アドビが実現するDXとは?~Adobe DX Night ~ 企業の顧客体験を変えるAdobe Experience Cloudを紹介

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アドビが実現するDXとは?~Adobe DX Night ~ 企業の顧客体験を変えるAdobe Experience Cloudを紹介
「Photoshop」や「Illustrator」などをはじめとするクリエイティブツールを提供するアドビが、昨今ではCXM(顧客体験管理)のための包括的なクラウド基盤「Adobe Experience Cloud」を提供している。2月4日に開催されたイベント「Adobe DX Night」では、最前線に立つコンサルタントが、Adobe Experience Cloudをはじめとするソリューション実例を交えて紹介された。

デジタル変革を支援するアドビのソリューション

最初に登壇した小栗氏は、日系SIerからメーカやメディア企業の社内SEやデジタルマーケティングを経験。2012年、アドビにビジネスコンサルタントとして入社。カスタマーサクセス部門などの統括を経て、現在はデジタルマーケティング領域のプロフェッショナルサービス組織を統括している。

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アドビ 株式会社
Senior Manager, Professional Service / プロフェッショナルサービス事業本部 シニアマネージャー  小栗 順平氏

「アドビというと、PhotoshopやIllustratorなどのクリエイティブツールのイメージが強いと思いますが、顧客のマーケティング課題における戦略フェーズ、UI/UXのデザインフェーズ、プラットフォームの導入、サイトの改善やマーケティングの改善アクションなどのアクティビティ、更にはシステム運用全体を支援するトレーニングやサービスと幅広く提供しています。

売上高はグローバルで約1.3兆円。DX(デジタルエクスペリエンス)事業は売り上げの24%の3000億円事業として年々成長している。アートとデータの領域を通じてDXを提供することで、お客さまのビジネスの変革、それらを通じて世界を変えるインパクトを与えるため、この領域の事業を拡大することに注力しています」(小栗氏)

昨今のCOVID-19感染拡大の影響により、働き方や企業のあり方が変わりつつあるが、アドビにおいても大きな変化が起きている。

「一人ひとりの帰属意識も変わりつつあること、さらには個人の影響力が非常に強まっている。約1年間、オフィスに行くことなくフルリモートで働いています」(小栗氏)

このように社会環境が変化していく中で、企業はデジタル変革が求められている。

「顧客に対してはより良い顧客体験を追求していくこと。社内に対しては、プロダクティビティとクリエイティビティの追求。我々の業務生産性をいかに高められるかが求められています」(小栗氏)

そこでアドビでは企業のデジタル変革を支援する3つのクラウドソリューション「Adobe Creative Cloud」「Adobe Document Cloud」「Adobe Experience Cloud」を提供している。今回のイベントでは、企業が提供する顧客体験をコンテンツとデータを元に最適化するソリューションとして、Adobe Experience Cloudが紹介された。

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Adobe Experience Cloudは「Analytics Cloud」「Advertising Cloud」「Marketing Cloud」「Commerce Cloud」といった、インサイト、コンテンツ、エンゲージメントなどさまざまな領域で効果を発揮するアプリケーションサービスを包括的に提供する。

また図で見ればわかるように、同ソリューションはアドビのオープンで拡張性の高い基盤「Adobe Experience Platform」上に構築されている。

「同製品はCXM(Customer Experience Management)という観点で作られており、お客さまとのあらゆるタッチポイントから生まれる顧客体験を最適化していくために必要なデータ統合・分析できるようにするのはもちろん、そこに提供するコンテンツも生成していくことができます。コンテンツ・マネジメント領域に強みをもつところがクリエイティブDNAを持つアドビのユニークポイントです」(小栗氏)

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デジタルマーケティングを取り巻くデータ活用の近年の状況

続いて登壇したのは、シニアテクニカルアカウントマネージャーの清水明生氏。清水氏は16年にアドビに入社し、以後、Adobe Experience Cloudのテクニカルサポートマネージャーとして、Adobe Analytics/Adobe Target/Adobe Audience Manager等の製品を導入。顧客の運用課題改善や問題解決、活用促進に従事している。

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アドビ 株式会社
Senior Technical Account Manager / シニア テクニカル アカウント マネージャー 清水 明生氏

企業の中には、オンラインの行動データ、会員登録などの属性データ、店舗を通した購買履歴など、様々なチャネルを通じた多様なデータが蓄積されている。それらのデータを活用し、「顧客がいつ、どこで、何を、どのようにしたか、そのコンテキストを理解すること」がデジタルマーケティングでの重要なポイントになる。

だが、データ活用には課題もある。一つは一人で複数のデバイスを使うことが珍しくなくなったこと。それにより「個人の特定が難しくなっている。一貫性を持ったコミュニケーションをとるハードルも上がってきた」と清水氏は指摘する。

さらには、個人情報保護法における規制法案の対応も考えなくてはならない。これらの課題に共通するホットなキーワードとして、清水氏はCookieを挙げる。

Cookieは閲覧したWebサイトの情報やユーザーの履歴等をブラウザに保存する仕組みで、ユーザーの利便性を高めるために活用されてきた。その一方、企業やマーケターがユーザーに対してリターゲティングや広告表示するための仕組みとしても利用されており、閲覧したWebサイトやドメインを超えて、企業がユーザーを追跡することも実現されていた。

利用者の不快を解消すべく、Cookie技術の見直しが進められ、近年はブラウザに規制機能を追加する動きも活発化も目立っている。2020年の1月、Googleが2022年までにサードパーティーCookieを廃止することを発表。Cookieレスというキーワードが話題になっているのはブラウザがプライバシー強化の動きを加速しているからだ。

そこでアドビでは、4つから成る顧客管理型のIDソリューションをコンセプトとしている。

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第一が「1st Party Dataマネジメント」である。アドビの製品を通じて1st partyデータ戦略を運用できる基盤をつくること。第二に「Consumer Trust」。個人情報の収集から利用期間や目的を管理するガバナンスツールを提供することだ。

第三は「2nd Party Partnerships」。ガバナンス管理されたアドビソリューションを介して、パートナー企業とオーディエンスを共有する仕組みを作ること。

第四は「Scalable Activation」。CookieレスとはCookieを使わないことではなく、Cookieも識別子の一つと捉え、人を焦点とした識別子を活用することが効果を最大化できると考えている。

顧客にフォーカスしたデジタルマーケティングをAdobe Analyticsで実現

Adobe Analyticsはアクションに繋げるためのデータ分析ソリューション。主にオンラインデータの収集を担い、サイトやそのブランド全体の傾向分析から、細かな遷移フローまで、多彩なレポート機能を提供している。

またAdobe Analyticsのアドオン機能として提供される「Customer Journey Analytics」は、オンラインとオフライン両方を兼ねたオムニチャネルでの分析をサポートするために開発されたツールだ。

Adobe Analyticsにおいてもデータ活用の課題は挙げられるが、それぞれの課題に対応する機能を提供している。第一の課題は一人の顧客が複数のデバイスを使うことが珍しくなくなり、顧客の特定が難しくなったこと。

Adobe AnalyticsではCookieによってユーザーの特定を実現しているが、ユーザーの特定はCookieだけではない。ログインID等のユーザー識別子を計測し、それによってデバイス間のデータを繋ぎ合わせることが実現できる。また、ログイン中のデータだけではなく、そのデバイスに関連するCookieから、ログイン前の行動も繋ぎ合わせできる。

ログイン情報を活用して「人」を特定し、デバイスを跨いだ分析が可能になる。ユーザー識別子によって顧客を特定できるので、たとえCookieがクリアになったとしても、引き続き継続した顧客の分析ができるようになる。

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第二の課題はオンラインやオフラインなど多数のチャネルをまたぐオムニチャネルの分析を可能にすること。アドビでは、Experience Data Model(XDM)という顧客体験にフォーカスしたデータモデルを開発し、これにより多種多様のタッチポイントにおけるプロファイル管理を実現する。

「XDMによってその顧客を特定するプロファイルを作成し、プロファイルから異なるチャネルのデータを互いにリンクすることで、ユーザーがどのようなカスタマージャーニーを辿ったかなどがわかるようになる。Customer Journey Analyticsではオムニチャネル分析を実現します」(清水氏)

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第三の課題は個人情報保護法への対応である。2018年、欧州ではGDPRの施行により、明確にIPアドレスやそのCookieが個人情報に該当することが定められた。2019年には米カリフォルニア州では消費者プライバシー法の適用が始まった。日本でも改正個人情報保護法に注目が高まっている。取得する情報と目的の明確化、データ取得の許諾・同意管理、データの開示や削除の権利や、違反した企業への罰則金等が各法案における主な課題である。

この動きを受け、Adobe Analytics、およびそのプラットフォームであるAdobe Experience Platformでは、データガバナンスのためのツール「DULE機能」を導入している。DULE機能とは各データにラベル付けをし、そのラベルに基づいてデータのセキュリティポリシーを適用させることができる機能である。

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Adobe Experience Cloudでは、データの所有企業が利用者からの要求に応じて必要なデータを返却あるいは削除できるように、プライバシーサービス機能を用意している。所有企業が利用者に返却、削除するデータは、予め設計したデータラベルによって自動処理される仕組みだ。

「今回紹介したのは一部の機能で、顧客との一貫したコミュニケーションをするためには、データを繋げる仕組み、そのデータをしっかりプライバシー対応して管理していくこと、これらが今後の顧客体験に重要なポイントだと考えています」(清水氏)

顧客体験を支えるコンテンツ基盤に求められるテクノロジーとは

宮田氏は「優れた顧客体験を支えるコンテンツ基盤の最新テクノロジーとは?」というタイトルでセッションを開始した。宮田氏は国内ERPベンダーの開発エンジニアを経て、2016年2月にアドビに入社。以来、プロフェッショナルサービス部門のコンサルタントとして顧客体験向上のため提案活動を行っている。

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アドビ 株式会社
Senior Technical Consultant / シニア テクニカル コンサルタント 宮田 裕将氏

「どんなに優れた製品でも単に導入するだけでは、その価値を存分に享受するのは難しい。DXを目指し、次世代型のプラットフォームを導入したはずが、既存の業務や考え方にとらわれて本来必要の無いはずのカスタマイズをしてしまったというプロジェクトは多い。アドビの製品は長く世界中のユーザーに使われており、そこで培われたベストプラクティスに基づく製品思想や、最先端の技術を生かした便利な機能の塊だ。製品の提供価値を顧客自身に理解・共感してもらい、製品の本来のパワーに合わせてお客様の業務や考え方を変革していく必要がある。だからこそ、コンサルタントという役割が重要になる。」と宮田氏は強調する。

私たちはいま、情報過多の時代に生きている。利用しているデバイスやチャネルも多様化し、企業との接点も様々だ。そのような中、もしあなたが企業から一貫しないコミュニケーションを受けたらどう思うだろうか?例えば、子供服を買おうとWebサイトを物色し、その後で実際に買おうと思ってモバイルアプリを立ち上げたら、まったく違うデザインや見た目で欲しかったものも見つからないとしたら?

このように、一貫しないコンテンツ体験があると、消費者はその企業やブランドを疎ましく思ってしまうケースもある。そうなると、長期的な関係性の醸成や売り上げの向上には繋がってはいかない。だからこそ、優れた顧客体験を提供するために、欠かせないのがコンテンツマネジメントなのである。

コンテンツマネジメントとは、趣味嗜好も様々なユーザーに対して、ユーザーの状況や属性といったコンテクストに合わせて適切なコミュニケーションを取るために、コンテンツを管理・配信していくことである。近年のコンテンツはテキストや画像だけでなく、動画や3D、AR/VRなど様々なリッチなコンテンツが利用されるようになった。多岐にわたるコンテンツをWebサイトや、モバイルアプリ、メールキャンペーンなど多くのチャネルやデバイスに配信し、かつそれを顧客のコンテクストに合わせて変えていくのは至難の技だ。理想的なカスタマージャーニーが描けたとしても、それに対応するシステムと運用する人材が必要となる。

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Adobe Experience Managerで最適な顧客体験の作成から配信までを加速する

こういった企業の課題を解決するソリューションとしてアドビが提供するのが「Adobe Experience Manager(AEM)」である。AEMはあらゆるタッチポイントでパーソナライズされた顧客体験の作成、管理、配信を加速するクラウドアプリケーションである。

AEMには、Webサイトにおけるコンテンツの制作や配信を行うSitesだけでなく、企業のあらゆるデジタルアセットを集約管理し、多くのビジネス部門、チーム、プロジェクト、チャネルがアセットを再利用することで、コミュニケーションコストやアセット作成のコストが削減できるコンテンツ管理の仕組み「Assets」も搭載している。Creative Cloudアプリとの緊密な連携により、クリエイティブの集約、展開、リリースを加速するワークフローを提供する「Adobe Asset Link」、Dynamic MediaとAdobe Senseiの能力を活用し、デバイスやチャネルに合わせてアセットを自動調整することで、最適なコンテンツを簡単に提供する機能も搭載している。

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また、AEMはコンテンツマネジメントの世界を変える先進機能を有している。第一が「Hybrid CMS」というアーキテクチャを採用していること。カスタマージャーニー全体において優れた顧客体験を実現していくために、企業は新たなチャネルの迅速な構築やコンテンツ再利用が求められる。そうした中、従来のCMSのアーキテクチャでは、CMSがサポートするフロントエンド技術しか利用できない、開発チームがCMS技術スタックを習熟する必要があるといった要因から、アジリティやスケーラビリティに課題があった。

こうした課題を解決すべく登場したのが、Headless CMSというアーキテクチャである。Headless CMSではコンテンツの編集・保持機能からフロントエンドを分離することで、新規チャネル対応への高いアジリティやスケーラビリティが得られる。しかし、その一方で、コンテンツのIn-context editing(WYSIWYG編集)ができない、コンテンツ編集者がビジュアル面のガバナンスを効かせづらい、開発チームがチャネルごとにサイロ化しやすいといった課題があった。

これら双方の課題を解決するのが、AEMが採用するHybrid CMSアーキテクチャである。Hybrid CMSは、従来のCMSとHeadless CMSを組み合わせたアーキテクチャである。Webサイト等の成熟したチャネルについては、ビジュアルやレイアウトも含め、IT部門の手を借りることなく自分の手で編集・反映が可能。また、新興チャネルにおいては、Headless CMSの機能性を用いて、フロントエンドを分離した形での柔軟な実装が可能。このように、チャネル全体においてコンテンツを再利用しながらも、ビジネスニーズに応じた柔軟なチャネル展開が可能となる。

また、AEMは3つの提供オプションを用意している。そのうちの一つ、クラウドベースの提供形態であるAEM as a Cloud Serviceは次のメリットを提供する。

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第一が「Always current」。新機能がシームレスに検証・自動リリースされるため、チームはバージョンアップグレード計画をすることなく、顧客体験の改善にフォーカスできる。

第二のメリットは「Modular,scalable,and global」。オートスケーリングとマイクロサービスアーキテクチャにより、常に最適なパフォーマンスが提供される。

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第三は「Performance resiliency(パフォーマンスの強靱さ)」。冗長化とモニタリングにより、ミッションクリティカルレベルの可用性を提供している。

第四は「Secure by default」。すべての環境はアドビのベストプラクティス、ISO-27001やSOC-2などのセキュリティフレームワークに基づき設定・検証済みである。専用のCI/CDフレームワークを提供しており、Time-to-marketをさらに加速することができる。

多くの質問が寄せられたQ&Aタイムの質問・回答を紹介

小栗氏、清水氏、宮田氏によるQ&Aタイムでは、参加者からの質問が多数寄せられた。その一部を抜粋して紹介する。

Q.顧客データはSNS(Facebook、Twitterなど)や協業他社との連携機能はあるか。その場合のセキュリティ対策について知りたい。

清水:集めたデータをSNSに配信する機能はあります。その際、データガバナンス対策としてラベリングし、このデータは「出せる、出せない」を管理することで、セキュリティ対策になると考えています。

小栗:統合プロファイルを作り、マーケティングアクションを指定します。その企業にあったポリシーで自動判別ができ、もし出してはいけないデータはアラートが出る仕組みを作れます。

Q.管理する顧客データが増大する場合、データセンターはクラウドにするかオンプレミスにするかの議論や、ビッグデータを管理する上でコスト上の問題はなかったか。

小栗:アドビの場合、データソリューションは基本クラウド一択です。

Q.Adobeの強みはクリエイティビティ要素を持ち合わせているとのことだが、その具体的な点を知りたい。クリエイティブ要素を内製化したのか。

小栗:クリエイティブ要素だけではなく、コンテンツ制作要素が強みだと思います。内製でのコンテンツ制作が実現できた事例も出ています。

Q.(道を究めた)工匠の様な顧客にも十分に能力を発揮してもらうために、どんなシステム(プログラム)開発をしているのか。

宮田:まだβ版ですが、自動的に優れたレイアウトを組み合わせて提供する匠の機能をリリース予定です。アドビでは民主化と言っていますが、一部の人としかできない難しい機能を、誰もが表現したページなどをデザインできる方向に進化しています。

アドビでは現在、絶賛メンバーを募集している。今回のセッションを聞いて、アドビ社員の会社生活の様子を知りたい方は、ぜひ「#AdobeLife」で検索してみてはいかがだろう。

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アドビ株式会社

https://www.adobe.com/jp/

アドビ株式会社の採用情報

https://www.adobe.com/jp/careers.html?promoid=35SVBWDL&mv=other

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