【イベントレポート】HealthCare Techスタートアップ4社が登壇!〜「eiicon」のマンスリーミートアップイベント第7回開催〜 2017年9月15日
オープンイノベーションのプラットフォーム「eiicon」の月一ピッチイベント「eiicon meet up!! vol.7」は8月29日、東京・日本橋のコワーキングスペース「Clipニホンバシビル」で開催されました。「すべての人に健康と福祉」の実現を目指し、HealthCare Techに取り組むスタートアップ4社が登壇。また、今回からSli.doを利用し質疑応答を受け付けるようになりました。ピッチ中も随時、質問できるとあり、参加者から好評を博しました。
なお、eiiconは国連が進める「持続可能な開発目標(SDGs)の達成」をビジネスで目指すオープンイノベーション・プラットフォーム「SHIP」の公式パートナーとなっており、本イベントはSDGs No.3「すべての人に健康と福祉を あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」をテーマにしています。
スタートアップ各社のピッチに先立ち、eiicon co-founder田中みどりが挨拶。「eiicon meet up!!」は毎月末の火曜日に行われ、次回は「消費と生産に革命を起こすスタートアップ」をテーマにすることを伝えました(9月26日開催予定 )。
さらに、10月にはeiiconがオープンイノベーションの祭典となる「JAPAN OPEN INNOVATION FES 2017」を開催することも告知。来場を呼び掛けました。続いて、Clipニホンバシを運営する三井不動産ベンチャー共創事業部の光村圭一郎氏が同スペースの積極的な利用を呼びかけました。
登壇企業とピッチ内容は以下の通りです。
Coaido株式会社
▲代表取締役CEO 玄正 慎氏
Coaido株式会社は「緊急対応の革新」を目指し、心臓発作などで倒れたことを救命知識のある方に知らせるアプリを開発しています。同アプリは新しい119番と言え、位置情報を利用しSOSを周囲に伝えます。知らせを受け取った人は、例えば、高層マンションなど場所によっては救急車より早く現場に到着可能です。
現在、年間7万人以上が心停止で命を落としていますが、処置が早ければ助かるケースが9割に達するというデータもあるとのこと。同アプリは東京・池袋で先行導入されていますが、導入地域を増やすと共に、スマートウォッチなどとの連動で本人から緊急時の発信ができる仕組みを構築したいと話しました。会場からは「知らせを受け取っても対応できない場合はどうするか」との質問が寄せられ、「現在はボランティアで成り立っている。救えるの命の確率を1%でも高めるのが目的」と答えました。
株式会社Miew
▲代表取締役 刀禰 真之介氏
株式会社Miewは働く人のメンタルヘルスの向上を目指しています。現在、労働人口の減少という社会的背景を受け、企業は離職率低下、社員の生産性向上に取り組んでいます。一方で、精神疾患になる人は増加。また、精神疾患が回復するまでにかかる期間は2年とされていますが、多くの企業の休職可能期間は1年半です。こうした状況を改善するため、同社では産業医との連携を図り、これまでは「形だけ」かつ一定ではなかった診断・面談の質を標準化させようと動き出しました。施策として、産業医への教育、AI導入による予防システムの構築などを進めています。
会場からはマネタイズに関する質問が寄せれました。それに対し詳しくは話せないがと前置きしたうえで「マネタイズは十分に可能。市場規模は約2000億円とされ、5000事業所との提携を一つの目標にしている」と応えました。
株式会社Mealthy
▲代表取締役 鈴木 勝之氏
株式会社Mealthyは、外食やコンビニ食を利用しながらも、病気予防をし健康維持ができる社会の実現を目指しています。これは、時間をかけて食事を作る時間がないという現代社会の実情を受けたものです。具体的には個々のユーザーに最適な健康食を提案し、栄養士からのレビューも受けられるアプリ「Mealthy」を運営しています。
同アプリは地図情報を活用し、どの店舗でどのメニューを食べるのが健康的かを、利用者にレコメンドします。また、食べたものを撮影すれば、栄養価が分析され管理栄養士のアドバイスを受けることが可能。なお、画像解析の精度は現状でもかなり高く、牛丼と豚丼を見分けることができるとのこと。同社では今後、B2E、保険、不動産関連企業などとの連携を強化していきたいというビジョンが語られました。会場からは競合優位性についての質問が寄せられ、「データ量を差別化のポイントにしたい」と回答しました。
WeGO
▲代表 大浦 一成氏
同団体は「いのち」の現場に関わる医療現場の情報を写真などで可視化し、その情報をもとに医療機器の開発することを目指します。現在、医療機器は医師たちが提供する「言葉」の情報をもとに作られることがほとんどとのことです。また、ある一人の医師のニーズを聞いて作られることも多くあるそうですが、特定の一人のニーズであるため、他の医師にとっては不要となることが少なくないと言います。このような状況の改善し、写真など画像のデータから医療現場で何が必要か視認した上で、本当に求められる機器を創り上げたいとのことです。
なお、写真などビジュアル情報の提供者を「EveGrapher(エヴァグラファー)」と名付け、優れた提供者を表彰する意向です。この活動を日本はもちろん、世界に広めたいと話します。同団体はNPO法人化を視野に入れており、協力者や開発支援者を募っています。
取材後記
超高齢社会となっている日本で、健康と福祉は大きな課題であり、当然のことながら、注目度も高いだろう。今後のビジネスシーンでも、国内の主要で成長の期待できる産業の一つとなるのではないか。社会構造が大きく変化している現在において、これまでの延長上で同じことを行っていても、状況が改善するとは考えにくい。むしろ、悪化する一方だろう。だからこそ、テクノロジーやイノベーションが望まれる。日本はもちろん、世界がより住みやすい場所であるために、健康・福祉に関わるスタートアップの活躍や飛躍を期待したい。
(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)