【レポート】キヤノンが描くと、未来はこうなる。 - Canon AI・Engineer Forum -

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キヤノンにおけるAI技術開発

松尾さんの基調講演の終了後は、キヤノンのエンジニアが登壇します。まずは、御手洗さんです。

御手洗裕輔(みたらい・ゆうすけ)/キヤノン株式会社 デジタルシステム開発本部 室長。2001年にキヤノンへ入社。

まず、御手洗さんはキヤノンにおけるAI開発戦略を説明します。

「私たちキヤノンはメーカーですから、いい製品・ソリューションをお客様に届けることが大切と考えています。ですから、『AI開発はプロダクトを差別化するために行う』というのが基本的な考え方です。

キヤノンはカメラから始まっている会社です。ですからビジネスドメインとしてはその強みを活かせる領域に展開しています。具体的には『フォト・シネマ』『スポーツ』『オフィス』『ヘルスケア』『インダストリー』『安心・安全』などですね」(御手洗さん)

続いて御手洗さんは、キヤノンでのAI開発事例を3つ紹介します。

1. 顔検出・笑顔検出・個人認証

「私がキヤノンに入社した2001年、『Convolutional Neural Network(CNN)』を利用した顔検出を開発に取り組みました。ただし、昨今の『CNN』に比較すると『ディープ』とは言えず、階層は浅いものでした。

というのも、当時は16GBのメモリを積んだワークステーションの調達に数百万円もかかりましたし、学習データを手にいれるのも難しかったのです。

アーキテクチャの工夫により、高精度を実現したこの技術は、インクジェットプリンタに搭載されました。

さらにこの技術から派生して、カメラに笑顔検出、個人認証の機能を搭載しました。『CNN』の中間特徴を活用したわけです。

現在のリソースと比較するととても大変でしたが、その時代にできることを見極めて、その範囲の中でいかにお客さまに価値の提供ができるかをデザインすることが重要だと思っています」(御手洗さん)

2. 外観検査

「次にAI技術を利用して生産性をアップを実現した事例です。

私たちメーカーにとって、製品を高品質に維持することが生命線です。その一方で、お金を掛けてばかりではお客さまに低価格で製品を届けることはできません。『高品質』と『低価格』のトレードオフを解決するためにAIを活用することになりました。

取り組んだのは、プリンターのカートリッジ内のパーツの外観検査です。それまでは『色ムラ』を人間が見て検品していたのですが、この『色ムラ』は肉眼で見てもよく見えないようなものでした。

そこで、まず欠陥がちゃんと見えるように画像を取得できる装置を開発し、その画像を用いて検査を機械が代替ですることを目指しました。従来までは、画像を処理して検知できるようにするのが一般的な方法でした。しかし、私たちは良品と不良品のサンプルを与えて、学習させるやり方を選びました。

3. 3Dマシンビジョンシステム

「次にAI技術を活用して新規事業を創出した事例です。先ほどご紹介した画像認識技術、さらに私たちが強みを持っているカメラ、さらにMRのVisual Geometry技術、プロジェクターの4つを組み合わせて、3Dマシンビジョンシステムを開発しました。

これは『バラバラに積んである部品を、位置と姿勢を揃えてキレイに並び替える』というシステムです。カメラとプロジェクターをつかって3次元の計測をした後に、まず画像認識で、部品のだいたいの位置と姿勢を推定します。最後にVisual Geometryで精密に位置を推定するという流れですね。

この事例のように、自社の強みとAI技術を掛け合わせていくことが非常に重要だと感じています。先ほど松尾先生も指摘されていましたが、自社の強みを活かして先行することでデータを収集できるようになりますよね。そのデータを収集して優位性を確保していかなければならないのです」(御手洗さん)

最後に御手洗さんは今後の展望を語ります。

「私たちは、今後も基本的にはプロダクトとサービスを差別化するためのAI技術開発を進めていきます。ハードウェアを作る能力がある会社ですから、画像や映像技術をキーとして、ハードウェアを含めた包括的なソリューション開発を行いたいですね。それが、現行製品の機能アップや新規事業の立ち上げにつながると思っています。

『AIはすごい』と様々なところで叫ばれていますが、ビジネスにしていかなければ意味がありません。そのために顧客や社会のニーズに深く切り込んで課題を抽出し、AI技術や自社の強みを活かして解決していきたいと思います。

『AIで仕事がなくなる』と言われることもありますが、私たち人間がクリエイティブに働ける社会を創造していきたいと思っています」(御手洗さん)

ネットワークカメラとAIのリアル

次にキヤノン沼田さんの講演です。

沼田真仁(ぬまた・まさひと)/キヤノン株式会社 NVS事業推進本部 主任研究員。2004年にキヤノンへ入社。

まず沼田さんはネットワークカメラに関する技術の歴史を下記のように振り返ります。

1970年〜:第1世代
磁気テープを使い機器での映像録画ができるようになった。

1990年〜:第2世代
デジタル化、ネットワーク化した録画システムの登場。

2007年〜:第3世代
人が映ったときだけ録画するなど、映像解析の技術の出現。 ただし、精度や価値があまり創出できていなかった。

2015年〜:第4世代
ディープラーニングの実用化で、IoTも活用した更なる精度の映像解析や付加価値の創出が期待されている。

AI技術による新たな付加価値創出の例として、沼田さんは「群衆人数推定」を紹介します。

「群衆人数推定は、カメラに何人が映っているのかを1秒ほどの時間で推定するものです。例えばスポーツイベント終了後の通行人数を数えることで、事故防止につなげるという新たな価値を生んでいます。

イベント成果を検証するために会場の人数を数えたい、というニーズもあります」(沼田さん)

主にソリューション開発を担当している沼田さんは、「精度が出ない」「アルゴリズムの前提条件に合わない」「リアルタイム性が出ない」という3点がよくある問題だと共有します。これらの問題を解決するには「地道な努力が必要」だという沼田さん。

「例えば、インドでの事例でうまく人数のカウントができないことがありました。それは僧侶の集団だったのですが、よくみると『坊主頭』を上手くカウントできていなかったんです。そこで、『坊主頭の人』を再学習して精度を挙げていきました」(沼田さん)

沼田さんはさらに下記4つの事例を紹介します。

事例1 施設の行列人数を数える

「タクシー待ちの人数を数えて、一定の人数に達したら別のオペレーションを行いたいというお客様の事例です。

しかし、物理的な制約でアルゴリズム条件に適したカメラを設置することができないという問題がありました。そこで、実際にカメラを設置できる位置を前提に、ロジックを追加して解決しています」(沼田さん)

事例2 大規模店舗でお客様の年齢・性別を分析する

「顔の特徴量をベースに年齢と性別を推測し、客層の分析を行いたいという事例です。この事例では、入口に設置したカメラが西日で逆光となり人の顔が映らないという問題がありました。また、お客様の動きが早いと映像がぶれて精度が低下してしまうという問題もありました。

これは、露出の補正を行ったり、シャッタースピードを早めたりとカメラの機能で解決しています」(沼田さん)

事例3 車両の交通量を知りたい

「実証実験前なのですが、夜のヘッドライトのハレーションや、天候が悪いときにどうなるかなどの課題を予想しています」(沼田さん)

事例4 プライバシーに配慮して見守りたい

「人の動態を検知するソリューションです。監視映像の人体部分だけマスク処理をすることで、プライバシーに配慮しています。今後、介護施設での実証実験を予定しています」(沼田さん)

沼田さんは最後にキヤノンで働くことのやりがいを会場に語り、講演をまとめました。

「アルゴリズムの開発という場面で考えると、最新技術の進化を体験できることは大きな 魅力のひとつです。お客様のユースケースに特化して、映像解析のアルゴリズムそのものを開発していけることも、他の企業ではなかなかないとポイントですね。

また、実証実験も政府系の案件や、大手大型商業施設の案件が多くあります。これはキヤノンブランドを評価してもらってのことだと思います。大きな規模で実証実験ができるのは、やはりエンジニアとしてやりがいを感じます。安心・安全に貢献していきたいと思っています」(沼田さん)

IMAGINGをAMAZINGに

最後にキヤノンの飯島さんによるクロージングです。

飯島克己(いいじま・かつみ)/キヤノン株式会社 常務執行役員 情報通信システム本部長。

「私たちは『映像をおどろきに』という理念を持って製品や事業を展開しています。 キヤノンは、80年前『自分たちの手で世界一のカメラをつくりたい』というベンチャースピリットからスタートしました。

本日のテーマであるAIにおいても、新しい事に積極的に挑戦し、製品とデジタルビジネスを如何に発展させるかという観点をもって進めています。

エンジニアへの投資も積極的に行っており、エンジニアが学べる研修施設を作っている最中です。その他、キャリアに合わせた研修も多数用意しています。

『ベンチャースピリット』と『人』を大切にするのがキヤノンだと覚えてもらえればうれしいです。本日はありがとうございました」(飯島さん)

懇親会!

講演の終了後は、華やかな食事とお酒を楽しみながらの懇親会です! 御手洗さんの音頭でカンパイ!

参加者のみなさんは、登壇者と名刺交換をして交流を行っていたようです。

またの開催をお待ちしています!

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