衛星データは地域社会のみらいづくりにどう活用できるか? ──NTT東日本×JAXAのデータ活用事例を紹介

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衛星データは地域社会のみらいづくりにどう活用できるか? ──NTT東日本×JAXAのデータ活用事例を紹介
NTT東日本は2019年より、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を共同研究開発パートナーに、宇宙データ活用による地域社会への発展に取り組んでいる。具体的にはどのような宇宙データを活用し、どんなことに挑戦しているのか。データ活用事例や衛星データ解析、地域活性化の取り組みについて、NTT東日本 下條裕之氏と、JAXA藤平耕一氏に語っていただいた。

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プロフィール


東日本電信電話株式会社
デジタル革新本部 デジタルデザイン部 
担当課長 下條 裕之氏

2006年4月入社後、法人営業部でシステムエンジニアとして従事。2009年より研究開発センタにてスマートホーム分野の研究開発から商用サービス化までを牽引。その後、海外通信キャリアとのスマートホームに関するIoT技術の共同研究や、大手メーカーとのコラボレーションビジネス創出の経験を経て、2019年にデジタルデザイン部の立ち上げプロジェクトに参画。同年7月より現職にてAI/IoTを始めとしたデジタル技術戦略やパートナー戦略、デジタル人財育成などを担当。シーズベースの新規事業検討として、人工衛星データを活用した宇宙IoT分野でJAXAや慶應大学との協業に責任者として従事。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)
新事業促進部 事業開発グループ
J-SPARCプロデューサー 藤平 耕一氏

材料工学分野で修士号取得後、JAXAに入社。研究開発本部宇宙実証研究共同センターにて、小型実証衛星4型(SDS-4)の開発に従事。その後、温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)プロジェクトにて、大型衛星の開発に従事。2016年から文部科学省研究開発局宇宙開発利用課に出向し、政策的観点から宇宙開発に携わる。その他、NHK「サイエンスZERO」やラジオ日本「ディープな宇宙をつまみぐい」にも出演。2017年には経済産業省「始動Next Innovator2017(グローバル起業家等育成プログラム)」に参加。2018年9月にJAXAに復帰し、現在は民間共創型研究開発プログラム「J-SPARC」において、人工衛星の開発・利用やデータ利用に関する分野を担当する。

NTT東日本の宇宙データを活用した取り組み

まず、NTT東日本の宇宙データを活用した取り組みが下條氏から紹介された。NTT東日本は東日本エリアにおいて、データとICTを活用してサービスを提供している。その目的は「安心安全な地域社会・地域産業の活性化に貢献」である。

データと一口に言ってもさまざまだ。NTT東日本ではIoTセンサーから取得する虫の目データに加え、ドローンや人工衛星から取得する鳥の目データなど、あらゆる方向から集めたデータを、信頼性を担保して蓄積するデータレイクを構築。それをAIやIoTなどの先端技術を活用し、地域活性化のユースケースに適用していく「REIWAプロジェクト」が進行している。

「衛星データ活用のユースケースとしては、観光活性化やスマートシティ、災害対策などがあります。例えば、2019年に台風19号で大きな被害が出ました。その復旧作業では衛星データが使われました。NTT東日本は、このようにデータを活用して地域の活性化に繋げていくことを目指しています」(下條氏)

衛星の運用や衛星データの研究開発を行っているJAXAとタッグを組む狙いは、「新たなユースケースを創出していくため」だと下條氏は語る。

JAXAとの取り組み事例として、下條氏が紹介した地域課題が「松枯れ被害」だ。台風が日本列島を通過した後、枯れた松が道路を分断してしまう被害が各地で起こっている。だが、こうした課題はJAXAが2021年度、打ち上げを予定している先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)を活用することで解決に寄与できる可能性があるという。

「松林をALOS-3で撮影して、画像解析することで、松枯れの被害木が可視化でき、倒木する前に伐採することが可能になるからです。現在、長野県内で実証実験を行っています。衛星データがどう活用できるのか、NTT東日本×JAXAで実証実験を行い、これからもユースケースを見つけていきます」(下條氏)

JAXA渾身のプログラム「J-SPARC」とは?

続いて、藤平氏から「J-SPARC」についての説明が行われた。

「J-SPARCは、今JAXAが最も力を入れている渾身のプログラムのひとつです。現在、宇宙産業全体の市場規模は1.2兆円あると言われています。国の方針としては、2030年代早期には日本の宇宙産業市場を倍増させようと動いています」(藤平氏)

その施策に貢献するために考えられたのがJ-SPARCだ。J-SPARC(宇宙イノベーションパートナーシップ)とは、民間企業や大学とJAXAが連携してコクリエーションすることで新しい事業を生み出すための取り組みである。

「JAXAはこれまで衛星、ロケット、有人宇宙飛行宇宙、探査という領域を主に展開してきましたが、最近では「宇宙を楽しむ」というテーマにも取り組んでいます。複数ののテーマのうちの一つが地上の社会課題の解決です。今日の話につながるのがこの取り組みです。

JAXAは国の研究機関として、国のために研究開発に従事してきましたが、今は民間企業と二人三脚で共創活動を進めており、すでに30以上のプロジェクトが立ち上がっています」(藤平氏)

衛星データの特徴と活用事例の紹介

続いて、衛星データの活用事例についてパネルディスカッションが展開された。

藤平:衛星データの活用の特徴は、目で見えるもの、目で見えないものの大きく2つあると思います。前者は人間の目で見えるものを広域に見ること。後者は人間の目では見えないもの、例えばCO2濃度、海面水温などを見ること。しかも、一つのものさしで見ることができるので、客観的なデータになります。

目で見えるものを広域に見ることの例としては、アラル海の変化があります。アラル海は2000年頃からどんどん面積が小さくなり、10年に雨が降って少し面積が回復しますが、また小さくなっていきます。こうしたことはアラル海の近くに住んでいても気づかないのではないでしょうか。一歩引いた目で、さらに経年を見ていくことでわかる変化です。

一方、人間の目では見えないものの活用例としては、CO2濃度の変化があります。これも経年で見ていくと、どんどん二酸化炭素の濃度が増えているのがわかります。このような測定もこれまでは各国の自己申告に任せていたのですが、衛星データを使えば、世界全体を一つのものさしで比べることができるようになります。

下條:最近のコロナ禍ならではの活用例はありますか。

藤平:JAXA、NASA、ESAと協力して取り組んだのですが、宇宙から見ると人の流れが止まったことで、都市部の空気がきれいになったことがわかりました。

下條:GPSやGNSSなどの位置情報を活用する方法もありそうですね。例えば渋谷駅に何人の人がいるとか。

藤平:位置情報はオリンピックの時の人流情報を見るために使えないかという話はしていました。当時、僕は人流データという言葉に詳しくなかったのですが、コロナ禍でニュースで使われることが一般的になりました。

下條:NTT東日本は衛星データを地域活性化に活かしたいと考えています。日本の地方で何か活用されている事例はありますか。

藤平:広い農場での衛星活用は進んでいると思います。都市部の農地は小さいので、衛星で見るのは難しい。しかし、地方、特にアクセスしづらいところほど、衛星のメリットは出るのですが。

下條:IoTセンシングとの組み合わせが大事だと思いますが、衛星で撮りにくいもの、撮りやすいものはありますか。

藤平:衛星の種類によって向き、不向きがあります。光学衛星は目に見える系のものを撮るのに向いています。ですが、曇っていたり、夜など暗い場所では撮影できません。

一方、SAR(合成開口レーダー)などのレーダー衛星は、曇りでも雨でも、夜でも撮ることができます。宙畑というメディアに解説がありますが、レーダーは目をつぶってものを触るようなもので、表面がざらざらしている、どんな形をしているかは大まかにわかりますが、光学のように色はわかりません。そうした差があります。

下條:衛星データの活用例を教えてください。例えばGPS、GNSSの位置情報はスマホに入って身近になっていますが、データ解析に使うために入手できるデータなのでしょうか。

藤平:GNSSはカーナビにもスマホにも入っているように、最も身近な衛星データだと思います。しかし、誤差は大きい。だからいろんなデータの組み合わせをして、位置情報を決めています。位置情報の自分の位置は、自分で計算しているため、衛星は把握していません。それを理解した上で、考えていくと活用法が広がっていくと思います。

衛星データの活用は意外と簡単⁉

下條:衛星データを活用したくとも、どこから衛星データを入手すればよいのか、わからない人も多いと思います。私も宇宙の専門家ではありませんが、こんなに容易にデータが入手できること、解析環境が準備できることに驚きました。

それが「Tellus(テルース)」という国が進めているオープン&フリーな衛星データプラットフォームです。衛星データおよびその分析、アプリケーションの開発環境を、アカウントさえ登録すれば誰でも無料で利用できます。

また、宙畑というメディアでもTellusでのデータ解析事例など、宇宙データに関する情報をわかりやすく紹介しています。藤平さんは、Tellusを使っていますか。

藤平:以前、解析にチャレンジしたのですが、当時はこういう仕組みがなかったので、難しかったですね。今はTellusを登録していますが、まだ利用していません。

下條:光学衛星「ALOS-3」はまさに高画質のデジカメです。そのデータを解析すると、松食い虫による被害木もわかります。そういった解析をする環境がTellusです。解析は難しいという話でしたが、最近はTellusを使うことで容易にイメージ解析ができるので、すごく身近になってきている印象です。

藤平:たしかにTellusが提供されたのは大きいですね。拡張子合わせのような作業をすることなく、プログラミングなども一つのプラットフォームでできるのはすごく大きいです。Tellusができてから、衛星データを使いたいという企業は増えていると思います。

ただし、衛星データを活かすには他のデータとの組み合わせることが必須だと思います。そのような組み合わせの技術や発想があると、さらに使い勝手がよくなると思います。いずれにしてもTellusによってハードルは下がったので、これからは浸透していくような気がします。

下條:Tellusを出てきたことで専門家でなくても解析することができるようになりました。みなさんもぜひ、登録してほしいと思います。

しかし、まだまだ衛星データの活用は難しいという宇宙アレルギーがあります。そのアレルギーを私たちは払拭したいと思っているのですが、それには触れてもらうことが一番なんですよね。

藤平:その通りだと思います。例えば地盤の沈下や隆起などを数センチ単位で発見するために干渉SARという技術を使って解析するのですが、それは結構ハードルが高いです。そういった解析は有益な情報が得られるのですが難しいですね。

下條:衛星データは非常に高い印象がありますが、安価なデータもありますよね。

藤平:両極端ですね。例えば温度や二酸化炭素濃度などのサイエンス目的データは、基本は無料です。一方、光学データの場合、細かいものになるとやはり高くなります。ヨーロッパなどでは粗いものであればフリーのデータが出ているので、それらを活用することで少しずつ高度化していく方法はあると思います。

下條:安いデータは古いというイメージがありますが。

藤平:古さよりも粗さです。解像度が少し低いものなら誰でも無料で手に入ると思います。

下條:NTT東日本も民間企業なので、マネタイズは気になります。衛星データを活用したビジネスを考える際、高額なデータを使うより、若干粗いけど最新のデータを無料で使う選択をしています。まずは無料のデータを触ってみるところから始めるのが良いのでしょうね。

藤平:高い、良いデータを持っていても、課題を持つ人でなければ、そのニーズに適したデータが分かりません。私たちがNTT東日本と組んだ意義がそこにあると思っています。

地域活性化に衛星データはどう貢献できるのか

下條:続いては、ビジネスで地域活性化に取り組む場合の重要なファクターについて、紹介したいと思います。

今、NTT東日本は慶應義塾大学と一緒に地域活性化につながる社会課題解決のための共同研究に取り組んでいます。そこでは衛星データだけではなく、地域のオープンデータなども活用しています。さらに慶応大学が有するデザイン思考を使って、現地の方と共にディスカッションし、課題解決に取り組んでいます。

地域活性化に向けて大事なことは、技術の押しつけをしないこと。衛星データはすごく良いものなので、技術者が多いとそれを使ってどうにかしようと突っ走ってしまう。技術の方が目的になると、現場が宇宙アレルギーを起こしてうまくいかなくなることもあります。解決したいことを、技術で手助けする。それが一番大事なことだと思います。

藤平:完全に同意です。衛星データを使おうという時点で宇宙中毒に陥っていますからね。衛星データは目に見えるものを広域に見るか、目で見えないものを客観的に見るかの2種類です。そこがはまるならすべて使えば良いし、はまらなければ使わなければいい。このようにドライに考える方が良いと思います。それよりも、どういう情報が出せるのかが重要です。

下條:慶應大学とのプロジェクトでも、自治体によっては最新のIoTセンシングデータを公開しているところがあります。データをいかに地域の方に紐付けていくかが、NTT東日本が衛星データを活用する意味だと思っています。組み合わせが大事ですね。

藤平:宇宙データはビッグデータです。地球全体のデータから本当に意味のあるものだけをどう抽出するか。JAXAだけでは難しい。NTT東日本さんと一緒にやることで課題を抽出し、宇宙データの本格活用が見えてくると考えています。

【Q&A】参加者から寄せられた質問を紹介

セッション中に多くの質問が寄せられた。そのQ&Aについても紹介していく。

Q.衛星データがバリューを出せるスケールが広域すぎて、地域サイズではないのでは?

下條:たしかに衛星は広域を撮ることがメリットだと言いました。高解像度で広域の写真を、活用できるようにうまく切り取る。そこにNTT東日本が宇宙データに係わる意味があると考えています。

Q.ベンチャーで、この分野でビジネスが成立している会社は、どのような分析やアウトプットで収益化を図っているのか

下條:宇宙ベンチャーの中には解析を生業にしている会社も登場しています。私の個人的な所感では、まだ宇宙アレルギーのため、興味はあるが手を出せていない人もいる。そうしたニーズから宇宙ベンチャーが増え、収益を上げていると思います。

藤平:衛星を活用したソリューションを提供できるところが残っていくと思います。

下條:ユーザーが無意識に衛星データを使っている。そこはポイントだと思います。地域密着、NTT東日本は社員が4万人。各地域に散らばってお客さまのニーズを聞いている。あえて衛星と言わなくてもいい。本当に困っていることが解決できるために衛星データが使える人が増えれば、地域活性化につながる。

我々としては、衛星データを活用して実績を作った後でその活用事例を明かす。そうすることでエンドユーザーが身近に感じてくるのではないか。たしか衛星データの活用に関するベストプラクティス集は公開されているのではないでしょうか。

藤平:内閣府が公開していますね。いろんな例があるので、ぜひ参考にしてください。
衛星データをビジネスに利用したグッドプラクティス事例集(内閣府)    

下條:意外と宇宙アレルギーの人が多いが、スマホで毎日使っているものでもある。参加されているみなさんが発信者になって、衛星データの活用が広がってほしいと思います。

Q.解析に興味があるが、ニーズや解決できる課題を探すのが難しいと思っている

藤平:データから入ろうとするより、まずは課題ありき。衛星データに続く道はあまりない。日本は街中にデータはあるので、衛星データを使う必要がなくなるが、グローバルになると衛星データは使い勝手がよくなる。日本だけで衛星データを利用するのはコストパフォーマンスが悪いので、世界を前提に考えた方が良いと思います。

Q.オープンデータの衛星画像とAIを組み合わせた事業(事例)を知りたい

下條:石油タンクの事例があります。衛星画像を撮ると、影の長さから石油タンクのフタが下がっているのが見える。その画像を解析し、各地域の石油の貯蔵量のレポートを提供するビジネスを展開している企業も登場しています。

藤平:ビッグデータはウォーリーを探しているのと同じ。それを自動的に抽出しているのが、今の下條さんの事例だったりします。

下條:衛星画像の解析の事例で、面白いと思ったのはあるレストランの駐車場を衛星から撮影し、駐車台数からおおよその売り上げがわかるので、株価を予測するという事例も登場しています。                                    

Q.視覚障害者を目的地まで道案内する際は、入口まで導いてあげないと難しい。移動中の交差点等もズレると危ない。対策はあるか?

藤平:GPSだけではなく、道のデータや建物のデータと組み合わせて導いかないと、視覚障がい者の人たちをうまく案内できません。内閣府が立ち上げた宇宙を活用したビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」で最優秀賞に輝いたのが、視覚障がい者向けの歩行支援システムでした。そのシステムではGPSは一つのツールに過ぎず、それ以外のデータを大いに活用している。そこまで作り込まないとシステムとして使えるものにはならないと思います。

下條:GPSだけでは難しいので、様々なデータとの掛け合わせが大事になりますね。

Q.自動運転やドローンの活用が普及した場合、GPSなどの衛星データは必須になるか?

藤平:GPSはデータ精度が粗いので、それを補完するのが日本の衛星測位システム「みちびき」。みちびきがより高精度になると、ビルの入り口まで案内してくれたり、車の車線などの情報まで提供できるようになるからです。いずれにしても宇宙技術がそこに追いつく必要があります。

みちびきがなぜ必要かというと、GPSはアメリカのシステムだからです。もしアメリカがGPSを使わせないと言うと、使っている国々は困ってしまいます。そこで日本をはじめ各国はGPSと互換性を持った各国独自の測位システムを開発しました。日本のそれがみちびきです。

みちびきの衛星は日本の真上にいる時間が長いので、ビルなどの遮蔽物があっても高い精度が出るのです。その結果、センチメータ級の衛星測位を行うサービスも実現しています。みちびきから送信された現在位置を正確に求めるための信号を、専用の受信機で受信することで、センチメートル単位で測位することが可能になります。

現在、自動運転トラクターの実証実験などに使っているのですが、現在の受信機の価格は1個数十万円。普及させるには1個1000円くらいでないと難しいので、これからの技術開発に期待がかかっています。

Q.子供が楽しめる事例があれば教えてほしい

藤平:宇宙がエンタメになる。国際宇宙ステーションISS「きぼう」を使った放送局はその代表例です。またエンタメを掲げている衛星も打ちげる予定もあります。衛星を使った遊びやエンタメができる世の中になり始めています。

下條:宇宙に関するエンタメのVRを専門に作っている企業など、宇宙のエンタメはこれからどんどん増えてくると思います。

藤平:今の子どもたちが大人になる頃には、価格次第ですが、確実に宇宙に行けると思います。大人は長生きしましょう。

Q.農業での利用が多いようです。作付け状態や豊作予測などか

下條:作付け状態や、生育状況を衛星で管理して、ブランド米を作っている自治体や研究所は増えています。農業をはじめとする一次産業と衛星は親和性が高いと思っています。

藤平:農業や林業、漁業などと相性は良いが、この日、この場所というようにピンポイントのデータを取得しないと成立しないというような使い方には、衛星データはフィットしません。この期間中にこんなデータが取得できればよいという活用がお勧めです。

例えば一次産業ではありませんが、空き家探しのようなものと組み合わせると相性が良いと思います。とはいえ、どう見つけるのかは課題です。窓が割れていることは衛星データでは見えませんが、庭の草木が伸び放題の家や空き地を探すのは合っていると思います。

Q.スーパーなど小売で利用したいが、競合相手の駐車場の車の台数・種類などを検出して、来店する顧客層予測以外の事例あるか?

藤平:衛星データは軽自動車かトレーラーというレベルでの車種の違い、台数くらいならわかります。テーマパークでは駐車場に停まっている車の台数を数えたりするのに活用しています。また洪水や水害の被害が多い東南アジアの港のトラックヤードでは、洪水のリスクを避けるため出荷の判断に使えないか検討しています。

Q.防災(大雨、地震とか)目的の定期監視は需要がありそうな気がします。

下條:防災を目的とした衛星データの活用にはメリットとデメリットがあります。メリットは現地に行かなくても確認できること。2019年の台風19号の時は、長野県千曲川、福島県阿武隈川の氾濫の情報をSRAデータで解析し、災害発生時の早期復旧に貢献しました。一方、衛星のデメリットはドンピシャのデータが取れないこと。NTTとしてはIoTと組み合わせることが大事だと考えています。

藤平:例えばALOS-3は南海トラフ地震が発生した際に、一度の観測で撮影できるスペックを目指しています。何かを直接解決できるわけではありませんが、状況を正確に把握するのに役立てます。

Q.地下街の目的地を、GPSを利用したマップで探したら、たどり着くまでに時間がかかった。GPS技術だけでは平面のマップしか、作成不可能なのか?

下條:屋内GPSと呼ばれる技術と組み合わせることで、目的地まで正確にたどり着けるようになると思います。


1時間半、みっちり衛星データについて語られた今回のイベント。衛星データは身近に使えることがわかった。あとはどんな地域課題を解決することに活用できるか。その発想やアイデアが衛星データの未来を切り拓いていくことだろう。

最後は、藤平氏、下條氏から参加者に次のようなメッセージが送られ、イベントを締めくくった。

「皆さんが何か課題解決したいと思ったときに、衛星や宇宙の技術も活用できることを、頭の片隅に置いてほしいと思います」(藤平氏)

「衛星や宇宙データはすでに身近に活用されており、意外と簡単に始められる環境が整備されていることをお伝えしてきました。私たちデジタルデザイン部はデジタル技術の集団です。今後はIoTの活用事例なども発信していきたいと思います。本日はありがとうございました」(下條氏)

NTT東日本デジタルデザイン部情報発信メディア
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2019年7月に発足したデジタルデザイン部。AT/IoT等のデジタル技術を活用した地域活性化に向けたシーズとニーズの両面からアプローチを行う。

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