アビームコンサルティングが事例と共に語る「AIシステム構築のノウハウ」

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アビームコンサルティングが事例と共に語る「AIシステム構築のノウハウ」

これまで多くのAIプロジェクトを手掛けてきたアビームコンサルティング Advanced Intelligenceセクター(以下、AIセクター)は、経験から積み上げてきたAIシステム構築のノウハウを事例と共に紹介した。また、現在プロジェクトをリードしているコンサルタントによるパネルディスカッションが行われ、AIプロジェクトの面白さ・難しさなどの本音を聞くことができた。

1. ITシステム構築とAIシステム構築の違いによるAI導入のポイント

最初に登壇した井野氏は、「AIプロジェクト成功の秘訣」と題し、AIシステム構築におけるポイントを「分析テーマの決定」、「PoC/実証検証」、「設計」、「実装」、「運用」のフェーズごとに紹介した。 あびーむ2 ▲アビームコンサルティング AIセクター 井野 徹氏

「従来のITシステム構築とAIシステム構築ではプロジェクトの進め方が異なります。この点を認識せずにITシステム構築と同様の進め方をすることで、プロジェクトが失敗する企業も多いです。ITシステム構築とAIシステム構築の違いを捉えたうえでプロジェクトを運営することが必要になります。」(井野氏)本登壇では、ITシステム構築との違いを観点に話が展開され、特に3つのポイントについて覚えて帰ってもらいたいと参加者に呼びかけた。

【AIシステム構築における3つのポイント】
①ビジネス視点からデータアセスメントを実施する
②POCと実証検証でビジネスも含めて検証する
③AIは劣化することを前提に運用業務を設計する

①ビジネス視点からデータアセスメントを実施する
まず最初にAIプロジェクトのアプローチについて問題点をあげた。「AIシステム構築と聞くと、最初にデータ分析からアプローチするプロジェクトはまだ多く、このようなアプローチをとると失敗することが多いです。プロジェクトにおいて最初に実施すべきことは、「ビジネスの理解・課題設定・プロジェクトの目的設定」を定義することであり、これはITシステム構築と同様です。」(井野氏)ここで定義した「プロジェクトの目的」に従ってデータアセスメントを進めることがポイントであり、具体例として特性要因図(フィッシュボーンチャート)を使いながら3つのステップを説明した。

【データアセスメントの3ステップ】
ステップ1:やりたいことに必要なデータを定義する
ステップ2:実データからできることを定義する
ステップ3:できることをやりたいことに近づける

ステップ1では、プロジェクトの目的を達成するために「必要なデータ」を仮説ベースで整理する。ここでの注意点は、最初から実データだけを対象に整理を始めないこと。実データだけを対象にすると分析範囲が絞られてしまう、つまりAIができることが少なくなってしまうからだ。次に、ステップ2で初めて実データを分析する。ここでは、統計によるデータ分析を行うと共に、ステップ1で整理した「必要なデータ」と「実データ」を比較して、分析に必要な「追加すべきデータ」を洗い出す。最後にステップ3で、「追加すべきデータ」を新たに作り出す。例えば、「実データ」を加工する、他の社内システムから探す、外部データを活用する、などの観点から「追加すべきデータ」を検討する。

②POCと実証検証でビジネスも含めて検証する
「PoCフェーズにおいて、作成したモデルの精度だけを評価するのは不十分です。PoCの次フェーズとして「実証検証」フェーズを設け、PoCで作成したモデルを利用してITシステムとの整合性や動作などの検証が必要です。」(井野氏)具体的には以下のような観点を考慮して検証する。

●PoCフェーズ

新しい概念や理論、原理、アイディアの検証が目的
・データで目的が達成できるかの評価
・アルゴリズムの評価
など

●実証検証フェーズ

PoCを踏まえて試作を作成し、機能や動作を確認
・機能や整合性、問題点の確認
・ユーザからの評価
・投資対効果の見極め
など

これらの観点でユーザを巻き込みながら評価を行い、投資対効果を見極めたうえで、本格的にシステム構築するかどうかの判断を行う。

③AIは劣化することを前提に運用業務を設計する
「AIの運用はITシステムの運用とは異なります。なぜなら、AIモデルがインプットしているのは「データ」であり、データが変化することでAIモデルは劣化するからです。データが変化する例として、時間の経過に伴い、「データ量が変わる」、「データの粒度が変わる」、「データが発生するタイミングが変わる」などがあります。このようにデータが変化することでAIモデルの精度が劣化することを前提に運用設計を行います。」(井野氏)そこで以下の3つの観点を考慮して運用設計を実施する。
①モデルの管理(モデルのバージョン管理、インプットデータの管理、など)
②モデル精度の監視・評価(モデルのKPIやビジネス上のKGIを設け、監視・評価する仕組みを検討する、など)
③モデルの再学習(再学習データの検討、ハイパーパラメータのチューニング、など)
この観点を継続的に続けられるような運用設計と体制を構築することが重要であるという。

最後に、AIは課題を解決するめの手段の1つに過ぎないという。「複雑に絡み合った課題を解決するには、AIと共に従来のIT、新しい技術、および業務改革を併せて検討する、このように総合的なアプローチで解決に導くのがコンサルタントの役割になります。」(井野氏)

2.事例から学ぶ「AIプロジェクトの進め方」

続いて登壇した安田雅憲氏は、井野氏が話したAIシステム構築のプロセスを踏まえ、具体的なプロジェクト事例を紹介した。 あびーむ3 ▲アビームコンサルティング AIセクター 安田 雅憲氏

安田氏が登壇で紹介したプロジェクトのクライアントは日本のエンターテイメント業界をリードする大手企業で、トレンドの変化が激しい事業環境でありスピードが求められた。紹介したプロジェクトでは、新規事業の立ち上げと並行してAIシステムも検討するというプロジェクトであった。

【事例のポイント】
①ビジネス要件とAIシステム開発が同時並行で進む場合の注意点
②AIシステム構築における「リスク」と「変化」の対処方法

①ビジネス要件とAIシステム開発が同時並行で進む場合の注意点
「新しいサービスをマーケットにリリースするスピードが求められる事業環境では、予め全てを計画立てる従来のウォーターフォール型開発がフィットしないことは多いです。新しい事業・サービスを検討していくと同時にAIシステムの要件を検討し、短いサイクルでPDCAを回すアジャイル型のプロジェクト運営が求められました。」(安田氏)

例えば、プロジェクト開始直後の構想策定フェーズにおいては、サービスの構想検討と並行して、AIによる実行可能性を検証した。クライアントへのインタビューで業務面での情報を収集すると共に、大学の研究室、民間の研究機関、海外の論文などから情報を得て検証を実施。構想策定フェーズではあったが、実際にデータ収集を行ってのアルゴリズムの検証を実施することで、後続での実際の開発に見通しを付けた。

また、AIモデルを作る「データ」の検討においても新規サービスゆえの難しさがある。既存のサービスがある場合、既に存在するデータを利用してAIモデルの構築を行うことが基本だが、新規サービスではデータを定義し、収集することから始まる。目的に照らし合わせ、データの適切な形を定義していくとともに、その収集プロセスについても一から設計していく必要があり、単に既存データからAIモデルを作成するより考慮すべき事項は多くなる。その上、往々にしてデータの量もスモールスタートとなるため、モデル精度の課題に繋がりやすい。そこで検討すべきポイントとしては、AIの力だけでサービス要件を達成することを検討するのではなく、既に確立された「人」によるノウハウも活用することだ。本プロジェクトにおいても、利用できるデータ量には限界があったことから、実際に業務に携わる方へのヒアリングを行い、そのノウハウを利用してある程度の方向付けを行うことによってAIモデルを作成した。

②AIシステム構築における「リスク」と「変化」の対処方法
どのプロジェクト運営においてもリスクはつきものだ。そしてリスクはプロジェクトの特性によって様々だ。特にAIシステム構築の場合においては、従来のITシステム構築とは異なる観点でリスクを捉える必要がある。「従来のITシステム構築は、先立って存在するビジネスルールに沿ってインプットとアウトプットの関係が定義されます。一方、AIシステム構築の場合、インプットとアウトプットの関係が事前に定義できず、実際に作ってみないと関係が明らかにならない、という特徴があります。そのため、いかに早くそうした「リスクに対応」し、またインプットとアウトプットの関係を明らかにする上での探索的・創発的な動きなどから来る「 変化に追随」していくかが重要となります。」(安田氏)
「リスクに対応」する上では、PoC/実証検証を早い段階で実行していくことがポイントになる。また、「とりあえずPoCを実施してみる」ではなく、AI構築におけるどのリスクを軽減しようとしているのかを常に意識し、プロジェクトの全体を捉えた観点で実施することが必要だ。
「変化に追随」する上では、サービスの内容が変更されることを前提とした設計でAIシステム構築を進めるべきという。サービスに見直しがあれば、AIに求められる要件も変わるため、サービスの変化にAIを追随させる必要がある。そのためのポイントは、AIを構成する各機能を可能な限り疎結合に設計・実装することで、変化に柔軟に対応することである。また、更に既存の業務システムやアプリケーションに対しても疎結合にして、依存性を排しAIを独立した存在として整備することが重要だ。

3.アビームコンサルティング AIセクターの特徴

パネルディスカッションを開始するにあたり、総合司会を務めた武貞氏が登壇。登壇者が所属するAIセクターについて紹介した。

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▲アビームコンサルティング AIセクター 武貞 征孝氏

「アビームコンサルティングのAIセクターは、3つの専門チームで構成されています。①ストラテジーチーム、②データ分析チーム、③ITインプリメンテーションチームです。各チームに専門性が求められると同時に、各メンバーは3つを横断して考えることができる知識も必要とされます。これは、チームごとに完全に分業体制にしてしまうと、それぞれのチームに関連する課題やソリューションにしか対応できなくなるからです。複数の課題が存在するビジネス環境においては、幅広い知識を理解することが求められます。だからといって、すべての範囲を深く理解することが必要というわけではありません。重要なのは、クライアントの課題を解決するためのベストエフォートを実現すること。専門チームが各領域で力を発揮し、他チームと連携しながら課題を解決していく。それがアビームコンサルティングのAIセクターの特徴です。」(武貞氏)

4.【パネルディスカッション】AIプロジェクトの面白さと難しさ

最後に、現在AIシステム構築に携わるコンサルタントによるパネルディスカッションが開催された。ここではAIプロジェクトの面白さ・難しさと共に、AIセクターの特徴などを聞くことができた。 あびーむ5
左から先述の安田氏、クリシラ シンディー氏、宮本 朋幸氏。ファシリテーターは大野 菜保子氏。(共にAIセクター)

テーマ:AIプロジェクトの難しさとは?
あびーむ6 ▲アビームコンサルティング AIセクター 宮本 朋幸氏

AIが人の仕事を奪う!?AIシステムの導入には「人」への配慮も必要
「AIシステム導入と聞くとテクノロジーの検討が先行しがちです。しかし実際のプロジェクトにおいては、人がAIをどのように活用できるのか、どのようなアプローチで導入するのかを検討することも重要です。 例えば、プロジェクト開始時において、ユーザに現状の業務についてヒアリングするわけですが、「AIを導入するので業務内容を教えてください」とヒアリングすると抵抗感を示すユーザもいます。要は、「AI」や「人工知能」という言葉が先行することで、自分の仕事がAIに奪われてしまうとネガティブに思う方も多くいるからです。AIが仕事を奪うのではなく、ユーザの仕事の助けになるというポジティブな点を含めて説明することが必要です。そのためには、AIができること/できないこと、および人にしかできないことを示しながら、納得を得て協力体制を築くことがポイントです。」(宮本氏)

あびーむ7 ▲アビームコンサルティング AIセクター クリシラ シンディー氏

日本と海外における文化の違いが生む難しさ。日本で作成したAIモデルが海外で通用しない理由とは
「昨年、東南アジアにある某国に出張していたときのプロジェクトについてです。 クライアントは消費者金融サービスを行っていますが、そこでの課題の一つに、「返済が遅延するお客様が多い」という課題があります。日本の場合、返済が滞ったお客様にメールや電話で督促すると、返済して頂けるお客様が多いです。しかし、某国では、メールや電話ではあまり効果がないのが実情です。そこで、某国のライフスタイルや特徴を考慮したうえで、メール/電話、および訪問するなどのアプローチを決めていきます。 このように返済に対する価値観の違いから、日本人のデータから作成したAIモデルは、某国では通用しないのです。」(シンディー氏)

テーマ:どのようにスキルアップをしているのか?
「実際のプロジェクトで活かせるスキルを中心に勉強しています。
例えば、DB構築に関わる領域を担当した際は、データベーススペシャリストの資格を取得しました。 また、データ分析を担当した際は、統計検定なども取得しました。このように、プロジェクトとの相乗効果を意識した勉強をすることで、特定のドメインに限定せずに幅広い勉強ができることが魅力です。」(安田氏)

「自己学習もそうですが、会社が提供しているコンテンツも活用しています。
例えば、セミナーに参加できる環境があり、またオンラインの授業を受けることもできます。学びに対して補助金を出してくれることもスキルアップの後押しをしてくれています。」(シンディー氏)

「今日の登壇のように、AIや最新トレンドのプロジェクトなど、社内で勉強会が開催されているのが大きいと思います。今日の登壇者も、社内の勉強会をきっかけにスキルを身に着けていきました。 このように、社内のプロジェクト情報や個人のスキルを共有して成長しようとする文化は、アビームコンサルティングの特徴だと思います。」(宮本氏)

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