モビリティ業界に新しい顧客体験を ──NTTデータが挑む「顧客接点を繋ぐ全網羅開発」とは

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モビリティ業界に新しい顧客体験を ──NTTデータが挑む「顧客接点を繋ぐ全網羅開発」とは
NTTデータの技術リソースを結集し、顧客体験設計からバックエンド開発まで、プロジェクトを全網羅実現しているチーム「M1-1チーム」。大変革期を迎えるモビリティ業界において、どのような取り組みを行っているのか。プロジェクト事例からプロジェクトマネジメント、人材育成、組織作りまで、NTTデータの特徴や強みを紹介する。

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100年に一度の大変革期にある自動車業界

最初に登壇したのは布井真実子氏。まずは、「自動車業界はいま、100年に一度の大変革期にある」と切り出し、モビリティ業界にどのような変化が起きているのかを紹介した。


▲株式会社NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 モビリティエクスペリエンス開発担当 第一製造事業本部 部長 布井 真実子氏

一つは「車の定義」の変化だ。キーワードは「ソフトウェアファースト」。これまでの車は、いい意味で機械的でメカニカルな乗り物であり、ドライバーの技量により運転技術が左右された。

しかし、ソフトウェア技術の進化により、誰がどこを走っていても、快適かつ安全に運転することができるようになる。自動運転技術の進化だ。だが、自動運転の実装に向けては、さまざまなシステムとの連携など、課題も多いと布井氏は言う。


続いての変化はグリーン。キーワードは「脱炭素」「需給の安定化」だ。脱炭素社会を実現するために、エンジンからモーター、EVへと、大きな製造革命が起きているが、そこには問題もある。

「風力や太陽光といった自然由来の再生エネルギーの供給が不安定な点です。電力の供給をいかに安定化させるか。EVのバッテリーなどでも使われている、蓄電・放電といった技術がポイントになってきます」(布井氏)


3つ目はビジネスモデルの変化だ。キーワードは「つながり」「多様化」。自動車ディーラーの役割は、これまで自動車を販売することがメインだった。しかしこれからは、新たに体験を提供することであると、布井氏は強調する。

具体的には、購入後にユーザーが自動車を乗って、どのような体験をするのか。マーケティング的な言葉に置き換えれば、それぞれのカスタマージャーニーを考える必要がある。そのフックとなるのが、デジタル化で増大するデータだ。

「お客様のデータと車のデータ、両方のデータを掛け合わせて活用することで、さまざまなカスタマージャーニーが生まれます。観光、買い物、エンターテイメントなど、様々な領域のプレイヤーが、自動車業界に多く参入してくるでしょう」(布井氏)


現時点のデータ活用やデジタル化は、主にライドシェア、サブスクといったサービスが展開されている。だが、今後はよりブレイクダウンしたサービスや、ジャーニーを顧客が体験できるビジネスモデルが出てくる。

つまり、自動車業界は大きく変わると語り、セッションを締めた。

DXを成功に導く最先端プロジェクトマネジメント術

続いては、三宅恒司氏が登壇し、DX案件におけるプロジェクトマネジメントの変化や課題について語った。


▲株式会社NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 モビリティエクスペリエンス開発担当 第一製造事業本部 部長 三宅 恒司氏

アジャイル開発を選択することが多いDX案件に対し、NTTデータではアジリティを意識しながらも、品質とコストを保つ堅牢なシステム開発を担保するプロジェクトマネジメントを再構築している。

「DX案件においては、プロジェクトそのものが変化しています。PMはそれぞれの変化領域において、強化すべきポイントを意識しながら、プロジェクトに取り組む必要があります」(三宅氏) 三宅氏は、その変化には主に3つのポイントがあるという。一つは“マネジメント対象の工程が拡大”したことだ。従来、SIerの役割はクライアントから依頼によるシステム開発工程がメインであった。しかし最近は経営戦略・サービス企画の領域、いわゆる上流工程から参画する案件が増えている。


  当然のことながら、従来のシステム開発業務も担う。システムの実装後は、運用保守はもちろん、構築したシステムからビジネスをどう成功させるのか。つまり、サービス提供の領域まで、幅広い工程のマネジメントが求められる。

上流工程ではPoCを繰り返すことが重要だ。そのためには、幅広い工程それぞれに強い、多種多様な人材が必要になる。

「各人がそれぞれ個人で判断し、業務を進めていく必要もあります。そのためPMに求められる技量は、全体の方針を定めると共に、個人が最大限力を発揮できる場づくり、発揮した力を最大限活用することです」(三宅氏)

2つ目のポイントは、“変化に対応できる持続可能なマネジメント”だ。「変化に立ち止まっているようでは対応できない」と、三宅氏は指摘する。各レイヤーにおいて、プロジェクトやKPIを達成に導くために、最適な人材をアサインし、問題が生じたときに、いち早く手を打つアクションが求められる。


言うなれば、次々と変化する状況に合わせて、各レイヤーのチームを構成することでシステムを最適化する。その上で、ビジネス全体を俯瞰・最適化する技量が求められる。

また、取り組みをノウハウとして蓄積し、オファリング化する。他のプロジェクトにも持続していく取り組みも必要だと説明した。

3つ目の変化は、“多くのチームやステークホルダーが集まって、ワンチームで開発を進めていく点”だ。PMに求められる役割は、顧客に最大価値を生み出すための全体の枠組みを整備し、各チームを構築する。

さらには適宜状況をチェックし、うまく進んでいないと感じた場合には、チームを再構築するなどブラッシュアップしていく。

実際に大規模アジャイル案件における、チームの相関図も示した。左端がPO(プロダクトオーナー)、中央部には複数の開発チームが組成されている。さらには、KPIやマイルストーン、リリース時期をチェックするRTEチーム(上段)。品質管理ならびに持続可能なシステムであるかをチェックするSREチーム(下段)。右端のステークホルダーとの連携も考える必要があるという。


●視聴者からの質問を紹介

2人のセッションを終えたところで、視聴者からの質問に応えるQAセッションが行われた。

Q.一般的なシステム開発案件と比べ、モビリティ案件の難しさ

三宅:マーケティング活動による興味関心の引き出しから、ディーラーによる顧客とのリアル接点。さらには購入後のサービス提供など、顧客とのタッチポイントが多く、ジャーニーも長いことです。そのためシステムは複数になり、つなぐことが求められます。この点が一番の違いであり、難しい反面やりがいでもあります。

Q.個人、車両データをつなげることでどのようなサービスが実現するか

布井:例えば、EVはどこのステーションで充電すれば、需給の安定はもちろん、自分にとって最適なのかが分かるサービス。運転ではなく、空間を演出することで移動そのものを楽しくさせるサービスなど。個人の趣味に関するデータをもとに、地域の観光データやバーチャル空間と連携するなどのサービスも構想できます。

Q.自動車業界、メーカーのリテラシーやデジタル技術活用の状況

三宅:自動車業界は進んでいると捉えています。一方で、車にこれまでとは違う技術が搭載されていることを、販売担当者がお客様にしっかりと伝えられるかが、今後の課題だと考えています。

共創モビリティプロジェクトを“0”から生み出す工夫と苦労

後半のセッションは、新規サービス「アイモビ」をゼロから企画し、さまざまなステークホルダーと共創している小田俊介氏が登壇。ステークホルダーとの関係性も含め、ゼロから新たなビジネスを生み出す上での工夫や苦労、NTTデータならではの強みを紹介した。


▲株式会社NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 モビリティエクスペリエンス開発担当 第一製造事業本部 主任 小田 俊介氏

アイモビとは、人と人のゆるやかなつながりを形成する相乗りモビリティサービス。利用者がアプリで車を呼ぶと、そこには別の利用者が乗っているという仕掛けだ。

「いわゆる出会い系アプリとは異なり、性別や年齢、興味といった属性を事前に登録しておくことで、相乗り利用者がどのような人なのかをある程度知ることができるので安全です。そして相乗り中に意気投合したら、その後のコミュニケーションにつなげてもらうのが狙いです」(小田氏)


プロジェクトの取り組むきっかけは、日産自動車の要望からだった。NTTデータのソリューションを活用し、ソーシャルな新規サービスを創発したいという問い合わせから始まった。

詳しく話を聞いていくにつれ、単にソリューションを販売するだけではなく、一緒になってサービスを創発した方が、より面白いアイデアが出せそうだと思った小田氏。また、今後のビジネスを考え、協業スタイルの引き出しも増やしたいと考え、共創を打診する。

スタートアップSwapにも参画してもらい、横浜のみなとみらいエリアで展開される事業に、NTTデータ、日産自動車、Swapの3社で取り組むことになる。

「ビジョンなどを共有する場を何度か設け、お互いの理解度を深めるところからスタートしました。受注・発注といった上下関係ではなく、フラットで取り組むことのできる関係性を意識しながら進めました」(小田氏)


アイデアの創発は、デザイン思考にもとづいたフレームワークを活用して進められた。最初のチームビルドでは、改めて互いの価値観などを確認するともに、何を実現するサービスなのか(アウトカム)といった認識を、入念にすり合わせていった。

次のステップでは、利用者ならびにニーズを想定した上でアイデアを出しながら、ブラッシュアップしていった。さらにコンセプトシートを活用しまとめ、ユーザーストーリーシナリオを策定し、初期アイデアとして固めた。

以降のフェーズでは、初期アイデアの有用性を評価するために、「提供価値」「事業性」「キーパートナー」といった3つの軸それぞれで、ゴールを明確化した。そうして想定した価値が、実際に市場で求められているものなのかどうかを、13以上の自治体、100名以上へのヒアリングを行うことで確認。それぞれのゴールにおいて、評価が得られると判断した。

一方で、他人と相乗りする不安感の解消、ゆるい出会いからイノベーションにつなげるための仕掛け作りなど、法規制も含めた工夫が必要だった。そこで、ロードマップの詳細化は必要だと感じたと、小田氏は振り返る。


オープンイノベーションで取り組んだことで、関連イベントへの出展、オウンドメディアや、横浜市の関連イベントでの紹介など、PR活動にも寄与している。なお、現在はここまで、今後はプロダクトを開発するフェーズに入る。

小田氏はここまでの取り組みを振り返り、苦労したことを2つ挙げた。まずは、共創で新規サービスをゼロから生み出していく点だ。注意したのは、アウトカムをぶらさないこと。お互いの価値観を理解し合うことが重要であり、アイデアをまとめる際には投票を取り入れることで、この課題を乗り切った。

「アイデアそのものに、参加者が共感できていることが重要だと感じました。全メンバーが、同じ熱量で語ることができたとも言えるでしょう。そのためステークホルダーが増える度に、共感を確認していました。できるだけ自前で作り上げることで、熱量が入るようにも配慮しました」(小田氏)

アイデアがたくさん出るのは嬉しい。だが、どのような順序で取り組んでいくのかも、苦労した点だ。ウォーターフォールではなくアジャイル思考で進め、優先度が高く、理解しやすいアイデアから検証。この流れを繰り返して進めた。


もうひとつは、活動の継続を経営層に認めてもらう。つまり、事業性の明確化である。実際、初期段階では成果を認めてもらうことができず、大きな資金調達ができなかった。そこで、フェーズごとにクライテリア(評価基準)やKPIを設け、達成したら予算をつけてもらう。小さな成功を積み上げていくことで、解決していった。

今回のような新規サービスの取り組みに際し、NTTデータでは3つのサポートが整備されている。

「特に社内ビジコンは、個人レベルのアイデアでも、事業化検討まで進むことができるため、大きな事業化へのチャンスがある。このような社内のアセットや制度を活用できることが、NTTデータならではの強みであり、面白みでもあると考えています」(小田氏)


変化対応力を最大化させるNTTデータの文化作り

続いて、布井氏が再び登壇。NTTデータでは今のビジネスにマッチした、変化に対応できる人材、組織をどのように作っているのかについて語った。

「○○をしてください、といったルールを設けるのではなく、行動を促すコンセプトを設けているのがポイントです。具体的には、デザイン、アーキテクチャ、アプローチの3つです」(布井氏)


まさに先のセッションに重ねれば、小田氏はデザイン、三宅氏はアーキテクチャおよびアプローチ領域でこのコンセプトにもとづいて行動していると言えるだろう。「結果は多様になる」と布井氏は補足した。

育成・研修体制も充実している。独自に作成したアセスメントシートを活用し、メンバーの現在のスキル状況を把握。オン・オフ両方におけるジョブトレーニングをスパイラルさせながら、ギャップや足りない点を埋めていき、スキルやキャリアアップを実現していく。


アジャイルに関する知見ならびにメンバーの習得においても、数年前から取り組みを行っている。2020年には、エンタープライズ向けのアジャイルフレームワーク、Safieにおいてグローバルで3社目、国内では初となるGlobal Transformation Partnerに認定された。

先ほど小田氏が説明したアセットの活用も大きい。グローバルに活躍するデザイナーの知見を活用できる、デザインスタジオ「Tangity」。システム構築における全レイヤーをサポートする「システム技術部」。AWSやセールスフォースなど、各種ソリューションの導入やコンサルティングに関する知見をサポートしてくれる、「Consulting&Solutions事業本部」といった、専門組織の存在だ。

「どこの組織や専門部署と連携すれば、求める知見や技術を得ることができ、目指すべきゴールに到達できるのか。NTTデータでは、このような思考が求められます。一方で、個人が技術を継続的に学習できる環境も整っているので、目指すべきステージやキャリアパスの明確化、実現も可能です」(布井氏)

●視聴者からの質問を紹介

セッション終了後、改めて全体の内容に関する視聴者からの問いに応える、質疑応答の時間が設けられた。いくつか紹介していきたい。


Q.小田さんのキャリアは?

小田:営業が長く、ここ4年は顧客接点型のコンサルタント職として動いていました。そのため、新規サービスとの親和性が自然と高くなっている状況です。

Q.小田さんのようなポジションの割合について

三宅:我々のチームM1-1では、メンバー40名のうち10名が、サービス企画というポジションになります。

Q.ノウハウの蓄積やナレッジ共有について

小田:新たに参画してきたメンバーにも共有できるよう、今まさに強化している段階です。全社的にいえば、ビジネスデザインコミュニティ組織がその役割を担っています。

Q.最終的なゴールをどこにおいているか

小田:まずはみなとみらい地区で展開することです。次のステップは、同じような課題を持っている全国の自治体に展開し、さらにはグローバルに広げることが最終的なゴールであり、夢です。

Q.モビリティプロジェクトのキーゴールは?

布井:通常業務ではクライアントが第一ですが、結果として、業界全体ならびに社会がハッピーになると考えています。この考え方は創業時から変わらない当社の理念、「情報技術で、新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和の取れた社会の実現に貢献する」に他なりません。最終的なゴールは、調和の取れた社会の実現だと考えています。

Q.インフラ・プラットフォームの構築など、MaaS実現に向けたNTTデータの強み

布井:NTTデータはサーバーシステムの開発は得意ですが、自動車においては組み込みやエッジコンピューティングなどの技術も必要なので、グループ会社の協力も得ています。 MaaSにおいては、NTTがより高速なネットワーク網を整備しながら、都市を作り上げるIOWN構想がポイント。関連する全レイヤーの技術を、枠組みを超えて協調領域として取り組むなど、NTTグループの力を活かしている点です。

Q.新規サービス企画に携わるために必要な知識・経験・思考とは

小田:経験に関しては、特に関係ないと考えています。知識においてはデザイン思考に関する内容が重要であり、私も勉強しました。自分の苦手なところはメンバーに助けてもらいながらもやりぬく、そんな粘り強いマインドが必要だと思います。


NTTデータ モビリティチーム(M1-1)
https://mis-mobility.nttdata.com/team_m1_1.html
NTTデータ モビリティチームの採用情報
https://mis-mobility.nttdata.com/careers.html
NTTデータ モビリティチームは、CASE、MaaSなど自動車関連ITサービスを幅広く企画・開発・提供しています。アジャイル開発、デジタルマーケティング、クラウド/インフラ基盤構築などのプロジェクトリーダー候補を採用募集中です。

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