地方で働くキャリアはアリかナシか?freee×UZABASE×久松剛が建前なしの本音討論【Okinawa Developers Kaigi】
アーカイブ動画
沖縄に移住してからQOLが爆上がり。不眠症がなくなった
freee株式会社
沖縄拠点テックリード 松嶋 智え氏
まずは沖縄に移住して5年目、現在はfreeeでフルスタックエンジニアとして活躍する松嶋氏が登壇した。松嶋氏は、ゲーム開発会社でエンジニアとしてのキャリアをスタート。その後、ビジネスアプリの開発企業に転職するが、モチベーションが高まらずに退職。
しばらくはエンジニアから離れていたが、Web開発案件でエンジニアという仕事の魅力を再確認。Ruby on Railsのスキルを強みに、バックエンドに強いフルスタックエンジニアとしてのキャリアを積む。マネジメントや営業など、ビジネスパーソンとしての経験を重ね、キャリアアップしていく。そんな折、沖縄で暮らすエンジニア仲間から連絡が届く。
「友人から『沖縄に来ない?』と誘われたのが、きっかけでした。最初は仕事が忙しかったこともあり、『何言ってんの』と思っていました(笑)。ただその後も何度か声をかけてもらったり、実際に沖縄に行ったりしたことで、沖縄移住がリアリティを帯びるようになっていきました」(松嶋氏)
実は松嶋氏、エンジニアの仕事から離れていたときに、原付バイクで日本一周をしていた。その際に、沖縄にも数週間滞在し、沖縄の自然や環境に魅力を感じていたこともあり、友人の話から当時の思い出が再燃していったという。
次第に、沖縄移住への想いが強くなっていくが、超えるべき壁が2つあった。当時付き合っていた彼女との関係、持ち家のマンションだ。持ち家に関しては、近くに住んでいた両親に任せることで解決した。
「彼女には、沖縄に一緒に来てくれるなら結婚しよう、そうでなければ別れようと話をしたら、正直不安そうでしたね」(松嶋氏)
だが、その後OKの返事をもらい、移住を果たす。現在では1歳になる長女も誕生し、「娘に朝早く起こされるのが日課です」と、満面の笑みで沖縄生活の充実ぶりを話す。
そして以下のモチベーショングラフを紹介し、「沖縄に来てからはずっと爆上がり状態です」と続けた。
「せっかく沖縄に住むのだから、那覇市などの都心部ではなく、自然豊かな東海岸沿いを選びました。海はもちろん、空を飛ぶ鳥もカラフルな青色。目に飛び込んでくる景色がすべて天然色フルカラーなので、テンションが上がります。磯の香りも心地よく、それまで悩まされていた不眠症もなくなりました」(松嶋氏)
さらに、近所に大きなショッピングモールや公園があるため、子育ても含め、生活に不便することもない。「趣味のゴルフや温泉も楽しんでいる」と、沖縄での暮らしを満喫していることを語ってくれた。
松嶋氏は沖縄移住を実現させた後、2022年6月にfreeeに転職。freeeの沖縄オフィスは準備中のため、現在はフルリモートで仕事をしている。
つまり沖縄に移住してはいるが、所属は本土企業であり、仕事内容も東京とは変わらないため、給与や技術面でのデメリットは感じていないという。
「沖縄の給与水準は全国最下位で、IT企業においても同様です。技術面は、新しい技術を使っている地元企業も最近は増えてきましたが、いまだレガシー言語で開発をしている企業が多いのが実情です」(松嶋氏)
だが、地元のIT企業で働くことが、地域貢献に繋がっていると実感できることも魅力だと松嶋氏。地元のエンジニアと働くことで、東京との価値観の違いなどを知ることができるといったことも、沖縄で働く魅力の一つだという。
結論として、沖縄への移住は「あり」と総括した松嶋氏。いきなり移住するのではなく、まずはワーケーションでチャレンジしてみたり、松嶋氏と同じように東京に本社がある企業の地方拠点に転職する。あるいは、技術・給与が高い地元企業を探すなどの選択肢があると、セッションをまとめた。
自分でコントロールできることに集中。2年間の修行を経て、大阪移住を実現
株式会社ユーザベース
Product Division SRE 八代 健太郎氏
続いて登壇した八代氏は、名古屋の大学院を卒業後、2018年に東京のSIerに新卒入社。2020年にユーザベースに入社、2022年7月に東京から大阪に移住した。
家庭の事情で、妻の実家がある大阪に移住することになったという八代氏。自身も岐阜で生まれ育ち、大学・大学院時代は名古屋で暮らしていたこともあり、地方都市への移住自体に関しては前向きだったと話す。
だが、エンジニアのキャリアという点では、相当悩んだと当時を振り返る。当時の心境をモチベーショングラフで視覚化して紹介した。
大阪移住に際し、地元のIT企業に転職することも考えた。だが、当時はKubernetesを使ったシステムの研究開発業務に携わっていたため、一般エンドユーザー向け案件のキャリアがなかった。
八代氏は当時の心境とともに、どのように解決していったのかをこう語っている。
「何かを一度決めたら後戻りできないと思っていました。考えれば考えるほど悩みは増えていき、気づけばモチベーションはどん底状態に…。ただ悩み切った末に、いくら考えても答の出ないこと、自分で答えが出せてコントロールできることに集中しようという考え方にシフトすることができました」(八代氏)
八代氏が出した結論は、大阪への移住を前提に、自らのエンジニアスキルを高めること。それが実現できる企業に転職することを決めた。
ユーザベースを選んだ理由は、エンジニアとして成長できる環境であることはもちろん、バリューへの共感、全員がリーダーである超ボトムアップな環境、アジャイル開発、新しい技術を積極活用する風土に共感したことである。
「入社後2年間は修行しようと考えていた」と当時を振り返る八代氏。そして2年後には技術スキルを身に付け、エンジニアとしての成長を果たす。働き方も、入社当初は出社が必須だったが、コロナ禍でほぼリモートワーク状態になった。
2年半以上ほぼフルリモートワークを行っていたため、大阪に移住してもそれほど支障がないのではないかと考えた八代氏は、会社に相談してみることに。すると、大阪からリモートワークで勤務してもよいということになり、そのままユーザベースに残り、大阪に移住することになる。
まだ数カ月しか経っていないが、仕事・プライベート両面において、大阪に移住してからの感想を以下のように紹介。ピンク色がポジティブ、青色がネガティブな内容で、左上の領域、仕事で当面困ることがない点について深掘りした。
職場でのコミュニケーションにおいても、Gatherが導入されており、地方に居住していても業務に問題はなかったと八代氏は言う。
「意思決定、評価などもデメリットになるようなことはありませんでした。裏を返せば、これからリモートワークも含め、地方移住を考えている方は、これらの点がクリアになっているかどうかを、事前に確認しておくことがポイントだと思います」(八代氏)
転職しなくとも、現在の仕事をそのまま続けることができた八代氏だが、移住を考え始めた頃は、転職サイトやスカウトサービスなどにもレジュメを登録したという。転職サービスは地方企業のトレンドを知り、自身の市場価値を把握することに役だったと振り返る。その上で以下のように語り、セッションを締めた。
「コロナ禍までは、地方移住するためには地元企業や大企業の地方拠点に転職することが一般的でした。でも今ではリモートワークの環境も整備され、私のように所属や業務を変えることなく地方に移住することも可能となってきました。これからは東京から地方への移住も増えていくでしょう」(八代氏)
東京在住エンジニアが切り込む!地方で技術力は上がるのか?
合同会社エンジニアリングマネージメント
社長兼「流しのEM」 久松 剛氏
続いては久松剛氏がモデレーターとして加わり、以下6つのテーマをもとに、3人でのパネルディスカッションとなった。
Q.実際、地方の暮らしやすさはどう?
久松:水道光熱費や家賃、物価などは東京と比べてどうですか?
松嶋:電気代は1~2割高くて、ガスも同様です。水道代も、以前は2カ月で3000円ほどだったのが、沖縄では1カ月で3800円ほどになりました。沖縄はリゾート地でもありますから、物価の安さはそれほど期待しない方がいいと思いますね。
八代:家賃は東京と比べて安く、6~7割ほどだと思います。私が住んでいる枚方市は大阪市内から離れているため、人混みもなく静かで暮らしやすいです。地元の人たちもそのような感覚を持っているようです。
久松:物件は現地に足を運んで決めたのですか?
松嶋:一回だけ2泊3日で訪れ、現地の不動産屋で何軒か見て決めました。
八代:妻が先に大阪の実家に帰っていたので、2年間の修行中に何度か訪れた際に、探していましたね。
Q.地元の人との交流はどんなかんじ?
久松:移住先の地元の人との交流はどうですか。
松嶋:ゴルフのスクールつながりで、知り合いが増えてきている状況です。沖縄では「大綱引き」という伝統行事があるので、今後はそうしたイベントに参加したり、自治体に加わることで、より地元の人たちの交流を深めたいと考えています。
八代:僕は岐阜出身なので、大阪弁を話しても大阪の人にはエセ関西弁に聞こえるみたいです。そのためお店などでは問題ないのですが、そこから一歩先、踏み込んで会話をするときは正直ビビっている状況です(笑)。
方言はネットで調べても出てこないので、近くのお店やスポーツなど通じて、これからは交流を深めていこうと思っています。
松嶋:現地の言葉に関して、若い方たちはほぼ意識してないように感じてます。一方で年配の方の中には、まったくわからない現地の言葉で一方的に話しかけてくる方もいます。ある一定のコミュニティでの交流の難しさは、沖縄でもあるかもしれません。
Q.地方で技術を学ぶ勉強会はある?
久松:勉強会などはどうですか?
松嶋:いわゆる「もくもく会」なども開催されているので、移住しても問題ないと思います。リアルでもオンラインでもありますが、採用業務も任されているので、そういった観点から参加することもあります。というのも、求める人材が不足しているからです。
Q.まだらリモートワーク問題についてどう思う?
久松:近くにリアルオフィスがあったり、職場のメンバーが定期的に集まった方がよいと思いますか?
松嶋:人によると思いますが、僕は出社したいタイプなので、できれば近くにオフィスがあると嬉しいですね。
八代:僕も同様です。週一程度でメンバーと集まりたいですね。最近は、東京のオフィスに行く機会が楽しみになっています。
Q.エンジニアスキルを上げたい場合は東京の方がいい?
久松:若手エンジニアの「教育や学び」という観点での見解はどうですか。
松嶋:地方採用でも本土企業であれば、同様の教育制度が受けられると思います。研修や学習支援などは東京本社が行うからです。
八代:未経験からエンジニアになりたいという人は、東京に比べると地方は圧倒的に母数が少ないと思います。自分の希望にそった環境や技術を求めるのであれば僕のように、選択肢の多い東京のIT企業で修行するという選択もありだと思います。
久松:大阪や地方はどうしてもSESの案件が多いという特徴もありますね。ただいきなり地方から東京に行くのではなく、オンラインなどで事前に面談や面接を行い、内定してから上京することをおすすめします。
Q.地方と東京の技術格差について
久松:技術格差や先進企業などについてはどう考えますか。
八代:沖縄にDX拠点を構えているさくらインターネットさんが興味深いですね。代表の田中さん自体が沖縄に移住していたり、サービスはもちろん、技術力の高いエンジニアが多いと感じているからです。
松嶋:知人の会社ですが、配車アプリを開発しているスタートアップに注目しています。機械学習なども取り入れており、給与水準も他の地元IT企業と比べると高い。ましてや沖縄はクルマ社会ですから、地域貢献という観点からも注目しています。
八代:私も大阪に来たからには、今後は大阪ならではの発想で地域貢献できるプロダクトを創っていきたいです。