富士通がAIテクノロジーを活用し、新たなAIビジネスを創造するワークショップを開催!

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富士通がAIテクノロジーを活用し、新たなAIビジネスを創造するワークショップを開催!
富士通が30年以上に渡って研究開発に取り組んでいる AI(人工知能)の実用化。その成果として生み出された「Zinrai(ジンライ)」「Digital Annealer(デジタルアニーラ)」は、今後どのようなビジネスに活用できるのか、どのような新しいソリューションを生み出せるのかを考えるワークショップを開催した。

富士通は、30年以上にわたりAIの実用化に向けた研究開発に継続的に取り組んでいる。その中で生まれてきたのが、AI関連の知見や技術を体系化した「Zinrai(ジンライ)」、組合せ最適化問題を高速に解くテクノロジー「Digital Annealer(デジタルアニーラ)」だ。

AIの活用はまだこれから。そこで富士通は1月31日、TECH PLAY SHIBUYAで「富士通と共に考えるAIビジネスの未来-金融・物流・医療分野におけるビジネス展望-」というテーマのワークショップを開催した。

先の2つ(「Zinrai」「デジタルアニーラ」)がどのようなものか。またどんなところで活用されているのかを解説した後、金融、物流、医療という分野でどのような活用ができるのか、参加者が4つの班に分かれ、新たなソリューションのアイデアを出すことにチャレンジした。そのイベント概要をレポートする。

富士通の「Zinrai」とは?

最初に登壇したのは富士通 AIサービス事業本部 第一フロンティア事業部 事業部長の吉山正治氏。「富士通でのAIビジネス事例紹介」というタイトル名が表している通り、富士通のAIビジネスとその事例紹介をするセッションから始まった。

吉山氏は2018年よりディープラーニング、デジタルアニーラのコンサルティングサービス事業を担当している。あまりイメージがないかもしれないが、富士通は、約30年前からAIの研究開発に取り組むなど、歴史は長い。このような長い時間をかけて進化させてきた富士通のAI。それをビジネスに活用すべく体系化したものが「Zinrai」だ。「Zinrai」は「人と協調する、人を中心としたAI」「継続的に成長するAI」を目指して、開発が続けられている。

「Zinraiはすでに1,000件以上のお客さまの希望を形にしている。適用分野もヘルスケアやモビリティ、ロジスティクス、小売、社会インフラ、デジタルマーケティング、ナレッジ、ものづくりなどさまざまだが、今回のワークショップでは医療・物流・金融という3分野で新しいソリューションを考えてもらいたい」(吉山氏)


▲富士通株式会社 AIサービス事業本部 第一フロンティア事業部 事業部長 吉山正治氏

なぜ、この3分野にフォーカスしたのか。それは、総務省が有識者を対象に実施したアンケートにおいて、AIの利活用が望ましい分野として、意見が多かったのがこれらの分野だからだ。

とりわけニーズの高い医療分野については、これまでカルテやレントゲン、採血などの検査データは個人情報保護の観点から容易に扱えなかったが、2018年5月に次世代医療基盤法(いわゆる医療ビッグデータ法)が施行されたことで、研究機関や企業も医療データが活用しやすくなった。「当社でも共同研究を通じて医療分野へのAI適用事例で成果を挙げている」と吉山氏。

その一例として、超音波診断装置やCTの画像診断にAIを活用した事例を紹介。 AIを活用することで医師の診断のバラツキを抑え、判断時間を短縮するという成果を確認している。

量子現象に着想を得た「デジタルアニーラ」

もう一つ、今回のワークショップで使用する技術「デジタルアニーラ」は、今、富士通が最も注力しているといっても過言ではない技術だ。デジタルアニーラは量子現象に着想を得た、組合せ最適化問題を高速に解くアーキテクチャーだ。

「組合せ最適化問題を解くには、コンピューティングパワーが必要になります。その一つの解が量子コンピュータですが、現実に活用できるようになるのはまだまだ先。当社は現在のコンピューティング技術でそれを可能にするデジタルアニーラを開発しました。量子コンピュータが実用化されるまで、活用の拡がりが期待されている技術です」と吉山氏は説明する。

とはいえ、「組合せ最適化問題って、そんなに現実に存在するのか」と疑問を持つ人もいるだろう。だが吉山氏は「意外にたくさんある」と言い切る。

今回のワークショップのターゲット分野である医療や物流、金融でもすでに活用事例も登場しており、成果を出しているという。

●医療:がん放射線治療の膨大なビーム照射パターンの計画策定に活用。ビーム照射のパターンを計算するには、数時間から数日かかるが、それを数分に短縮できることが期待される。

●物流:経路が重複しないよう最適化し、都市全体の経路分散に活用。渋滞の緩和が期待される。

●金融:投資ポートフォリオの最適化に活用。500銘柄の相関関係を瞬時にクラスタリング。従来のMV法に比べ、リスクに強い分散投資が見込めることがわかった。

イベントのメイン!参加者と富士通社員によるワークショップ

「Zinrai」、「デジタルアニーラ」の実社会への活用は始まったばかり。活用範囲を広げていくには、新しい発想が必要だ。今回のイベントはそのための試み。バックグランドの異なる人たちとディスカッションをすることで、新しいAIビジネスを創造していこうというわけだ。

したがって、懇親会を含め約2時間半のイベント時間のうち、吉山氏のセッションに費やした時間は約30分。もちろんこの時間で「Zinrai」、「デジタルアニーラ」のすべてを説明することはできない。だが、解説時間をこれだけコンパクトにした背景には理由がある。今回のイベントの本題が、富士通と参加者のみんなでディスカッションし、新しいビジネスを創造していくことにあるからだ。

参加者は金融、物流、医療の3分野に加え、中高生に向けたイジングモデルの説明について考える班に分かれた。金融と物流は新たな組合せ最適化問題とデジタルアニーラを使ったソリューションを、医療はAI(画像、音声)とデジタルアニーラを使ったソリューションを考えて、提案書にまとめる。その上で、次の様な条件が与えられた。

●ビジネス規模は考えない
●新規性や革新性を優先する
●実現性は考慮する

提案書に入れる項目は、キャッチフレーズ(商品名)と解決する業界の課題と解決提案、解決提案を実現する上での課題(技術や法律・精度、社会環境など)。

ワークショップは約1時間。それぞれの班には富士通の社員がフォローするかたちで参加した。

参加者は自分の知見のある分野もしくは興味のある分野に参加しているので、活発な意見が交わされる。とはいえ、新たな課題を考えデジタルアニーラ、AIの適用ソリューションを考えるのは難問。1時間という短い時間で提案書としてまとめあげるべく、担当の社員に疑問や相談を投げかけながらディスカッションを進め、ホワイトボードに書いては消し、書いたモノを修正してということを繰り返していく姿がみられた。

あっという間に1時間が過ぎ、「まだまだ練りきれなかった」という声も聞かれる中、各チームによる発表が行われた。発表時間は1チーム約3~4分。その提案について、各班をフォローした富士通の社員からの評価・感想も披露された。 どんな新しいソリューションが創造されたのか、紹介しよう。

医療チーム「マルチメディア診断」

医療チームのキャッチフレーズは「マルチメディア診断」。提供する価値は精神疾患の定量的評価で早期発見するというもの。精神疾患は医者との問診でしか診断ができないという現状がある、心の病にかかっている人は多い。

だが、どうしてそのような症状になるのか、そのメカニズムがはっきりしておらず、進行度合いがわかりにくい。定量的な診断ができず、医師によって判断の基準が異なる。そのため、病気の見逃し、問診に時間がかかると言う問題がある。解決策としてはビッグデータからAIで疾患の特徴を見つける。

活用するのは問診の動画(動作、動き)、日記の内容、言葉(声や内容)、電子カルテ。定量的ではないデータから診断ができることがこの提案の新しさ。疾患の特徴を見つけることで判断の基準を明確化していく。定量化ができれば、治療の対策ができる。

ビジネスモデルとしては人間ドックや福利厚生に組み込むことを考えている。実現するためには法律の制限、データベースの設計をどうするかなどの課題を解決する必要がある。

金融チーム「アニーラファンディング」

金融チームのキャッチフレーズは「アニーラファンディング」。日本人は銀行に貯める人が多く、金融資産の流動性が低い。また地方では相続した山や家が放置されていることも珍しくない。収益の確保が難しいからだ。

このような課題の解決策として考えたのが、最適なマッチングをするクラウドファンディング。支援者と起案者をデジタルアニーラでマッチングする。支援者側の支援資産(現金や土地、モノ)と要望(リターン)、そして起案者側の受け取りたいモノと要望(金額や土地、モノ、期間)をマッチングさせる。

実現の課題としてはまずはセキュリティ面。個人情報を取り扱うことになるからだ。次に資産価値の定量化。例えば土地だとどういう風に定量化するのか。第三は信用の担保。このプラットフォームをどう信頼させるのか、その方法は検討することが求められる。

物流チーム「kaiteki」

物流チームは「kaiteki」というサービスを考えた。ローマ字にした理由は海外展開を考えているため。海外では電車やバス、飛行機など交通機関のダイヤが乱れることは珍しくない。このようなダイヤの乱れをデジタルアニーラで解決する。

事象Aが起こったときに、影響する人数が何人で、何駅分にその事象が波及、その影響をうけた人はどこに行きたいのか、そのときに代替輸送は何パターンあるのか、これらが積み重なると膨大な計算が必要になる。その計算にデジタルアニーラの力を発揮する。

イジングチーム「デジタルアニーラの関連性について」

最後に発表されたテーマは、中高校生に向けたイジングモデル説明について。イジングモデルを、映画館の座席の選び方に例えて説明する。座席が空いている、埋まっているという2つの状態がある。席は多数あるが、隣の席が空いているか、いないかによって、席が埋まる、埋まらないという状態が変わる。一人の人の指示で全員が満足する配置を決めるのは難しい。

だが、一人ひとりが自分の意思を持って座ってもらうと、自然と良い席の配置になる。これがイジングモデル。満足度を縦軸、座席の配置を横軸にとりグラフにすると、ある時点で極大値となる。それをデジタル回路で行っているのがデジタルアニーラだ。



すべての各チームの発表が終わり、ワークショップは終了。参加者全員で拍手をして、お互いの成果をたたえ合うという場面も。この後、懇親会が開かれ、ここでも熱い交流が繰り広げられていた。

富士通の社員の方とはもちろん、参加者同士の交流もできるため、エンジニアとして大いに刺激を受けることは間違いなさそうだ。富士通のAIに関心のある方は、また次に開催される機会をチェックしてみてはいかがだろうか。


※本イベントレポートの内容は、2019年1月31日時点の情報をもとに作成しています。

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