シンギュラリティ・ラボ共同代表 中島 聡 × 草場 壽一 特別対談

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シンギュラリティ・ラボ共同代表 中島 聡 × 草場 壽一 特別対談
シンギュラリティ・ラボとシンギュラリティ・ソサエティは会員ベネフィットのさらなる向上と活動の活性化を目指し、1年間の準備期間を設けてコミュニティを統合する方向で進めることとなりました。今回は、2020年7月26日のシンギュラリティ・ラボ全体交流会で実施された特別企画、シンギュラリティ・ラボ共同代表中島 聡×草場 壽一対談の模様をお届けします。

みなさん、こんにちは。 シンラボ運営部です。

シンギュラリティ・ラボとシンギュラリティ・ソサエティは会員ベネフィットのさらなる向上と活動の活性化を目指し、1年間の準備期間を設けてコミュニティを統合する方向で進めることとなりました。

今後は、一般社団法人未来技術推進協会と一般社団法人シンギュラリティ・ソサエティが共同で「シンギュラリティ・ラボ」の運営を行います。

今回は、2020年7月26日のシンギュラリティ・ラボ全体交流会で実施された特別企画、シンギュラリティ・ラボ共同代表中島 聡×草場 壽一対談の模様をお届けします。

コミュニティ統合のきっかけ、テレワーク、スキルアップ、おもちかえり.com等、最近熱い話題に関する対談、必見です!


中島 聡氏 プロフィール

ソフトウェア・エンジニア、起業家、メルマガ作家(週刊 Life is beautiful) 米国シアトル在住。MBA(ワシントン大学)

早稲田大学大学院理工学研究科修了。米マイクロソフトにて、Windows 95、Windows 98、Internet Explorer 3.0/4.0のチーフアーキテクトなどを務めた。 独立後はUIEvolution(Xevo)、neu.Pen等を起業。2019年4月にはXevoを3億2000万ドルで米Lear Corporationに譲渡。現在は、一般社団法人 シンギュラリティ・ソサエティ 代表理事としてAI時代をリードできる人材育成に取り組んでいる。


草場 壽一代表理事 プロフィール

一般社団法人未来技術推進協会代表理事

京都大学大学院理学研究科物理学第一教室 修士課程修了後、日立製作所 中央研究所に入社。メタマテリアル、三次元積層相変化メモリ、億万年記録媒体の研究に携わる。

学生時代、会社員時代より異分野との交流に興味があり勉強会を企画。異分野連携を進めて具体的なプロジェクトにするために、協会を立ち上げ。 代表理事を努め、大学、企業、投資家を結ぶコミュニティー創出に向けた推進活動を実施。


対談テーマ

1.コミュニティ統合について
2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による社会の変化について
3.おもちかえり.comについて
4.これからの働き方について
5.コミュニティ運営について

1.コミュニティ統合について

草場

シンギュラリティ・ラボとシンギュラリティ・ソサエティの統合にあたって、コミュニティ運営のきっかけや、上手くいったこと、改善したいことについてお聞かせください。

中島

シンギュラリティ・ソサエティというNPOを作ったのは良かったと思っています。オープンソースで楽しいことをやる、その中で新しいことをやっていくコミュニティとして。NPOとしてのシンギュラリティ・ソサエティを立ち上げるにあたり、同時にサロンも立ち上げました。

サロンを立ち上げた経緯としては、メルマガより双方向のやり取りをする場を作ってはどうかとお勧めいただいたことがあります。

ただ、最近はサロンを使ってお金儲けをしたり、サロンの存在が情報商材のようになっている傾向があるとも感じていました。そうなるのは良くないと思い、NPOで始めました。

私が得意なのはプロジェクトを走らせることです。サロンとして、商売ではないにしても会費を集めているならばメンバーのサポートをしなくてはならないと考えていましたが、そちらはあまりできていなかったという状況がありました。

本来、シンギュラリティ・ソサエティでやりたかったのはメンバー同士でコミュニティを作ることで、私はメンバーとして入るのが良いと思っていました。 しかし、コミュニティ運営するにあたってはコミュニティのリーダーが必要とも思っていて。シンギュラリティ・ラボは理想だと思ったのです。リーダーとして草場さんがいて、メンバーの皆も同等の立場でいる。

シンギュラリティ・ソサエティもこのような状況にしてみたいと思ったのですが、サロンで大事なのは人です。メンバーがいるから価値がある。理想のコミュニティがあるなら、一緒にやればいいと考えました。

ですので、統合については常に賛成の立場でした。

草場

運営の面で評価いただいたことを非常に嬉しく思います。 こちらでは社会的インパクトを与えるコミュニティとしてプロジェクトを頑張りたいと考えています。 シンギュラリティ・ソサエティのプロジェクト推進力の面で、ぜひお力添えいただきたいと考えています。 お互いの良い部分、欠けている部分を補完して発展していきたいです。

2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による社会の変化について

草場

ここ数か月COVID-19の影響で働き方が変わっています。日本ではテレワークが進みました。しかし、ドラスティックな変化が生まれているかというと何とも言えない状況です。 中島さんがお住まいのアメリカの状況はいかがでしょうか?

中島

「コロナショック」は社会に一様な形では当たっていないと考えています。立場によって違います。 また、COVID-19によって生まれた変化は一時的なものではないでしょう。

Yahoo!がリモートワークをCOVID-19の前に導入したが、辞めた事例がありました。マイクロソフト、Googleもかつては特例としてリモートワークを許可している状況でした。 しかし、今回はリモートワークを実施せざるを得なくなったところ、問題なくできています。

生産性を落とさずにリモートワークできる業種はあるということですが、それがIT業界に偏っています。IT業界のようにリモートワークがマイナスでない業界は、COVID-19が収束してもリモートワークは続くでしょう。

そうなると、どこからでも働けることになります。Googleならシリコンバレーにいないといけなかったのがどこでも働けるということです。世界中から人を雇える点で、IT業界は大きく変わるでしょう。

アメリカではビザの発行がトランプ政権においては締め付けが厳しい状況です。それでも、リモートワークなら外国人も雇える。もちろん、アメリカで働きたいか働きたくないか個人の意見はあるでしょうが、IT業界においては世界のリーダーシップを取るアメリカで働くのは成長になります。

日本なら、Googleで働くチャンスとしてGoogleの日本本社がある東京で働くという選択肢は以前からありましたが、それを飛び越して札幌からGoogle本社で働くということが可能となるわけです。

世界中で人材交流が生まれますね。これは大チャンスです。自宅から遠くても、面白いところで働ける選択肢が生まれました。

一方、レストラン等は厳しい状況です。中小の8割は閉業するだろうと言われています。 そうなるとそこで働いている人も雇用を失います。現在は政府が補助金を出していますが、それが終わったら本格的に失業者は増えるでしょう。貧富の差が益々広がりますね。

草場

IT業界にいる者にはチャンスですね。その波に乗るために技術者としては何を磨けばよいでしょう?

中島

オープンソース、スタックオーバーフロー、リンクトインを充実させてインターネット上のプレゼンスを上げるのが手っ取り早いかと。 あるいは小さな会社でコネクションを作るなども有効ですが、一気に飛び越えるならインターネットを活用すべきでしょう。オープンソースでも、自分でやるでも、誰かのプロジェクトに入るでも。

例えば自分がFacebookに入りたいなら、FacebookのReactにコントリビュートする。そういう新しいことをする格好の機会です。

草場

技術力に加え、プレゼンスを高める積極性が大切ということですね。

3.おもちかえり.comについて

草場

IT業界以外の働き方はどう考えられていますか?

中島

昔ながらのレストランは非常に厳しいでしょう。しかし、皆、外食はしたいですよね。プロが作ったおいしい料理を食べたいということです。それを非接触でどう実現するかです。 Uber Eatsは過渡的なものです。あれは普通のレストランと宅配が組み合わさったもの。 最近はテイクアウトのみの営業をするゴーストレストランという形があります。ゴーストレストラン×IT技術には可能性があると考えています。

現在、おもちかえり.comを提供していますが、普通のレストランがDX(デジタルトランスフォーメーション)を起こすのは難しいです。IT技術の活用が業務フローに入っていないから。注文が来たのにiPadを閉じていて気づかなかった、なんてことが起きています。

注文のワークフローを変え、ITありきのレストランにすることが生き残りには必要と考えます。

これから、残念ながら小さなレストランは倒産していくでしょう。ただ、おいしいもの食べたいニーズはあります。 今後、おもちかえり.comのバージョン2として、ITの技術を使って注文効率を良くするツールを全国のシェフに提供したいです。

草場

おもちかえり.comほか、飲食業界に携わる友人に新しいフローを伝えたいです。

中島

Uber Eatsは手数料が30%かかります。 レストランの平均的な利益率は10%程度ですが、これに加えてUber Eatsなみの手数料がかかると利益にならない現状があります。それで、ネットでオーダーできるサービスを作りたいと考えました。 これがおもちかえり.comです。

最初はアメリカでサービスを開始しようとしましたが、アメリカの特定地域はレストランが再開できそうにないのです。そんな時に伊藤忠さんにお声がけいただき、日本でサービスを開始することになりました。開発はシンギュラリティ・ソサエティ、営業は伊藤忠さんに実施いただいて始まりました。

インターネットでオーダーして、お客さんが取りに行く。クレジットカード手数料のみ掛かる無料のサービスです。

新しいサービスでレストラン側が慣れていないこともあり、レストランが注文に気づかない問題などが発生してはいますが、ひとつずつ問題を解決している状況です。

草場

おもちかえり.comを前提としてまわるレストランを作った方が早いということになりますか?

中島

既存の体系が壊れて新しいものができるフェーズにありますね。これが面白いと思って新しいレストランを作る人が出てくるかもしれません。 まずは既存店舗をサポートしていきますが、そのうちに先述した新しいレストランができるかもしれませんね。

4.これからの働き方について

草場

今回はドラスティックな変化が生まれていると言えますね。 中島さん的にこれほどの変化は今までありますか?

中島

今まで、ここまでの社会的、精神的ショックはなかったです。 今までの3大イベントとして「9.11」「福島第一原発事故」「COVID-19」が挙げられます。

9.11以降、アメリカは飛行機のセキュリティが厳しくなりました。旅行のライフスタイルが変わりました。

福島の件はライフスタイルが変わるほどはでなかったですね。これを契機に電力の発送電分離が進むと思いましたが、伸びず。電力の地産地消、クリーンエネルギーも。

原発の反応が一番大きかったのはドイツです。アメリカも、新しい原発を作れる状態にはなくなりました。現在は再生可能エネルギー、シェールガスで安価な火力に進んでいます。

COVID-19は9.11以上の影響があります。アメリカ人のライフスタイルに影響するのではないでしょうか。リモートワーク、非接触のレストラン。驚くほど大きいです。

ブラックライフマターも関連してきます。まだ人種差別がある中で、この爆発が絶好のタイミングで起こってしまいました。失業手当があって時間もある人が、今までの怒りを爆発させている。これもCOVID-19の間接的な影響ですね。治安が悪化している。

日本はまだまだ平和。ショッピングセンターが襲われることもないですし。

草場

仮に現在中島さんが20代だとしたら、このようなドラスティックな変化が起きている今、どういうところに入りたいでしょうか。

中島

まだ会社起こしたくはないかも。面白いところに行きたいです。もう成功しているところではなくてこれから伸びそうなところ。そういうところに優秀な人が集まっています。

アメリカでいうベンチャー企業に入ると、買収されたら一攫千金です。そうなるのは5%くらいですが。

エンジニアは働く場所を選べます。優秀な人と働いてコネクションができる。最悪、倒産したとしても経験とコネクションが残りますし、買収されれば一攫千金。

Googleにも優秀な人はいますしコネクションもできますが、もう上がっている会社なのでGoogleで目立つのは難しい。

伸び盛りの会社も面白いと思います。Zoom、Slack、SpaceX、テスラ。面白い会社が沢山あります。

草場

中島さんのスタンスとして、面白そうな所に飛び込んでいくことがあるんですね。

5.コミュニティ運営について

草場

再びコミュニティの話に戻ります。 色々やってみましたが、活動に積極的に参加する人、しない人に分かれます。自分としてはサービスを新しくやっていく人を増やしたいです。作り手側に回るというマインドを醸成したくて。 いろんな会社を見てきた中島さんにアドバイスをいただきたいです。

中島

旧来型の大きな会社で働いていると、そう簡単に新しいことはできないですよね。 色々な人を説得しないといけない。 あとは競争相手がいないと始められない。これは業界が分からないから。

ベンチャーを始めるって敷居が高いです。今の環境を投げ出すことも敷居が高いし、資金もないし。いきなりどう食っていくかという問題に直面することになります。

なので、会社を飛び出す前に、飛び出すためのネタを作っておくことは大事です。 そこにそれなりのユーザーがついている状況を作っておく。100万人でなくていい。3000人でも熱中している人がいれば十分です。それをデザイナー等入れて規模を大きくしていけばいいです。

それがなくてビジネスを始めるのは難しいです。冒険心がある人でなければやらない方がいい。

シンギュラリティ・ラボというコミュニティを使って新しいことを始めてみればいいんです。上手くいかないかもしれないが、上手くいくなら会社を起こさなければいけない。そのために頑張ろう。と思うのはナチュラルにスタートアップに第一歩を踏み出しているということです。

こんなビジネスあったらいいな、をまず作ってみて世に出す。上手くいったらビジネスにする、で良いんです。

NPOで実施していると誰がアトリビュートしているかはっきりしています。だから権限もはっきりする。会社起こすときにも担当がはっきりします。

草場

シンギュラリティ・ラボは自分たちで作っていくコミュニティです。皆さんにはどんどん新しいものを作る側に回ってほしいです。 シンギュラリティ・ラボの運営ノウハウを提供し、シンギュラリティ・ソサエティのプロジェクト力を活用する。 ぜひ、サービスを作る側に回りましょう!

シンギュラリティ・ラボ(シンラボ)はシンギュラリティ時代をリードする、イノベーション × テクノロジー × SDGs をテーマとしたコミュニティプラットフォームです。20代の若手エンジニアを中心にテクノロジーを活かしたプロジェクトの立ち上げや、SDGs達成のための活動をしています。 台湾やインドとの新たなプロジェクトが始動しており、豊富な経験と専門スキルを生かした事業支援も行っています。

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