医療×デジタル技術で社会に貢献する日立ハイテクの組み込みソフトエンジニアたちの挑戦とは

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医療×デジタル技術で社会に貢献する日立ハイテクの組み込みソフトエンジニアたちの挑戦とは
血液や尿などの成分を分析する医療検査装置。業界トップレベルのシェアを占める日立ハイテクでは、医療検査装置の自動化やさらなる業務効率化などをめざし、ソフトウェア技術を駆使したさまざまなチャレンジを行っている。開発部隊の取り組み事例や試行錯誤、医療事業にかける想いまで、同社のソフトウェアエンジニアが語った。

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検体検査の自動化・高速化をデジタル技術で実現し、社会に貢献する

株式会社日立ハイテク 中村和弘氏
株式会社日立ハイテク
ライフ&メディカルシステム製品本部
副本部長 中村和弘氏

最初に登壇したのは、自動分析装置の開発を率いる中村和弘氏だ。大学で情報工学を専攻していた中村氏は「テクノロジーで1人でも多くの人々を健康で幸せにする」との夢を抱き、日立製作所に入社する。

入社後は夢の実現に向け、各種自動分析装置の開発にソフトウェアエンジニアとして参画。その後、営業支援業務・海外駐在なども経験し、現在は次世代ソリューションの開発業務に携わっている。

「見る・測る・分析する」コア技術を活かし、検体検査の自動化・効率化により診断をサポート。さまざまな社会課題の解決と貢献を果たしてきた。現在は海外比率が70%以上を誇るグローバル企業である。

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ヘルスケア領域では「一人ひとりに適した診断・治療方法の提供により、誰もが安心・安全に暮らせる社会へ」とのパーパスを掲げ、高齢化の加速などの社会課題解決に向け、取り組んでいる。

また、日立グループのデジタル技術とイノベーションを活用し、一人ひとりに最適な医療サービスを提供することを目標としている。

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中村氏は、自動分析装置とはどういったものなのか、どのような流れでどんな人たちにより生み出されているのかがわかる3分ほどの動画を紹介した。

動画では自動分析装置がスピーディ、かつ規則的に動くことで生じる機械音がバックグラウンドサウンドのように流れており、中村氏は「制御動作音のハーモニー」と表現している。

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生化学自動分析装置はその名のとおり、これまで検査技師が手動で行っていた各種業務を、自動化する装置だ。

検体の搬送、試薬との攪拌、反応、測定などであり、検査項目ごとの反応結果が「反応過程データ」として記録される。

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続いて中村氏は、現在から未来の医療における検体検査の展望を述べた。

「自動分析装置の登場により、検体検査の自動化・効率化や高速・高感度化が進みました。現在の生化学自動分析装置の1モジュール当たりの最大処理能力は1時間あたり2000テストです。つまり、1.8秒に1つの検査結果を出力する、メカニカルなモーター制御技術が必要となっています」(中村氏)

効率化、高速化を進める中で、ひとつの検査結果を確実に保証することが必須である点を強調。

「検査結果をどのように確実に保証するのか。組み込みエンジニアの腕の見せどころと言ってもよいでしょう」(中村氏)

さらに今後は、病院や検査室の運営サポート、在宅・個別化医療へのデジタル技術の活用、AIによる医療高度化などが求められる。ソフトウェアエンジニアの活躍、社会貢献の場はさらに広がっていくだろうと、中村氏は語った。

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パートナーや他領域の専門エンジニアとの協業により、イノベーションを創出

株式会社日立ハイテク 井上 皓平氏
株式会社日立ハイテク
ライフ&メディカルシステム製品本部
ライフ&メディカルシステムソフトウェア設計部
技師 井上 皓平氏

続いて登壇したのは、「イノベーションで医療に貢献する」との夢を抱き、2019年にキャリア入社した井上皓平氏だ。

現在は、海外向け自動分析装置のシミュレータ、装置データの統計解析ソフトウェア、リモートサービスソフトウェアの開発などに携わっている。

井上氏はまず、「LABOSPECT PlaNet」について紹介した。LABOSPECT PlaNetは病院検査室の生化学自動分析装置が得たデータから、個人情報に該当するデータを削除した上で、インターネット経由でクラウド上のプラットフォームに収集するシステムである。

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クラウド上にデータを保存することで、日立ハイテク、試薬メーカ、各国代理店など各種ステークホルダーが簡便にデータの共有を行えるようになる。その結果、データ品質の保証、装置保守、試薬運用支援など、各種検査業務の効率化に寄与する。

井上氏は、同プロジェクトの醍醐味を以下のように語っている。

「最先端の分析・自動化技術とクラウド等のデジタルの融合により、ヘルスケア領域に新たな価値を提供する、ソフトウェアエンジニアとしてチャレンジングな取り組みです」(井上氏)

病院検査室での検査技師の業務は「測定準備」「ルーチン検査」「運用・分析」「機器メンテナンス」と大きく4つある。そして、どの業務についても課題を抱えているという。例えば、ルーチン検査では試薬の残量不足により、分析中に装置が止まってしまうといった問題だ。

「LABOSPECT PlaNetはこのような困りごとを解決し、検査室の働き方をサポートすることで、検査を止めない、検体を守りつなぐ、検査結果を保証します」(井上氏)

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開発においては、パートナーとの協創を通じて、課題抽出やソリューションの創出を実現する「NEXPERIENCE」という方法論を採用している。

40施設へのヒアリング、100個のアイデア出しなどを行い、先の各業務フェーズの課題を解決し、4つの業務アプリを実装するという成果に至る。

4つのアプリは以下スライドで示したとおり、AWS上にWebアプリとして開発したことで、継続的な機能追加・変更が容易となっている。

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井上氏はソフトウェアエンジニアではあるが、アプリの実装領域だけでなく、企画・アイデア出しのフェーズから同プロジェクトに携わってきたと、日立ハイテクでのソフトウェアエンジニアの働き方の特色を語った。

現在では国内外各地で運用が進んでいるが、井上氏らソフトウェアエンジニアも据付の際には立ち会い、サービスの説明などを行っている。

「日立ハイテクでは、ソフトウェアエンジニアも開発から据付まで、お客さまとの交流を多く持ちながら仕事をしているという特徴があります」(井上氏)

井上氏は、さらにパートナーとの協業を加速・充実させるデジタル協創拠点が、2022年10月に開設したことも紹介した。

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続いては、反応過程データを分析することで、より確度の高い検査値の報告と装置異常の早期検出を実現する「MiRuDa」について説明された。MiRuDaもLABOSPECT PlaNetとつながっている。

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井上氏は、MiRuDaのアルゴリズムがどのように乖離データを判別しているかを、詳しく解説した。同アルゴリズムの開発においては、化学系エンジニアとの協業で行っている。その協業のメリットを、井上氏は次のように語った。

「反応過程の近似曲線モデルは、化学系のエンジニアが知見を持っています。モデルパラメータのフィッテイングアルゴリズムは我々ソフトウェアエンジニアに知見があります。両者の知見をかけ合わせることで、最適なアルゴリズムの開発を進めました」(井上氏)

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MiRuDaには1時間あたり最大3万2000件(4モジュール装置を4台接続の場合)のデータが送付されるため、データを目的ごとに効率よく見ることができるUIの開発も行った。そしてここでも協創が進められ、顧客からの要望を聞いた上で、真にユーザーが使いやすい装置を開発していった。

続いて紹介されたのは、検体上に発生した泡を検知する技術だ。泡がある状態で測定を行うと、エラーが発生したり、異常値を見逃してしまうことがあるからだ。同技術においても、日立製作所と共同で取り組んだ。

具体的には分析装置の上部にカメラユニットを設け、画像認識技術を導入した。すでに実装されており、特にHIV分析などにおいて高信頼性を要求されている免疫検査装置に使われている。

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技術はディープラーニング、CNN(Convolutional Neural Network)を使い、約100万件の検体画像を学習させたという。これだけ多くの画像を学習させたのは、カメラからの検体の見え方が、検体の状態、サンプルカップの種類、バーコードの貼り方等により多様になるからである。

判定においてはブラックボックスではない、説明可能なAIと呼ばれるXAI(Explainable AI)を活用した。

「医療機器という特性上、高信頼性が要求されるからです」(井上氏)

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最後に紹介されたのは、AI技術を用いて、採血の受付から実施までの待ち時間を予測するシステムだ。機械学習のアルゴリズムの一つであるランダムフォレストを用いて開発した。

以下スライドを見るとわかるように、実際の待ち時間にほぼ近しい結果となっている。

「予想時間を提供することで、患者様の待ち時間に対するストレスを低減できると考えております」(井上氏)

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【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答

セッション後は、イベントを聴講した参加者からの質問に登壇者が回答した。

Q.検査技師へのヒアリングなど、協創はどのように行っているのか

中村:大学病院の先生や検査技師の方々と契約を結び、共同研究を行っています。その場で直接声を聞いたり、お客さまの困りごとを深掘りする機会を設けています。現場に行くことも多いですし、羽田エリアの天空橋に協創拠点を設けました。

今後は海外にも同様の拠点を立ち上げようとしています。アジャイル開発の適用も検討していますから、これらが実現すればより早くソリューションを開発できると考えています。

Q.回帰線の参考データにバイアスがないことは、事前に確認しているのか

井上:事前に取得数を決めておくことで、バイアスがかからないように工夫しています。また試薬のロットが切り替わるなど、バイアスがかかるようなイベントが生じた際には、参考データを取り直す仕組みを導入しています。

Q.試薬メーカとのコミュニケーションで意識していることは何か

中村:相手を信頼すること、尊敬することがベースだと考えていて、夫婦のようなパートナーであることを意識しています。そのような意識であれば、試薬メーカの悩み事も知ることができますし、相手の困りごとを知る姿勢が大事だと思います。

このような考えをもとに、私たちは装置の設計スキルだけではなく、試薬に関する勉強にも取り組んでいます。

Q.ランダムフォレストを採用した理由とは

井上:ディープラーニングやXGBoostといった手法も併せて検討しました。ただ、ランダムフォレストを使ってみて比較すると、性能がそれほど変わりませんでした。そこで、実装が比較的簡単でシンプルなランダムフォレストを採用するようになりました。

Q.ソフトウェアエンジニア以外の技術職種でも、海外で働く機会はあるか

中村:システム、メカニカル、電気回路といった分野のエンジニアが、ドイツやアメリカなどの欧米で活躍しています。英語力は必要ですけれども、手挙げ制を重視しており、協業先と一緒に海外で働きたいとの気持ちが一番大事だと思っています。そのような気概のある方は大歓迎です。

国内においても、海外の試薬メーカの担当者が来日して打ち合わせを行い、コロナ禍では頻繁であったZoomなどを活用し、毎週のようにグローバルのメンバーと頻繁に打ち合わせをしている状況が現在も続いています。

Q.セキュリティについてはどのように対策しているのか

中村:セキュリティチームを設け、注力しています。装置やシステムを開発する前に、サイバーセキュリティに対するリスクアセスメントを実施することが重要だと考えています。

具体的には、システムならびにアーキテクチャのどこが攻撃を受けやすいのか。上がってきた項目に対してペネトレーションテストなどを定期的に行うことで、対策や処置などを行っています。

Q.入社前後でのイメージの違いはあったか?

井上:特にありませんでした。入社前から部長に丁寧に仕事内容をマッチングなどしてもらいました。入社後もバーベキューやスポーツなど、各種社内イベントが充実しているので、そういった機会で人となりを知ることができ、すぐに馴染むことができたと感じています。

ひたちなか市の拠点では、女子のバスケットボールチームが所属していますので、試合の際にはみんなで応援に行っています。仕事が終わった後に、食堂で地ビールを飲むイベントなども開催されています。

Q.医療機器開発分野を選んだ理由、開発にかける思いや魅力は?

中村:最初は、自分の家族や親戚、大切な人を幸せにしたいという思いが強くありました。今ではそこから広がり、一緒に働いている仲間、日本の皆さま、最終的には世界中の一人ひとりを幸せ、笑顔にしたいという夢も広がっていっています。

魅力は、自分が企画した装置が使われ、検査スピードや処理能力が早くなったと医療従事者に評価されること。その結果として、検査技師の方から、家に帰る時間が以前よりも早くなったという言葉を聞くことができました。お客様から喜びの声を聞けることが、開発を行う喜び、魅力です。

井上:直接的に人の役に立てると感じたからです。実際、入社してからはセッションでお伝えしたように、病院に行った際に自分が携わった製品が使われていることです。病気で苦しんでいた人が良くなっている姿を見ると、社会に貢献できていることを実感しますし、そのあたりが仕事の魅力でもあると考えています。

小方(※):私たちが開発した装置の先には検査技師さんはもちろん、患者さんがいて、1分1秒でも早く正確に検査結果を届ける役割を担っている。そのようなことを考えると、心が震える気持ちになることもあります。

(※)採用グループ所属

Q.開発期間や携わる人数などについて知りたい

中村:小型の装置であれば3年ほどですが、世界初となるようなチャレンジングな装置の開発の場合は、約150名体制で、5年ほどの開発期間を要します。

ただ最後の1年はバリデーションに充てているので、この検証フェーズをデジタル・自動化することで開発を効率化させることが今後必要であると考えています。顧客課題を解決するソリューションを早く届けたい想いを持っています。

Q.バリデーションについて詳しく聞きたい

中村:検査を止めない、止まらない、環境変化にも強い装置を開発するために、装置が設置される環境条件(気圧、温度、湿度など)を想定した一通りのテストを行っています。日立ハイテクの検査装置は世界中で使われており、標高3000mの高地で使われるケースもあります。

設計開発を行っている工場内に同環境を再現できる試験設備を設けています。試験設備の備わった部屋に検査装置を入れて検証テストを行います。環境条件に対する試験設備がかなり充実しているのも、日立ハイテクならではだと思っています。

※記事内に記載の職位・所属名はイベント開催日時点のものです

株式会社日立ハイテク
https://www.hitachi-hightech.com/jp/
株式会社日立ハイテクの採用情報
https://recruiting-site.jp/s/hitachi-hightech/

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