「Non Fungible Tokyo 2022」イベントレポート
熱気あふれる渋谷会場、特設メタバース空間も登場
「Non Fungible Tokyo 2022」はオフライン会場として渋谷ストリームホール、オンライン放送はYouTubeにて開催された。さらにはVket Cloudによってメタバース空間が提供されていたことも印象的だ。
渋谷会場はスポンサー企業のブースで活発なサービス紹介が行われ、メイン会場のホールはどのセッションでも満席。立見客も多数出るほどの盛況ぶりだった。YouTubeでは事前録画された、主に海外スピーカーによるセッションも同時に放送されており、その様子は渋谷の会場でも視聴することができた。
今回はそんな熱気あふれる渋谷会場で行われたセッションの様子を交えてご紹介する。
NFTプロジェクト運営者の高い戦略性と素早い対応力
いくつかのセッションを通じて耳にしたのが「ほとんどのNFTプロジェクトはうまくいかない。」「大体が失敗すると思います。」という言葉。
NFT界隈では何億円という華々しい取引が行われている一方で、見向きもされずに終わってしまうプロジェクトが多数存在しているということだ。
では成功しているプロジェクトの運営者はどのような動きをしているのだろうか。
「日本発のコレクタブルの衝撃」というセッションには、さわえ みか氏(HIKKY)モデレートの元、日本を代表するコレクションの運営者である高瀬 俊明氏 (TART)、福永 尚爾氏 (Beyondconcept)、草野 絵美氏 (Shinsei Galverse)、中村 昴平氏 (CryptoCrystal)が登壇した。
運営やコミュニティに関する会話の中で、Shinsei Galverseを運営する草野氏はこう語った。
「当初からDiscordのフォーマットは決まっていて、モデレータを雇って色々と調整もしていた。普及はNFTの海外インフルエンサーに届いたのが大きかった。最初は相手にしてもらえなかったが、その方のフォロワーを通じて広まる流れに乗った瞬間は届いたと感じた。」プロジェクトのストーリーをしっかりと構築し、計画的に売り込むことによって成功している。
御子息のコレクション「Zonbie Zoo」もアニメ化や各所とのコラボレーションが進むなど、コレクションから広がる世界で人を惹きつける力とそれを的確に人々に届けるための戦略性の高さを感じる。
一方で突然コレクションの人気に火がつくこともNFTではよく起きる現象のようで、TARTの高瀬氏は「Generative Masksは1万点が2時間で完売し、その瞬間から自分が想像できなかったコミュニティが目の前にできて、それとどう向き合うかを必死にやってきた。一生懸命ホルダーさんとの関係を築く施策をやってきた。」と語った。
リリース後3、4年経って突然発見されたというCryptoCrystalの中村氏も同じく急成長したDAOと向き合うことの難しさを語っており、タイミングを予測し辛いコミュニティの発生とその対応には苦慮したようだ。
しかし、どの運営者も売れ始めた時の即座の対応力によってコミュニティを築き上げ、関係性を維持することで人気プロジェクトとしての地位を確立している。
基本的にはプロジェクトの方向性をしっかりと示した戦略を立て、運営していくことが大切なようだが、まだまだ何がいつ売れるか予測できない一面もあるNFTでは、突然現れるビッグウェーブにしっかりと反応して乗り遅れないこともまた重要な要素としてあるようだ。
クラウドファンディングとは違うコミュニティという存在
Web3は分散型インターネットと呼ばれ、そこでは大企業のプラットフォームを介さずにコミュニティが生まれ、独自の経済圏を作ることが可能となる。
コミュニティというキーワードは現在でも重要視されてはいるが、Web3においてはさらに特別な意味を持つことになるかもしれない。
「新たなファンコミュニティが作る経済圏」では田中隆一氏 (FiNANCiE)、中村 太一氏 (Anique)、Chris Dai氏 (Recika/UniCask)、金光みどり氏 (bitFlyer)が登壇し、それぞれが主催、参加するプロジェクトの活動と「なぜそれがNFTであるのか?」について議論された。
「NFTならではの思いや感覚はありますか?」という問いに対して今回は山古志デジタル村民として参加した金光氏は「クラウドファンディングで良いのではないか?とも言われるのですが、NFT故の帰属意識があり、ブロックチェーンだから誰にも管理されていないのにコミュニティ感がある。クラウドファンディングでは得られないコミュニティ感を入ってみて感じる。」と答えた。
スポーツチームのファンコミュニティを多く運営するFiNANCiEの田中氏は「確かにクラウドファンディングとどう違うのか?と言われるが、NFTを持っていることでの継続性やそれがアセットになっていくというところに違いがあり、みんなで応援することのインセンティブがまたクラウドファンディングとは違う。」と続けた。
さらに金光氏はデジタル村民として「NFTそのものの価値以外のところで、プロセスに参加することの価値をホルダーとして感じる。そしてそれがブロックチェーン上にも残る。」と語り、コミュニティに参加することの喜びを強調した。
ウイスキーの樽を所有するという独特なNFTプロジェクトを運営するUniCaskのChris Dai氏は「ウイスキーが熟成するまでの10年という間、コミュニティを盛り上げる必要がある」と話したうえで、
「コミュニティは農家さんで言ったら土。その中にNFTという種がある。土の中でポテンシャルを出して、価値のあるものを生み出す。コミュニティをどう耕すかというのがDAOではないか。NFTプロジェクトはやりながらも、コミュニティという土を耕していかないと価値は生まれてこない。」と語り、コミュニティの活性化こそがNFTの価値を生み出すという点を強調した。
新しい常識が、今まさに作られているのかもしれない
このイベントにオフライン参加することで改めて感じたのはブロックチェーン、NFT業界の盛り上がりとそこに関わる人たちの熱量だった。
思いや目的は様々でも、この分野で何かを成し遂げようという強い気持ちが溢れ、ビジネスとしても技術としても前進していく可能性を感じた。
Web3、NFT、DAOといった言葉自体はメディアでも多く取り上げられるようになり一般化してきた感がある。しかしまだ不確定な要素も多く、その仕組みまで理解出来ている人も少ない中で先行きが不透明なことも事実だ。今回の登壇者の中からも「どんどん常識が変化している」という言葉が出たくらいである。
しかし何であっても黎明期というのはこのような混沌とした雰囲気の中で、情熱的に走り続ける人たちが切り開いていくものだろう。
確かに多くのプロジェクトが失敗するのかもしれないし、今喝采を浴びている技術が来年にはどうなっているかも分からない。それでもその上に将来の当たり前が成り立つことを考えると、今この分野をリードする人たちの努力が礎の一つになることは間違いない。
コミュニティもまた、単に同じ趣味嗜好の人たちが集まるという在り方から、NFTを所有することでDAOを形成し、共に盛り上げるという在り方へと進化して行くのだろう。
対象はサッカーチームかもしれないし、地方の村かもしれない。DAOは大企業のプラットフォームの上にあるのではなく、ブロックチェーンによって自分たちで経済圏を築き意思決定を行う。
これが発展した先で企業をリプレイスする分野が発生する可能性も十分にあると感じた。
ビットコインの高騰で、世の中には「ブロックチェーン=お金儲けの手段」というイメージが先行してしまったかもしれない。しかし唯一性を保証するブロックチェーンという技術はWeb3という世界においてまだまだ活用される可能性の一部が見えているに過ぎない。
お金、社会貢献、地域振興、ゲーム、スポーツ応援など活用できる分野はこれから次々と現れるだろう。
今後も先駆者達による情報発信には注目していきたい。
※「Non Fungible Tokyo 2022」のWEBサイトにこのイベントの録画を視聴することができるYouTubeへのリンクが掲載されています。
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TECH PLAYは非営利団体やコミュニティの活動を中心に、イベントのメディアスポンサー活動を行なっています。
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