「0.000000001メートル」の極小世界を実現する日立ハイテクのAI・自動化・画像解析の開発舞台裏

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人間の肉眼で確認できる10万分の1「0.000000001メートル」というナノレベルの画像をAI・自動化・画像処理などのソフトウェア技術で解析実現する日立ハイテクのソフトウェア開発とはどのようなものなのか。画像処理やAI技術活用、VOCを起点にした顧客ドリブンな開発プロセス導入などの挑戦と取り組みを紹介する。

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コロナウイルスも確認可能──暮らし・ビジネスに密接に関わっている電子顕微鏡

株式会社日立ハイテク 設楽 宗史氏
株式会社日立ハイテク
コアテクノロジー&ソリューション事業統括本部
CTシステム製品本部 解析ソフトウェア設計部
ソリューションプラットフォーム開発グループ
技師 設楽 宗史氏

最初に登壇したのは、日立ハイテクで自動化ソフト、ソリューションの設計・開発に取り組む設楽宗史氏だ。設楽氏は、まず電子顕微鏡とはそもそもどういうもので、私たちの暮らしやビジネスにどのように関わっているのかについて説明を行った。

電子顕微鏡はさまざまな種類がある。肉眼や光学顕微鏡では見ることが難しい1nm(ナノメートル)、つまり0.000000001m(メートル)もの極小世界を見ることができる性能を備えているのが特徴で、髪の毛のキューティクルやウイルス、DNAまで見ることができる。

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プリント基板を電子顕微鏡で観察すると、ICチップのリードフレームのクラックまで見ることもできる。

「空から日本列島を見た場合に例えると、直径約60cmのマンホールを東北から中部エリア、約600kmの範囲から探すことができるレベルです」(設楽氏)

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続いて設楽氏は、生活やビジネスとの関わりについて「半導体」「ライフサイエンス」「マテリアルサイエンス」と3つの分野を挙げ、それぞれの分野での活用事例を紹介した。

ライフサイエンスでは、電子顕微鏡を使うことで、新型コロナウイルスの形態が観察できる。PCR検査や抗原検査に続く新たな検査手法の開発に役立てられていると述べた。

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マテリアルサイエンスでは、小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から持ち帰った微粒子を確認する際に利用されている。かんらん石や輝石などの鉱物が含まれていることを突き止めた。

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半導体では、積層構造になっているメモリの状況を3Dで解析したり、削ったりするといった作業にも活用されている。

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半導体分野では、電子顕微鏡は単にナノレベルの世界を見るだけでなく、正確なサイズを測ったり、分析したりする際にも活用されている。設楽氏は、実際に磁石の元素分析や結晶方位解析を行っている画像なども紹介した。

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また、学校で電子顕微鏡に関する技術や活用事例などの講義を行うなど、子どもたちに伝えているという。

このように、電子顕微鏡は我々の生活やビジネスにも関わっている。その結果、昨今指摘されている理科離れを防ぐ活動も、日立ハイテクは国内のみならず海外で行っていることを紹介し、設楽氏はセッションを締めた。

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顧客ごとのワークフローをGUIで簡便に設計できる「EMFC」を開発

株式会社日立ハイテク 陳 偉健氏
株式会社日立ハイテク
コアテクノロジー&ソリューション事業統括本部
CTシステム製品本部 解析ソフトウェア設計部
ソリューションプラットフォーム開発グループ
技師 陳 偉健氏

続いて、電子顕微鏡装置のアプリケーションソフトウェア開発に従事し、AIを活用した異物検知自動化システムの開発を担当する陳偉健氏が登壇した。

現在の電子顕微鏡、特に汎用電子顕微鏡はさまざまなシーンで利用され、利用用途も分析など多様な用途で利用されている。一方で、エンジニア不足などにより、ワークフローの自動化が求められている。

しかし、利用用途の多様化と顧客ごとにワークフローが異なるため、自動化は難しい状況だ。陳氏は、粉体粒子と3D NANDのチャネルホール評価における、ワークフローの差異でそれを示した。

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陳氏はこのようにさまざまなワークフローに対応できる機能が必要だと考え、開発に挑む。まずは、既存の3つの自動化ソフトを調査し、それぞれの良し悪しを評価した。

その結果、以下スライドの右端「装置制御自動化ソフト」はGUIがあるためユーザビリティが高く、加えて、ブロックをマウスでドラッグ&ドロップするだけでカスタマイズが容易にできるため、同製品を活用することとした。

既存製品のGUIを流用する一方で、装置の制御に必要な「ステージ移動」「倍率設定」「像調整」「画像保存」といった各種機能も検討を行った。新たな製品名は「EMFC」。Electron Microscope Flow Creatorの頭文字から取ったワードであり、「EM Flow Creator」とも呼ばれている。

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陳氏はEMFCの構成図を示すとともに、この段階でぶつかった課題についても述べた。それは、ブロック領域である。ブロック領域とは、具体的にどのような処理(機能)を持たせるかをさす。

先述の検討内容や粒度、構造や組み合わせなどにおいて、汎用性を実現するにはどのように設計すればよいのか、なかなか答えが見つからなかったという。

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結論として、ソフトウェア開発部門だけでは難しいと判断し、顧客のワークフローに詳しいデモンストレーション部署への協力を得ることとなった。

そして、顧客が電子顕微鏡でどのような対象を観察しているのか、どのような手順でどのような処理を行っているのか、ワークフローを細分化し、ブレイクダウンしていった。

その結果、ワークフローの詳細について、適切かつ汎用的なブロック設計の目処が立った。しかし、新たな課題が浮かび上がってきた。陳氏は次のように振り返る。

「分岐処理やデータリンクなど、高度な制御フローが必要だと分かりました。そして、これらの制御や処理をシーケンス的に、かつ、GUIの画面上ですべて実現するためには、大幅な改造が必要であることも分かりました」(陳氏)

当初、プロジェクトは2名で進めていた。しかし、同体制では納期に間に合わないと感じた陳氏はリソースの増員を上長に打診する。特に、データリンクや高度な操作画面の設計に強いエンジニアが必要だと伝えたところ、求める人材を確保することに成功した。それが後ほど登壇する澤田氏である。

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そして、EMFCは工程通りに完成に至る。陳氏が紹介したEMFCのGUIは、利用者がそれぞれ取り組みたいワークフローを、まさに画面上でレシピとして簡便に設計できることが分かる。陳氏は、手応えや成果を次のように述べた。

「EMFCを開発したことで、お客様が実現したいワークフローを私たちも正しく理解できるようになりました。かつ、一緒になってワークフローを試行錯誤し、実際にEMFCを使って設計するなどの取り組みができるようになったことで、お客様の満足度向上にもつながったと考えています」(陳氏)

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最後に陳氏は、現在携わっているAIに関する取り組みについても触れた。具体的には、以下のスライドのようにAI技術を活用することで、従来技術や人では難しい4つの事象を解決する取り組みである。

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セッションでは、その中から「異物検出」について紹介。2値化だけでは判断が難しい対象において、データを学習させたAIモデルを使うことで、異物をしっかりと検知していることが分かる。陳氏は今後の展望を述べ、セッションを締めた。

「まるでデジタルカメラのように、これまでは専門家が行っていた複雑な操作をワンクリックで誰でも行うことができ、自動化されている。そのような電子顕微鏡の全自動化をめざしています」(陳氏)

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VOCを取り入れた顧客協創開発プロセスにおけるメリットと課題

株式会社日立ハイテク 伊藤 峻大郎氏
株式会社日立ハイテク
コアテクノロジー&ソリューション事業統括本部
CTシステム製品本部 解析ソフトウェア設計部
解析装置ソフト開発グループ
技師 伊藤 峻大郎氏

続いては、海外の大手半導体メーカーと共に、半導体試料の自動観察ソリューションの開発に取り組む伊藤峻大郎氏が登壇した。

まず伊藤氏は、半導体分野では半導体の製造工程における欠陥検査や出来栄え評価などにおいて電子顕微鏡が利用されていると、実際の機種も含めて紹介した。

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以下のスライドは伊藤氏が担当している透過電子顕微鏡による半導体試料の観察ワークフローである。3台の装置を使い、加工、薄膜化、観察といった流れで進む。そしてこのようなワークフローは試料や顧客の目的により、加工フェーズであれば位置やサイズ、薄膜化であれば同じく位置や薄さなど、それぞれ適切なパラメータを設定する必要がある。

「そのため顧客と一緒にパラメータを検討した上で、最適なワークフローを提供することが必要となってきます」(伊藤氏)

伊藤氏は、顧客とのコミュニケーションが大事であることを強調。具体的な協創の流れについて、詳しく紹介していった。

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顧客協創は要件定義を行った後、仕様検討やテストなどを実施、同工程をフィードバックした後、製品化となる。伊藤氏は関わる部署ならびに担当業務の紹介も行った。

赤丸のマーケティング・営業は主に構想段階で、青丸の部署は開発工程で携わる業務が多いことを示している。

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伊藤氏は各工程それぞれの業務内容も詳しく説明した。まずは、要件定義フェーズである。同フェーズではマーケティングや営業が中心となり、市場や競合他社の分析を行う。

そして分析の際に活用しているのが「VOC(Voice Of Customer)」である。そのメリットを、伊藤氏は次のように述べる。

「弊社の装置はさまざまな分野で使用されているため、私たちでは想像できなかったニーズや課題が見つかることがあるからです。また、競合装置を使用したことのあるお客様から当社製品との比較コメントをいただくことで、客観的に弊社の強みや弱みを知ることもできます」(伊藤氏)

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一方、自社製品や技術の分析では、改めて自社の技術や特許などを整理し、開発が必要な技術を明確化していく。そして具体的に開発する製品の性能やターゲットが決まったら、仕様検討フェーズに移る。

仕様検討フェーズではGUIのデザイン、ソフトウェア構造、自動制御のためのアルゴリズムなどを検討する。なおソフトウェア構造の検討はAstah*を利用し、UMLで行っている。同工程はハードウェアエンジニアも参加し、どちらにおいても最適な仕様を検討していく。

半導体分野の装置は無人稼働することが多いため、自動制御をソフトウェアで実現するために適したハードウェアの仕様を、ソフトウェアエンジニアから打診することがある。

「場合によっては、ハードウェアの仕様の変更を提案することもあります」(伊藤氏)

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次の工程は、機能開発である。以下スライドで示されたプログラム言語や開発環境を用いながら、コーディングからテストまで自分たちで実施。コーディングにおいてはチーム単位で実施しているため、各人の進捗を共有しながら開発を進めている。

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テストは基本的には実機で実施しているが、難しい場合や効率を考えてPC上でいわゆるシミュレーションテストも行う。その際には自社で開発したエミュレータソフトウェアを用いる。

なお同フェーズでは、自社で開発した「EMFC」を使うことで、夜間のテストやメモリーリークのテストなどを実施している。

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顧客評価は顧客にすべて任せるわけではない。引き続きソフトウェアエンジニア、中でも伊藤氏の場合は顧客が海外のため、現地法人のエンジニアがお客様と一緒に評価を行い、日本のメンバーはそのサポートを行う。

こうしてすべての工程後に製品化となるが、その後もバージョンアップや各種サポート、その製品の開発などにおいて協創関係は続く。伊藤氏は最後に、以下スライドで示した協創開発におけるメリットや難しい点を述べ、セッションを締めた。

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顧客課題を解決できるソフトウェアエンジニアが求められている

株式会社日立ハイテク 澤田 淳氏
株式会社日立ハイテク
コアテクノロジー&ソリューション事業統括本部
CTシステム製品本部 解析ソフトウェア設計部
ソリューションプラットフォーム開発グループ
技師 澤田 淳氏

続いては、半導体向け電子顕微鏡画像の計測ソフトの開発などに取り組む、澤田淳氏が登壇。日立ハイテクではどのようなソフトウェアエンジニアが求められているかなどについて語った。

日立ハイテクのコア技術は「見る・測る・分析する」である。このコア技術を、澤田氏は改めて自分が取り組む半導体分野で説明していくと同時に、日立ハイテクに求められることを解説していった。

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半導体の製造工程の一部に、ウェハーのエッチング(食刻)がある。エッチング加工が求める精度を出せているかどうかを確かめるために、電子顕微鏡による撮影、計測ソフトウェアを開発した。

お客様がソフトウェアに求めているのは画像そのものではなく、どのようなパラメータでエッチングすれば正しく想定通りの寸法での加工ができるのかというデータであり、そのために正確に加工できているかどうかを測ることだと、澤田氏は述べた。

さらに澤田氏は、電子顕微鏡におけるソフトウェア、ソフトウェアの重要性の変遷を紹介。以前であれば、電子顕微鏡で対象物を「見る」ためのソフトウェア開発がほとんどであった。だが現在は、顧客が求める画像を自動で取得したり、測長結果を示したりするような機能が求められてきている。

そのため、ソフトウェアならびにソフトウェアエンジニアの重要性は高まってきている。澤田氏は、ソフトウェアエンジニアに求められる要素は、顧客の課題解決力であると語り、次のように続けた。

「顧客課題を解決できるソフトウェアエンジニアとは、単にソフトウェアをつくる力だけでなく、半導体やマテリアルサイエンスなど、対象となる領域に関する知識も必要となってきます」(澤田氏)

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そして、「日立ハイテクには両スキルが身につく環境がある」と、続けた。ソフトウェアをつくる力においては、日立ハイテクは日立グループの一員であるため、グループが展開する豊富な社内研修を受けられることがまずある。

加えて、日立ハイテクのソフトウェア部内でも、教育体制が整備されている。ハッカソンなども開催されており、新しく入ったメンバーや自分が学びたい領域のスキル。例えば、AIを使った画像処理技術なども学べる体制が整っている。

「見る・測る・分析する」に関する知識も、グループの豊富な研修を活用することで、身に付けることができる。

「学会やセミナー、社内勉強会といった外部での学びの場への参加や、Udemy Businessなど、自主的に学ぶことのできるオンデマンド教材も充実しています」(澤田氏)

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最後に澤田氏は、どのような属性のメンバーがどんな部署で働いているのか、具体的に数字やグラフを紹介した。実際の業務ではC#を使うことが多いが、以前から同スキルを備えていた人材は少ないという。

担当領域においては複数兼務するメンバーも多く、澤田氏自身も「GUIと画像処理を兼務しています」と述べ、セッションを締めた。

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【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答

セッション後は、イベントを聴講した参加者からの質問に、登壇者や同席した採用担当者が回答した。いくつか紹介する。

Q.紹介があったコロナウイルス検査のような研究は、どの事業部で行われているのか?

設楽:ケースバイケースにより異なります。

澤田:当社には社内公募制度があるので、仮に入社してみて自分がやりたいと思っていた内容でなかったら、他の部署に異動することが可能です。

宮内(採用担当):入社してからも1on1などを通じて社内のキャリアについてカジュアルに話せる場や、実現に向けたサポート体制も整っていますので、異動することも可能です。

Q.OpenCVなどのオープンソースライブラリを使用することはあるか

:OSSライブラリは使用していますし、ライブラリをつくっている専門部署もあります。ただ徐々に社内のツールに移行していき、最終的には置き換えるようにしています。

澤田:試作段階では構いませんが、リリースする際には障壁になる場合があるからです。

Q.AIを用いた画像解析や測長は実用化されているのか

:ユースケースによります。他部署、ヘルスケア・バイオ分野になりますが、検体検査自動化システムにおいて、AIを使った泡検知は製品化されています。

澤田:製品化はされていませんが、試作やセッションでも紹介したVOCレベルでは進めています。

Q.日立ハイテクという会社の魅力とは?

設楽:自分がやりたいと思っていることを、責任持って実行できる環境が整っている点です。

伊藤:私が所属する部署では、お客様と一緒に開発を進めます。そのため1日中デスクに座り、パソコンを前に作業しているような環境ではなく、フィールド業務も多い点です。

:雰囲気が明るいところや、分からないことがあれば、気軽に聞ける環境であることです。若いメンバーも重要な機能の設計に携わることができるなど、大きな仕事を任せてもらえるチャンスがあるので、成長スピードが早い点も魅力だと感じています。

澤田:ソフトウェアエンジニアが与えられた仕様を実装するだけでなく、お客様と仕様を決めるフェーズから関わるなど、幅広い業務を任せてもらえる環境です。

Q.画像解析で使うAIは自社開発しているのか?

:市販のAIツールを使う場合もありますし、日立製作所の研究施設と一緒に開発しているAIを使うなど、特にこだわらず使えるものを使っています。

Q.EMFCにおいて、任意箇所の粒子解析を行い指定の粒子の撮像をすることは可能か?

:UIで直接指定することは現状できませんが、粒子の座標が分かればブロックと組み合わせて、任意の箇所で実行することが可能です。また、ブロックが足りない場合は、自由に記述できるPythonブロックも用意していますので、ワークフローを自由に記述できます。

時間内に回答できなかった質問に対しても、後日に登壇者が回答した。

Q.クラックとはなんでしょうか?

傷です。

Q.タイトルだけからの質問ですが、ナノレベルであることは、画像解析に影響があるのでしょうか?

ナノレベルの撮影を行うと、ハード的な制約などから以下のようなことが発生しますので、画像処理の難易度が高くなります。
・ナノレベルの試料を撮影するため、分解能を上げるのに電子ビームを絞って、撮影する必要があります。ところが、電子ビームを絞ることによって、信号の収量が小さくなるため、S/N比が悪くなり、ノイジーな画像になってしまうため、ノイズキャンセリング技術が必要になります。
・ナノレベルの撮影なので、シャープな画像を取得することが難しく、対象物のエッジがぼけてしまうことが多いため、エッジ強調技術や超解像技術などを活用する必要があります。
・基本グレースケールの画像を撮影するため、試料の種類によっては背景などとのコントラスト差が小さくなり、それを区別するための画像処理アルゴリズムが必要です。
・きず/異物もナノレベルなので、区別するための画像処理アルゴリズムが必要です。

Q.クイズで使われた電子顕微鏡の写真はいずれも同じ種類のものを使用されたのでしょうか?

使用した電子顕微鏡は以下になります。
①髪の毛:C-SEM(型式・SU3900)
②花粉:卓上顕微鏡(型式・TM4000)
③太陽電池:C-SEM(型式・SU3500)

Q.陳さんのようなプロジェクトの主体チームは何人くらいなのでしょうか?

常に一定の人数ではないですが、最初の開発のタイミングでは4人程度のメンバーで開発してました。

Q.設楽さんの説明にて、コロナ検査手法として電子顕微鏡が用いられる方法もあるとのことでしたが、そのような臨床検査のような研究は御社ヘルスケア事業部にて行われているのでしょうか。それともコアテクノロジー事業部にて行われているのでしょうか?

ヘルスケア事業統括本部とコアテクノロジー&ソリューション事業統括本部の共同で行われています。

Q.対象物の大きさが10〜100ミクロンの場合、画角・写せる範囲はどれくらいになりますか?また、対象物が移動体の場合、どのくらいの速さまで捉えることが可能でしょうか?

10~100ミクロンの場合、何画素の画像を取得し、何画素で構造物を表現したいかによるため一概には言えませんが、例えば、先ほど移しました花粉ですと、構造が25ミクロンで写している範囲が約100ミクロンになります。

対象物が移動体の場合、こちらも一概には言えませんが、一般に一枚の電子顕微鏡画像を取得する時間は、数ミリ秒や数十秒と幅広いです。その時間で捉えられるか否かになります。

Q.AIを使うとき、アノテーションはどうやって行って、アノテーション数はどの程度必要なのでしょうか?

アノテーションに関しては日立社内ツールを使用しています。(もしくはImageJなどフリーツールを使用します。)

ユースケースと使用するAIの種類によりますが、それぞれ必要なアノテーション数が異なります。ただし、どちらにしてもアノテーション数が多いほど、精度が上がるのが一般的です。

Q.EMFCの説明のなかで装置制御ソフトAPIの話が出てきましたが、こういったAPIはユーザに対して提供/公開/オープンなものなのでしょうか?またライブラリが提供されていたりするものなのでしょうか?もし公開されているようでしたら、独自に制御ソフトを開発しているユーザはいたりしますか?

はい、装置制御APIはオプション機能として提供しています。ただし、独自に制御ソフトを開発しているユーザーがいるかどうか、申し訳ございませんが、正確な情報は把握できておりません。

ですが、先ほど紹介の中にもありましたが、スクリプトベースの製品を顧客に提供していますので、顧客は自由に装置の制御レシピを作ることが可能です。

Q.イオンビームで試料を薄くするとお聞きしましたが、使われているイオンの種類は何でしょうか。使うイオンによって削り取りの効果に違いがありそうですが、実際はそのような違いはあるのでしょうか?

アルゴンやガリウム、キセノンなどがあります。おっしゃる通り効果の違いがあり、目的によって使い分けます。

Q.半導体分野でのSEM、FIB、TEMの加工や観察の自動化について、具体的にどの程度まで自動化できるのか、事例をご紹介いただければ幸いです。

具体例を挙げられず、申し訳ありません。私の携わっているプロジェクトではFIB-SEMによる加工と薄膜化、TEMによる観察を自動で動かす事をめざして、お客様と評価を進めています。

Q.今後SEMのソフトウェアに対象物を自動的に認識してくれるAIや、自社で覚えこませることでAIを作れるアプリなど出てきそうでしょうか?

特定の対象物に絞ってAIに学習させれば、その対象物を認識するAIを作ることは可能です。

また、AIアプリに関しては社内で色々と製品化するための取り組みを行っており、アプリの品質、セキュリティや保守性の観点をクリアし、かつ継続的に顧客をサポートする体制を作れば、AIアプリを製品化して販売することは可能です。

Q.電子顕微鏡ってカラー写真で撮ることはできないのでしょうか?

質問の意図からは外れるかと思いますが、後付けで色付けしてたりすることはあります。学会でフォトコンテストをしていたりしています。
https://microscopy.or.jp/jsm/photo/

Q.AIで異物を特定し、元素分析を行うことは可能でしょうか?

可能です。AIで異物の位置を特定して、電子顕微鏡の座標情報として出力し、その位置にステージを移動すれば、あとは元素分析を行うだけです。

Q.ナノレベルの計測を可能とする画像はどのようなカメラシステムで取得するのでしょうか?画素数の高いカメラと倍率の高いレンズがあれば普通にとれるものなのでしょうか?

ナノレベルの画像は一般的な光学カメラではなく、電子顕微鏡を使用して撮影します。。例えば、走査型電子顕微鏡の場合だと、真空中で細かく絞った電子ビームで試料表面を走査し、そのとき試料から出てくる情報(信号)を検出してグレースケールの輝度に変換すると、画面上に試料表面の2次元輝度プロファイル(拡大像)を出力することができます。

Q.最近生成AIが話題になっていますが、半導体×生成AIを考えた際、エッチング条件(温度やガス量)や装置条件を入力すると、条件に応じたパターンの画像が生成される、という使い方は可能でしょうか?

可能だと思います。一方で、エッチングは大量のパラメータがあり、エッチング対象のエッチング前の試料状態(どのような構造がすでに存在するか)にも影響するため、かなりの学習データが必要かと思われます。

もしくは、ある程度支配的なパラメータのみに学習対象を絞ることなど、少ない学習データで実用的なAIモデルを作れる可能性もあると思います。

Q.AIを用いた生体分野画像処理に応用がありますか?

生体分野で、例えばAI技術を活用して、生体組織内の構造物をセグメンテーションして分類したり、特定の構造物を検出したりするような生体分野への応用に関する取り組みは行っていますが、まだ要素技術として試作している段階です。

Q.今後どのような分野又は機能でAI活用を強化されますか。自動化・DXを進めている会社も多いと思いますが、お客さまはじめSEM観察・計測でどのようなニーズが多いかを知りたいです。

SEM観察や計測でいうと、物体検知のニーズは多いと感じています。「低倍率のSEM像から観察対象を見つけて高倍率で撮影をする」というワークフローは色々なところで行われています。

Q.コロナウィルスのような100nm程度の粒子を撮影する場合に、粒子が数個しかない場合、広大な撮影範囲から粒子を探し出すのは難しいと思いますが、自動化とAIで可能になるのでしょうか?

可能だと考えております。

例えばですがEMFCを用いますと、多数の視野を自動で取得することができます。その取得画像をAIや画像処理で解析し、有無判断が可能です。

Q.御社の事業開発本部でも半導体製造装置から得られたデータを活用するAIシステムの開発をされていると認識しているのですが、澤田さんが取り組まれている半導体のプロジェクトとどのような違いがありますか?

澤田です。私の方では、製造装置のデータを活用するAIというよりも、製造装置で作成したウェハ(試料)断面の電子顕微鏡の画像の計測を行っております。

また、事業開発本部はコアテクノロジー事業統括本部に限らず、全社横串での新規事業開発や要素技術の開発を行っております。

Q.AIを用いた画像解析をしている部署は他にもあるのでしょうか?もしあれば、部署間での技術・取り組みの連携が何かなされているかも含めお答えいただきたいです。

他の部署にもAIを用いた画像処理をしている部署はあります。具体的な内容はお答えできませんが、定期的に社内で技術共有の場(社内の学会みたいなイメージ)があり、他の部署の知識を仕入れることもできますし、自分が発表することで有識者からコメントをいただけます。

Q.電子顕微鏡は光の代わりに電子でものを見ているので、光と同じようには色を見ることはできないという認識です。その代わり、光よりも分解能が高く、より小さいものが見えるということとの認識です。間違っていますでしょうか?

その認識で全く問題ありません。

Q.日立ハイテクの営業職はどのようなことをしますか?

営業職の業務内容は詳細に把握できていないですが、営業に必要なスキルに加えて技術的な知識も身に付ける必要があると思います。

私は営業職の人から「お客様の要望」と「具体的なアプローチ方法」を提案頂いた事があります。お客様に近いところで仕事しているため、実態に合った解決方法を提案していく事も営業職には必要と思います。

Q.プログラミング経験がない方がチームにいらっしゃることに驚きました。その方々は他者に比べてITの専門性が不足していると思いますが、チームに与える影響、およびその方々の魅力などはどういったものがありますか?

入社後にプログラミング等の教育がありますので、知識や技術の有無は影響ありません。

様々な分野に展開している電子顕微鏡のソフトウェア開発には、色々なバックグラウンドを持つ人が欠かせないと考えます。

Q.学習データなどは顧客からもらうのでしょうか?そのデータなどの情報はどのような秘密保持対策をしているのでしょうか?

案件によりますが、基本的に十分な学習データをもらえないことの方が多いです。

その場合は、自分たちで類似サンプルを用意し、電子顕微鏡で撮影することで学習データを蓄え、そのデータセットでAIを試作し、それを顧客先に展開し、フィードバックをもらい、改良を進める、という協創活動を行います。

株式会社日立ハイテク
https://www.hitachi-hightech.com/jp/
株式会社日立ハイテクの採用情報
https://recruiting-site.jp/s/hitachi-hightech/

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