30代・40代PM/PLエンジニアの新たなキャリア開発の基本ステップと品質エキスパートという選択肢──#VALTES Career Night
アーカイブ動画
ミドル世代のエンジニアが自分らしく働くためのキャリア開発のステップ
バルテス・ホールディングス株式会社
R&C部 マネージャー 小島 友美氏
最初に登壇したのは、バルテス・ホールディングス R&C部マネージャーの小島友美氏。「ミドル世代のエンジニアが自分らしく働くために押さえるべきキャリア開発のステップとは?」をテーマにセッションを行った。
小島氏は、キャリアコンサルティング技能士の国家資格を有している元エンジニアだ。現在はソフトウェア品質の教育セミナー講師、教育セミナーのコンテンツ開発を担当している。小島氏が所属するバルテスグループとは、ソフトウェアテストの専門会社。バルテスグループ全体の従業員数は900人を超える。
バルテスグループが1年間で担当するプロジェクト数は3,000件以上。これほどまでにバルテスが支持される理由は、「抜け漏れのないテストを実現できる豊富な実績と技術力、確立したプロセスを有しているため」と小島氏は説明する。
技術力の確かさは17年12月にISTQBという国際的なソフトウェアテストに関する資格認定機関に、国内で初めてグローバルパートナーとして認定されたことからもわかる。また、社員のJSTQB(ISTQBの日本組織によるソフトウェアテスト技術者認定資格)保有率は92%と高い。
「これは入社2年目以降の正社員の合格率です。ファンデーションレベルは技術職だけではなく、営業系や事務系の社員も取得しています」(小島氏)
従来のバルテスは結合テストやシステムテスト、ユーザー受入テストなど、システム開発における下流工程を中心にサービス展開していた。だが今では、品質コンサルティングや仕様書インスペクションなどの上流工程から携わることも増え、ソフトウェア開発の全工程で、品質の向上支援サービスを提供している。
ミドル層エンジニアのキャリア開発の考え方
ミドル層のキャリアの悩みは様々ある。大きく以下の5つが挙げられる。
第一が技術スキルの向上に関する悩み。技術は急速に進化しているが、新しいツールや言語が登場するたびに追いつくのが難しいというものだ。
第二は専門性vs幅広い知識に関する悩み。専門性を高めるべきか、幅広い知識を身につけるべきかで迷っている人が多いという。
第三はコミュニケーションスキルに関する悩み。技術的なスキルはあるが、他のメンバーや非技術者との効果的なコミュニケーションがうまくいかないという悩みである。
第四はキャリアパスの不透明さ。第五は仕事とプライベートのバランスに関する悩みである。ここで参加者にオンラインアンケートを実施すると、参加者の43%が「キャリアパスの不透明さに悩んでいる」と回答した。
続いて、小島氏はこれらの悩みについて対策を紹介した。第一の技術スキルの向上に関する悩みについては、持続的な学習を心がけ、自分の専門分野や興味を元にスキルを向上させることだという。
第二の専門性vs幅広い知識に関する悩みでは、「現在の市場需要や個人のキャリアゴールに基づいてバランスを取ることが大事」と指摘する。
第三のコミュニケーションスキルに関する悩みについては、チームワークやリーダーシップのスキルを向上させるトレーニングやワークショップに参加することや、上司から積極的なフィードバックを求めることで改善できるかもしれないと語った。
最も回答が多かった第四のキャリアパスの不透明さについては、「目標を設定し、それに向けてキャリアを評価して、業界のトレンドを見ていくこと」と小島氏。自分の興味や強みにあった方向性を見つけることが大事だと言う。
「後のパネルディスカッションに登壇するような、経験豊富なエンジニアやメンターからのアドバイスやサポートを受けることも有益です」(小島氏)
次のテーマはキャリア開発の考え方について。2004年ぐらいから、学生時代からキャリア教育が本格的に始動してきたことから、今の20代、30代はキャリア形成への意識が整備されていると思われる。
とはいえリクルートマネジメントソリューションズの調査によると、半数の人が「自律的・主体的なキャリア形成ができていない」と回答している。自律的・主体的キャリア形成が進まない理由として、「考える暇がない」「漠然とした不安はあるが、キャリアの考え方が分からない、知らない」などが挙げられている。
では、どのようにキャリアを考えていけばよいのか。「まずは現状認識をすること」と小島氏。「できること」「やりたいこと」「やるべきこと」を整理して、自分のキャリアの棚卸をするのである。その際は、労働市場の変化や自身の環境の変化についても考慮してほしいと語る。
次に、解決したい問題・課題を考える。3年後、5年後にどんな働き方、どんな役割をこなしていたいかをイメージするのである。第三にキャリアビジョン(なりたい自分像)を描くこと。「制約を取っ払って考えてみることも大事」と小島氏はアドバイスする。
そしてこれらのキャリアビジョンを描く際に使ってほしいのが、ライフラインチャートだという。自分の物差しでライフラインを描いていくことで、自分自身の価値観や大切にしたいモノが見えてくるからだ。
第四はキャリア開発の3S(サポート・スキル・ストラテジー)を考えること。あとは計画してアクションを繰り返していくだけで、キャリア開発ができるようになるという。
ミドル層の新たなキャリア「品質エキスパート」とは
なぜ上流工程に携わりたい、上流工程の支援をしたいと考えている人が多いのか。その背景には、プロジェクトマネジャーやプロジェクトリーダーとしてプロジェクトを推進したときに、納期とコストと品質のバランスを取る難しさに頭を悩ませた経験があることが大きいと考えられる。
納期とコストが守れない理由は、「品質が悪いため」であり、その品質は上流工程で作り込まれる。だからこそ、品質に対して意識が高い人ほど、上流工程に携わりたいという思いが強くなる。
このような思いや考えを持っているミドル層にお勧めのキャリアが「品質エキスパート」であると小島氏は強調する。
品質エキスパートへと転身すると上流で品質が作り込めること、問題解決と改善の機会が得られること、市場価値の向上などのメリットがある。一方で、対人スキルの重要性が問われ、継続的な学習と適応力が求められるなど、ハードルの高さもある。
だが小島氏は「クオリティへのこだわりは才能であり強み。ぜひ、キャリアに迷いを感じているのであれば、品質エキスパートの道を考えてほしい」と語り、セッションを締めた。
品質エキスパートへの道をライフラインチャートで振り返る
品質エキスパートとは、どんな仕事なのか。具体的なロールモデルがないと、イメージしづらいだろう。そこでイベントでは、開発エンジニアからバルテスに転職した植村浩平氏と、SIerの役員から品質専門PMとして活躍している豊島聡行氏が登壇。
「ライフラインチャートから読み解く、ミドル世代のエンジニアが直面したキャリアの分岐点と品質エキスパートの道を選択した理由」をテーマに小島氏も含め3人によるパネルディスカッションが行われた。
バルテス株式会社
エンタープライズ品質サービス第2事業部
西日本ソリューション部 副部長 豊島 聡行氏
バルテス株式会社
エンタープライズ品質サービス第2事業部
西日本ソリューション部 リーダー 植村 浩平氏
小島:まずは自己紹介からお願いします。
植村:担当業務はテスト設計とテスト実施で、チームリーダーを務めています。前職では大手工作機械メーカーにて組み込み系のソフトウェア開発に従事していました。2023年バルテスに入社。現在は、組み込み系開発プロジェクトの品質向上支援業務に参画しています。
豊島:組織マネジメントとアカウントマネジメントを担当しています。前職は独立系SIerにて執行役員を務めていました。バルテス入社は2021年。現在も大手ゲーム機器製作会社のテスト支援プロジェクトのマネジメントに従事しています。
小島:お二人のライフラインチャートを振り返りながら進めていきたいと思います。これまでライフラインチャートを描いたことがありますか?
●ライフラインチャート例
豊島:ありません。ですが、ライフラインチャートを描いたことで、浮き沈みはありつつも、若手ならではの楽しみもあれば、経験が蓄積してきた頃ならではの楽しみもあったなと思いました。
小島:お二人とも、品質への意識の高まりがバルテスへの転職の決め手になったと思うのですが、品質への意識を高めたきっかけがあれば教えてください。
植村:社会人3年目ぐらいに上司のすすめで開発手法やレビューの手法などに関するセミナーを受講したことです。ですが、実際の現場ではなかなか上流工程で品質を考える文化が周囲に浸透せず、かなりストレスが溜まっていました。品質を作り込む仕事がしたいと思っていたときに、バルテスに出会いました。ずっと考えていた品質について、専業でできる場があったんだと初めて知りました。
小島:バルテスには品質を重視している方が集まってくる気がします。社員はもちろん、お客さまも品質を重視する大手企業の方が多くいらっしゃいます。
豊島:中にはテストだけで仕事が成り立つの?と疑問に思われる方もいるかもしれません。ただ、わたしの場合は、前職で開発を経験していたからこその、上流工程での品質作りという価値を提供できていると思います。
小島:バルテスではテストをするだけではなく、テストをした結果の分析も行いますからね。バグを分析した結果、その原因は実は上流工程にあった。だから、次回からは上流工程でこういうことをしていきましょう、という提案をするとお客さまにも喜んでいただけるように思います。
植村:テスト設計テスト実施のみをお任せいただいているお客さまに、テスト結果を分析して「バグ密度」を伝えたり、開発工程での改善提案をしたりしたところ「次からはバルテスさんも上流工程に入ってほしい」とのお声をいただきました。質の高いテストが新たな受注に繋がる例だと思います。
小島: 次に、品質エキスパートにおける、今後のキャリアの可能性について教えてください。
豊島:品質エキスパートのキャリアの幅は広いと思います。 クオリティマネジメントを束ねてプロジェクトを運営していく人もいれば、品質コンサルティングとして「クオリティゲートは何か」や「品質を作るには何をするべきか」のコンサルティングを行なう人もいます。また上流から要件定義書にきちんと網羅性があるかを見ていく人もいますね。これらを幅広くやることもできますが、ひとつのことを深く掘り下げることもできます。ただ、いずれにもバルテスメソッドというバックボーンが存在します。
豊島:品質専門の仕事と言っても、まずは「品質とは何か」からわからないという方もいるかもしれません。ですが、バルテスでは中途入社者にも1カ月の研修が用意されています。私ももともと品質の重要性は痛感していたものの、研修で提示された「いったいなにが品質なのか」の考え方には目からうろこでした。
小島: キャリア形成に悩んでいる方の多くは、自分のキャリアを考える時間と普段の業務との両立を難しく感じていると思います。おふたりはどのようにしてこの壁をクリアしましたか? 植村私の場合は転職がきっかけでした。それまでキャリアについて考える暇はなかったのですが、思い切って踏み出したことで新しいキャリアを築けています。
豊島:私もそう思います。20年間何かを変えたい、何かやれることはないかと悩んでいました。転職して気付いたことですが、業務をしながらキャリアについて考えて勉強もしてとバイタリティのある行動をするのは難しい。なので、キャリア形成のために、キャリアチェンジをして環境を変えてしまうという方法もあると思いました。
【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答
最後に設けられたQ&Aコーナーには、多くの質問が寄せられた。抜粋して紹介する。
Q.40代以降のキャリアは、50歳以上のキャリアを見越した上で、どのように考えていけばよいのか
小島: 私は入社時研修を担当していますが、入社される方には直近でも40代、50代の方もいるので安心してほしいですね。
特にバルテスでは、中途入社の方でも入社時に1ヶ月間の研修を受けていただきます。ほとんどの企業では転職した方は即戦力として案件対応を任されることになりますが、バルテスでは品質について学ぶ時間がきちんと用意されていますので安心してチャレンジできる環境です。また、もし不安な方は選考前のカジュアル面談も可能ですので、実際にどんな仕事をするか等の情報収集にご活用ください。
豊島:50代の方が入社されることもあります。品質に対して貪欲な人が多いですね。50歳からでも品質という知識を武装して、より素晴らしいエンジニアになっています。
Q.30代~40代での転職では、どのようなリスクを考慮したのか
植村:家族からの反対はありませんでした。むしろ残業が多かったので、体調を心配されており、転職を後押ししてくれました。確かに収入の増減は気になりましたけど、僕の場合は家族の同意が得られていたのでスムーズに転職できました。
あとバルテスは一応ベンチャー企業なので若くてイケイケの方が多いのではと思っていたのですが(笑)実際に入ってみたら案件についてきちんと会話ができる方々で安心しました。
豊島:転職前はいろんな心配事を勝手に一人で抱えていました。家族からの反対や収入、人間関係などに不安を感じ、20年間転職しませんでした。ですが、実際転職をしてみたら、今までできなかったことに本気でやっていきたいという感情に出会えました。
Q.上流工程の品質のKPIには、どのようなものがあるのか。プロダクトにとって最適な品質とは何か、品質をどういう観点で定義すると、ステークホルダーに納得感のある品質レベルになるのか知りたい
豊島:バルテスでは中間成果物の一つとして、左側に機能、上側に見るべき観点を抜き出してマトリックスを記す「テストマップ」を作成します。この機能ならこの品質観点が必要だとプロットし、その優先度を考えていく。それが一つの網羅性の指標になり、全体的に俯瞰した姿で、コストや納期を納得しながら説明できるようになります。
小島:そうした文書をテスト設計の各段階で詳細化して提供して、お客さまに納得を得てもらいながら、品質を提供しています。
Q.品質エキスパートの仕事の面白みについて、何かエピソードがあれば聞きたい
豊島:最初は、品質エキスパートとは開発会社やお客さまとバチバチの関係だと思っていましたが、実際にやってみると非常に感謝される仕事です。品質に対する提案が理解していただけた瞬間に、やりがいを感じます。
植村:品質の仕事はずっとやりたいと思っていました。まだ携わって半年ですが、品質のバグ密度、テスト密度など数値で見せると、お客さまがなにか感心したような、新しい気付きを得たような反応をされます。そこに面白さを感じています。
小島:私のように品質を軸とした、セミナー講師にもチャレンジできます。品質についてお伝えすることで、それを持ち帰って業務に活かしていただけるって素敵なことだなと感じています。