いま、沖縄のスタートアップが熱い!エンジニア出身CEOが語る、沖縄のテック事情と人材育成の取り組みとは

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いま、沖縄のスタートアップが熱い!エンジニア出身CEOが語る、沖縄のテック事情と人材育成の取り組みとは
いま、沖縄がスタートアップの聖地となりつつあるという。沖縄のスタートアップ界隈が盛り上がってきた背景・最新事情、今後のさらなる発展について、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長の田中邦裕氏と一般社団法人沖縄スタートアップ支援協会の代表理事である兼城駿一郎氏が語り合います。

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沖縄を移住先に選んだ理由、移住したきっかけは?

田中 邦裕氏
さくらインターネット株式会社
代表取締役社長 田中 邦裕氏

今回「沖縄にスタートアップの聖地をつくる」起業家として登壇した、さくらインターネット 代表取締役社長の田中氏は、2019年から沖縄に移住し、先日正式に那覇市民となった。沖縄に住みながら、東証プライム市場上場の日本を代表するクラウド企業を経営している。

兼城 駿一郎氏
一般社団法人沖縄スタートアップ支援協会代表理事
株式会社みらいスタジオ代表取締役 兼城 駿一郎氏

沖縄スタートアップ支援協会の代表理事を務める兼城氏は、沖縄出身。スタートアップ5社の起業やリクルートでの経験を活かし、エンジニア経営者として学生エンジニアの育成や起業家の支援などを行っている。

田中氏は舞鶴高専、兼城氏は沖縄高専と、両者ともに高専出身。エンジニアというバックグラウンドを活かしながら、スタートアップのメンターやITエンジニアの育成にも取り組んでいる。

今回のイベント「Okinawa Developers Kaigi」では、技術畑出身の二人がなぜ沖縄のスタートアップを支援するのか。その背景や想いなどが対談形式で語られた。

兼城:まずは、田中さんが沖縄に移住された理由を改めて伺ってもいいでしょうか。

田中:10年くらい前から、スキューバダイビングをやるために沖縄の海によく来ていました。移住を決断した3年前はコロナ禍の前で、インバウンド需要が大きく、ホテルや飛行機代も高い時期だったんですね。もともと沖縄に住むという憧れもあって、家を借りることにしました。

家賃は65平米で3LDK、駅から3~4分でオートロック付きの家が月8万円くらいと、大変リーズナブル。ただ家を借りたものの、ほとんど来れていなかったのですが、コロナ禍でリモート前提の働き方にシフトしたことで、沖縄に移住し、仕事をするようになりました。

兼城:東証プライム市場上場企業の経営者が沖縄に移住する決断は、ハードルが高かったのではないでしょうか。

田中:以前は沖縄から決算発表するなんて考えられませんでした。しかし、コロナ禍で安全を優先するために、オンラインで実施してみたところ、特に問題はありませんでした。やってみると、株主総会以外はオンラインでほとんどできることに気づくというムーブメントがあり、沖縄の移住を後押ししてくれました。

ほとんどはリモートですが、たまに出社しています。当社は、沖縄に新たな拠点の開設を予定していますが、その理由は、会社は社内外の人たちと繋がる場であったと改めて感じたのと、自分たちがオーナーシップを持てる場所が必要だと思ったからです。

沖縄を選んだ理由には、成長事業を展開している市場を選んだという経営的な観点もあります。実は、沖縄は日本で最も出生率が高く、最も開業率が高い。マクロ数値でも伸びる環境にある沖縄を選ぶことは、理にかなった話でもあるわけです。

兼城:単に沖縄が好きなだけではなく、ロジカルな根拠もあったわけですね。

田中:イノベーション拠点としての観点、そして、産学連携でIT人材を育成する環境があり、学ぼうとしている人たちが多いことも要因の一つです。そうした意欲ある人たちの給与水準や仕事内容を、東京と変わらない状態まで引き上げることを目指しています。

兼城:ノーベル賞で話題になった沖縄科学技術大学院大学(OIST)や琉球大学、沖縄高専など、産学官連携の取り組みは積極的に行われていますね。

最近、沖縄のスタートアップが盛り上がっている背景とは

兼城:最近、東京のスタートアップ経営者や上場企業の経営者の方々が、沖縄のイベントに参加されたり、沖縄の街を歩いている姿を見ることが多くなりましたね。そこにはどんな側面があると思われますか。

田中:皆さん、沖縄には昔から来ていたと思います。ただ、恩納村や名護といった、地方のリゾートに行ってしまうことがほとんど。そこで、六本木にある経営者や起業家が語り合うスタンディングバー「awabar」を那覇に作りました。沖縄に来た初日や最終日に那覇に泊まる日に、足を運んでもらう場として「awabar okinawa」を開店させたのです。

「沖縄に行くときは、ちょっと寄り道していこうか」と思い出してもらえる磁力というか、地元のスタートアップと触れ合う拠点を設けたことで、可視化されたのだと思います。

Okinawa Devlopers Kaigiスライド1

awabarとは、さくらインターネットの創業メンバーでもあり、シェアスペースのnomadやDMM.makeのプロデューサーとしてDMM.make 3Dプリントを立上げ、京都芸術大学の教授も務める小笠原治さんが始めたスタンディングバーです。

メルカリやBASEの創業者が起業をテーマにawabarに集まり、成功した人が増えたことで有名になったバーで、京都や福岡にもあります。

兼城:私も沖縄でイベントを開催した後、登壇者の起業家たちとawabarに行くことが多いですね。店に入りきれず、道にあふれながらみんなで楽しく交流しています(笑)。

沖縄ならではの事業を展開する、注目スタートアップを紹介

兼城:「沖縄で働きたい」、もしくは他の「地方で働きたい」といったときに、課題として考えられるのが、地元の人とコミュニケーションです。エンジニアであれば、「どのコミュニティに入ろう」という悩みもあると思います。先ほどのawabarは、目的を同じくした人たちが県外・県内問わず集まるコミュニティであり、その入口になっていますね。

田中:そういった意味では、awabar以外にも「Startup Lab Lagoon(スタートアップラボラグーン)」、「Be2bar(べべばー)」、コザにある「スタートアップ商店街」、「沖縄ITイノベーション戦略センター:ISCO」、「ZORKS沖縄」といったコアワーキングスペースやシェアオフィスなど、コミュニティの入り口は増えていると思います。例えば、awabarで起業の相談をしたら、いろいろ繋いでくれたりもします。

兼城:沖縄は横のつながりが広くて深いところがありますね。田中さんが挙げていただいたコワーキングやシェアオフィスがハブとなり、スタートアップ界隈が盛り上がっているのは、私も常々感じています。田中さんが注目している沖縄のスタートアップ、沖縄ならではのビジネスを展開している企業はありますか?

田中:たくさんありますし、エンジェル投資もしています。例えば、衛星データ解析コンテストプラットフォームを運営する「Solafune(ソラフネ)」。沖縄発のスタートアップで、現在は海外展開しています。

海の乗り合い船のマッチングサービス「noriai(ノリアイ)」にも出資しています。あとは、国内留学を提供する「HelloWorld(ハローワールド)」、運転代行のマッチングサービスの「Alpaca(アルパカ)」は沖縄発で、沖縄以外でもサービスを展開していますね。

兼城:HelloWorldは、沖縄に外国人が多い文化を活かした"まちなか留学"をキーワードにしています。また、沖縄は電車があまり走っていないので、飲みに行った帰りは車を代行業者にお願いすることが多いため、Alpacaの運転代行マッチングのニーズは高いですね。

沖縄スタートアップ支援協会では、月に1回「Coral Pitch」というピッチイベントを開催しています。先日のイベントでは、Alpaca.Labの棚原さんと新潟の起業家さんが交流していたり、2次会のawabarで多くの起業家・投資家が朝まで語り合ってました。

Coral Pitchには田中さんもよく参加してくれますし、沖縄ならではのスタートアップエコシステムの醸成を目指して盛り上がっているので、興味がある方はぜひどんどん参加してください。

田中:米軍関係や軍属の人など、アメリカ人が多いことも、沖縄ならではの特徴の一つですね。ただ、沖縄県民アンケートによると、米軍に親しみを持つ人は約7割。米軍基地は嫌でも米兵とは隣人として受け入れている。まちなか留学というサービスも、そうした環境をうまくビジネスに活用していて、とてもポジティブだと思います。

兼城:この前支援した学生起業家は、海外基地の中にいる少年たちと交流するための手段として、バスケットボールのイベントを企画していました。沖縄は街中に当たり前にゴールがあったりするくらい、バスケの人気が高いのでネクストアクションを楽しみにしているところです。

田中:それで言うと、琉球ゴールデンキングスもまさしく沖縄らしいスタートアップです。沖縄の環境を生かしたスタートアップがたくさんあるので、面白いと思います。

兼城:沖縄には歴史を重ねたIT企業やベンダーも多いですね。例えば、レキサスという企業は受託事業を主軸としながらも、沖縄のいわゆるスタートアップシーンを作ってきました。代表の比屋根さんは、若手人財の育成を目的とした「Ryukyufrogs(琉球frogs)」に取り組んでいます。

私自身も10年前に琉球frogs3期生として、地元の民間企業の方々に支援してもらいながらシリコンバレーに2週間視察に行かせてもらい、英語でプロダクトのプレゼンテーションする機会をもらったことが、今の起業家人生に繋がっています。沖縄に育ててもらった恩返しが、いままさにできるチャンスだと考えています。

【Q&A】沖縄と東京の給与水準の違い、沖縄に向いてるエンジニアとは?

イベントでは、視聴者からの質疑応答も行われた。

Q.ニアショア開発の場合、東京との給与水準はかなり違うのでは?

田中:明らかに安いと思います。ニアショアの場合は「沖縄で安く請け負う」というビジネスなので、安く雇わざるを得ないので仕方がないと思います。さくらインターネットは、地方拠点も東京と同じ給与で雇用していますし、最近は東京と同じ給与水準の会社も増えているようです。給与水準にこだわるのであれば、そうした会社を探してみてはいかがでしょう。

Q.沖縄に向いてるエンジニアはどんな人だと思いますか?

兼城:巻き込まれ力がある人が沖縄に向いていると思います。さっきお話したawabarのように繋がりが横に広がっていくので、「来週ビーチパーティーするから一緒に肉を食べよう」と誘われて顔を出していたら、自然に深いコミュニティに入っていくことができるみたいな感じですね。

田中:フルリモートという働き方ができるかどうかですね。沖縄の濃厚な人間関係は、慣れないと過ごしにくいという面もあります。一方で、東京の仕事を沖縄でやっている人たちもたくさんいると思います。フルリモートで働くか、沖縄の企業に就職するかという選択によって大きく違ってくるでしょう。

Q.awabarは旅行でふらっと行ったときも入れますか?

田中:はい、もちろんです。どちらかというと、観光客の方が多いですね。これは六本木のawabarもそうなんですけども、起業家の来客数は全体の1割くらいなんです。なので、気軽に来てくださいね。

兼城:国際通りから1本入ったむつみ橋通りに入ったところで、国際通りの中心から歩いて30秒くらい。観光客の方もアクセスしやすい場所です。

Q.沖縄の企業と東京の企業で、文化や考え方の違いは?

兼城:東京はいわゆる上場企業をしっかり作っていこうとか、グローバルビジネスを大きく作っていこうという資本市場をしっかり攻めるぞという意欲、上昇志向が強いですね。一方、沖縄は地域に根ざした社会課題を解決するところに着目する起業家が多い。盛り上がってきているものの、上場企業が出てくるにはもう少し時間がかかるかもしれません。これからはさらに盛り上げていきたいと思います。

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