多くある。顕著なのは引継ぎだ。これまで、新しく加わったメンバーは、前担当者のメールのやり取りを見ることができなかった。

しかしSlackであれば、過去の履歴がチャンネル上に蓄積され全て残っているため、情報をスムーズにキャッチアップできる。さらに社内の誰がどのような役割を担っているのかなどのノウハウも一発で分かる。結果、ムダな労力を使わずに済む。

社内向けのコミュニティツールという印象の強いSlackだが、最近では「共有チャンネル」という機能を使った、Slackユーザー同士の企業間連携も活発化しているとのこと。つまりプロジェクトを共に進めている協業先と、先述した情報の共有を、Slack上でリンクできる。端的に言えば、両社のSlack環境を繋げることが可能だ。

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さらにコミュニティの共有だけでなく、MicrosoftのOfficeやOneDrive、SAPなど。他のシステムやプラットフォームとの連携も可能で、その数1,800以上に。さらにAPIをカスタムすれば、つながる先は50万以上にもなるという。

一方で、コーディング不要で新しいワークフローをSlack内に使える機能「ワークフロービルダー」を公開し、プログラミングなどに詳しくない利用者にもより簡便にカスタムしてもらえるような機能も充実している。今後、ますますSlackの利用者が増えていくであろう勢いを感じさせた。

【プロダクトピッチ⑤】タレントマネジメントシステム+分析ツールのソリューション

プロダクトピッチの最後は、アビームコンサルティングの全 大忠氏が登壇。同社では、先に紹介されたようなプロダクトを組み合わせたソリューションを構築しており、それらの事例を紹介した。

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▲アビームコンサルティング株式会社 P&T Digital-HCM Director 全 大忠氏

まず紹介されたのは、SAPのタレントマネジメントシステム「SAP SuccessFactors」と、Microsoftの分析ツール「Workplace Analytics」だ。

「マメにコミュニケーションを取った方が生産性は上がるのか。逆に、あまりコミュニケーションを取らない方がよいのか。個々によって、違いますよね。そのことをメールや会議の頻度から組織分析するWorkplace Analyticsと、各人のスキルや能力を最大限活かすためのツールSAP SuccessFactorsをかけ合わせることで実現しています」

具体的には、横軸にWorkplace Analyticsのデータを、縦軸にSuccessFactorsのデータを配置した図を作成。その落とし所から、各人に最適なマネジメントを導き出す。

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当然、横軸の値はWorkplace Analyticsが抽出する内容によって変えることができ、残業の度合いによるマネジメントの最適化といった使い方もできる。

なお同システムでは、分析結果を実際に現場メンバーにマネジメントしている担当者に配信できる。さらに最適なマネジメントがなされていない場合には、アラートなども行える。

登壇した全氏は、紹介したソリューションだけでなく、他にもさまざまなプロダクトを組み合わせたHRソリューションを開発しているという。

【クロージング】HRテクノロジーの活用方法とは?

最後のセッションには、国内外含め、HR領域において幅広いコンサルティングサービスを手がけてきた、アビームコンサルティングの坂本孝司氏が登壇した。

16 ▲アビームコンサルティング株式会社 P&T Digital-HCM Director 坂本 孝司氏

坂本氏は、HRテックの変遷から感じる、現在・今後のトレンドについての見解を述べた。

「現在のHR領域において、テクノロジーはクライアントからも出るキーワードですし、外せないツールであることは間違いありません。トレンドとしては、当社の寺谷や全が先ほど述べたように、それだけでも使える多くのプロダクトが登場する一方で、さらにプロダクトをかけ合わせることで、新たなソリューションにもなる。つまり、どれを選択するのかが重要です」

坂本氏はこう話し、とんかつとカツカレーやカツ丼の写真をスライドに表示し、とんかつ単品で食べてもおいしいが、カツカレーやカツ丼にすることで、さらに魅力あるソリューションになると、独特の言い回しで現在のHRテックのトレンドを表現した。

また具体的な事例についても紹介した。たとえば研修ならびにサーベイについて。以前であれば昇格などのタイミングに合わせ画一的な研修が提供されることが多かった。しかしテクノロジーを活用すれば、人事異動のタイミングなどに各個人のキャリアやスキルに照らし合わせ、自動で最適なレコメンドを送れるようになるという。

また研修のフィードバックにおいても、以前であれば研修終了直後に取得するのが一般的であったが、テクノロジーを使えば、次の人事考課のタイミングや実際に新しい職務に就いた後に研修のサーベイ依頼を自動的に送付。研修が実践的であったかを以前より正確に取得できるようになると言及した。 一方、全ての企業にテクノロジーの組み合わせが必要かどうかについての見解も述べた。

「このような一連の流れを複数のテクノロジーを組合せて実現することで研修全体の最適化・高度化を行うことができます。一方で、一部のテクノロジーだけを使いピンポイントで効果を得るほうが得策であるクライアントもいます。会社の規模や今必要な施策を鑑み、HRサービスを取捨選択するのが得策です。またその部分をお手伝いすることが、我々の役割でもあります。

ただ言えることは、繰り返しになりますが、HRテックは絵空事ではなく、リアルに使えるツールであるということです。ぜひ、テクノロジー単品でも、かけ合わせでも構いませんから、今のトレンドを取り入れ、さらなる人事の高度化を実現してください」

と、HR領域に携わる人々にメッセージを送り、イベント全体を締めた。

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